WonderTalk〜天空大陸3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 11/23〜11/27

●本文

 ジュエルドラゴンの聖地を求めて、オーブの導きにより天空大陸を旅し続けるハンター達は、砂漠に立ち込める霧に眉を顰める。
「おいおい、またあの敵か?」
 自分達の姿や能力をそのまま模した敵を打ち破ったのはつい先日のこと。
 立ち込める霧は、嫌でもその姿をハンター達に思い起こさせる。
「あら、街がありましてよ?」
 高飛車な巫女が霧の奥に見える街に目を見開く。
 地上の砂漠のオアシス・グラを思わせる活気のあるその街では、人々がごく普通に暮らしていた。
「これは一体‥‥?」
 廃墟にいた人々とはまったく違う、生気あふれるその光景にハンター達は戸惑いを隠せない。
「さあさあ、安いよ安いよ! 新鮮なドミオンフルーツはいかが? 蛇サソリの燻製もあるよー!」
 恰幅のいい女性のその声に、ハンター達のお腹がくうっと鳴った。
「何はともあれ、腹ごしらえですかねぇ?」
「それに、暖かい宿もよいですね」
 天空大陸を彷徨うハンター達は、野宿の日々だった。
 歩き通しの足は既に棒のようであり、ゆっくりと休める場所もほしかった。
 地上の通貨が通用するかどうかは不明だが、まずは交渉とばかりにハンター達は霧の中の街で一時の休息を求めるのだった。

 ―― 夢を奪われるとも知らずに‥‥。

 ☆Wonder Talk出演者募集☆

 ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜天空大陸3』出演者募集です。
 剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、世界を救ってください。


☆モンスター情報☆
『ナイトメア』
 夢を食う魔獣です。
 夢を全て奪われたものは無気力となり、何もする気が起きません。
 また、目的も見失ってしまうでしょう。
 甘言を得意とし、精神に作用する魔法を使用します。
 油断すれば希望を奪われ、夢は悪夢へと成り果てるでしょう。
  

☆選べる職業☆
 戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
 僧侶 :治癒魔法を得意としています。
 魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
 踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
 召喚士:精霊を召喚し、使役します。
 吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。 
 シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
 錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。

 なお、職業は参加者全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
 また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
 

☆テンプレート☆
 WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。

【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
   〜台詞例〜  
  【挨拶】「随分上手そうな料理だねぇ」
  【戦闘開始】「こんなことだと思ったぜ!」
  【必殺技使用時】「くっ、中々手ごわいじゃないか!」
  【勝利時】「あたくしたちに挑むなんて、100万年早くてよ!」
 *台詞例はあくまで例です。色々台詞や設定追加推奨です。
           
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらこちらへ明記ください。


★重要★
 今回の設定では前回、前々回のシナリオ参加者様は天空大陸に最初からいます。
 その他の参加者様はギルドの受付嬢や精霊たちから緊急要請を受け、天空大陸へ赴いたことになります。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0467 橘・朔耶(20歳・♀・虎)
 fa0612 ヴォルフェ(28歳・♂・狼)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1299 春日 春菜(16歳・♀・虎)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa5030 ルナティア(17歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

●プロローグ
「いい加減、私を天空大陸に行かせてよ!」
 ダンッ!
 先日、見事王都を救ったハンターの一人・シーフのフィオナ(ルナティア(fa5030))は ハンターギルドの机をぶっ叩く。
「ん〜? そんな風に怒鳴り散らさなくても道はつながってるわよん? ほら、あ・そ・こ♪」
 怒り狂うフィオナにギルドの眠たげな受付嬢は、相変わらずマイペースに反応を返す。
 受付嬢の指す方向には転移門があり、そこには王国魔導師団の魔術師達が佇んでいた。
「ちょっとちょっと、あいつ等が動けるんなら最初っからそうしてくれれば良かったじゃない!」
「まぁそれはそれ、これはこれ? 王都にも強固な結界が張り巡らせたしぃ、さくっと天空大陸にいってきてちょーだい?」
 怒鳴りつけようとなんだろうと態度を改めない受付嬢にフィオナは盛大に溜息をつき、転移門へと足を踏み入れる。
「ご一緒させてもらうね‥‥?」
 その隣に、召喚士・ヴェーナル(春日 春菜(fa1299))が並ぶ。
 二人を、溢れる光が包み込んだ。  


