刑事、撃たれてなんぼ2南北アメリカ

種類 ショート
担当 シーダ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/14〜06/18

●本文

●VTR『刑事、撃たれてなんぼ 死のパーティー』
 タタタ、タタタ‥‥
 愛人とボスの乱射するサブマシンガンは、帽子を抑えて走り抜けるリチャードを追うように壁を砕いていく。
「回り込め!」
 警官たちは、銃撃の中、応酬しながら障害物を盾に敵に接近する。
 しかし、相手が凶悪すぎる。バズーカ!
「危ない!」
 仲間の警官に押し飛ばされた先に照準され、発射!!
「嘘だろ」
 苦笑いの警官。
 グワァン!!
 画面が切り替わり、爆発!! 
「ちくしょぉお」
 警官たちは一斉に突撃した。

 〜 中略 〜

 ヘリのローター音が近付いてくるのを感じながら階段を駆け上がるリチャード!
「そこまでだ!」
「しつこいと嫌われるぞ」
 ボスは飛び出してきたリチャードの動きに合わせて連射。
 射線上に入ってきた愛人の背中に弾丸が突き刺さり、ババッと血を吹いた。
 ボスは愛人を爪先を使ってひっくり返すと、ねっとりとした笑いを浮かべた。
「ドジったよ。フフ‥‥」
 愛人のドレスはクリムゾンカーキに染まっていく。
「いい女だったんだがな」
 タタ‥‥
「ひどい奴だ、お前は」
 リチャードは歯噛みして見ているしかない。
「結構。お前たちを天国に送るのが俺の仕事でね」
 ボスの放った弾丸がリチャードを撃つ‥‥
「殺された皆のために、お前は必ず逮捕する」
 砕けた口紅やコンパクト、歪んだターゲットスコープやポリスバッチと一緒に、弾がカラカラと床に転がった。
 ダッシュするリチャードをマシンガンを向けるが、弾切れ。
 僅かに表情を歪め、ハンドガンを撃つのと同時にリチャードのストレートがボスを吹き飛ばす!
 気を失うボスを前に、リチャードは屋上の縁に腰掛けると煙草を取り出して火を着けようとしたが、いくらやっても着かない‥‥
 ライターには弾丸が突き刺さっているのを見ながら、リチャードはヘリの音が遠ざかっていくのを聞いた‥‥

●打ち合わせ
「次の撮影も、グレイトな撃たれっぷりを期待してるからな。ディーン」
 監督はリチャード役の俳優ディーン・アンダーソンの肩を叩いた。
「これが次の台本です」
「オーライ、読んでおくよ」
 助監督から台本を渡されて、ディーンは煙草を燻らせながら読み始めた。

●今回の参加者

 fa0065 北沢晶(21歳・♂・狼)
 fa0184 池田屋つきみ(34歳・♀・兎)
 fa0262 姉川小紅(24歳・♀・パンダ)
 fa0829 烏丸りん(20歳・♀・鴉)
 fa3014 ジョニー・マッスルマン(26歳・♂・一角獣)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3776 コーネリアス・O(32歳・♂・猿)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●Aパート・事件の予感
 スラム‥‥
 治安の悪さで知られ、銃声とパトカーのサイレンがBGM代わりと言っても誰も疑わないだろうが、平和に暮らしている者や必死に生きている者たちだっているのだ‥‥
「へへ‥‥ もうじき大金が入るな」
「ジャック、物は届いたのかよ」
 階段に腰掛け、ジャックと呼ばれた男(役者:北沢晶(fa0065))は、猫を撫でながらストリートチルドレンたちを集め、なにやら話し始めた‥‥
「何か悪事を企んでる顔だね。あたいの目は誤魔化せないよ」
「どうしたんだい、リズ?」
 カーテンの隙間から窓の外を覗いていた、リズと呼ばれた娘(役者:姉川小紅(fa0262))は、手にしていた一眼レフをテーブルの上に置くと、パンとコーヒーを流し込んだ。
「また、ガキどもが悪巧みでもしてるんだよ。しょうがない奴らさ」
「気をつけるんだよ。お前は私の宝物なんだからね」
「わかってるって、母さん」
 そう言いながらも、『大金』や『物』と聞いては放ってはおけない。
 スクープを手にして社員になれればスラムともおさらばだ。
 軽くキスをしてジャケットを羽織り、カメラを担ぐと、リズは、残りのパンを口に放り込んで部屋を後にした。

