ストフェス 戦乙女製作南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
シーダ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
5.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/02〜03/11
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●本文
ハミルトンフィルム上映作品スターブラスターの販促イベントであるストームフェスタ。
各地でイベントショーなどが開催され始め、雑誌やTVなどへの露出も適度に行われており関連商品の売れ行きも悪くはない。とはいえ販促は効果的に行う必要がある。という訳で‥‥
「帝国軍のヴァルキュリアで外伝‥‥ よし、これでいこう」
そう言ってイメージイラストを描き始めたのはスターブラスターの監督を務めたジョーイ・ブラッドストン、その人だ。
彼はアメリカ映画監督ジョージ・ハミルトンにより設立された『ハミルトン・フィルム』に招き入れられた監督である。
ハミルトン・フィルムは所謂ハリウッド映画の重鎮であり、カリフォルニア州に大規模なスタジオをオープンし、SFX・CG・アクション系全般に強く、世界に通用するエンターティメント・メーカーとして絶大な影響力を誇っている‥‥と、知っている者も多いか。
ブラッドストンは口で効果音を付けながら、平手の人差し指と薬指を曲げて飛行機が飛ぶ様子を思い浮かべるように反転急上昇をさせた。ヴァルキュリアの形をしたそれは、頭上を越えながら逆光を受けている。
こうして数日後、スターブラスターの販促イベントの一環としてショートフィルムの製作とスポット上映が決定したのであった。
「ヒーホー」
「待たせたな!!」
ファンなら誰でも記憶にある超高速船セレニアムホークが小惑星要塞ヘルスターに突入する有名なシーン‥‥
特に艦隊戦の多いエピソード4・5・6では共和国側が勝利するシーンが多いため、共和国連邦軍に名シーンが多いのだが、銀河帝国軍メカの重厚な、あるいは流麗なフォルムはコアなファンを唸らせるに十分であり、特に可変翼戦闘機ヴァルキュリアの人気は高い。帝国メカを撃破するからこそ連邦軍のメカが格好良く見えるのだという声さえ聞こえる。
さて‥‥
今回のストームフェスタ・ショートフィルム上映作品の主役は、このヴァルキュリアである。
正式名称は銀河帝国軍主力戦闘機VF−109fヴァルキュリア。攻撃的なフォルムのリフティングボディが特徴的な、可変翼を持つ空間戦闘機である。
艦隊や要塞など配属によってカラーが統一されており、部隊によっては特殊な塗り分けになっている。エース機には専用カラーや特殊な装備が施されており、魅力的なキャラクターたちと相まってユーザーたちの想像力をかきたてるのに十分な魅力を有している。
それは、世界的にも技術が高いと有名な日本のモデラーたちの愛読書で、ヴァルキュリアに限定してユーザー独自の設定と模型の出来の両方を競うようなコンテストまで行われていることを見れば一目瞭然と言えるだろう。
「さぁて、今回君たちに集まってもらったのは他でもない!
宣材スチールに使うヴァルキュリアの模型を作ってもらおうと思ってね。
出来が良ければ、作品の素材に採用することもあるから腕試しだと思って頑張ってくれ。
え? 作品素材に採用されたら上映作品のロールにも名前が載るのかって? 勿論だよ。燃えてきたろ!!」
そう言ってブラッドストン監督自らプロットとエピソード4〜6で使われていた設定画を渡していく。
※ ※ ※
紛争が絶えない銀河では、議会や外交で銀河の平和を協議しようと貴族院と惑星連盟総会が画策し、尽力していた‥‥
しかし、一部の商船国家や傭兵軍団などの傀儡となった惑星代表により肩すかしやはぐらかしが横行しており、共和国連邦軍による紛争鎮静化すら争いを助長する張本人たちに利益を与えるだけにすぎない。
共和国連邦との決戦を控え、水面下で軍備を整えつつあった暗黒騎士団(後の銀河帝国)は、歴史の表舞台に現れる機会を虎視眈々と狙いながら息を潜めるのであった。
(以上、エピソード1〜3の既出設定)
来るべき決戦に備えて主力戦闘機の開発を行っていた暗黒騎士団の一部隊は辺境星域に展開していた。
様々なテストを行う彼らはスタンレーと呼ばれる宙域で不可思議な現象に巻き込まれるのだった‥‥
※ ※ ※
「話の時系列で言うとエピソード3の終わり。ジュダイスもサイも鬩(せめ)ぎあっていたころの話だね。