●謎の町
「あれ‥‥なんでここに集落があるんだ‥‥?」
 天空大陸にて砂漠を彷徨うハンター達の前に、霧とともに現れた謎の町。
 その町を見て、召喚士にして元・魔獣使いのサクヤ(橘・朔耶(fa0467))は首を傾げる。
「こんなところに街なんかあったか‥‥?」
「こんなところに街、だと‥‥?」
 吟遊詩人・ケイの身体を乗っ取った存在(氷咲 華唯(fa0142))とシーフのユウ(蘇芳蒼緋(fa2044))はほぼ同じ言葉を口にする。
 ユウはいままでの経験から、そしてケイでありケイでない何かはこの地に居た頃の記憶からこの町の不自然さを感じていた。
 魔獣王の影響により荒廃した天空大陸に、こんなにも活気のある町が残されているのは余りにも不自然だった。
「多少は疑惑があるのは仕方ないだろうが、今はゆっくり休んで一度今後の対策を考えた方がよさそうだな」
 だが、獣人族の戦士・カイン(ヴォルフェ(fa0612))は不信感を露わにする仲間達にそう言い切る。
 カインの腕には先日からずっと眠り続ける少女が抱かれている。
 少女が精霊の血を引いているおかげか、ここまで食事を取らずとも衰弱した様子はなく、だがずっと目覚めない。
 野宿続きで、仲間たちの疲労は巫女たるトール(トール・エル(fa0406))が常に回復しながらここまで来たが、多少怪しくとも宿で休むことが出来るならというカインの提案はもっともだった。
(「‥‥この街の人々からは生気を感じません。‥‥油断は禁物でしょう」)
 黒翼の魔術師・セルム(相沢 セナ(fa2478))はトレードマークの分厚い眼鏡を中指で押し上げる。
「まぁまぁ、色々な食材も売っているようですねぇ」
 お料理上手な軽戦士のヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))は、地上のように豊富に売られる食材にほんわかと微笑む。
 そして魔法使いのナツキ(夏姫・シュトラウス(fa0761))は安定しない力の原因を想い、そっと自らを抱きしめながら不安げに周囲を見渡した。


●宿
「中々にきれいな宿ですこと。お風呂にでも入りたいですわ」
 結っていた豪奢な金髪を振り解き、トールはそんな怖い発言をする。
「気持ちはよくわかるけれど、この宿ではやめておいたほうが良さそうだね」
 サクヤも長い銀髪の毛先をじっと見つめる。
 野宿を繰り返し、砂漠を彷徨っていた間に随分と髪も痛んでいた。
「わ、私、少し外を見てきます‥‥」
 ずっと不安気にしていたナツキは、宿についてからもやはり落ち着かない。
 ヒカルの和えたサラダをほんの少し口にして席を立つ。
「あらあら、お口に合いませんでしたか?」
「ち、違うんです‥‥食欲が、なくて‥‥」
 小首を傾げるヒカルに、ナツキは慌てて首を振る。
 その顔色は真っ青だ。
「顔色が悪いわね? 踊って差し上げましてよ」
 トールがケイに合図を送り、ぱっと巫女服の裾を払う。
 ケイの奏でる曲に合わせ、勾玉に加工した魔導石の力で増幅されたトールの天の癒しがその場に居たすべてのハンター達の身体を癒してゆく。
 トールが舞い終えた時、ナツキの表情は大分和らいでいた。
「もう日も暮れる。外へ行くなら、早めに戻って来い」
 カインが窓の外を顎で指す。
 日はもう半分落ちかけ、夜はもうすぐそこまで迫っていた。 


●夢
 夜。
 それは、ゆっくりとハンター達の上に陰を落とす。
『砂漠で眠る』ハンター達は、それに気づかない。
 黒い影はハンター達に重なるようにその身体を、夢を操ってゆく。


