スタブラ トゥルネイ南北アメリカ

種類 ショート
担当 シーダ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 04/24〜04/28

●本文

「トラ、トラ、トラ。突入信号を受信」
 共和国連邦軍の兵士、アシガル・トルーパーがインカムを押さえながら指揮官に振り向いた。
「よし、降下を開始せよ」
 鉢金に菊の紋が刻まれた額当て、陣羽織風のマントを翻しながら、誇り高き獅子人・レオノス星人のジュダス・ナイトが仁王立ちでグンバイを振るうと、アステロイドベルトに隠れていた天馬級強襲揚陸艦の艦隊が惑星グラナダに降下していく。
「出る!」
 小型揚陸艇の降下を支援するためにハッチから連邦カラーのガン・ウィングが次々と発進するのと同時に、地表のプラントに一斉に明かりが点り、盛大に警報が鳴り始めた。
「コンバット・ピッチ! スクランブル!!」
 ブラックライトで照らされた格納庫を暗黒騎士団のブラックスーツが駆け抜け、黒塗りのガン・ウィングへと乗り込んで行く。彼らよりも早く、プラントのプラットフォームを飛び立つのはジュダス・ナイトと双極をなす暗黒の騎士・サイ‥‥ 濃紺の新鋭機ヴァルキュリアが矢のように連邦艦隊に突っ込んで行く。
「世界の流れに逆らう愚か者どもめ」
「くっ‥‥ 速い」
 ズドォゥム‥‥ ガンガンッ! パリィイン!!
「当艦、第3艦橋大破! 区画隔離!!」
「5番艦・開聞、被弾! フライホイール停止!! 落下速度を抑えられません」
 次々と凶報が舞い込む中、連邦艦隊の艦隊司令は微動だにしない。彼が命令変更を伝えない限りは艦隊が降下を止めることはない。
「降下地点進路、条件付クリア! 秒読み!!」
 カウントダウンが減り、連邦艦隊の多くが火を噴きながら高度を下げる。
「独鈷、発射せよ」
 天馬級強襲揚陸艦から対地弾頭弾が発射され、バリアの印を中和してトーチカにめり込み、あるいはその表面で弾かれて強烈な爆発を起こす。その爆煙に紛れて、小型揚陸艇が降下を開始した‥‥

 スターブラスター・エピソード2の途中にある地上戦シーンの冒頭を、観客たちは息を呑むように見つめる。ストームフェスタのイベント会場に集まるほどのファンならば何度も見返しているシーンだろうが、やはり大画面の迫力は一味違う。
 そして、彼らはこれから始まる激闘のことを全く知らない。それがイベントスタッフが『トゥルネイ』と呼んでいるショー。
 本来はテョスト(馬上槍試合)、ブーフルト(激突戦)、トゥルネイ(団体戦)と構成される中世騎士のトーナメントの一部であるのだが、それは置いておくとして‥‥
 スターブラスター世界のキャラクターに扮したスタッフが、会場中央の特設ジオラマに飛び込んで行く!!

●今回の参加者

 fa0345 ソル・ブライト(34歳・♂・獅子)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa2074 ハンマー・金剛(18歳・♂・獅子)
 fa2266 カリン・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa2738 (23歳・♀・猫)
 fa2772 仙道 愛歌(16歳・♀・狐)
 fa3014 ジョニー・マッスルマン(26歳・♂・一角獣)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)

