WonderTalk〜未来〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
01/25〜01/29
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●本文
未来は、いまだ不安定だ。
「魔獣王の気配が強まっています‥‥!」
聖地に戻ったハンター達に、オーブを見つめるテラが告げる。
ケーナの持つオーブとテラの持つオーブ。
その二つの力で一時的に魔獣王が人間界へと至るのを止めているが、決して永遠ではない。
あくまで一時凌ぎに過ぎないのだ。
「深遠の魔獣使いが倒れた事は、魔獣王も既に承知しているでしょう。
そしてかの王の力の源は人々の魂。
苦痛に喘ぎ叫ぶその感情がかの王に力を与え続けます。
聖地の場所が知られてしまったいま、一刻の猶予もありません。
かの王への道はボク達が開きます。
だから、かの王を封印してください‥‥」
テラとその仲間達が意識を集中する。
聖地の中心に、黒い渦が現れる。
「‥‥この先に、いるんだな?」
ハンター達の問いに、テラは頷く。
魔獣王は未知だ。
その能力、その姿。
全てが謎に包まれている。
そんな未知なる存在と、戦わなくてはならない。
「シレーネは、いまだ目覚めませんか?」
この世界のどこかに眠り続ける精霊姫・シレーネ。
かの姫の力をいまこそ請いたい。
だがテラは答えない。
いや、答えられないのだろう。
一歩、ハンターはその暗黒の中へ足を踏み入れる。
闇の中を模索し続ける。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜未来〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、運命を切り開いてください。
☆モンスター情報
『魔獣王』
謎に包まれた存在。
人間の阿鼻叫喚を糧にする。
その姿、その能力は果たしてどんなモノなのか‥‥。
また、上記以外のモンスター出現の可能性もあります。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンにおける聖地から移動可能な『魔獣王の領域』です。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
☆テンプレート☆
WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。
【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
〜台詞例〜
【挨拶】「?」
【戦闘開始】「剣の錆にしてあ・げ・る♪」
【必殺技使用時】「これでもくらいやがれっ!」
【勝利時】「限りあるから、今が幸せなんだ!」
*台詞例はあくまで例です。色々台詞や設定追加推奨です。
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらどんどんこちらへ明記ください。
★重要★
今回の設定では前回までのシナリオ参加者様は天空大陸・聖地に最初からいます。
その他の参加者様は精霊達やハンターギルドから緊急要請を受け、天空大陸に転移、その後、砂漠の地下にあるエテルノ(泉)から聖地に転移したことになります。
●リプレイ本文
●プロローグ〜過去の夢〜
「‥‥兄さん、これは?」
遠い過去の中、記憶の中の兄はまだ翼の白いセルム(相沢 セナ(fa2478))にペンダントを手渡した。
涙形のそのペンダントは、乳白色の柔らかい光を纏っている。
見覚えのないそれに首を傾げる弟に、兄は苦笑した。
「なんだ、もう忘れたのか? 忘れもんだ。彼女が知ったら悲しむぞ。少しは‥‥まぁいい。そのうち‥‥」
「えっ‥‥?」
懐かしい兄の声が、小さく遠く、姿さえも遠ざかってゆく。
「ねぇ、お父様。何故、護守獣はお爺様以外が使ってはいけないの?」
それは、まだ何も知らずにいた幼いサクヤ(橘・朔耶(fa0467))の記憶。
父の膝の上に乗り、時を操る魔獣・アルマと共にサクヤは耳を傾ける。
「強大な力は手に入れる事が出来ても、いずれ身を滅ぼす事になる。驕り、力に溺れた者は死をもってしか助かる術はないのだよ」
「死んじゃうの? そんなの、かわいそう‥‥」
アルマを抱きしめ、不安げにするサクヤの頭を撫で、父は微笑む。
「死よりも辛いものが、この世にはあるんだよ‥‥」
父の悲しげな瞳が忘れられなかった。
●闇の中は世界の果てに
「妙な感じだな‥‥」