「お前にまた、会う事になるとはな‥‥」
 カインは懐かしい思いで目の前の青年をみつめる。
 彼とはもう、ずっと会っていない。
 いや、会えないと言うべきか。
 カインの兄弟弟子であり、ただ一人主人として仕えた程の親友以上に信頼する相手は、もうこの世に存在してはいないのだから。
 だから彼に会えるのは夢の中だけだ。
 その夢ですら、彼を失ったあの日からずっと見ていなかったというのに‥‥。
 カインに向かって微笑む彼は、以前と少しも変わらない。
 これから自分の身に何が起こるのかも知らずに、カインに優しい笑みを向けている。
 その彼が、不意に目を見開く。
(「ああ、これは、あの日の‥‥っ!」)
 目を背けたくとも、出来ない。
 彼はカインの目の前で何者かに切り刻まれてゆく。
 助けようともがいても身体が動かない。
 声もでない。
 彼の慈愛に満ちた笑みが苦痛に歪み、最後の叫びが耳にこだまする。
(「よせ、やめろ、やめろーーーーーーーーーーーー!」)
 彼の叫びとカインの叫びが重なった。
 

 どうしてわたくしは男性なのかしら?
 幼いトールは磨き上げられた銅鏡を見つめ、呟く。
(「まあ、懐かしい記憶ですこと」)
 久しぶりに見た過去の記憶に、トールはそんな事を思う。
 幼い自分には、わからなかったのだ。
 女性と男性の違いが。
 もちろん、性別の意味はわかっている。
 だが、父がなぜ巫女を望むのか、男の自分ではいけないのか、わからなかった。
「トールが女子であったなら‥‥」
 隣の部屋から、父の声が漏れる。
 幼いトールは、銅鏡を見詰めたまま唇を噛み締める。
(「わたくしとて、好きで男性に生まれた訳ではありませんのに」)
 髪を伸ばし、肌を手入れし、並の女性を遙かに凌駕する美貌を誇っても、トールは男性。
 それは、変えようのない事実。
 でも‥‥。
「いつか必ず、女性になって見せますわよ。わたくしに不可能などありませんわ。おーっほっほっほっほっほ!」
 夢の中の幼いトールに、いまのトールが高らかに笑う。
 割れる銅鏡とともに、幼いトールも掻き消えた。


 伝説の吟遊詩人。
 それが、ケイの憧れだった。
 誰もが知る冒険譚から少女の淡い初恋まで、ありとあらゆる詩を奏で曲を作り、いつか伝説として語り継がれるような歌を作ること。
 リュートを爪弾き、楽譜に曲を起こしてゆく作業は楽しく、ケイの心を弾ませる。
「‥‥?」
 ピンッ!
 リュートの音色が変わる。
 ピン‥‥ピッ!
 驚くケイの手元で、リュートの弦が次々と切れてゆく。
 弦を張りなおすたびに切れ、音色は途切れて歌えなくなる。
「そんな、僕の夢が‥‥っ」
 絶望しそうになるケイの手を、そっと誰かが握る。
 はっとして振り向くと、そこにはケイに良く似た人物が佇んでいた。
「少しの間、借りるよ。君にこの場所は辛すぎる」
 ケイが口を開くより先に、ケイに良く似た人物はケイに手をかざす。
 ケイの心に安心感と暖かさが広がり、ケイは夢の中でさらに深い眠りにつく。
「これは、ナイトメアの仕業だな。ケイの心は守れたが‥‥」
 ケイの身体を借りる存在は、ゆっくりと現実の目を見開く。


