†雀巫女神社†〜お正月アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/06〜01/10

●本文

 埼玉県の片隅にあるその神社は、恋が叶うとして密かに有名だった。
 小さな山の上にぽつんと立ち、赤い鳥居と、赤い袴姿の巫女さんがいる、どこにでもある普通の神社。
「新年、あけましておめでとうございまーす♪」
「「「おめでとーございまーす!」」」
 神社の巫女さん達が賽銭箱の左右に並び、元気に挨拶すると沢山集まった人々も元気に挨拶を返す。
 雀巫女神社の境内は老若男女問わずごった返していた。
「そーぅ、れっ!」
 ぽーん♪
 ぽーーーん♪
 巫女さん達が手元の巾着袋からお米の入った小袋を撒く。
 通常、こういったときに撒くのはお守りだったりご縁がありますようにと五円玉だったりするのだが、雀巫女神社ではお米を撒くのが慣わしなのだ。
 小さな小袋をチャッチした人々は、幸せそうに懐や鞄にしまいこむ。
 
 その様子を、屋根の上に並んだ雀達がじっと見ていた。

 みつめる先は、一人の女性。
 小柄なその人は一生懸命手を伸ばしているのだが、なかなか小袋を手に入れることが出来ないのだ。
 一羽が屋根の上から舞い降り、巫女さん達の手元から小袋を受け取って、その女性の下に運び出す。
「まあ、ありがとう‥‥っ」
 雀から手渡された小袋を両手で包み込み、女性はぱっと顔を輝かす。
 喜ぶ女性に、雀もチュンチュンと鳴いて返事を返す。
「雀にもらえたんですもの、きっと今年こそは‥‥結婚できるわよね‥‥」
 そう呟いて、女性は小袋を大切にしまいこみ、人込みに消えてゆく。
 若そうに見えるのだが、もしかしたらそれなりに結婚の気になる年なのかもしれない。
 女性の呟きが気になったのか、一羽の雀はそのまま女性の後をついてゆく。


「たいへんっ! たいへんなんだよー?!」
 ぽんっ☆
 人気のなくなった境内で、愛らしい音と共に雀が巫女姿に変身する。
「まあ、どうしましたの?」
 ぽん、ぽぽんっ☆
 雀巫女神社の雀たちが、次々と巫女姿に変わってゆく。
 その背には茶色い雀の羽がパタパタと揺れる。
 そう、この神社の雀たちは実は雀巫女なのだ。
 天変地異を起こしたり、人の気持ちを無理やり変えることなどは出来ないが、ほんのちょっとした魔法が使える可愛い雀たち。
「昼間の女性覚えてるかな?」
「うんうん、キミがついていったよね。あの人に何かあったのかな?」
「あったなんてもんじゃないのー><! あの人、好きじゃない人と結婚させられちゃうよぅ!」
 じたばたと身振り手振りを使って説明する雀巫女に、ほかの雀たちも真剣に話を聞く。
「つまり、あの人は結婚したい男性がいて、なのに無理やりお見合いを‥‥?」
「そう!」
 どうやら、話を総合すると結婚適齢期な女性は親の勧めで断れないお見合いをすることになってしまったらしいのだ。
 よりによってこの神社にお参りをした今日、そのお見合いが決まってしまったから、女性は小袋を握り締めて涙ぐんでいたとかいないとか。
「これは、大至急わたくし達の出番ですわね」
「恋をかなえるこの神社が、恋のないお見合いなんてさせないんだよっ」
 ぐぐっと拳を固め、雀巫女達は女性のために飛び立つのだった。 


〜雀巫女神社出演者募集〜
 特撮番組『雀巫女神社』出演者募集です☆
 なぜか人間に変身できる雀達が、恋に悩む人々の願いを叶えてゆきます。
 雀達はそれぞれちょこっとした魔法が使えます。
 でもあくまでちょこっとした些細な魔法なので、天変地異を起こすような物は使えません。
 背中に雀の羽を生やしていますが、普通の人間に会うときは隠すことも出来ます。
 また、通常は雀巫女状態の雀達の姿は人間には見えません。
 なお、オープニングには女の子姿の雀しか出てきていませんが、男の子の雀がいてもOKです。
 その場合は、巫女服ではなく狩衣などになります。


