決死の作戦!生存率10%南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
シーダ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/24〜07/29
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●本文
●ショートフィルム『決死の作戦! 生存率10% 〜 インベーダー襲来 〜』
ここは個人で作った戦争博物館。
アメリカの武器を中心に古今東西、良く言えば手広く、悪く言えば節操なく集めている。
大好きだった爺さんが残してくれたものを律儀に守っているだけなのだが、兎も角、好きでやっているのだから多少苦しいのは仕方ない。
個人で建てたが故に、展示品の量が少ないのが難点だが、味は負けていない。
その博物館に併設された作業場には灯りが見える。
油まみれになって小1時間。工具を置いて冷めてしまったコーヒーに手を伸ばす。
ボックスに腰掛けて見つめるのは戦車だ。
車体の割りに長大な砲を搭載した姿は、中々に勇ましい。
軽戦車なのに中型戦車と同等の打撃力を持つ。そんなアンバランスさがお気に入りなのだ。
尤も‥‥ 相対した敵戦車の装甲を撃ち抜けずに、早々に他の戦車に代わられてしまった悲劇の戦車なのだが‥‥
まぁ、戦車に詳しいものならば、これがM24軽戦車チャーミーだということはわかるだろう。
本国で使わなくなったために日本の自衛隊、西側諸国へと輸出されたという経緯を持つ戦車だけに知る者は多いはずだ。
これが目の前で動く姿を見ることができ、乗ることができるイベントが、これからの、この博物館の目玉になる。
あぁ‥‥
そんな能書きは良かったな。
実は、この数日、この町ではおかしな事件が起きている。
他人は自分の言うことを信じていない。ならば、自分の身は自分で護るまで‥‥
そうだ。信じられなくて当然だ。
しかし、自分の身は自分で護る。
あいつらを倒さなければ大変なことになるんだ‥‥
それは、ある日のこと‥‥
この町に隕石が落ちた。
町の外れに落ちたのは、多くの者が目撃しており、ローカルニュースにもなった。
こんなニュースでも、片田舎の、この町ではビッグニュースであり、期待に胸躍らせて野次馬が集まったものだが‥‥
落ちた形跡から隕石でも見つかるかと思ったが、実際には何も見つからなかったため、皆がっかりしたのは確かだ。
探査に来た学者や役人たちは、サッサと帰ってしまったし、騒動は直ぐに鎮静化すると言われたが‥‥
そんなとき、噂が囁かれ始めた。
獣の形をした人間が現れたと‥‥
町の者は不安に思いながらも、笑い話として相手にしない。
なぜなら誰も被害を訴えないからだ。
そんな不気味な者がいれば、誰かが声高に叫ぶだろうし、何かしら傷害事件のようなものが起きてもおかしくないはず‥‥
それが住民の総意というものだ。
しかし、自分たちのわからないところで状況は進行していた‥‥
もう少し早く気がついていれば‥‥
野次馬で見に行った、あの現場に獣の足跡が複数残っていたことを‥‥
自分も襲われた。敢えて言うなら獣人というものだろうか‥‥
そいつを自分はインベーダーだと思っている。
宇宙船が壊れ、やつらは、この町に棲みつこうとしている。
邪魔になる者は全てロボトミーのように支配して‥‥
自分の考えに同意して危険を感じてくれた者たちは、今、この博物館に集まっている。
くそっ‥‥ どんな方法を使っているのかわからないが、町の外に連絡が取れない‥‥
どこかに連絡さえ取れれば‥‥
いや、そんなことを言っても始まらない。
早晩にも、やつらは襲ってくるだろう。
しかし、来たら、この戦車と、趣味で集めていた武器で返り討ちにしてやる。
そして、チャーミーで封鎖線を突破して合衆国に助けを求めるんだ。
●撮影
「よし、後は最後のシーンを残すのみだ。良く頑張ってくれたな」
とは、監督が言っているが、殆んど個人製作のショートフィルムだ。
数名しかいないもののスタッフは手際よく、次のシーンの用意に入っている。
役者としてきたキミたちも、その手伝いに借り出される始末だが、これはこれでやっていて面白い。
戦車に乗れる貴重な体験もできるし、皆、楽しみにしていたシーンだ。
さて、もう一頑張り。良いフィルムを作ろう。
(最後のシーンとなる戦車vsインベーダーの戦闘がリプレイでの主な描写となります)
●リプレイ本文
●出撃準備
「折角だからチャーミーの75mm主砲で蹴散らそうよ」
