冒険チーム CMコンベ南北アメリカ

種類 ショート
担当 シーダ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/15〜11/19

●本文

●喫茶店にて
「監督、ユニコーンの番宣CMを作る予算が出たぞ」
「ほ〜」
 2人の男がコーヒーをゴクッと飲み干す。
「ま、毎度ながらあんまり多くはないんだがな。あり物のフィルムの編集で何とかするかい?」
「いや、それだけじゃ面白くない。いいアイデアがあればいいんだがな」
 この男たち、『冒険チーム・ユニコーン』のプロデューサーと監督である。
 人道支援、動物保護のために設立された複合出資団体による組織・ユニコーン財団が派遣したエージェントたちが各地で事件を解決していくという背景もさるものながら、銃を使わず、殺さない、そして機転により危機を回避するというシチュエーションにスリルを感じると放送の評判はまずまずである。
「それじゃコンベでもやるか? やるならスケジュールを組むが」
 プロデューサーは早速撮影予定の確認を始めている。
 監督は助監督を手招きすると2杯目のコーヒーをグイッと飲み干した。
「ユニコーンのCM企画コンベンションをすることにした。告知を出してくれ。予算はかけられないとこは強調しておけよ」
「必要最低限の予算はあるんですよね?」
「当たり前だ。金をくうCM作成はできないってことだよ」
「了解です」
 助監督を監督は笑い飛ばした。
(「撮影用の予算を考えると報酬はなし、採用企画には金一封ってとこかな」)
 助監督は予算額を見て、ちょっぴり溜め息‥‥
「ところで今回は企画だけですか?」
「その通り。撮影は決まってから予定を組む。いいよな?」
 監督の言葉にプロデューサーが頷く。
「それじゃ、グレートなヤツを作るぞ」
 監督は勢いよく立ち上がった。

●今回の参加者

 fa0780 敷島オルトロス(37歳・♂・獅子)
 fa0872 風樹蒼護(24歳・♂・鷹)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa1412 シャノー・アヴェリン(26歳・♀・鷹)
 fa1728 芳乃なくる(24歳・♀・狐)
 fa1737 Chizuru(50歳・♀・亀)
 fa1819 ミハイル・チーグルスキ(44歳・♂・狐)
 fa2089 Tosiaki(35歳・♂・竜)

●リプレイ本文

●コロキュアルスタイル
「1番どうぞ」
 助監督に促されて敷島オルトロス(fa0780)は席を立ち上がった。
「宜しく‥‥お願いいたします‥‥」
 主催者にDVDプレイヤーとモニターを貸してもらえないか事前に確認しておけば良かったと同じプロダクションのシャノー・アヴェリン(fa1412)は反省しながらプレイボタンを押す。

 人混みを掻き分けて市街地を走りながら携帯を取り出す黒スーツの男。パンして男の背後に怪しげな黒服連中が映りこむ。
 やがてスーツの男はビルの屋上へ追い込まれ、ニヤリと笑う黒服たちに追い詰められる。しかし、着ていたスーツを結び合わせて屋上の手すりから垂れ下がるホースを伝って降りた男は黒服たちに向かってウインク。
 憎々しげに睨み付ける黒服連中を尻目に男は仲間の車に悠々と乗り込む。
 街へと消えてゆくハイアングルの車をバックに『その先の冒険へ――― 冒険チーム・ユニコーン』のテロップが‥‥

 暗転。

 スーツに身を包んでいた女性が路地裏に停めた車に身を預けている。
 突然鳴り出すユニコーンのテーマソングの着信メロディ。
 電話を耳に当てるや否や、着ていたスーツを放り投げて現れたのはラフな格好の女。
 急発進する車からティルトダウンしたカットに、ひらひらと落ちるスーツ。その上に猫がごろんと昼寝する。
 その画面には『その先の冒険へ――― 冒険チーム・ユニコーン』のテロップ‥‥

「2本で1つの話になるんですね」
 助監督が頷いている。
「センスは悪くないんだが違うんだよな。企画段階でここまで作れるガッツは認めるがな」
「また何かの機会には宜しく」
 敷島は審査員たちと握手をかわした。