試作機運用部隊の機体設定で面白いアイデアがあれば言ってほしい。採用するかもしれないぞ♪」
かなりハイテンションな監督に、君たちは思わず笑うのだった。
●リプレイ本文
●糧
開発過程で消えた機体としてデルタ翼を持つヴァルキュリアのバリエーションをデザインしているのが弥生 飛鳥(fa3124)。しかし、箱組み積層削りだしという古典的なプラ板加工で製作しているため、かなり時間が掛かっていた。
「懐かしい方法であるな」
ゆらり。着流しの打掛に下駄を鳴らして乾隆之(fa2587)が作業状況を覘く。
「乾さん、もう完成したんですか?」
「いかにも」
乾は貰った設定画を元に、サイファイターにも搭載されているレーザーランス射出装置『ストラーレン・ランセ』、作品初登場となる銅鐸を象った兵器・ゼンブラスター『ローエングリン』が増設し、市販キットを改造してXVF−109fzを作り上げていた。ポリパテやバルサによる原型、レジンキャストによる複製など確かな工作力と塗装で完成度は高い。
「こういう細かい作業、好きなんだけど凝っちゃうから時間がかかるんだよね」
「時間が十分にあるのであれば拙者も凝った作業を全霊でするのだがな。ところで、この速度では間に合わないのではないかな?」
確かに弥生のスケジュールはテンパリ気味だった。
「勿論、工作をするのも仕上げるのも、おぬしの仕事であるが手を貸そう。いかがかな?」
箱組みや積層プラの接着作業など基本作業を乾に任せることで、弥生は成形作業に没頭することが可能になった。弥生のヴァルキュリアは、Me163コメートを髣髴とさせる平べったく少し横長なデザインだ。十字型に主機関が装備され、翼を後方に折り込む一風変わった形で、公開作品に登場するヴァルキュリアとは一線を画する。
「すごいな。これもヴァルキュリアかい?」
作業に集中していた弥生と乾が振り向くとブラッドストン監督が立っていた。
「ごめん。邪魔しちゃったかな?」
監督が苦笑いしている。
「光学迷彩塗料が塗られてて、ジャミングシステムも付いてるの」
「へぇ、コロイドミラージュみたいなもんか。演出を考えて設定すると面白いよ」
作成中の模型を眺めながら語る弥生の話を楽しそうに聞いて、あれこれとアドバイスする監督に乾は感心し、監督とジョージ・ハミルトンも昔はこんなことをしていたのかもなどと想像していた。
「最後は迷彩がはがれて残像効果で分身なんてしたら面白いかも」
作業合間の談義がクリエイターを育てる。乾はそんな言葉を思い出すのだった。
「へぇ、懐かしいことやってんな。俺も監督と一緒に作ったりしたっけ」
蒼風影姫(fa1710)は業を見に来たハミルトンフィルムの社員にラフ画を見せた。機体よりも大きな推進機関のユニットを背負い、プロペラントタンクを増設したヴァルキュリアだ。
「単体で光速航法が使え、母艦なしで強襲‥‥ ちょっと在り来たりか。プラスにそういう話があったっけ‥‥」
男はニヒヒと笑い、変な話をした代わりにアドバイスしてやるよと言った。木材と粘土で製作してみようと思っていると告げた影姫に、男は少し考え込んで日本アニメの宇宙戦艦を描いた。
「3次元的には矛盾してても最終的に2次元で見せる方法ってもあるもんさ」
「これって、どういう意味なんですか?」
「それを考えるのが経験値を稼ぐってことだな。ダヴィンチ以降の絵とか宗教建築なんかも立体表現の勉強になるぞ」
蒼風は首を傾げた。
一方で‥‥
「か〜、これまた懐かしいね」
誘導弾ラッチをターレットレーザーに変更し、発光ダイオードで光るようにしてある模型を見て、監督と社員の男が唸っている
「脚本家のミハイルです。今回は模型製作ですが、俳優としてもそこそこやっていますので機会あらばよろしくお願いいたします」
ミハイル・チーグルスキ(fa1819)、しっかり売り込みも忘れない。監督、社員の男と握手した。
「オリジナルデザインだね」
「どんな設定なんだい?」
監督も男も目をキラキラさせている‥‥
「今回は、あえて誘導弾を外しました。任務に応じてアタッチメントでパックを変える方式を試験している設定です」
機体の腹部にガトリングのようにレーザー砲身を束ねたパックが装備されるのだ。
「中性子爆弾ポッドとかあったりしてな」
「監督、マニアックですね」
2人の頭にはパロディが展開されているようだ。ミハイルは思わず苦笑いを浮かべた。
●オンナ同士
「結構時間掛かりましたね」
公開作品4〜6を見直して、味鋺味美(fa1774)と宮尾千夏(fa1861)は図面引きに取り掛かった。
