WonderTalk〜天空大陸4アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
3.2万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/07〜12/11
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●本文
その先には、何があるというのか‥‥。
「この砂漠も、魔獣王の影響でしょうね‥‥」
聖地を求めて砂漠を彷徨うハンターは、分厚い眼鏡を人差し指で押し上げる。
「ケーナもまだ眠ったままだし、オーブの指し示す方角は本当にあっているの?!」
屈強な戦士の腕の中で眠り続ける少女を見て、高飛車な美女も溜息をつく。
と、そのとき、ハンター達を聖地へと導いていたオーブから声が響いた。
『急いで‥‥急いで、ケーナをここに‥‥魔獣王が‥‥侵略‥‥早く、ここへっ‥‥!!』
「この声は、テラか? くそっ、聞き取れない!」
「まあまあ‥‥侵略って、地上でしょうか。それとも聖地でしょうか‥‥?」
「うわっ?!」
オーブに耳を近づけていたハンターも、聞き取れた内容を吟味する女性も、一様に目を見張る。
ずっと淡い光を放ち、聖地への道を指し示していたオーブが閃光を放ったのだ。
「もしや‥‥聖地への道とは、最初からここに‥‥?」
オーブの中を、ハンター達はみつめる。
その光り輝く向こう側には、緑水晶で作られた街が微かに見える。
「で、でも‥‥理論的に考えて、こ、こんな中に街があるはずがありません‥‥」
「これは鍵だろうな。光が強くなった事を考えると、この場所の近くに転移門みたいに転移できる何かがあるんじゃないか?」
「ふむ‥‥。天空大陸であって天空大陸ではない場所、ということか? もっとも、普通に歩いていかれる場所ならいままで魔獣王が手出しをしないはずもないだろうしな」
ハンター達は周囲を見渡す。
果たして、聖地への道はいま、開かれるのだろうか?
眼鏡をかけなおすハンターの肩の上の妖精が、不安げにしがみ付く。
『んとんとぉ、リルム、気になることがあるのぉ‥‥』
悩むハンター達に、妖精は自信なさ気におずおずと口を開く。
『創霊の泉エテルノ、きっと砂漠の地下にあるの〜。シレーネ様とはぐれてしまったのも、エテルノが転移したせいなのぉ! エテルノは聖地の泉とも繋がっていて、オーブがあればきっと、転移できると思うですぅ。でもでもぉ、リルムの力じゃ地下に潜るのは無理なの‥‥ごめんなさい〜』
えぐえぐと泣きじゃくる妖精に、ハンター達は礼を言う。
「それだけわかれば十分です。地下に潜る方法を探しましょう。アリ地獄でもあれば、そこから地下へいけそうな気もするのですが‥‥」
ハンター達はエテルノから聖地に向かうべく、砂漠の地下を模索するのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜天空大陸4』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、世界を救ってください。
☆モンスター情報☆
『アントリオン』
いわゆるアリジゴクです。
数体おり、砂漠に潜んでいます。
主に巣穴に落ちてきた獲物を食します。
また、巣の中から獲物に砂をかけて巣へ落とすこともあるようです。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
☆テンプレート☆
WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。
【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
〜台詞例〜
【挨拶】「随分上手そうな料理だねぇ」
【戦闘開始】「こんなことだと思ったぜ!」
【必殺技使用時】「くっ、中々手ごわいじゃないか!」
【勝利時】「あたくしたちに挑むなんて、100万年早くてよ!」
*台詞例はあくまで例です。色々台詞や設定追加推奨です。
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらこちらへ明記ください。
★重要★
前回までのシナリオ参加者様は天空大陸に最初からいます。
その他の参加者様はギルドの受付嬢や精霊たちから緊急要請を受け、天空大陸へ赴いたことになります。
●リプレイ本文
●地下への入口
「地下って位だから少しは暑さもマシかと思うけど‥‥」
召喚士・サクヤ(橘・朔耶(fa0467))は相棒に預けられた幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))の額を撫でる。
「ケーナは起きないし、ナツキも倒れたままだし、獣人のおっさんはいなくなるし‥‥何考えてんのよ、あの親父は?!」
