ぷにっと海賊団☆ビューアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/13〜01/17

●本文

        『ぷにっと海賊団☆』

 悪の海賊団と戦う獣耳な少年少女たちが主人公の特撮番組だ。
「ぷにっとぷくっと尻尾あたーっくっ!」
 可愛いリス尻尾で悪の海賊団をