UMA カーバンクル南北アメリカ

種類 ショート
担当 シーダ
芸能 フリー
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/23〜01/27

●本文

■UMA目撃情報(New)
 額に宝石の輝く兎のような生物がアーカンソーのシートンで目撃された。
 伝説のカーバンクルという生き物であろうか。
 多くのUMA同好家がその姿を認めているが、捕らえるまでには至っていない。

 WEAアメリカ支部の一室で2人の男が見つめるパソコンの画面には、そのような文字が映っている。
「これって‥‥」
「あれかもな‥‥」
 この程度の記事ならば情報操作の必要もないだろう。面白がって、この手のアップをする者は多く、一々付き合っていては際限は無い。しかし、記事が本当で、衆人の耳目に晒されるようなことになれば、欺瞞に掛かる費用も馬鹿にはならない。
「しかし、多くの‥‥というのはな」
「この記事を書いた個人、あるいは書いた者たちを指すのか‥‥ 今のところ些細な記事だが‥‥」
「事前の調査は必要か‥‥」
 2人は小さく頷いた。

「ここに集まった君たちならば、この記事が何を意味するのかわかるだろう。まずは真偽を確かめてほしい」
 WEAのアメリカ支部に到着した君たちは、職員たちの説明を聞いてアーカンソーへ出発した。

●今回の参加者

 fa0027 せせらぎ 鉄騎(27歳・♂・竜)
 fa0204 天音(24歳・♀・鷹)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa0922 亀山 綾(18歳・♀・亀)
 fa2386 御影 瞬華(18歳・♂・鴉)
 fa2414 御神 悠(20歳・♀・一角獣)
 fa2429 ザジ・ザ・レティクル(13歳・♀・鴉)
 fa2579 藤岡・作治(45歳・♂・蛇)

●リプレイ本文

●接触
「UMAサークルの3人にアポが取れた」
 天音(fa0204)がパソコンの画面を見つめながら仲間を促す。
「にしてもWEAもケチだよな」
 画面を覗き込もうとしてシヴェル・マクスウェル(fa0898)の胸元で十字架が揺れる。
「旅にアクシデントは付き物。無事に目的地に着くことが肝心なんやて」
 旅慣れている亀山 綾(fa0922)にとって予定が未定なのは当たり前。予算に合わせた旅の計画を立てることなど日常茶飯事なので動じた様子は微塵もない。
「まぁ、オレっちが手伝うからよ。勘弁してやれよ。カーバンクルがいるかいないか確認するだけなんだから予算なんてあってないようなもんだしさ」
 さて、キャンピングカーの使用を申請したものの経費が掛かると却下された代わりに合流したのが、このロッドという男。勿論獣人である。彼はシートンに住む獣人で、自前の四駆車を出し、今回は土地の案内もしてくれるらしい。
「最悪のケース、ナイトウォーカーという可能性もあるわけだし、あんたが一緒なのは楽だけどさ」
 まぁ、そういう訳でもある。シヴェルは改めてモニターを見つめた。
「だよな。ロッドが無事で良かったよ。それでこの辺には他に獣人は住んでないのか?」
 せせらぎ 鉄騎(fa0027)がロッドの肩に手を置く。
「アーカンソーは広さの割りに人口は多くないからな。どうやらカーバンクルの目撃場所の近くは畑ばっかだし。ナイトウォーカーだとしても、とりあえず州都のリトルロックに近付かなければ大丈夫なんじゃねぇ?」
「それでは他に獣人はいないのですね?」
「ま、WEAが把握してる分にはな」
 御影 瞬華(fa2386)が胸を撫で下ろしている。
「結構暢気なのね」
 シートン入りしたときの農園風景を思い出して御神 悠(fa2414)は顔を綻ばせた。
「それよか、UMAとかって燃えるわよね〜♪ アタシも嫌いじゃないわ」
「ハハ、探検家魂が燃え上がるな。ちなみにカーバンクルというのは‥‥」
 ザジ・ザ・レティクル(fa2429)や藤岡・作治(fa2579)は、どちらかと言えばカーバンクルが実在してほしい派らしい。確かに、その方が浪漫があるが‥‥
「にしても‥‥ ある意味、俺達もUMAだからな。複雑な心境」
「そうですね」
 藤岡の薀蓄披露と同時進行で話し始めた鉄騎や悠たちが苦笑いを浮かべている。アーカンソーに伝わるUMA伝説の幾つかは獣人らしいぜとロッドから聞いているだけに‥‥ 確かに色んな意味で複雑な心境だ‥‥
「ハ、考えるとカーバンクルも、いい迷惑なのかもしれないな」
「まずは本当か嘘なのか、ナイトウォーカーなのかそうでないのか確かめるのが先じゃな」
 天音が鉄騎たちの遣り取りを遮ってモニターを指した。
「まぁ御給金が貰えればそれでオーライな訳ですが、俺は。生活掛かってるし」
「どんな形であれ、番組にはなるぞ。『シートンの謎のUMAを追う!!』というタイトルで撮ってみるか?」
 再び脱線しつつある鉄騎や藤岡たちを止めるでもなく、そういう路線が作戦の主軸になっていくのだが‥‥
 その危険性について予測している者は誰もいなかった‥‥

