WonderTalk〜天空大陸2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 11/09〜11/13

●本文

「ねえ、ケーナ。僕はいつも君を想ってる‥‥どうか早く、ここにたどり着いて‥‥」
 精霊大陸の守護幻獣の長の子・テラノーファ―― テラはオーブをみつめて願う。
 遠い過去、彼女を魔獣王らの魔の手から守る為に地上へ、そして時の聖獣の力を借りて未来へと飛ばしたのは彼だった。
 大切な少女を守る為には、時間が必要だったのだ。
 精霊にとっては一瞬の、人にとってはとても長い時間が。
 いま、大切な少女とその仲間達の手にはオーブの片割れがある。
 この二つが揃えば、魔獣王を封印し、世界を救うことが出来る。
 だが、テラはこの地から動くことは出来ない。
 この聖地からテラが動いてしまえば、天空大陸の均衡が崩れてしまうから。
 魔獣王もそのことには気づいているだろう。
 決して容易に彼女達がこの地へと赴くことが出来ない事もわかっている。
 沢山の血が流れることだろう。
 だが、彼女達がここに来ることが出来なければ地上は魔獣王の地となり、人々は永遠に安息を得ることは叶わない。
 だから、テラは願う。
「どうか、早くここへ‥‥ジュエルドラゴンの聖地へ、たどり着いて‥‥」
 オーブを抱きしめ、大切な少女に想いを馳せる。


「テラからの声、また途切れちゃった‥‥」
 テラの思う少女は、仲間の手にあるオーブをみつめ、呟く。
「でも、大体の事情はわかりました。このオーブをジュエルドラゴンの聖地に届けることが出来れば、魔獣王を封印することが出来るのですよね?」
「魔獣王がそれを簡単に許すとは思わないけど、な。いくしかないだろう」
 オーブは淡い光を放ち、ジュエルドラゴンの聖地を指し示す。
 
 ゆらり。

 聖地を目指し、廃墟から旅立つハンター達の背後に、蜃気楼が立ち込める。
 ハンター達の姿を模したそれは、ニヤリと口の端をゆがめるのだった。 
  

☆Wonder Talk出演者募集☆

 ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜天空大陸2』出演者募集です。
 剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、世界を救ってください。


☆モンスター情報☆
『ドッペルゲンガー』
 実体を持たないモンスターです。
 こちらの姿を映し、その能力さえもそっくりそのまま使用してきます。
 その為、写された相手同士で戦うのはあまり得策とはいえません。
 よくよく相性を見極めて戦ってください。
 ハンターの人数と同じ数だけ出現します。
   

☆選べる職業☆
 戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
 僧侶 :治癒魔法を得意としています。
 魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
 踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
 召喚士:精霊を召喚し、使役します。
 吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。 
 シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
 錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。

 なお、職業は参加者全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
 また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
 

☆テンプレート☆
 WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。

【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
   〜台詞例〜  
  【挨拶】「俺達が生まれ育った場所を、汚させはしない!」
  【戦闘開始】「おやまあ、喧嘩を売る相手を間違えたようだねえ♪」
  【必殺技使用時】「どうだい? この俺様の剣の切れ味は!!」
  【勝利時】「ひゃっほーい!」
 *台詞例はあくまで例です。色々台詞や設定追加推奨です。
           
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらこちらへ明記ください。


★重要★
 今回の設定では前回のシナリオ参加者様は天空大陸に最初からいます。
 その他の参加者様はギルドの受付嬢や精霊たちから緊急要請を受け、天空大陸へ赴いたことになります。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