●ナイトメア
「寝坊助達、とっくに朝は過ぎてるんだから起きなさい!」
 フィオナが大声でみんなを叩き起こす。
 悪夢に魅入られていたハンター達は、その声で現実に引き戻された。
「楽園かと思ったけどそうでもないのね。‥‥小さな輝きが現実に導くの‥‥夢の蜃気楼は崩れて、光射す」
 ヴェーナルの呪文が幻惑されるハンター達の術を解く。
「やはり、ここに町などなかったのですね」 
 セルムは一体どんな夢を見せられたのだろう?
 その分厚い眼鏡に隠された表情は常と変わらない。
 けれどその身に纏う気配は微妙に揺らいでいた。
「サクヤ‥‥」
「心配するな。悪夢ならいつだって見慣れてる。俺にはもう、まともな夢はないんだよ‥‥あの時からずっと」
 羽の生えた黒猫を思わせる闇の精霊を召喚し、サクヤはカインを見つめる。
 その目に涙は浮かんでいなかった。
 家族を目の前で殺されたあの日に、涙は枯れ尽くしたから。
「こいつのおかげ、か?」
 仲間たちの反応から、何かがあった事を感じ取ったユウだが、何があったのかは正確にはわからない。
 なぜなら彼は夢を見なかったのだ。
 いや、正確にいえば夢は見ていた。
 だが、常に身につけていた魔導石が夢の中でも胸を温め、ユウは惑わされずに済んだのだ。
「ナツキ?!」
 ゆらり。
 ナツキが立ち上がる。
 その周囲には瞬時に魔法陣が発動し、隠れた敵の姿を映し出す。
「ナツキさん、一体何が‥‥っ?!」
 ザシュッ!
 ヒカルが駆け寄るよりも早く、ナツキの手刀がナイトメアの身体を貫いた。
 一瞬の出来事だった。
【‥‥永遠に満たされぬ渇きを癒す為の糧となるがいい】
 ナツキとは思えない冷たい声がその口から零れ、迸るナイトメアの魔力を吸収する。
 金色の髪は漆黒へと変容し、砂と化し崩れ落ちるナイトメアとともにナツキはその場に倒れ伏した。
「これが敵‥‥? でも‥‥」
 ヴェーナルは砂と化したナイトメアをその手に触れ、ヒカルとトールに抱きかかえられるナツキに口を噤む。
 夜が明けてゆく。 


●エピローグ
「ケーナの為にも早く聖地へ行きたいわ。エルティナにもまだ会えないし‥‥もうもう、色々ありすぎて混乱してくるわ!」
 フィオナは苛立たしげにナイフを弄ぶ。
 地上で集めた情報も伝えきれないし、天空大陸で起こった出来事もいろいろあり過ぎる。
 双子の片割れはナイトメアが倒れても現れないし、ケーナはカインの腕の中で眠り続けたままだ。
 ナイトメアの影響ではないだけに、敵を倒しても目覚めはしなかったのだ。
 これではフィオナでなくとも苛立つだろう。
「‥‥? その声は‥‥リルム? リルムではないですか?」
 不意に物陰から聞こえた涙声に、セルムははっとする。
 そこには、蜻蛉を思わせる透き通った羽を持った小さな妖精がうずくまっていた。
『セルムさま? セルムさまに会えたですぅ、嬉しいです〜っ!』
 羽妖精・リルムは見知った声にぱっと顔を輝かせ、セルムの肩に飛び乗った。
「あぁ、やはり。シレーネと一緒ではなかったのですか?!」
『ごめんなさい〜。エテルノではぐれちゃいました〜‥‥うぅっ、シレーネさまぁっ』
「はぐれたって‥‥」
『ひ、一人はイヤです〜』
 ひしっ。
 よほど一人で心細かったのだろう。
 リルムはセルムの首にしがみ付いて離れない。
「変わった知り合いがいますのね」
 トールはえぐえぐと泣く妖精に動じる様子もなく、「わたくしとどっちが美しいかしら」などと呟いている。
(「アレを見つけるのに邪魔にはならないだろうな? いや、むしろ必要な存在かもしれないな‥‥」)
 ケイの身体を借り続ける存在は、リルムをそう判断し、
「セルムさんの知り合いなら、危険はなさそうだね」
 謎の声に即座に戦闘態勢をとっていたサクヤは苦笑する。

 その直後、オーブが光り輝き、ハンター達の脳裏にテラの声が響くのだった。