〜募集役〜
 女性―― 無理やりお見合いさせられそうになっている
 雀巫女

 以上二役は必ず埋めてください。
 なお、雀巫女は何人いてもかまいません。
 この他にも、女性の家族や親友など、参加者にあわせて決めていただいてOKです。


〜初心者の方へ〜
「シナリオに入ったけど、プレイングの書き方って良くわからない><!」 
 そんな風になやんではいらっしゃいませんか?
 そういった場合は、下記テンプレートを埋めてプレイングを書いてみてください。


☆テンプレート☆
『†雀巫女神社†』参加者様は下記テンプレートを埋めてプレイングを送ってください。

役名:演じる役名を明記してください。芸名のままでもOKです。
役柄:希望役柄を明記してください。
性格:演じるキャラの性格を書いて下さい。(例:お人よしだけど実は計算高い、などなど) 
行動:自分のキャラの行動を書いて下さい。
台詞:各シーンで言わせてみたい台詞を演じるキャラになりきって書いて下さい。
 (台詞例)
 挨拶:「こんにちはー! 雀巫女神社の巫女でっす。よろしくー?」

 *台詞例はあくまで例です。自分の演じる役に合った台詞を考え、プレイングに盛り込んでください。
 *テンプレート以外もどんどんプレイングに明記OKです。  
 

●今回の参加者

 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa1105 月 李花(11歳・♀・猫)
 fa1320 江見澤るう(8歳・♀・小鳥)
 fa2057 風間由姫(15歳・♀・兎)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)
 fa4713 グリモア(29歳・♂・豹)
 fa4882 ヒカル・ランスロット(13歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●お見合いなんてしたくないの><!
「だ、大丈夫よね、お見合いして即お付き合いとか結婚とかするわけじゃないんだし。きちんと相手の方にお断りさえ出来れば‥‥出来るかな」
 ぶつぶつ。
 ぶつぶつ。
 上村 ひばり(伝ノ助(fa0430))は雀巫女神社でそんな事を一人呟く。
 ぎゅーっと握り締めたお守りはもうくちゃくちゃで、ひばりの顔ももう今にも泣きだしそうだった。
 恋が叶うといわれているこの神社しか、もう頼れない。
 両親の上司からの紹介だというお見合いは、絶対に断れないのだから。
 お見合いの日は、もうすぐそこ。
 ずっと好きだったあの人に告白する事もできないまま、流されて結婚、何て絶対に嫌。
「ど、どうか、ちゃんと断れますように‥‥」
 もう一度お守りを握り締めて祈りを捧げ、ひばりはとぼとぼと神社を後にした。
 

●事情はわかったの。だから絶対助けてみせるの!
「どうしよう〜。みんな聞いて! あの人、好きでもない人と結婚する事になるんだよ!!」
 ばんばんばんっ。
 雀巫女姿の菫(月 李花(fa1105))はみんなの肩を大慌てで叩く。
「なにやら可哀想ですね〜」
 雪菜(風間由姫(fa2057))は神楽鈴を鳴らす。
 ちりりんと鳴るそれは、普通の人間には聞こえない。
「るぅは何をしたらいいの?」
 一番小さな雀巫女のるう(江見澤るう(fa1320))はちょこんと小首を傾げる。
 ぷにぷにのほっぺに当てた人差し指が愛らしい。
「せやな、まずは作戦を練らなあかんやろ」
 元気いっぱいの茜(十六夜 勇加理(fa3426))は腕を組んで考えだす。
 恋を応援する雀たちにとって、恋のない結婚なんてなんとしてでも阻止しなくては。
「俺が結婚する!」
「「「ええええ?!」」」
 唐突なちゅん恵(星辰(fa3578))の発言にみんな思わず叫ぶ。
「だって俺と結婚すればお見合いなくなるだろ?」
 俺、といっているけれどちゅん恵は正真正銘女の子。
 相手の男性さえわかれば結婚できなくもないかもしれないような出来ないようなうにゃうにゃうにゃ。
「えっと、うん、ちょっと無理がある‥‥かもしれないです」
 大人しい光瑠(ヒカル・ランスロット(fa4882))が控えめに口を挟む。
 ちょっと、じゃなくてとっても無理があるってば。
「ちぇっ。でも相手がわかったら一応アタックしてみるんだぜ♪」
 へへんとちゅん恵は自身ありげに胸をそらす。
「それだ。まず相手の事を調べなあかん! 雪菜、菫、ちょっと調べてみてくれへんか?」
 ポンと手を叩いて茜は雪菜と菫に調査を頼む。
 ほんのちょっぴり先のことがわかる菫と、そのフォローに雪菜ならちょうど良い。
「るうも手伝うの〜」
 ぽむっと雀姿に戻り、るうが二人の間をパタパタと飛び回る。
 さあ、作戦開始だよっ☆