●プロローグ
「パパみたく地上から移住する人昔からいた。力持つ人まだいる、大丈夫」
 地上へと向かう魔獣達を撃破したあと、幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))は廃墟の人々を見回して呟く。
 無気力で空ろな瞳の人々のなかに、巫女たるトール(トール・エル(fa0406))と吟遊詩人のケイ(氷咲 華唯(fa0142))、そしてもう一人のハンター達と共に廃墟の人々を守るのに協力した者たちがいたのだ。
 三人と彼らで街の人々を何とか守りきったらしいのだが‥‥。
「まぁ‥‥それで二人は何処へいかれたのでしょうか?」
 何もないところで転んで擦り傷をしていた戦士のヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))が廃墟の人々に尋ねる。
 ケイはその場にいたのだが、トールともう一人はなぜか姿が見えないのだ。
「あ、あのっ‥‥動かないで下さい〜」
 そんなヒカルの二の腕に包帯を巻いていた魔法使いのナツキ(夏姫・シュトラウス(fa0761))が、失敗して包帯を転がした。
 二人とも戦闘時とは違い、常時は結構不器用なようだ。
「面倒くさいな」
 シーフのスー(玖條 響(fa1276))は即座にそれを拾い、不器用なナツキを手伝う。
 トールがいればこんなかすり傷など即座に回復してもらえるのだが、姿が見えない。
「相変わらず器用だな」
 スーの手際よさに、同じシーフのユウ(蘇芳蒼緋(fa2044))は感心する。
 行方不明の神竜を探す為にずっと一人旅を続けていたスーは、簡単な応急手当ならお手の物だった。
「サクヤ、怪我はないか?」
「あまり私の為に無茶をしないでくれ‥‥」
 大剣を担ぐ獣人族の戦士・カイン(ヴォルフェ(fa0612))は相棒たる召喚士・サクヤ(橘・朔耶(fa0467))を心配し、サクヤもまた、傷だらけのカインの身体をみて色違いの双眸を曇らせる。
 もちろん、魔獣との戦いで負った傷は地上から派遣されたハンターに癒され、残るのは傷跡のみなのだが今までカインがサクヤの為に負った傷の数々を思うと胸が詰まるのだ。
(「地上に戻ったら仕事が山積みですね‥‥戻りたくないかも‥‥?」)
 黒翼の魔術師・セルム(相沢 セナ(fa2478))は愛用の分厚い眼鏡をかけなおし、心の中でそっと溜息をつく。
「俺の知ってる記憶とは随分と違う世界になってるな‥‥」
 その隣で、ケイがポツリと呟いた。
 ―― 天空大陸へは初めて来た筈なのに。 


●聖地を目指して
 廃墟を出て数日。
 ジュエルドラゴンの聖域を目指し、ハンター達はオーブの導きに従い旅を続けていた。
「トールさん、まだ会えない‥‥」
 ケーナが不安気に辺りを見回す。
 廃墟ではぐれてからずっと、聖域を目指しながら彼女を探したのだが、その姿を見つけることは出来なかった。
「あれ程神々に愛されている彼だから、そんなに心配はいらないと思うよ? それに第一、彼に何かあったら精霊達が伝えてくれると思う」
 ケーナの手を握り、サクヤはそう励ます。
 八百万の神々に仕えることができる実力者というのは、そうそういるものではない。
「キール伯父様が来たの、ケーナが生まれた頃。元々錬金術師、治癒薬研究の為に来た筈だった‥‥『彼が姫を見なければ』ってテラ言ってた‥‥優しい人だったのに」
 サクヤに頷きながら、ケーナは昔の事を口にする。
 深遠の魔術師と呼ばれ、魔獣王に仕えるようになった彼の本当の名はキール。
 ケーナの父親の義理の兄にあたる人物だ。
 彼と魔獣王により緑溢れる楽園は、廃墟と砂漠が広がる世界と成り果てた。
「‥‥囲まれましたね。成る程、私達は常に監視されているという事ですか」
 ゆらり。
 セルムの言葉に呼応するように、ハンター達の周囲に影が立ち込める。
 黒い影はニヤリと口の端を歪め、ハンター達の姿を模すのだった。 
 