●リプレイ本文

●プロローグ
『連邦艦隊は揚陸部隊の降下に成功した。しかし、それは暗黒騎士団陸戦部隊との激戦を意味していた‥‥』
 ナレーションの直後、白煙効果がスクリーンと特設ジオラマを覆い尽くした。トゥルネイの開催だ。
 一段高い岩の上で、ブレイズ=ドーン(役者:ソル・ブライト(fa0345))は重厚な全身鎧に身を包んで腕を組み、菊の紋の入ったマントを靡かせている。腰に下げているのはスターブラストセイバー。ジュダスナイトだ。
 出演者たちの武具は全てスタント用イミテーションかトイ。これから始まるチャンバラのための装備だ。
 彼の眼下を連邦兵が展開していく。そこへすれ違い様にアシガルトルーパーをアクスセイバーで斬り捨てた男が‥‥ 右肩に盾、左肩にスパイクという強化機動甲冑は赤く染め抜かれ、ヘルムの額には一角型の嚇しが付いている。赤い死神と仇名されるシャルル・アスラ(役者:ディノ・ストラーダ(fa0588))だ。
「これが暗黒騎士‥‥ サイ」
 トゥルネイでは主要出演スタッフ全員にマイクが仕込まれていた。ヘルムに、あるいは面頬に、襟元に付けられている者もおり、会話はオープンでスピーカーから観客が楽しむことができるようになっている。
 純白のブシアーマーの背部に父の作ったセイバーラッチを背負ったジュダスナイト、アミィ・レイラ(役者:仙道愛歌(fa2772))が、赤備えを野球の球でも打つように高出力セイバーで振りぬく。タイミングを合わせて体勢を崩した赤備えは地面に倒れこんだ。
 やがて、BGMの中に剣戟の音が混じる。それもそのはず、本気チャンバラなのだから。
「騎士の数が‥‥戦力の決定的な差でないことを‥‥教えてやる」
「赤いスーツ‥‥ シャルルかぁ!!」
 ジャッ‥‥ 効果音がミキサーで重ねられ、CGがない分の迫力を補っている。
「ええい、連邦のブシアーマーは化け物か‥‥」
「あたしが一番巧くブシアーマーを扱えるんだぁ!」
 シャルルが高出力セイバー・ホームランをユラリと身を屈めてかわすのを見て、観客がどよと騒いだ。

●乱戦
「あら、面白そうな事をやっているわね」
 のそり、のそりとジオラマに入場してきたのは眼帯を着けたサムライ星人、名もなき熊浪人(役者:天目一個(fa3453))。白の着物を着崩して、ワイン瓶をちびり‥‥ 鼻を鳴らした。
「私は静かなる花梨。そこのサムライ星人、戦の邪魔になります。お逃げなさい」
 女の能面を被った直衣姿の牛人、花梨(カリン・マーブル(fa2266))が、その側に近付いてくる。
「酒のつまみには丁度いいかしら」
「まさか、サイ‥‥」
 熊浪人のテッセンを間一髪かわすと、派手に壊れるように作られたセットの岩が吹き飛ぶ。能面がずれ、僅かに驚きの表情が覗くが、焦らず着け直してズサッと退く。
「楽しませてくれないのなら用はないよ」
 バッとテッセンを広げ、カタナを受けると要を引き抜いて投げた。花梨は、その一片を叩き落とす。
 熊浪人は落ちていた実剣を拾うと無造作に構えた。対する謎の女剣士、静かなる花梨は正眼。振りかぶった一撃を受けようとしたところへ銀の剣が割り込む。
「一騎打ちは勇ましいけど、あまり集中していると、側に敵が来ていることが分からないぜ」
 2人掛かりで受け、隙を突いて討ち込むが熊浪人は不敵に笑った。
「銀の長剣、助かります」
「バーでも一緒にいかが? そのあとは寝室に突撃ってわけ、いかないわな〜」
 連邦徽章を着けた剣士、セイ・フロート・グリーンリバー(役者:名無しの演技者(fa2582))は、能面の奥の冷たい視線に一人突っ込み。観客から笑いが漏れた。
 振り下ろされた剣が岩を砕き、破片が3人を襲う。それを気にも留めない様子で熊浪人は横薙ぎ。銀の剣で受け止めてセイは吹き飛ばされ、土煙が舞った。
「ま、これも戦場であったが運のなさ。負けないように、楽しませてもらうよ」
 セイは苦笑いを浮かべた。