 場面は変わって、住宅街‥‥
 在り来たりな朝の風景の中、子供がスクールバスに駆け込んで行く。
「今夜、うちの子の誕生日パーティーをやりますの。もしも時間があるようなら、顔を出してくださると息子が喜ぶわ」
「あぁ、開けとくよ。プレゼントは何が良いかな」
「あなたの熱い拳でも教えてやって。喧嘩で負けたって、ぼやいてたから」
「オーライ、ハンナ」
 歩きながら帽子を軽く持ち上げ、ハンナ(役者:池田屋つきみ(fa0184))に微笑んだ。
「そういえば、リックとかいう新人刑事が来るんだったか? マッスルの兄も配属されてくるって言うし、歓迎会もしてやらないとな」
 リチャードは、今日も警察署へと向かう。
 この世の悪を退治するために‥‥

 場末の倉庫‥‥
「開けてみろ、サンタナ」
 シートをはがした箱をサンタナと呼ばれた少年(役者:ヨシュア・ルーン(fa3577))が乱暴に開いた。
「すげぇ‥‥ ひゃははは」
 箱の中には銃器が入っていた。普通に買えるようなハンドガンではない。
 サブマシンガンにアサルトライフル‥‥ 殺傷力の高い銃器ばかりが数丁、それにプラスチック爆弾まで‥‥
(「戦争でもするつもり?」)
 リズは息を呑みながらシャッターを切り続けた。
「よぉ、スクープだって?」
「リチャードにだけは知らせておこうと思ってね。言ったろ? スクープを取って本物の記者になるって」
 小声で話しかける刑事リチャードにウィンク一つ。
 フィルムを取り替えようとしてリズは肘をぶつけた。
 カラァ‥‥ン‥‥
 パイプが落ちる音が響き、震え慄き思わず立ち上がったリズの手を掴んで、リチャードは走り出す‥‥が‥‥
「チクショウ、ついてねぇ」
 ジャックはハンドガンを構えると躊躇なく撃つ!
 ピスピス‥‥
 リチャードと、咄嗟にカメラを守るように背中を向けるリズを銃弾が捉え、2人は縺れあって倒れた。
 パトカーのサイレンが近付いてくるのを聞いてジャックは発車させる。 
「カメラは‥‥無事?」
「あぁ、大丈夫だ」
 身体を貫通した銃弾はカメラで止まっていたが、それを彼女に言うことはできない。
「バカだね‥‥ 平凡な暮らしが幸せだって‥‥、死ななきゃ‥‥わかんないなんて‥‥さ‥‥」
「諦めるな!」
 リチャードが傷口を押さえて止血するが、出血は止まらない。
 みるみるうちに血溜まりとなり、リチャードの服を掴んでいた指が力を失って、ズルズルと崩れ落ちる。
「リズ‥‥」
 リズの目に何も映らないのと同じように、割れたレンズも、もう何も写すことはないのだ‥‥
 リチャードはカメラを抱かせるように胸の上に置き、目蓋を閉じさせた。
 
●Aパート・銀行強盗
 フワァアアン‥‥
 ジリリリリリ‥‥
「警官が来る。ずらかるぞ!」
「アニキ、待ってくれよ。こいつ、金を隠し持っていやがった」
 笑いながらサンタナが持っているのは、彼らが脅しに使った爆弾だ。
「ジャンキーめ‥‥」
 危険を感じたジャックは、仲間をも置き去りに駆け出す。
 高笑いに混じって悲鳴が巻き起こる。
 ズガァアン‥‥
 凄まじい音と共に爆煙が巻き起こる。
 悲鳴と共に周りの者たちが逃げ出すが、その中で1人だけ逃げ遅れた者が‥‥
 必死に息子へのプレゼントの天体望遠鏡を車に乗せようとしているハンナの姿だ‥‥
 煙を引きながら、ジャックは銀行から飛び出してきた。
「丁度いい。車をよこせ!」
 車から離れ損ねたハンナを容赦なく撃ち、ジャックは金の入った鞄を座席に放り込むと車を発進させた。
 発車するかしないかの瞬間、リチャードたちが駆けつけるが、倒れている女性を見て一瞬足が止まる。
 女性に駆け寄るリチャードたち数人以外は、パトカーに飛び乗ってジャックを追う。
「俺が青二才にやられるかよ」
 盛大に銃を目くら撃ちしつつ、信号を無視して爆走する車を追って、警察車両が視界から消えていく。
「ハンナ、ハンナじゃないか」
「あら、リチャード‥‥ これを息子に‥‥」
 抱き上げたハンナが、荒い息で、血まみれのプレゼントをリチャードに渡し、バースデーカードを彼の胸ポケットに差した。
「自分で渡すんだ! その方が、あの子も喜ぶ!!」
「あの子を宜しく‥‥ね‥‥」
 叫びも空しく、身を預けるように、ハンナはリチャードの胸でゆっくりと息を吐いた。
「くっ‥‥」
 涙を隠すように帽子を目深に被る。
「リチャード刑事、応援要請が。犯人たちを追ってください。この人は私が見ます」
「わかった、頼む!」
 女性警官(役者:烏丸りん(fa0829))が横付けした車に飛び乗り、リチャードはギヤを入れ、一気にアクセルを踏んだ。