●ドッペルゲンガー
「ドッペルゲンガー! 異界の魔、伯父様の本にあった!」
 ケーナが叫び、ハンター達は即座に戦闘態勢をとる!
「同じなんて‥‥気持ち悪いし‥‥面倒そうだ‥‥」
 心底嫌そうに眉を顰め、スーは短剣を構えて自分と同じ姿の敵を睨みつける。
「この顔を見るのは鏡の中だけで十分だ‥‥」
 同感とばかりに、スーの隣のユウも呟く。
「さて、面倒だな‥‥全て真似る事が出来るなら、もしかすると不味いかもな?」
 自分ではなく、サクヤを模写したそれを見て、カインはサクヤを背に庇う。
「最悪‥‥昔の自分を見ているみたい‥‥」
 相棒に庇われながら、サクヤは自分の足元が揺らぐのを感じる。
 自分を真似たであろうそれは、よりによって魔獣を従えていた。
 恐らく、その魔獣も本物ではなくドッペルゲンガーなのだろう。
 だがその姿はサクヤが魔獣使いとして生きていた過去を嫌でも突きつけられる。
 完全にハンター達の姿を模した敵は、じわじわと輪を狭めてくる。
「あらあら、ここまで同じでは、乱戦になったら見分けがつきませんねぇ」
 ヒカルが髪を解くと、敵も同じように解いた。
「そ、それならっ‥‥天にあまねく極光の帳、ブローディア!!!」
 目の前で仲間と同じ姿に変わったドッペルゲンガーに怯えながら、ナツキは仲間に防御結界を張る。
 ナツキの身体から迸る魔力は途切れることなくハンター達を包み込む。

『天にあまねく極光の帳、ブローディア!』

 そしてナツキを模写した敵が、同じように魔法を唱える。
 偽ナツキの力はナツキと同じなのだろう。
 偽のハンター達を一瞬にして七色の光が包み込む。
 だが、見た目は同じでも本物のナツキから出ている光を辿れば仲間たちの見分けはつく。
「わ、わたしは、もう何もできません、ごめんなさいっ‥‥」
「これで十分だ。そして偽物は偽物らしく引き下がれッ!」
 天空大陸に来てから安定しない魔力を総動員して結界を張るナツキにケイは微笑み、呪歌を奏でる。
 愛用のリュートはいつにも増して音色に深みを帯び、ケイの歌声が音波となって敵を切り刻む。
 そして全ての敵が襲い掛かってきた!
「自分で隙があること分かってないと思うわけ?」
 偽のスーの攻撃をあっさりと避け、スーはユウと背中を合わせる。
「いくら姿形を模倣できても所詮は偽物。本人が今まで生きて、培ってきた記憶や想い出までは真似できまい?」
 ユウはにやりと笑い、大剣を振りかざす偽カインの攻撃を捌く。
 本来なら偽の後衛陣を撃破したいところだが、ウェイト的に偽カインの相手を出来るのはユウぐらいだろう。
「ああ、わたしの背後にも隙はありませんよ?」
 動けないナツキを守っていたセルムは分厚い眼鏡を人差し指で上げ、いままさに背後からセルムを切り付けようとしていた偽のユウをシャドウドールでカウンターする。
 だが、自分の背後に分身を作り、カウンター攻撃をするシャドウドールが使えるのは一回の戦闘において一度きり。
 次に背後から狙われれば防げない。

『ライトアロー!』

 偽セルムが呪文を発動し、仲間達すべてを幾筋もの光の矢が貫いた。
「カイン!」
「大丈夫だ、慌てるな‥‥」
 サクヤを咄嗟に抱きしめ、光の矢から守りきったカインは片膝をつき、口の端から零れる血を腕で拭う。
 青灰色の獣毛が赤く染まったが、腕の中がサクヤが無事ならどんな傷も耐えられる。
「‥‥っ、我が声に応えろ、アルマ!」
 泣き叫びたい気持ちを抑えながら、サクヤは偽セルムを時の魔獣・アルマに攻撃させる。
 だがその攻撃は偽サクヤの魔獣によって止められた。
 偽サクヤの魔獣はアルマの前に成す術もなく崩れ落ちるが、偽セルムは無事だ。
 詠唱を始める姿を見、ケイは攻撃系の呪歌から防御系のそれへと変え、ナツキは遠のきそうな意識を精一杯耐えて仲間達の防御力を強める。

「アイスストーム」
『アイスストーム』

 そして偽セルムの魔法が発動した瞬間、本物のセルムの声が重なった。
 吹き荒れる極零の吹雪は相殺され、ハンターとドッペルゲンガーの前で消え去った。
 偽セルムの呪文詠唱を見、セルムは詠唱せずにアイスストームを発動させたのだ。
 ユウの言葉通り、偽物たちがいくら本物と同じ能力を持っていても、その能力を使いこなせなければ威力は知れたもの。
 咄嗟の判断力や経験は、ハンター達に利があった。
 だがハンター達の負傷率は既に高い。
 偽のケーナが呼び出す精霊はどこか歪で、けれど確実な悪意を持ってハンター達に攻撃を繰り出し続ける。
 一刻も早く敵の後衛術士たちを倒さねば勝機はなく、そして敵もそれをわかっているのか前衛を打ち崩すことが出来ない。 
 じわじわと時間ばかりが過ぎてゆき、ハンター達の力が損なわれてゆく。

