†雀巫女神社†アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや易
報酬 1.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/17〜12/21

●本文

 埼玉県の片隅にあるその神社は、恋が叶うとして密かに有名だった。
 小さな山の上にぽつんと立ち、赤い鳥居と、赤い袴姿の巫女さんがいる、どこにでもある普通の神社。
 けれど今日もそこに、恋に悩める乙女が訪れる。
「ふぅ‥‥」
 ちょっぴりぽっちゃりとした乙女は、溜息をつきながらお賽銭を入れ、からからと鈴を鳴らす。
「どうか、一緒に初詣にこられますように」
 パンパン。
 二回手を叩き、周囲に人がいないのを確かめてから、ポケットからハンカチに包んだお米を取り出して周囲に蒔く。
 こうすると、恋が叶うといわれているのだ。
「わたしなんか、ダメだってわかってるけど。でも、一緒に来たいんです‥‥」
 分不相応な恋なのか、少女は唇を噛み締めて走り去ってゆく。
 
 その後姿を、小さな雀達が見つめていた。

 ぽむっ☆

「あたし達の出番だねっ☆」
 可愛い音とともに雀が一瞬にして巫女姿の少女に変身する。
 その背には、茶色い雀の羽が生えている。
 ぽむっ、ぽむぽむっ☆
「この世に叶わない恋なんて、ないの。ましてやわたくし達が手伝うのですから」
 ちょっぴりお色気の漂う美女や、無口で気の弱そうな乙女もいる。
 その全ての少女の背に、茶色い雀の羽が生えていた。
 そう、この神社の巫女達は、実は全員雀なのだ。
「あの子の恋、叶えちゃうんだよ☆」
 雀巫女達は、恋する乙女のために作戦を練るのだった。


〜雀巫女神社出演者募集〜
 特撮新番組『雀巫女神社』出演者募集です☆
 なぜか人間に変身できる雀達が、恋に悩む人々の願いを叶えてゆきます。
 雀達はそれぞれちょこっとした魔法が使えます。
 でもあくまでちょこっとした些細な魔法なので、天変地異を起こすような物は使えません。
 背中に雀の羽を生やしていますが、普通の人間に会うときは隠すことも出来ます。
 なお、オープニングには女の子姿の雀しか出てきていませんが、男の子の雀がいてもOKです。
 その場合は、巫女服ではなく狩衣などになります。


〜募集役〜
 恋する乙女
 乙女の想い人
 雀巫女

 以上三役は必ず埋めてください。
 なお、雀巫女は何人いてもかまいません。
 この他にも、乙女の家族や親友など、参加者にあわせて決めていただいてOKです。


〜初心者の方へ〜
「シナリオに入ったけど、プレイングの書き方って良くわからない><!」 
 そんな風になやんではいらっしゃいませんか?
 そういった場合は、下記テンプレートを埋めてプレイングを書いてみてください。


☆テンプレート☆
『†雀巫女神社†』参加者様は下記テンプレートを埋めてプレイングを送ってください。

役名:演じる役名を明記してください。芸名のままでもOKです。
役柄:希望役柄を明記してください。
性格:演じるキャラの性格を書いて下さい。(例:お人よしだけど実は計算高い、などなど) 
行動:自分のキャラの行動を書いて下さい。
台詞:各シーンで言わせてみたい台詞を演じるキャラになりきって書いて下さい。
 (台詞例)
 挨拶:「こんにちはー! 雀巫女神社の巫女でっす。よろしくー?」

 *台詞例はあくまで例です。自分の演じる役に合った台詞を考え、プレイングに盛り込んでください。
 *テンプレート以外もどんどんプレイングに明記OKです。  
 

●今回の参加者

 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa2057 風間由姫(15歳・♀・兎)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa2910 イルゼ・クヴァンツ(24歳・♀・狼)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa3736 深森風音(22歳・♀・一角獣)
 fa4614 各務聖(15歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

●想いは遠くはかなく?
 チュンチュン、チュチュン♪
 雀達のさえずりの響く冷たい冬の朝。
 想田 心結(角倉・雨神名(fa2640))は今日も雀巫女神社にお参りをする。
「二人が、仲良くなれますように」
 制服の上にダッフルコートを羽織り、マフラーを巻いた心結は、ちょっぴり涙を浮かべていたりする。
 先日、恋が叶うといわれるこの神社にお参りした次の日。
 ずっと好きだった守島 鎮緒(深森風音(fa3736))に好きな人がいる事を知ってしまったのだ。
 鎮緒のことを「鎮緒!」と親しげに呼ぶその少女はよりによって心結の親友・柊 双葉(各務聖(fa4614))。
 明るくハキハキとした彼女は誰からも好かれる人気者で、心結も彼女が大好きだった。
 だから彼女は祈るのだ。
 大切な親友と、片思いのその人が幸せになれるように。
 