聖地を守るジュエルドラゴン・テラノーファ―― テラより転移された場所は、薄闇に包まれていた。
身の丈ほどもある大剣を背負いし戦士・カイン(ヴォルフェ(fa0612))は、その静けさに眉を潜める。
獣人族の戦士としての嗅覚も麻痺したかのように、その世界には匂いすらなかった。
「まぁまぁ‥‥、魔獣王さんもお休みになられたんでしょうか」
ゆとりのある口調と物腰で、軽戦士のヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))。けれど周囲への警戒を怠ることなく呟く。
「ケーナだけで、オーブ使える?」
封印のオーブは、テラの物と対になっている。
その片割れだけを持つケーナ(美森翡翠(fa1521))だけで果たして魔獣王を封印できるのか‥‥。
幼い召喚士にして精霊王達の祝福を受けし稀有なる存在であるケーナでも、不安が残るのは否めない。
「で、でも、テラさんがおっしゃったんですし‥‥、き、きっと、何か理由があるはずです‥‥」
その華奢な身体に魔獣を封印する身である魔法使い・ナツキ(夏姫・シュトラウス(fa0761))がケーナを励ます。
そう、オーブが対であることは、テラにもわかっているはずだ。
にもかかわらずこの魔獣王の地へケーナ達を送ったのだから、何か策があると考えるべきだろう。
「ここまで来たら、やるだけだろ」
異質な静けさを掻き消すように、吟遊詩人・ケイ(氷咲 華唯(fa0142))はリュートを爪弾く。
魔力を帯びてなくとも、ケイの音色は自然と仲間達の士気を向上させた。
「やっと知ってる人達に会えた〜ってだけで、ボクはもうやる気満々♪」
鋼鉄の身体を持つ魔神族の者達との誓いと契りを交わすマコト(MAKOTO(fa0295))は、緑の瞳を悪戯っぽく細める。
魔人達の気まぐれにより仲間達より引き離され、天空大陸を彷徨わされていたらしい。
「この世界でなら、壊れても問題ないですわね」
パキリと髪飾りを折り、八百万の神に仕える巫女・トール(トール・エル(fa0406))は前を見据える。
どんな時でも豪奢に着飾り、そしてそれを見事に着こなし続けた彼が、自らを着飾る事をやめていた。
飾り気のない巫女服と、きっちりと結い上げただけの髪。
けれどそれは、彼の美貌を少しも衰えさせる事なく、それどころかより一層、神々しさを増していた。
「コレを体内に入れるのは、神竜の血を持たない者にはツラいだけだろうな‥‥力だけが暴れて」
ヤマタノオロチより取り出された神竜の鱗を懐から取り出し、神竜の後継者・スー(玖條 響(fa1276))は溜息をつく。
次の敵が、最後の敵。
最強にして最凶なる魔獣王。
果たしてそれは、どんなモノなのか‥‥。
「‥‥っ?」
ケイの奏でる音色が壊れる。
いや、ケイがミスをしたわけではない。
空間が、捻じれたのだ。
薄闇の中、ぱっくりと空が割れた。
●魔獣王
それを、なんと表現したら良いのだろうか?
「アホだ馬鹿だと散々貶して来たが‥‥魔獣王という奴は本当に愚者だったんだな。自分の身がどうなっているのか気がつかない程だとは!」
闇の触手を切り払い、カインはチッと舌を打つ。
「こいつ、これ、なんなんだよっ?!」
裂けた空から溢れ出てくる黒い触手に、マコトは魔神皇帝の力を借りて放つ超高熱エネルギー熱線・ファイアーブラスターを惜しみなく撃ち放ち、焼き尽くしてゆく。
だが生理的嫌悪感を隠せない。
次々と伸びてくる大小さまざまな黒い触手は、ハンター達の生気を奪わんと速度を増す。
「あらあら、既に正気を失っていたのですね」
懐に飛び込み切りつけるよりも、触手の不規則な攻撃をさばくヒカルは、現実を冷静に判断する。
魔獣王と呼ばれしその者の身体は、既に肉の塊と化し、ただただ魂を貪り、力を欲するモノに成り果てていた。
「‥‥か、かつて、私の中の魔獣が追放されたのは、その力故‥‥な、なのに今度はそれを魔獣王が使い、その魔獣を宿した私が止める‥‥ふ、不思議なものです‥‥」
自らの封印は既に解いたナツキは、その身に宿る魔獣の力のみを使い、魔獣王に繋がる触手からその力の源たる邪悪な精神を糧とし浄化する。
「この程度なのですか‥‥?」
徐々に衰えてゆく魔獣王の攻撃に、セルムは違和感を否めない。
いくら意識が既に狂っているとしても、余りにも手ごたえがなさ過ぎる。
ルナフレアを発動させ、絡みつく触手を難なく撃破し、セルムは薄闇の空へ舞い上がる。
割れた空から溢れる触手のその奥にあるのは、紛れもなく魔獣王の身体。
力を求めるあまり、既に元の姿を留めることなく肥大してゆく黒い肉の塊。
―― 肥大し続ける、肉の塊。
何故、空は割れた?