『グ‥‥グワアアアアッ!』

 偽ナツキが叫び、その姿がおぞましい何かに変化していく。
「一体、アレは‥‥?!」
 ハンター達が驚く間もなく、偽ナツキは魔獣と化し、側にいた偽ケーナを噛み切った。
 ドッペルゲンガーたちにも何が起こったのかわからないのだろう、魔獣と化した偽ナツキから咄嗟に離れる。
(「‥‥私に流れる血まで写し取ってしまったのですね‥‥やはり私は‥‥」)
 ただ一人、何が起こったのかを正確に理解しているのはナツキだった。
 彼女の中に眠る魔獣の血は、彼女の師匠たる人物に封印してもらっている。
 何時も持ち歩いている魔導書と身につけている眼鏡はその封印をより一層強める為のもの。
 だが彼女の意識もそろそろ限界だった。
 魔力が安定しないいま、意識を失ったら‥‥。
 ナツキは目の前で暴れる偽ナツキを、暴走した場合の自分の未来を涙と共にみつめる。
 その瞬間、ハンター達の身体に癒しの光が降り注いだ。
「あら、皆様大変そうですわね。でもわたくしが来たからには、もう勝利は完璧でしてよ。おーっほっほっほっほっほ!」
「トールさん!」
 トールの舞いでハンター達の傷は見る間に回復し、身体中に力が漲ってゆく。

『『絶・炎獄殺!』』
「その技の欠点、教えてやるよ」

 偽のスーと偽のユーが合体技を繰り出すが、スーがあっさりとそれを打ち破る。
 自分たちの弱点は、きっちりと熟知しているのだ。
 連携技の弱点とて例外ではない。
 もっとも、戦闘中にそれを語ったりはしなかったが。

「今の時点での自分の技をコピーするというのでしたら、いま考えた新しい技を出すとどうなるんでしょうかねぇ?」
 おっとりと呟き、ヒカルは精神を集中させる。
 ヒカルの身体から立ち上るオーラは彼女の金髪をなびかせる。
「光皇剣牙斬!」
 彼女の必殺技が発動し、敵の前衛が一気に吹っ飛んだ。
「おっほっほ! わたくしこんなに醜くありませんわよ。それに、想いなく戦う事がどれほど弱いかわからせてさしあげますわ」
 遅れてきたトールすらも模写したドッペルゲンガーに、トールは高笑いと共に神の威光を発動し、その両手に漆黒の剣を作り出す。
 巫女にして踊り子でもあるその身軽な剣裁きは迷うことなく偽トールの身体を貫いた。
「熾火を纏う我が愛しき獣よ、悪しき者達へ制裁を与えよ」
 前衛がヒカルにより倒されたいま、がら空きとなった後衛をサクヤの炎の精霊が全てを焼き尽くす。
 

●エピローグ
「ここは空の上というだけで、天国にはほど遠いですわね」
 なぜか廃墟から行方が知れなくなっていたトールは、高い空を見上げて唇を尖らす。
 ずっと口数の少なかったセルムは、懐から取り出した思い出の品を握り、兄を思う。
「‥‥ディアードは何故これを私に‥‥何故‥‥」
 自分を模したドッペルゲンガーは、そのまま双子の兄をセルムに思い起こさせた。
「何? ‥‥王都が!?」
 ケーナが精霊から伝えられた情報に青ざめる。
 それは、王都レザラディカはもちろんのこと、地上が襲撃にあっているという事実。
「オーブはまだ光ってるな? なら、先に進むしかないだろう」
 ケイが淡い光を放ち、聖域への道を指し示すオーブに目を細める。
「‥‥やっと手に入れた。自由に動ける身体を‥‥ね」
 小さなその呟きは、誰にも聞き取ることが出来なかった。