ノートパソコンをいじるヨーン・武田(役者:武田信希(fa3571))は、ニヤリと笑っている。
「本気か? 人員だって、これだけしかいないし、敵はインベーダーだぞ?」
「インベーダーなんて信じられないけど、町の人たちが変なのは確かだし」
バーシング(役者:コーネリアス・O(fa3776))は、溜め息をついた。
「しかし、残ってる移動手段は、こいつしかないだろ?」
「そうだな。どうせここにいても、そのうち、やつらに乗っ取られちまうんだ。それなら一か八か逃げ出して、外に異変を知らせようぜ」
元海兵エドワード(役者:守山脩太郎(fa2552))と元戦車兵マックス(役者:ヴァールハイト・S(fa3308))は、僅かに笑みを浮かべて、チャーミーを撫でている。
「ここに残れば生存率0%。だけど、僕のシミュレーションによるとチャーミーで脱出すれば作戦生存率は10%にはなるよ」
「危険すぎます。もっと良い方法があるはずです。冷静に考えましょうよ」
タカセ(役者:巻 長治(fa2021))は、首を振った。
「通信が回復すれば、僕のサーバーを使って、もっと精密なシミュレーションができるはずだけど、それでも数%も違わないはずだよ」
「それだけ状況は切羽詰っているってことか‥‥」
ヨーンの説明にバーシングは黙ってしまった。
「しかし、インベーダーが攻めてこなければ、助けが来るかも」
「通信の不通を疑問に思った外部の人たちが行動を起こすのに何日かかかるはずだし、遅かれ早かれ僕らは生きていないよ」
「もう少しすれば電話とか通じるかもしれない。そうしたら‥‥」
「無線が使えないのに? 妨害されてるんだよ。インベーダーにね。戦場で無為無策に状況の好転を待つなんて、最低の部類だね」
タカセとバーシングが必死に食い下がるが、オタクの知識を総動員しているヨーンの意見の方が現実的に思える。
「バーシング、タカセ、反論する材料が無いんだろ? ここは、こいつのことを信じてみようじゃないか。駄目なら仕方ないさ」
「エド‥‥ そうだな。よし、やろう!」
バーシングたちはチャーミーの最終整備にかかった。
「知りませんよ。どうなっても‥‥」
タカセは彼らの背後で、ニヤァリと笑った。
ジャキッ! ガチャ!
「しかし、旧式ばっかだな」
「そう言うな。弾丸のストックもチェックしとけよ」
「ねぇ、エド、マックス。ちょっと話があるんだけど‥‥」
武器を手に使用可能か調べるエドとマックスに、ヨーンが声をかける。
彼らの背後では、タカセがその姿を急速に変えていた。
映像を早回しにでもしたかのように、1、2秒で全身が黒と黄の斑のアメリカドクトカゲの姿をした人型になっていく。
「よぉ、正体現したな」
「信じたくは、なかったぜ」
「バカな人たちだ。気づかなければ、苦しまずに済んだものを」
インベーダーは、エドとマックスが銃を構えているのに、笑ったように見える。
「1人だけ脱出できたってのも変だし、逃げるなら町の外と反対側のこっちに逃げるなんて、おかしいもん。でも、これで信じるしかなくなっちゃた」
「地球人にも頭の回る奴がいるもんだ」
変声した声でインベーダーは笑い、1歩、また1歩と近付いてくる。
バンッ! ババン!
2人からの銃撃を受けるが、インベーダーは動きを止めない。
「ジーザス」
神への祈りも空しく、慌てる2人に迫るインベーダー。
「これでもくらえ!!」
ガバババ‥‥!
シュバッ!!
バーシングが放った固定銃座の機関砲に歩みを止められ、マックスのバズーカが火を吹いて、インベーダーは派手に吹き飛ぶ。
遠景に切り替わった瞬間、爆発が巻き起こった。
町の中心部では‥‥
「不甲斐ない。やられたわね」
兎の姿をしたインベーダー(役者:シヅル・ナタス(fa2459))が、立ち上る煙に失笑しながら溜め息をつく。
「フリージア、力で押し込むしかないんじゃねぇか?」
「まったく‥‥ この私がこんな辺境の星で碌な力を持たない原住民相手に原始的な戦いをしなくてはならないとは。ひどい屈辱ですわ」
インベーダー蝙蝠(役者:カイン・フォルネウス(fa2446))の問いに、答えになっていない答えを返した。
「じゃ、行こうぜ。司令官殿」
「引っかかる言い方は止めなさい!」
2人並んで町の中を歩き始めた。
キリキリキリ‥‥
「よし、OKだ」
「こっちもな」
75mmキャノンの動作確認をすませたエドワードがハッチから顔を出し、マックスがキャタピラのチェックを終わらせた。
「それじゃ、出発だ。インベーダーも、こちらの動きに気づいているはず。今は国も軍もアテになんねえ‥‥ 急ごう」
「行け、チャーミー!」