「‥‥まさかっ! みなさん、下がってください!」
セルムが咄嗟に亀裂にルナフレアを叩き込む。
だが間に合わない。
肥大し続けた魔獣王の身体は天を、空間を完全に引き裂き、全てを飲み込んだ。
●目覚めし時
ハンター達の身体は、完全に魔獣王に取り込まれていた。
「くそっ、出口はどこだ!」
ケイが苛立ちながらも呪歌を歌う。
清涼な歌の流れが、その場に経ち込める濁り腐った邪悪な思念から引き離し、ハンター達を包み込む。
「獣の王ごときで、神の使徒に勝ると思ってますの? おーっほっほっほっほ!」
トールが高笑いと共に、神の力を具現化する。
魔獣王であった肉壁がごそりと削げ落ちる。
だが削げ落ちる間にも肥大し続けるその肉塊は広がり続ける。
そして魔獣王に取り込まれた思念たちをも、ハンター達を苦しめる。
生きたままその身を引き裂かれ、傷みと恐怖のみを死の瞬間まで味あわされた哀れな魂達は、その苦しみを持ってハンター達の心に最後の光景を送り込む。
「ちょっと、これ、頭から消してなんだよっ。魔人たちの囁きなんかより、ずっといやだっ」
マコトが必死に耳を塞ぎ、心に思念が入り込むのを拒もうとする。
だが思念は耳から入ってくるのではない。
直接その魂に送り込まれているのだ。
「光よ、我等を彼等を照らし導いて!」
オーブを抱きしめ、皆に守られていたケーナが震える唇を開く。
その幼い心の中にも苦しめられた魂の思念は送り込まれている。
「我を慕う精霊達よ、幼き風姫にその力を貸出しなさい!」
サクヤは自分を守る為の精霊達をすべてケーナに送る。
止め処もなく溢れる魂の嘆きは、精霊達により緩和されるはずだ。
「お前が後悔しないなら、何でも好きにやれ」
カインが心を守る精霊を手放したサクヤの手を握る。
「ああ。好きにするさ。お前と共に」
絶えず脳裏に浮かぶ切り刻まれる死者の記憶を、サクヤはカインの手を握り返して振り払う。
「‥‥?」
どこからか聞こえる声に、セルムは振り返る。
魂の嘆きとは違う、懐かしいその声。
それは、セルムの記憶に眠る、約束。
「思い出の‥‥っ」
兄から渡され、常に肌身離さず持っていたペンダントを取り出す。
次の瞬間、突如それは光り輝き、精霊姫シレーネのビジョンがセルムの脳裏に蘇った!