「109sdサイレント、109fsブリッツって言うんですって」
「味美さん、女性同士タッグを組んで頑張りましょうね」
2機ともベースは劇場公開済みのヴァルキュリアだが、サイレントはウェポンラッチにEWACが増設され、ノーズ部分がタンデムになっており、指揮管制用のドロイドかコパイロットが搭乗する設定になっている。ブリッツは腹部後方にビームファランクスを装備、機体中央の左右に1基ずつハイパージャマーと光学迷彩用コンパイラのユニットが装着されている。
2人が選択したのが3Dデータを基に削り出して‥‥という方法だったのだが、最初の時間ロスとデータ入力の作業時間を考えると仕上げる時間があるかどうか‥‥ そんなとき、ブラッドストン監督が様子を見に来た。
「スタッフに無理言って頼んできたから原型はそれで作りなさい。このままでは期限内に出来上がらないよ」
暫く姿を消していた監督は、2人の手を引いて自分のスタジオスタッフに引き合わせた。
「私でも数日仕事だったんだから昼食ぐらい御馳走してよね」
彼女は軽く笑うと、このデータでいいの? と2人に確認して光硬化性樹脂を紫外線レーザーで積層硬化させ始めた。これを使えば期限内に完成するだろう。感謝の印に昼食を一緒して2人は原型を作業場に持ち帰った。
「もっと経験を積まないと駄目ね」
「そうよ〜。疲れはお肌の大敵。ほら、眼鏡を外すといいオンナなのに、隈なんか作っちゃって。せめて化粧で隠すくらいはしないと〜」
メイク道具を手際よく広げてミーシャ(fa2450)に、味美はされるがまま化粧されている。
「んふ、脚本家サン。いい男だけど釣れないんだもん。オンナ同士、仲良くやりましょ☆」
メイクが決まったとばかりに千夏にもウィンクを投げている。2人に申し出を断る勇気はなかった‥‥
それからは一気に作業を進み始めた。差し替え部分の原型の置き換えと工作を味美と千夏が担当し、ミーシャは表面処理に下地処理、黒立ち上げの拭き重ねでモールドを活かした塗装にしていく。
「目元を強調するアイシャドウの要領だもの。あたしのメイク術が活かせてると思うの☆」
サイレント、ブリッツの他にノーマルのヴァルキュリアとジムニー・ウィングのキットが、かなりの数できあがっていくのだった。
●浪漫♪
「ん〜、がんばった〜。夢中で作ってたら御飯食べるの忘れてたよ〜」
「お疲れさん」
ニモ・ニーノ(fa2996)は監督に差し出されたバーガーを口にした。
「時代がかってるけど、こういうの好きですね〜」
監督は作品の周りをグルグル回りながら熱心に見ている。
「ヴァルキュリア・カスタムだよ〜♪ まずは推進装置〜。大型ブースターを3個、三角に並べたの〜」
キットの外装部分をカットして大きなノズルやダクトが剥き出しで、二段可変翼が付いている。
「アハハ、すごい」
V字型に、広げた鳥の翼を逆に付けた感じの主翼が付いている。
「それにね、これはただの翼じゃないよ〜。大型の可変式の姿勢制御用ブースターなの。これで機動性と旋回性能ア〜ップ」
楽しそうに話すニモを見て監督が優しく笑う。
「後方向に噴射口集めて推進力アップ〜。それでね、二段目の可変翼は大きく前に動いて〜、一段目の翼とくっついて三角形の翼にへんし〜ん♪」
「これは? F1のノーズみたいなこれ」
「姿勢制御用ブースタ〜。舵みたいに動くんだよ〜」
キットのノーズに大きなT字型の翼が付いているのが印象的だ。
「これってビーム砲かい?」
「そ、戦艦の主砲くらい威力があるよ〜」
あまりの大きさに機体の先端よりも砲塔が出ていた。
「すっっごいピーキーだからエース専用機だよ〜☆ 一撃離脱戦法が得意なんだ〜」
「名前は考えてるの?」
「対艦強襲用高速ヴァルキュリア『ハンマーヘッド』ちゃん♪ ミッドナイトブルーの機体だよ〜」
大受けして笑いまくる監督に、ニモは首を傾げるのだった。
●発表
製作模型は『帝国の戦乙女』の公開会場に置かれる看板のスチールとして小さく掲載されることになった。蒼風製作の巡航ブースター装備型、弥生の重ヴァルキュリア。そして、味美と千夏が製作し、ミーシャが仕上げたサイレント、ブリッツ、ジムニー・ウィングもそうだ。
それはフィルム上映期間が終了すれば資料として少数が保管され、残りは撤去・廃棄される類のものだが、それでも監督から一定の完成度を認められたということだ。
そうそう、乾の109fzが市販キット改造の特集欄での作例、ニモの対艦強襲用高速ヴァルキュリア『ハンマーヘッド』とミハイルのレーザーポッド装備型も投稿特集の作品として上映パンフレット掲載されることとなった。