●趣味
「2番。どうぞ」
 席を立ったのは芳乃なくる(fa1728)だ。
「やっぱり、かわいぃ〜美少女がたくさん出るものがいいですわ♪」
 はぁ? 一同に怪訝そうな表情が浮かぶ。
「かわいい十代の青春真っ只中の女の子がかわいいお洋服を着て〜。あどけないしぐさでいろいろがんばる姿はいいですよぉ〜♪ ついでにちょっとエッチなシーンもあったりしてー。顔がにやけてしまいそうですわ〜」
 うっとりする芳乃‥‥
「CMキーワードってありましたよね?」
「え? キーワード‥‥? そうですねぇ〜」
 助監督さん、いい人だ‥‥ しかし、芳乃は独特のペースで話す。
「『冒険』はぁ、水辺ですよねぇ? 水と汗でお洋服が濡れて少し透けてる感じがまたいいんですよぉ〜♪
 『アクション』は、高い場所で飛んだり撥ねたりするものがいいです。ローアングルなシーンがやりたいです。
 『正義感』は‥‥言うまでもなく、美少女モノにはお約束ですから♪」
「却下」
 ていうか『美少女モノ』ではな〜いという審査員たちの心の声を代弁するように監督が口を開いた‥‥

●NG集
「3番、お願いします」
 とんでもないものを見たお陰でTosiaki(fa2089)は逆にプレッシャーを感じてしまっていた。

 変なアレンジが入った『ユニコーンのメインテーマ』のインストで、雲一つない青空をバックに画面一杯に『冒険!』の文字。
 素早いパンダウンから断崖絶壁を登るエージェントのアップ。命綱丸見えで滑り落ちる‥‥
 ズームアウトから暗転‥‥ 密林の絵に『アクション!』の文字がカットイン。
 格闘する俳優の1人が足を滑らせ背中を打ち付け、転んだ共演者に手を差し伸べる役者。画面内の周囲から笑いが起きる‥‥ 
 カットが変わり、開いた脚本のアップに『正義感!』の文字。
 パンアップしてモニターを前に編集に追われるスタッフの後姿。フェードアウトする画面に『撮影快調!』の文字が浮かぶ‥‥

「以上の様にNG集的な構成で15秒尺を数パターン。30秒枠には2本を流します‥‥」
 説明し終えたトシの膝は初仕事で緊張しているのか微かに震えている‥‥ ニカッと歯を見せて監督が笑った。
「アドバイスだ。5秒尺と10秒尺のフィルムを15秒尺と30秒尺に組み合わせるのさ」
「そっか‥‥」
 トシは大きく頷いた。

●早口CM
「4番」
「あらあら。よろしくお願いいたしますわね」
 Chizuru(fa1737)はニコリと笑う。
「千鶴、企画会議というのは何度やっても緊張するものだな」
 ミハイル・チーグルスキ(fa1819)は小声で千鶴に話かけるとDVDで再生した。

 ユニコーン財団の看板のカットに番組のメインテーマとテロップが入る。
「ユニコーン、純潔と清浄と力を象徴する伝説の獣。そして現代、その名を冠する組織があった」
 中々に存在感のある千鶴の声に審査員たちが軽く頷く。
「ユニコーン財団。それは人道支援や動物保護を目的として設立された複合出資団体である。
 各地で起きる様々な問題。知らせを受けたユニコーン財団はただちに優秀なエージェントを派遣。事の解決に当たる」
 画面のユニコーンがエージェントに変わる。
「財団自慢のエージェントたち。彼らは幾多もの困難に敢然と立ち向かい悪党達には容赦無く正義の鉄槌を振り下ろす。用いる武器は磨かれた頭脳と卓越した技術、そして鍛え上げた己の肉体」
 その映像に各地での自然保護や悪党を捕まえるシーンなどが重ねられていく。
「不殺を旨とし、弱者を護り、自然と共に世界を駆ける。それが『冒険チーム・ユニコーン』! 只今絶賛冒険中!! ――ユニコーンは君の力を待っている!!」
 ユニコーンナイトのピースに『冒険チーム・ユニコーン』のロゴが重なった。