●お見合いには行かせないんだよ?
「あ、あれ? 確かにポケットに入れたと思ったんだけど」
 わたわたわたっ。
 ひばりのお見合い相手・夏川 陸(グリモア(fa4713))はポケットを何度も探る。
 でも確かに入れておいたはずのハンカチがない。
「困ったな。また忘れたんだ‥‥どうにも物忘れがひどくて困るよ」
 やれやれと溜息をついて陸はコンビニでハンカチを買う。
 ついでに窓ガラスに映った自分の姿に目を留めて、溜息をついた。
「お見合い、か」
 上司の勧めで見合いをする事になって、断れずに早数日。
 ついに今日、その日が来てしまった。
 ガラスに映る自分の姿はあきらめにも似た焦燥が漂っている。
 と、不意にその脇を車が猛スピードで通り過ぎて、陸のスーツに泥が跳ねた。
「うわっ、参ったな。って、うわわっ?!」
 ザバーッ!
 そんな効果音がぴったりなほど盛大に陸の足に水がかかった。
「えらいすんまへんな。ウチうっかりしてんねん」
 いやーすまんなあといいながら、水撒きホースを手にした女性はさして悪びれた様子もなく陸に頭を下げる。
 今日は本当についていないようだ。
「いや、お気になさらず。ははっ‥‥」
 乾いた笑いを浮かべ、陸はかかった泥や水をさっとハンカチで拭い、その場を後にする。
 陸が完全に見えなくなると水をかけた女性――茜は消え去り、数羽の雀たちがじっと陸の後をつける。


 時間を気にしながら陸は待ち合わせ場所に急ぐ。
 いくら乗り気でないお見合いとはいえ、女性を待たせるのは失礼だ。
 けれどそんな焦る陸の気持ちを知ってか知らずか、災難は次々と襲ってくる。
「なあ、俺と結婚してくれないか」
 ああ、もう。
 今日は本当に厄日なのだろうか?
 なぜか出かけに靴が玄関に引っ付いてはなれなかったし。
 陸は道を塞いで目の前に仁王立ちをする見知らぬ少女を見て、眩暈がしてきた。
「悪いんだけど、俺は急いでいるんだ」
「俺、結構尽くすタイプなんだぞ! な? 結婚しようぜ!」
 小学生ぐらいだろうか。
 通り過ぎようとする陸になおも結婚を迫ってくる。
 ああ、もう。
 こんなところを彼女に見られたらどうしてくれよう。
 いや、お見合いをする時点でもう、彼女に対して大きな裏切りなのだが。
「小学生かな? 性質の悪い遊びはよしたほうがいい。この辺りは不審者も良く見かけるし、家まで送ろう。家は何処だ?」
 小学生と結婚する趣味はないが、見知らぬ男性に声をかける遊びはやめさせたほうがいい。
 一歩間違うと本当に酷い目に遭いかねない。
「なんだよ、ケチ! 後悔しても知らないからなっ!」
「えっ?」
 ぽむっ☆
 目の前にいた少女が突如として消え去った。
「‥‥疲れているのか」
 本当に、俺はお見合いに行きたくないんだな。
 苦笑して、陸は道を急ぐ。 
 