●Bパート・幸、不幸
「こうなったら片っ端からやってやるぜ!」
 車を盾に、ジャックは両手に機関銃を構えて辺り構わず乱射する。
「先に行く、援護頼む!」
「Hey、リック! 応援を待つんだ!!」
 筋肉質の刑事マッスル(役者:ジョニー・マッスルマン(fa3014))が、若い刑事リック(役者:Rickey(fa3846))を止めるが間に合わない。
「オラオラ!」
「SUCK! ジャムか!?」
 乱射を止めないジャックに向けてマッスルが援護射撃をしようとするが、ガキンと音を立ててシリンダーが止まる。
 別の銃を抜こうとしたマッスルの目に飛び込んできたのは、力を失い、倒れていくリックの姿‥‥
「リーーック!」
 帽子を抑えつつ駆け寄り、リチャードはリックを物陰に引き込むと、マッスルも、そこへ飛び込んできた。
「ごめ‥‥ん、役に立てなかったよ‥‥ 後は宜しく‥‥ね‥‥」
 リックは力なく項垂れた。
「リチャード、YOUはハンドガンを持つべきだ。拳では速さと距離に限界がある」
「俺には拳がある。銃なんかなくてもな」
「You know what I’m saying‥‥ 最後の頼みだ。銃を持て、リチャード」
 マッスルはリックのホルダーを外し、リチャードに渡した。
「だがな‥‥」
「言いあってる場合か。使うのが嫌でも、お守り代わりに持っとけ。使うときが来る」
「馬鹿だろう、お前は! 周りの迷惑も考えろってんだ!! 銃を持て、リチャード!」
 銃で応戦する刑事アーロン(役者:コーネリアス・O(fa3776))が顔だけ向け、顎で促す。
 マッスルから無理矢理、銃を渡されると、リチャードは渋々リックのホルダーを借りて差した。
「お前みたいのが刑事なんて、世も末だよ‥‥ったく。左右から突っ込むぞ」
「ちっ‥‥ リズムに乗るぜ! Let’s♪ ロックンロール♪♪」
 腕を顎で固定しながら拳銃をジャックに放ちながらアーロンが、愛用の二丁拳銃をぶちかましながらマッスルが、それに続くようにリチャードが飛び出す。
 しかし、そこに待っていたのは、サブマシンガンの銃弾の雨!
 アーロンは防弾チョッキに弾を受けながら物影に隠れこんだ。
「備えあれば憂い無しって言葉がだな‥‥」
 突然、横倒しにアーロンが倒れる。
 頭からは大量の血が流れ出し、即死‥‥
 リチャードを押し倒したマッスルも動かない‥‥
「こうなっちまったのも、全部お前たちのせいだ!」
 リチャードに避ける間はなく、ジャックの構えた銃口が火を吹く。
 ギャィイン‥‥
 何かに弾かれたのか、リチャードは無事だ。
「そんなバカな!」
 ジャックのハンドガンが、再びリチャードを狙う‥‥
「リズの夢を!」
 リチャードの投げた写真が宙に舞い、次々と穴が開いていく。
「ハンナの幸せを!!」
「くそぉおお」
 飛来したバースデーカードがジャックの手に中り、射線がずれる!
「死んでいった皆の無念を思い知れ!」
 間合いを詰めたリチャードの熱い拳が、ジャックを吹き飛ばし、ガレキの中に!
「ちっくしょ‥‥ 思い知るのは、お前の方さ」
 再びジャックの銃口がリチャードを捉えた。
 スルッ‥‥
 そのとき、リチャードのスーツからこぼれたのは、同僚刑事から託された銃‥‥
 時間がゆっくりと流れていく‥‥
 ガチャリ‥‥ ズパン‥‥
 リチャードが落とした銃の弾丸を受けて、ジャックは後ろ向きに倒れこんだ。
「ありがとよ、マッスル‥‥ アーロン‥‥ リック‥‥ 皆‥‥」
 テンガロンハットを目深に被ったリチャードの頬に、夕陽が一筋、光った‥‥