「コンセプトは『感情移入』。テレビの前の貴方もユニコーンのエージェントなのだと、そいういう感じにしていきたいと思っています」
 ミハイルは熱く語る。
「それはいいとして‥‥ 早口過ぎやしないか?」
 監督がジロッと2人を見つめる。
「それは‥‥」
「セリフの構成を変えます。短く完結に!」
 言葉を詰まらせた千鶴を救うように監督に食いつくミハイル。
「次だ。5番」
 監督はそれに何も答えずに、そう言った。

●押しが足りない?
 突然呼び出された風樹蒼護(fa0872)は深呼吸して動悸を抑える。
「グレートなやつを頼むぜ」
「任せてください」
 『冒険チーム・ユニコーン』の撮影に参加したことのある蒼護はキッパリと監督に言った。
「まずは森の中を駆け抜けていくエージェント。
 罠をかわし‥‥ 向かって来る敵を避けつつ、打ち倒しつつ‥‥ 疾風の如く自然の中を駆け抜ける‥‥」
 審査員に企画書を渡し、説明を始める。
「犬か猫を救い上げてカメラの前のチェス盤に角の生えたナイトの駒を置き‥‥ それがエンブレムに変わって、重なるように番組名が出る。こんな所でしょうか‥‥」
 簡単すぎる説明に審査員たちが呆気に取られている。
「もっと詳しく説明してくれるんだよな?」
 監督が呟いた。
「カメラレンズの周りに枝葉を付けることで、茂みから様子を覗いている雰囲気が出来るでしょう。エージェント役も敵役も数を絞って、全体的に駆け抜けるようなスピード感を出すようにするのが良いかと‥‥ 撮影時間と人件費も浮きますからね」
「それはただの演出だ」
 監督の厳しい言葉に耐えながら蒼護は説明を続けた。
「効果的に視聴者を引き付けるには‥‥ 主題を絞って分かりやすくインパクトを持たせることが鉄則。主題はアクションに絞るんです」
「そこまでだ。企画の練りこみが足らん。次はグレートなアイデアを用意するんだな」
 蒼護は静かに席に着くのだった‥‥

●渋い
「6番どうぞ」
 静かに腰を上げると羽織袴姿の弥栄三十朗(fa1323)は深々と頭を下げた。
 幾つかの舞台を手掛けて成功させた気鋭作家も畑違いのCM企画ではどうなることやら‥‥
「まずは30秒用から」
 企画書を渡し終わると立ち位置と間を考えて話し始める。
「ユニコーン用に撮影されたものではなく、ドキュメンタリー映像の中から心無いものたちに虐げられる動物達の映像などを抽出します」
 少し歩いて審査員たちに決めの視線を投げた。
「静かな音楽と共に断片的に切り取ったその映像の事実だけが持つ生の迫力で、視聴者に動物保護の重要さを植えつけ、最後にナレーションで『冒険チーム・ユニコーン』を視聴者に周知させます」
「で、15秒尺はどうするんだ?」
 監督に三十朗は同じく静かな口調で答えた。
「これまでに撮り溜めた『冒険チーム・ユニコーン』の映像から、人物が表に出てこないシーンを敢えて集め、視聴者側に想像の余地を与える造りにします。番組で使われたBGMのみを流し、敢えてナレーションも省きます。そして最後に『冒険チーム ユニコーン』のタイトル画面を映し、インパクトを与えます」
「雰囲気はいいが、キーワードが感じられないのがちょっとな‥‥」
 三十朗は深く礼をすると扇子を鳴らして席に戻った。

●発表
「該当なし。だた‥‥コンセプトの良かったChizuruとミハイル・チーグルスキのものを準採用とする」
 監督の言葉に合わせて助監督が2人に金一封を渡した。
「他の案にも見るべきところはあるんだがな‥‥」
 苦笑いする監督を見た参加者たちは更なる精進を決意するのだった‥‥