●銀猫コール、Jコール
「連邦の銀猫エルクリウス、行くよ!」
 猫のしなやかな動きで両端が曲刀のようになった変形長刀で回転しながら斬りつけたり、足払いをしてエルクリウス(役者:晨(fa2738))は攻撃するが、手術で機械の体となったサイ、つまりサイボーグ(役者:ジョニー・マッスルマン(fa3014))の無駄のない動きに全て阻まれてしまう。
「こいつ、サイボーグなの? つ、強い‥‥」
 無言、無表情、無感情で躍るように反撃を始めたサイボーグにエルクリウスは追い詰められていく。
「コスモのダークサイドに身を委ねよ」
 抑揚のない声で宣告するサイボーグに、エルクリウスはセイバーの斬撃を加えるが、効いた様子はない。最初と最後の動きを遅くするロボットダンスの要領で首を巡らすと双頭のセイバーを振り下ろした。エルクリウスは転がって、右腕を庇うように顔を顰めた。
「エルクリウス〜、頑張れ〜!」
「サイボーグJ、連邦なんてやっつけちゃえ」
 エルクリウスとJの名が連呼され始めた。
 ユニコーンの角でエルクリウスを掬い上げるが、クルッと身を捻って際どいところで着地。手拍子が2人のチャンバラを熱のこもったものにしていく。上段を受け、身を引いて払いをかわす。エルクリウスの剣はサイボーグを捉えていくが、それ以上に討ちつけられていた。
「サイボーグめ! エルクリウス、今行くから持ちこたえて」
 雌熊人の姿をしたジュダスナイト、グレイス・フリーマン(役者:ティタネス(fa3251))が助けに入るが、双頭のセイバーがエルクリウスに突き立てられる。
「エルクリウス死すとも連邦は滅びず!」
 グレイスの加勢も敢え無く、連邦の銀猫は地に伏した。美しき暗黒騎士の強さに観客はヒートアップ。のそっとした動きから意外な俊敏さを発揮したグレイスは、サイボーグの攻撃を跳ねるようにかわした。どどっ、どどっと重量感を感じさせながら左右に方向転換してヒット&アウェイでセイバーを繰り出す。
(「潮時か?」)
 ジョニーは盛り上がりを重視してチャンバラ勝負を捨てた。グレイスに目配せすると、攻撃の途中で動きを止めてみせる。
「機械に頼り、ゼンの心を失った哀れな戦士よ! 安らかに眠るがいい!!」
 グレイスのベアクローが双頭のセイバーを弾き飛ばし、返す刃でサイボーグの体を薙ぎ払った。仰向きに倒れたサイボーグから花火の火が吹き上がり、撮影用の爆破が体から少し離れたところで起きる。俯瞰で眺めている観客からはサイボーグが爆発したように見えただろう。ぉおお、歓声が上がった。

●獅子の戦
「困るな。処刑道具を壊されちゃ」
 獅子人の暗黒騎士、金剛(役者:ハンマー・金剛(fa2074))のセイバー二刀流にグレイスは押されるばかり。砂塵を上げて割り込んだのはブレイズ。
「我は獅子人の武士、ブレイズ! 腕に覚えありし者は掛かってくるが良い!」
「一介の戦士と手合わせしてくれるとは光栄だね」
 金剛はショートセイバーを体の前に出し、ロングセイバーを顔の横に立てるように構えた。繰り出したショートセイバーを受けられた金剛は、上段を狙うと見せかけて、姿勢を低くした。一連の動作で繰り出された足払いをブレイズは手首の返しだけで受け流し、追撃のショートセイバーの突きまで裁いてみせた。
「やる‥‥」
「獅子の誇りを捨て暗黒に堕ちたか‥‥ 哀れな」
 金剛は遠い間合いでゆっくりと円移動。ブレイズも、それに合わせた。前転で飛び込み、起き上がり様に膝蹴り! 斜めタックルのカウンターで体勢を崩されたところを掴まれ、ブレイズは手首を捻りながら投げた。
「今この場にて、貴様の魂を解放してやろうぞ!」
「言ってろ」
 二刀流を封じるように密着した間合いにブレイズは持ち込む。
「せめて‥‥ 武人として眠るが良い」
 ショートセイバーの根元をその身に受けながら、ブレイズはセイバーを振りぬいた。金剛のロングセイバーが辛うじて間に合うが、受けたセイバーごと抜かれた。
「ちぃ!」
 アミィは高出力セイバーを振りかぶるが、シャルルの蹴り一閃で体勢を崩される。
「戦いは、常に二手三手先を読むものだよ」
 流石に疲れてきたのか動きに切れがない。これ以上は観客の集中も続かないだろう。プロデューサーからも『締め』の指示だ。
「お酒もなくなったし、今日はこれまでね」
 熊浪人はシャルルの肩を叩いて、瓶を振りながらジオラマを退場した。
「遊ばれた‥‥の?」
「生きていれば次があるさ」
 肩で息する静かなる花梨と銀の長剣が追おうとするのを、ブレイズが押し留める。剣戟が止んだ‥‥
「この場は退こう。連邦の白いブシアーマー。白い妖精と名乗るが良い」
 シャルルはマントを翻してアミィに言い放つと、舞台からハケて行く。
 アミィは、よろめき膝をつきながら、倒れているエルクリウスを抱き起こした。手足をダラリと垂らし、迫真の演技で首が力なく揺れた。
「帰還するぞ」
 ブレイズがアミィの肩に手を当てて言った。
「私には、まだ‥‥帰れる所があるんだ」
『戦争は多くのものを産み出す。死然り、恨み然り、悲しみもまた然り‥‥』
 アミィたちにスポットが当たり、ナレーションが流れた‥‥