バーシングが砲身に跨るヨーンを車内に押し込むと、T24軽戦車チャーミーは博物館を飛び出した。
●襲撃
インベーダーたちが戦車に群がる。
「インベーダーと戦ってる‥‥ってことは味方なの?」
町中を彷徨いながら奇跡的な幸運に護られてインベーダーの魔の手を知らずに逃れていた、世間知らずの御嬢様、シンシア(役者:佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378))は、丘の上に現れた戦車を見て呟いた。
今まで周りは全部インベーダーだった。一縷の望みを得て、シンシアはチャーミー目指して全力で走っている。
「良いので?」
「囮よ。誘き寄せて一網打尽にするわ」
インベーダー兎は部下たちに指令を与えた。
きゃきゃきゃ‥‥
ドバゥと窪みに突っ込んで、跳ねるように飛び出す。
僅かに横滑りしながら態勢を立て直して落ち着いたところでハッチを開き、機銃を乱射して熊や犬のインベーダーを蹴散らす。
「主砲斉射!」
「気をつけろよ! 横転したらそれで終わりなんだからな!!」
ヘッドセットからのエドワードの叫びと共に主砲発射の轟音が響き、土煙と共にインベーダーが吹っ飛んだ。
「せめて、もう少し速度を落とせたら、移動しながら主砲を旋回して撃てるのに!!」
「右に窪地! 回避!! 間もなく稜線。速度落とせ!!」
「了解、速度落とす。接近戦用意!」
ルートに繋がる道までは、もう少しだが、道が悪い。
「あ、あれ‥‥」
ハッチが開き、バーシングとヨーンが顔を出す。
「助けて‥‥」
よろよろになって息を切らしているシンシアを発見したバーシングは、戦車を寄せることを命じた。
シンシアは75mm砲を向けられて震えている。
「エド、やめろ。あいつらは、こんな見え透いた罠をかけるような奴らじゃない」
「しかし‥‥」
エドたちが止めるのも聞かず、バーシングはシンシアに手を差し伸べた。
その2人の手が触れ合った瞬間、インベーダー蝙蝠が直上から舞い降り、バーシングを抱えて飛び上がった。
「諦めろ。お前も町の奴らの仲間入りをさせてやる」
もがくが逃れられないバーシングは、起爆スティックを取り出した。
「行け、マックス! 急げよ!!」
「いやぁあ!!」
悲鳴を上げるシンシアと仲間たちにバーシングは不敵な笑みを浮かべた。
「くそっ! バーシング‥‥ 生まれ変わっても友達だぜ。俺たちは‥‥」
マックスは緊急発進させた。
「綺麗だな‥‥」
「何を言っている」
空を見て呟くバーシングに、インベーダー蝙蝠の表情が歪む‥‥
「バーシィイング!!!」
ウィリー気味に加速するチャーミーの後ろでは、空中で爆風が起きた。
●脱出
稜線を超え、道まで後一歩というところまで来たとき‥‥
「オーホッホッホッ!! 文明も録に発達していない未開人風情が、よく頑張ったと褒めてあげるわ」
インベーダー兎がロボトミー住人を連れて行く手を塞いでいる。
「まぁ、安心しなさい。あなたたちだけではないわ。いずれ、この星全てが私たちのものになるの。つまり、早いか遅いかの違いだけよ」
マックスたちはロボトミー住人の中に家族や友人を見つけ、インベーダー兎を睨みつけるが、それで相手の気持ちが動かないことなど百も承知。
「すまねえ!」
マックスは涙を流しながら出力を上げた。
鋼鉄の身体を身震いさせ、チャーミーは群衆に突っ込む。
群衆は踏み潰されるのも構わず、身体を張ってチャーミーの行く手を塞ぐ。
しかし、止まったら終わりだ。顔を背けるシンシアたちを無視してチャーミーの速度を上げていく。
突破したかに見えたその時、無限軌道が動きを止めた。
動輪とキャタピラの間にパイプが突き刺さっている。
群衆が迫る‥‥
「ここは自分が引き留める! 先に行ってくれ」
ハッチを開けたエドは唇を噛み締めて銃を乱射している。
「でも‥‥」
「このままじゃ、全滅だ! 誰かが知らせなきゃならんだろうが!!」
迷う時間はない。
手榴弾のピンを口で抜いて四方に投げ、僅かな時間を稼ぐ。
「必ず助けを呼んで戻ってくるよ」
「期待してるぜ、ヨーン」
ヨーンが走るスペースを作るために援護射撃! エドの目に涙が浮かんでいる。
「シンシア、脱出する!」
「皆、死んで‥‥ いやぁ‥‥」
無理矢理にでも引っ張り出そうとするが、錯乱状態のシンシアを車内から引っ張り出すのは難しい。
「うわぁああ‥‥」
エドと共にピンの抜けた手榴弾が転がり落ちてくる。
必死に掴もうとするが、エドとマックスの手をすり抜け、車内の奥へ転がっていく‥‥
「みんな‥‥ 作戦終了だよ」
離れた場所で通信が回復したのを確認し、データを送信したヨーンの背後で、爆煙が上がった‥‥