 その様子を、赤い鳥井と屋根の上から雀たちが見守っていた。


●雀巫女☆
 ぽんっ☆
 ぽんぽんっ☆
 人気の無い境内で、愛らしい音と主に雀が巫女姿の人間に変ってゆく。
「ねえねえ、あの子ってこの間の子だよね?!」
 元気いっぱいな六つ花(甲斐・大地(fa3635))は怪訝そうに小首を傾げる。
「そのはずなんだよ。まさか振られちゃったのかな?」
 雪菜(風間由姫(fa2057))は不安げにチリリンと神楽鈴を鳴らす。
「みんなで調べた結果では、両思いのはずでしょう」
 芽衣(姫乃 舞(fa0634))もわけがわからないという顔をする。
 心結が最初にこの神社を訪れた後、雀巫女達は彼女の想い人と彼女を幸せにするべく、一生懸命調べたのだ。
 彼女の想い人が鎮緒であること、鎮緒も彼女を憎からず想っていること‥‥ちゃんと調べて、後は彼女が彼に告白できればハッピーエンドのはずだったのに?
「もう一回調べてみましょう。ほれほれ、みんな行きますよ〜」
 一際色っぽい鈴音(槇島色(fa0868))が竹箒を振り気だるげにみんなを追い立てる。
 さあ、真相を調べちゃうぞ☆


●協力するの! だって、大事なお友達なんだもんっ><!
「あの‥‥ここにお参りすると、恋が叶うそうですよっ」
「ふうん、心結ってばいいとこ知ってるね」
 学校帰り、心結に誘われて雀巫女神社を訪れた双葉は、小さいながらも手入れの行き届いた神社に目を細める。
 雀巫女神社というだけあって、雀が多いのもまた良い。
 チュンチュンとさえずりながらこちらをみつめる雀たちの瞳はくりくりと愛らしく、知らず笑みが零れる。
「わたし、お二人のこと応援してますからっ‥‥!」
「うん、ありがとう。ここでお米を撒くの?」
「はい、えとえと、お米はこれですっ」
 わたわたと心結は鞄からハンカチに包まれたお米を取り出し、双葉に差し出す。
「随分準備がいいね。さては心結にも好きな人がいるのかな?」
 ひょいっと双葉に顔を覗き困れて図星をつかれ、心結はパニック!
(「どどどど、どうしましょう?! 双葉さんに鎮緒さんの事を気づかれちゃったら‥‥」)
 泣きそうになる心結に助け舟を出したのは、この神社の娘で巫女でもある真名津 泪(イルゼ・クヴァンツ(fa2910))だった。
「なにやらお顔の色が優れませんが、どうかしました?」
「あうあうあうあうあっ?!」
 どべちゃっ!
 急に声をかけられたことに驚いて、心結は段差に足を取られてすっころんだ。
「心結、大丈夫?!」
「すみません、驚かせてしまいましたか?」
 双葉と泪に差し出された手を握り、起き上がった心結はほっとする。
 涙ぐんでいたのを双葉に見られずに済んだから。
「えへへ、ちょっとお尻うっちゃたですよ。でも、へーきですっ」
 もし見られてても、こうやってお尻をぶつけた事にすれば大丈夫。
「お二人とも、少し温まっていかれてはどうですか? 丁度檀家さんからお茶を頂いたんですよ」
 泪の申し出に二人はお礼を言って頷く。
「神様はね、努力はきちんと見て下さっていますよ。特に人が人を想う気持ちにはここの神様は敏感なんです。
 きっと、二人に良い結果が待っていますよ」
 巫女とはいえ、家の家業を手伝っているだけの泪には雀巫女の姿は見えていない。
 それでも、いつも何かが見守ってくれている事を感じているのだ。
「良い結果‥‥」
 泪の言葉を、心結はもう一度呟いた。 
 

●恋する乙女のために作戦会議☆
「120パーセント、誤解なんだよ」
 日が落ちて真っ暗になった屋根の上で、六つ花はご機嫌。
 それもそのはず、心結のライバルと想われた双葉には、他に好きな人がいる事を突き止めたのだ!
「ふう。一日中飛び回ってちょっと疲れたです」
 はふっと溜息をつき、それでも芽衣の表情は明るい。
 心結と鎮緒と双葉。
 この三人の通う学校は私立で高校と大学が同じ敷地にあるのだ。
 大学では鎮緒の、高校では心結と双葉をずっと観察し続けた雀巫女達にはもう何から何までわかっている。
「心結さんも鎮緒さんも、せっかく両思いなのに‥‥」
 チリリンと鈴を鳴らし、雪菜は思案する。
 お米粒も貰ったし、どうにかしてあげたいんだけど?
「幸せになれないのは良くないんだよ。皆で頑張るんだよ♪」
「明日は人間達はクリスマス・イブです。異郷の神のお祭りだけど、ご利益にあやかっちゃいましょう☆」
 六つ花の言葉に強く頷き、芽衣の提案にみんな大賛成☆
 さあ、幸せに向かって飛んでくぞ☆