シーフのフィオナ(ルナティア(fa5030))は苛立たしげに唇をかむ。
双子の妹で吟遊詩人でもあるエルティナ(エルティナ(fa0595))に会えないこともその苛立ちの原因だった。
「全く、地下っていったらここは空の上なのですから、地上に落ちるんじゃないですの?」
八百万の神々に仕える巫女・トール(トール・エル(fa0406))はもっともな事を妖精・リルムに尋ねる。
リルムが言うには、ハンター達が目指す聖地にはエテルノと呼ばれる創霊の泉から転移できるようなのだが‥‥。
尋ねられたリルムは「空の上?」と小首を傾げ、「でもでもぉ、地下なのぉ!」と黒翼の魔術師・セルム(相沢 セナ(fa2478))の肩の上で涙ぐんだ。
「なあ? こいつ拾ったんだけど」
「よかった〜! 皆にやっと会えた〜!」
ばーん☆
そんな効果音がしそうなほど勢いよく黒髪の少女がフィオナに飛びつく。
「ちょっ、エルティナ?!」
フィオナは咄嗟に抱きとめてよろけ、さらによろけたフィオナとエルティナをシーフのユウ(蘇芳蒼緋(fa2044))が支える。
「何処へ行っていた?」
少女たちの肩越しに、エルティナを拾ったというシーフであり神竜の後継者・スー(玖條 響(fa1276))に尋ねる。
そもそもユウがこの天空大陸に渡ってきたのは、スーが心配だったからだ。
「‥‥説明面倒‥‥でも気のせいだったみたいだし」
気のせい、といいつつスーの表情はすっきりとしない。
神竜の後継者として行方知れずの神竜を探しているのだが、この大陸でその気配を感じていたのだ。
だからその気配を辿ってみたのだがいかんせん、途中でぷつりと途切れてしまった。
(「何だか‥‥意図的に隠された気がするけど‥‥」)
「そうか。それはそうと、ありがとな」
「‥‥?」
『面倒』というスーのお決まりの口癖に苦笑して、ユウはスーの首に魔導石で作ったペンダントを有無を言わさずかける。
「こいつのお陰でこの前は助かったみたいだ。さて‥‥俺は前回護ってもらったし、今回はお前が持ってろよ? 大切に思ってるのはお前だけじゃないんだからな‥‥」
『大切に思っている』といわれ、つき返そうとしていたスーは赤面してそっぽを向いた。
「また迷子ですって?! いい年して何やってんのよ、あんたは‥‥」
そしてフィオナは「お水を探してたら、何時の間にか地下に落ちちゃったみたいなの〜」とのほほんと答えるエルティナにあからさまにわざと溜息をつく。
もっとも、それには妹が無事だったことへの安堵も含まれているのだが。
「まぁまぁ‥‥、地下に落ちてから、どうやってこちらに戻られたのでしょうか?」
地下へ行く手がかりになるかもしれないと、軽戦士のヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))がおっとりと尋ねる。
「うーん、気がついたら外に出ていたの〜。外には丁度、スーさんがいて‥‥、あ、そういえば、地下に落ちたときはなんかいきなり足元に穴が開いて、それで落とされたの〜」
「アントリオンに出くわさなかった?!」
「たぶん?」
ほわわんとしてるエルティナは、焦るフィオナにもやっぱりほわわん。
戦闘能力のあまりないエルティナが蟻地獄に潜むアントリオンに捕らえられたら、命は無かったというのに。
「つまり、アントリオンの既にいない穴も存在するのかもしれませんね。ですが、その場所をこの広大な砂漠の中から再び探し出すのは困難でしょうね‥‥」
元々、お喋りではないセルムだが、ここ天空大陸についてからはより一層口数が少ない。
必要最低限の事しか口にしない彼の表情は、その分厚い眼鏡に隠されて見えなかった。
「‥‥あ、あの‥‥わたし‥‥」
「気がつきまして?」
岩陰に寝かせていた魔法使いのナツキ(夏姫・シュトラウス(fa0761))がよろよろと起き上がる。
すぐにトールが支え、
「無理しては駄目よ。わたくしが治癒したとはいえ、本調子ではないでしょう?」
言外にナツキであってナツキではない何かに変わってしまった事を匂わせる。
「‥‥でも‥‥」
「ねえ、どうして魔獣を身体の中に封じてるの?」
言い淀むナツキに、エルティナが尋ねる。
空気が凍りついた。
「あれ‥‥これ、言っちゃいけなかった?」
悪気などは一切なく、なぜか真実を見抜いてしまったエルティナはきょとんと小首を傾げる。
「ご、ごめんなさい‥‥ずっと、隠していて‥‥っ」
魔獣を封印されている事を仲間達に隠し続けていたことは、ナツキにとってずっと重荷だった。
告白したいまも、涙が溢れて止まらない。
「気にしないで。むしろ助かったから。ね?」
お姉さん気質なサクヤは、ナツキに屈みこんで目線を合わせす。
ナツキの正体を知っても、サクヤは少しも驚きはしなかった。
魔獣が封印されていることは、とうに気づいていたからだ。
そして元魔獣使いとして対処法も知ってはいるが、ナツキの師匠たる人物が既にナツキに幾重にも封印を施してある現状で、サクヤが手を加えるにはあまりにリスクが高く、それゆえ、今日まで一切手出しをしなかったのだ。