「‥‥これは‥‥ケーナさん、今なら呼び出せるはず!!」
何を、などとはいう必要もない。
ケーナにも全てわかったのだ。
「有象無象はボク達に任せてケーナはケーナのやるべき事を!」
増え続け、ハンターを飲み込もうとする肉塊をマコトは魔人の力で破壊しとめる。
「カラファンの精霊達、貴方達の全てに命を与し人の眠りを破って。‥‥精霊姫‥‥我等に力を貸し与え給え!!」
ケーナの呼び声にオーブが光り輝く。
「「「我らは乞い願う。世界を滅ぼす魔を封印する事を!」」」
ケーナの声に連鎖して、ハンター達の思いが重なる。
溢れる光は全てを包み込み―― ‥‥‥。
●エピローグ〜それぞれの未来〜
「しかしなんだかんだで何とかなるもんだな。こういうことが二度とないといいんだけど」
光が消え去ったその場所で、ケイはくくっと笑う。
先祖の記憶を頼りに、その想いを届けると共に、吟遊詩人としての夢も大きく前進しそうだった。
だって、こんなに凄まじい体験をしたハンターは、カラファン広しといえどもほんの一握りなのだから。
「帰って報告書書いて、次のお仕事もらわにゃ〜。未だ借金返済終わってないんだよね」
マコトはにかっと人好きのする笑顔を浮かべ、装身具が光に煌く。
魔力増幅を兼ねたその装身具は、ハンターギルドに借金をして購入した高級品。
その金額は途方もなく、ゆえに、マコトの借金も途方もないのだ。
「ま、俺はまた元通りの生活をするだけさ」
傍らによりそうサクヤの肩を抱き、カインは笑う。
その笑みは大切なものを守りきった満足感に満ち溢れていた。
「魔獣達を、守ってあげないとね」
サクヤはそんなカインの腕に手を添え、地上の魔獣たちの保護を想う。
魔獣王に利用されし魔獣は、いまだ地上で暴れている可能性が高い。
その暴走を止められるのは、きっとサクヤだ。
「竜なら俺だな。杖の力で完璧に抑えられる。任せろよ?」
スーが杖を掲げサクヤに協力を申し出る。
魔獣の中には死したドラゴンを無理やり蘇らせたドラゴンゾンビやダークドラゴンもいる。
スーの腕に刻まれし紋章にはドラゴンを抑制する力があるのだ。
神竜に会う事のできなかったスーだが、旅をし続けていればいつかきっと、出会えるのだろう。
「まあまあ、みなさん、お茶でもいかが?」
ケーナやサクヤの協力により精霊達が持ち寄った素材で、ヒカルはいつもどおり紅茶を注ぐ。
「っと、うきゃあああああ?!」
「ナツキさんっ?!」
ヒカルの入れた紅茶を飲もうとした瞬間、ナツキの身体が突如現れた闇に飲み込まれた。
『いやああああ、お師匠さまに怒られるうううううううううううう‥‥‥』
ナツキの叫びに、逆に残されたハンター達はほっと溜息をついた。
どうやらナツキの師匠が強引にナツキを手元に呼び戻したらしい。
その証拠に、ナツキが消えた場所には『馬鹿弟子は連れて帰る』との書置きがパラリと落ちた。
「でも地上にどうやってもどりましょう?」
ヒカルがそういえばーといった風に小首を傾げる。
「空間移動ぐらい、簡単ですわよ」
すっくと立ち上がり、トールが腕を振るう。
するとその先には、冒険者ギルドのドアが現れた。
「閉ざされた空間ならいざ知らず、封印の解けたこの地から道をつなげることなど造作もありませんわ。おーっほっほっほっほっほ!」
トールは高らかに笑う。
簡単に言うが、その力が並大抵のものではない事はみんなわかっていた。
「ケーナも地上に行く。偽王が自分復活の為の仕掛け地上に残しているらしいの。
パパとママにはもう何時でも会えるし、天空大陸から動けないテラの代わりを未来の奥さんがするのは、変じゃないでしょ?」
いつの間にか赤いルビーの指輪を薬指にはめたケーナがハンターギルドへと足を踏み出す。
「セルムさま? どこへ行くんです〜?」
はっとしたように、いままで隠れていたリルムがセルムを呼び止める。
「わ、私は地上の仕事が山積みなので‥‥っ」
分厚いトレードマークの眼鏡を指で押し上げ、セルムはモンスター辞典をかかえて走り出す。
「うわああん、待ってくださいよーぅっ、リルムもお供するのです〜っ!!」
その後ろを小さな妖精が慌ててついてゆく。
ハンター達の冒険は、きっと、いつまでも続いてゆくのだろう。
この世界がある限り。