●ほーら、幸せになれー☆
「彼、喜んでくれるかな?」
 ショウウィンドウを覗き込み、双葉は隣の鎮緒に尋ねる。
 クリスマスからーに染まった街は煌びやかで、歩いているだけで楽しい気分になってくる。
「うん、いいんじゃないかな? このデザインなら男女兼用にできるし、双葉さんらしいと思うよ」
 セーターにブルゾン姿の鎮緒は真剣に選んでいる双葉に頷く。
「ねえ、鎮緒にはこれなんかどう?」
「俺?」
 鎮緒は双葉の指差すそれをウィンドウ越しに覗き込み、はっとする。
 ショウウィンドウに心結が写っている。
「心結さん?」
 道の向こうに佇む心結は、振り返って声をかけてきた鎮緒に言葉を返せない。
(「応援するって決めたんだから、泣いちゃダメですっ。‥‥でも、でも、つらいですーっ!」)
 咄嗟に踵を返し、心結は走り出す。
「心結さん? 一体なんで‥‥」
 ぽん!
 走り去る心結に戸惑う鎮緒の背を、双葉が押す。
「女の子を悲しませるなんて、ダメだからね!」
 涙ぐんで走り去る心結をみて、双葉にもわかったのだ。
 心結が誰を好きか。
 そして鎮緒が誰を好きか。
「‥‥ありがとう!」
 双葉に礼を言い、鎮緒は心結の後を追う。


「どんくさい二人のために一肌脱ぎますか‥‥ほれほれ〜」
 鈴音が物陰から竹箒を掲げてくるくると回す。
 次の瞬間、風が巻き起こり、心結のリボンが解けて舞い飛ぶ。
「はうっ?!」
 咄嗟に手を伸ばしてもリボンはひらりと心結の手をすり抜けて飛んでゆく。
 ひらり、ひらり、ふわり。
「心結さん、やっと見つけた‥‥」
「鎮緒さんっ!」
 肩で息をし、それでも柔らかく微笑む鎮緒の手の中にリボンが納まる。
「あの、んと、そのっ。デートの邪魔をしちゃってごめんなさい‥‥」
 ぽろり。
 泣くまいと思っても、涙が零れる。
「デート???」
「違うですか???」
「双葉さんには、彼氏さんへの贈り物を選ぶのにつき合わされただけだけど?」
「ええええー? 彼氏さん?!」
「うん」
「お二人は、お付き合いしているのではっ」
「俺は、ずっと、キミの事が好きだよ?」
「!」
 鎮緒の衝撃の告白に、心結は頭が真っ白になる。
「信じられないです‥‥わたしなんか‥‥‥‥」
「心結ちゃんはもっと自分に自信を持っていいと思うよ。すごく一生懸命なところとか、とても素敵だと思うし‥‥」
 パチン☆
 芽衣が魔法を使う。
 自分に自信を持てなかった心結の中に小さな勇気がわいてくる。
 ほんのりと顔を赤らめて照れる鎮緒の言葉にも嘘は感じられなくて、心結は鎮緒に思いっきり抱きついた。
「うえーん、ずっと好きだったんですー!」
「わわっ?」
「嬉しすぎて死んじゃいそうですっ」
 ぎゅう。
 うれし涙を浮かべて思いっきり抱きつく心結を、鎮緒も照れながらそっと抱きしめる。
 チリリン☆
 空からその様子を見ていた雪菜が神楽鈴を鳴らす。
 曇り空だった空から、小さな粉雪が舞い落ちて、出来たてほやほやのカップルを祝福するのだった。
 

●二人の初詣☆
「上手くいったようですね」
 元旦。
 新年を祝う人々で溢れた境内で、心結と鎮緒、そして双葉と双葉の彼が幸せそうにお参りに来たのを見て、泪は微笑む。
 パチン☆
 恋人達が食べる屋台のお団子がより一層美味しくなるように、六つ花が魔法を使う。
 美味しそうに幸せそうに肩を寄せ合う恋人達を、雀巫女たちも鳥居の上から暖かく見守るのだった。