「どうにもならなくなったら、その時は、俺が止めてみせるから」
力強く頷くサクヤの言葉に、ナツキの中で、いつか魔獣に全てを乗っ取られ、大切な仲間達を襲うかもしれないという恐怖が薄らいでゆく。
(「あぁ‥‥魔獣の唄が聞こえる」)
魔獣を憎み、召喚士となったサクヤの心に、魔獣たちの歌声が聞こえる。
誘うその声は強く、心地よかった。
●アントリオン
「呼んでる‥‥」
そう呟いて、ケーナが目覚める。
代わる代わるケーナを抱きかかえ、地下への道を探していたハンター達は一斉にケーナを覗き込んだ。
「何がありましたの?」
「光の王と影の王と話してた。大陸にいる間力貸してくれるって」
ケーナの言葉に、ヒカルが首を傾げる。
「あらあら、あたし達、夢魔に襲われたんです。ケーナ様の敵と思われてしまったのでしょうか‥‥?」
「‥‥夢魔? 夢は本来影の王の領域。だからわたし、夢を通じて光の王と影の王と話すこと出来た。守ってくれたんだと思う」
「魔物ゆえ、守り方が違うということか」
あの夢魔に守られたとは到底思えない悪夢を見せられた身としては少々解せないが、ケーナが言うのだからそうなのだろう。
「ふむ。もう少しで、アントリオンらしき生命反応にたどり着きますね」
ライトサーチを唱え、敵の方向や距離を調べていたセルムが告げる。
戦いの前にケーナが目覚めたのも、きっと影と光の王の配慮に違いない。
「暴れてやるわよー!」
フィオナが腕をまくり走り出す。
ドーンという噴出音と共に砂が舞い上がり、アントリオンが出現したのはそのすぐ直後のことだった。
「面倒くさいな‥‥土の中じゃ剣は届かない‥‥」
スーはナイフで狙いを定め、すり鉢状の底から攻撃を仕掛けてくるアントリオンに舌打ちする。
「あら、天空大陸のは随分小さいんですのね。昔、退治したモンスターの小型版ですわ。
弱点は‥‥お尻のようですわね。皆様、がんばって退治してくださいませ」
トールが少々拍子抜けしながら神の力を借りて弱点を探り出し、仲間の為に舞を舞う。
「ナツキは下がって」
ユウはナツキを気遣い、下がらせる。
魔獣の封印が天空大陸に来てから不安定になっているのなら、なるべく刺激しないほうがいい。
またその身を魔獣に乗っ取られれば、ナツキ自身が傷付くのだから。
ユウの思いやりに再び涙ぐみそうになりながら、ナツキは言われたとおりに下がり、後方から仲間達に結界支援をする。
「エルティナ、歌って頂戴! ヒカルは、これを一緒に投げて!」
「わかったの〜」
フィオナはエルティナに呪歌を頼み、エルティナはフィオナの為に歌を紡ぐ。
「〜悲しみを刃に変えて、祈りを剣に添えて、太刀と共に舞い降りよ‥‥幻影狂詩曲」
そしてヒカルはフィオナから投げられた投げ縄を受け止め、アントリオン目掛けて投げる。
フィオナの二本の短剣が呪歌に煌いた。
縄に絡まり、勢い良くハンター達に向かって砂を浴びせかけてきたアントリオンの足をフィオナの短剣が切り落とす。
「‥‥わたしを、怒らせましたね? 消え去りなさい!!」
砂まみれになり、怒りを露わにするのはセルム。
冷静沈着な彼の怒りは、そのまま魔力の強化に繋がる。
詠唱なしで即座に発動された雷の矢が雨のように降り注ぎ、フィオナとエルティナの攻撃により麻痺していたアントリオンの命を絶った。
●エテルノ〜そして聖地へ〜
「泉というなら、水浴びとかできるのかしら」
トールは砂まみれの身体を気にし、精霊達の泉にちょみっと暴言を吐く。
そしてエテルノにたどり着いたハンター達はセルムに促されて一人、また一人と手を浸す。
「ここは‥‥変わる事がないんだな」
片手を浸し、懐かしい気持ちでサクヤは目を細める。
全員が手を触れた瞬間、オーブが強く輝いた。
「オーブが補助してくれるけど、別の地考えたらそっちに転移する可能性ある、気そらしちゃダメ」
聖地へ。
その思いだけを胸に抱くよう、ケーナが注意する。
光り輝くオーブに呼応して泉もまた輝き――
「ケーナ!」
十六、七歳程度だろうか?
赤髪の少年がケーナを抱きしめる。
「テラ? やっと会えたぁ!!」
やっと会えた幼馴染に、ケーナは喜びを隠せない。
「まあまあ、テラノーファ様がいらっしゃるということはここは聖地なのですね」
ヒカルも感慨深げに周囲を見渡す。
「ずっとこうしていたけど、いまは魔獣王の地上進行を食い止めるのが先だ。ケーナ、僕に力を貸して!」
ケーナを抱きしめる腕を解き、テラノーファは聖地のオーブを掲げる。
テラに頷き、ケーナもオーブを掲げる。
二つのオーブと二人の身体は共鳴し合い、一瞬、空間が揺らいだ。
「魔獣王がもう一度地上と道を繋ぐまで、これで暫く時間が稼げるはずです」
テラの言葉に、ハンター達の表情が和らぐ。
(「でも‥‥」)
モドッテオイデ‥‥。
聖地に着てもなおずっと胸に響く魔獣達の呼び声に、サクヤは「やはり俺は魔獣使いでしかないのか‥‥」と絶望と心地よさを感じるのだった。