●UMAファン
「もしかするとあなたたちが?」
「そうだよ。やぁ、番組の取材だって?」
「そうなんや。取材に協力してくれるん?」
 待ち合わせの場所に現れたUMAファン3人に天音や亀山たちが取材を持ちかけるが、逆にどうやら取材に同行したいらしい。
 インターネットで情報を発信したのは彼ららしいのだが、鉄騎は彼らの姿に胡散臭さを感じている。それは同行している獣人たち全員に共通する認識でもあり、珍しいことでもあった。
「まるでフランケン、バンパイア、狼男だな」
 見た目で判断するのは悪いと思いながらもシヴェルたちは笑顔の裏で不信感を募らせていた。
「UMAはアタシも好きだけど、何か違うんだよね」
 同好の士だと信じて話をしていたザジまでも違和感を感じて僅かに首を振る。
「そう。熱き魂を感じない」
 ザジに続いて藤岡までもこう言うのだからそうなのかもしれない。
「取材に協力してくれると言っています。ただ、条件が」
「条件?」
「同行させてほしいみたいです。どうします?」
 UMAファンたちと先に接触していた御影が同意を求めているが、彼にしても乗り気にはなれないらしい。
「だがな。私たちは目撃地点を知らん。ロッドもホームページの画像だけじゃ場所を特定できないって言ってるしな」
「私にも教えてくれないですから目撃地点までは案内してもらわないと」
「なら迷う必要はないだろ?」
 双眼鏡片手に周囲を眺めていたシヴェルが苦笑いしている。
「鴉たちは見たことないって言ってた。やっぱり知ってる奴に聞くのが一番だね」
 事前に獣化して聞き込んでいたザジが御影に同意しているが、今のところ手掛かりはそれしかなく、従って一先ず彼らを信じるしかないのだった。

 そんなこんなでUMAファンたちとカーバンクルの目撃地点までやって来た藤岡たち。目撃地点は地域の主要道路沿いで、UMAの言い伝えを追って移動している途中で兎を危うく引きそうになってしまったのだと言う。
 引いてしまったか確認するために車を止めたところ、兎は無事で、兎の額に宝石のような物を認めて慌ててシャッターを切ったと興奮気味に話していた。
「ここに上半身を起こして、こっちを見てたんだ」
「それで慌ててカメラを持ってきて写真を撮ったら、こっちにバァッとな」
「そうなの。きっとフラッシュに驚いたのね」
 本当は目撃地点を教えてくれて、そのときの様子を教えてくれれば十分と思わなくもなかったが、情報収集のためと仕方なく素材撮影と称して彼らの様子を映している。
 WEAに提出する報告書にも使えるからという亀山の一言で何とか納得していたが、気の重い取材が早く終わらないかと何度も心の中で溜め息をつく一行なのであった。

●探索
 UMAファンたちの取材を終えた一行は、番組として画を使うときには連絡するからと彼らの連絡先を聞き出して別れた。
 地道に周辺への聞き込みをして目撃情報がないかあたるが、それらしい情報はない。
「次の仕事はない覚悟でやれ。それが芸能界さ」
 ともあれ、鉄騎などは特にスケジュールのギリのギリまで手を抜くつもりはないらしい。
 ロッドの家で情報交換をして気になったのは、たった1つ。可能性があるとしたら‥‥その程度のものであったが、調べないで帰るよりはマシだ。
「変わったことはなかったですか?」
「流れ旅の男が納屋でいいからって言うんで、暫く貸してやってたんだがな。何も言わずに旅に出ちまった。それにムカついた以外は平和なもんさ」
 目撃地である道路に面した農地に建つ1軒屋に農場主は、御影たちはWEAの身分証を見せて番組の撮影だと明かすと、そんな話をしていた。それで当たりがなければ『真偽不明ながら限りなくガセネタである』とでも報告しなければならないとこだ。
 そんな不安を胸に抱きながら御神たちは目的の納屋を訪れた。
「悪い予感が当たったみたいだ」
 シヴェルは床の上に広げられたままの本を拾って眉を顰めた。本を閉じて仲間に見せる。
 『伝説のモンスター 〜 闇に埋もれる生き物たち 〜』、ビッグフットやネッシーを始めとして伝説の魔物や妖精などが書かれたその本の近くには壊れたゲージがある。
「内側から壊されたみたいね」
 ザジは隅に壊れたゲージを調べながら納屋を見渡す。
「泥じゃないですよね。これ‥‥」
「こっちは骨の欠片か。ナイトウォーカーが獣人を捕食した跡なんだろうな」
 壁と土床の染みは恐らく血‥‥ ザジと鉄騎が深く息を吐いた。農場主は恐らく知らないのだろう。男がこうなったということを‥‥
「想像したくないわぁ」
 亀山が顔を逸らす。御神は涙で言葉も出ない。
「この辺なら戦いやすいとは思うけど‥‥」
 ザジは外の空気を吸いに納屋から出た。
「見つけて終わりにしないと‥‥」
 御影はCappelloM92を両手に構えて‥‥静かにしまう。
「伝説のカーバンクルも‥‥開けてみればナイトウォーカーか‥‥」
 呟く藤岡の携帯が鳴り始めた。

「来たようじゃ。ナイトウォーカーじゃないがのぅ」
 納屋の周囲を警戒するように見渡していた天音がシヴェルに双眼鏡を渡した。近付いてくるのは、あの3人組である。
「うわ‥‥ 撃退するわけにもいかないし。どうする?」
 すかさずシヴェルは携帯を鳴らす。
「ん‥‥ こっちはこっちで何とかする」
 シヴェルは何度か頷くと肩を竦めた。
「く、熊だぁ! 逃げろぉ!!」
 それから数分後、納屋に接近しようとしていたUMAファン3人組を完全獣化したシヴェルが追いかけていた。
 さて、撃退することに成功はしたものの‥‥
 こんなとこで熊が出るわけないだろと一笑にふされ、3人のUMAファンが農場主から法螺吹きのレッテルを張られた以外、とりあえず獣人たちにとって事もなげ。しかしながら、あんなところに熊が出るのは不可思議現象と目を光らせている3人組が居てやりにくかったと、情報工作に赴いたWEA関係者は漏らしていたという。