●お見合いは壊せない?! うわわ、どうしよう?
(「どどど、どうしよう‥‥。ついに今日がきちゃったわ‥‥」)
 色鮮やかな振袖を着せられ、薄っすらと化粧をしたひばりはとても美しかった。
 けれどその表情は冴えない。
 当たり前だ。
 好きでもない男性とお見合いをさせられるのだから。
(「お願い‥‥どうか、ちゃんと断れますように‥‥」)
 約束の時間から随分経っているのにいまだ現れない相手に不安を感じながら、ひばりは袖に忍ばせたお守りをぎゅっと握り締める。
「すいません! 遅れちゃいました! ちょっといろいろありまして」
 どたばたと慌しく駆け込んできた陸を見て、ひばりはちょっとびっくりする。
 お見合いだというのに、陸の格好はもう、ボロボロだった。
 泥跳ねがあったり、ズボンの裾は水浸しだし、髪の毛は程よく乱れているし。
「うわっと!」
「あ、しっぱいしちゃった」
 とどめに部屋の隅に控えていた仲居さんが躓いて、席に着いたばかりの陸にお茶をこぼした。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
 慌ててひばりはハンカチでお茶を拭う。
 火傷でもしたら大変だ。
「ありがとう。優しいですね」
 陸はひばりの手からハンカチを借り、微笑む。
「いえ、あの、その、えっとっ」
(「ややや、やっちゃったかも?! わたし、好かれてしまった‥‥?」)
 おろおろおろ。
 お断りしなきゃいけないのに好かれちゃったかもしれなくて、ひばりの額に冷や汗が浮かぶ。
 そして見合いが始まったばかりだというのに部屋の時間も押していた事から「あとは若い二人で」モードに一気に突入!
 両親も会社の上司はもちろんの事、いつのまにか仲居もいなくなり、二人っきりの空間に沈黙が流れる。


「本当に大丈夫かな〜?」
 ちりりん♪
 雪菜が神楽鈴を鳴らす。
 雀巫女は全員、こっそりひっそりお見合い会場に来ていた。
「大丈夫だよ。あの人幸せそうな笑顔で、デートしているの、視えたもん。きっと上手く行くよ?」
 固唾を呑んで見守るみんなに、菫は力強く頷く。
 そんなに遠い未来は視えないし、確実な事なんてわからないけれど、ひばりが幸せそうにデートする未来を菫は確かに視たのだ。
「やっぱりウチはおっちょこちょいやな‥‥ぐすん」
 陸の靴に接着剤を仕込み、家から出られないようにした茜だが、靴はいっぱいあるのだ。
 使えないそれを履き替えて陸がお見合いに来てしまった事に茜はがーんとショック気味。
 途中、水撒きの店員に化けて妨害したものの、お見合いそのものは壊せなかった。
「そうゆうこともあります。私もさっき失敗してしまいました」
 陸に熱いお茶をこぼしてしまった光瑠は茜を慰める。
 ほんとは座布団にこぼして座れなくするつもりだったのだ。
 危うく陸に火傷をさせてしまうところだった。
「まあまあ、未来を信じて見守ってみようぜ!」
 しょんぼりとしている二人の肩を叩き、ちゅん恵は視線をお見合い中の二人に戻した。


●似たもの同士はハッピーエンド☆
「すみません、私、本当は好きな人がいるんです」
 ぎゅう。
 ひばりはお守りを握り締めて、優しく微笑む陸に真実を告げる。
 いっぱい傷つけちゃうかもしれないけれど、ちゃんといわなくちゃいけないのだ。
「今日は両親の頼みで‥‥その、私、断れなくて。そのせいで夏川さんにはご迷惑を‥‥」
 驚く陸の顔をまともに見れず、ひばりは俯く。
 そのひばりに陸の笑いが降ってきた。
「夏川さん‥‥?」
「あ、いや、失礼」
 くすくすと笑う陸にひばりは困惑を隠せない。
「まさかね。同じ状況だったとは思いもよりませんでしたよ」
「えっと、つまり‥‥?」
「俺もなんです。上司の紹介でどうしても断れなくてね。正直、今日はどうやってお断りすればいいかずっと考えていたんです」
「‥‥そうだったんですか。似てますね、私達」
 ほっとして、ひばりの顔に笑顔がこぼれる。
 作り笑いじゃないその笑顔は本当に可愛らしかった。
「こんな事いうと失礼かもしれませんが、よかったらこれからもお付き合いしていただけますか。あ、もちろん友人としてです」
 笑い止んで、陸も自然に微笑む。
 清々しい気持ちで二人、部屋の外に出ると、一人の少女が駆け寄ってきた。
「んとね、これあげるの〜。お守りなの。二人にきっと良い事があるの〜」
 とことこと近づいてきた少女は二人にお守りを手渡す。
「あら、これは‥‥」
 いない。
 たった今ひばりと陸に雀巫女神社のお守りを手渡してくれた少女の姿が消えていた。
「このお守りに見覚えが?」
 少女が消えた事に気づかなかった陸が尋ねる。
「ええ。恋が叶うといわれているお守りなんです。夏川さんにも、素敵な恋が訪れますように」
 お守りを握り締めて、ひばりは極上の笑顔で微笑んだ。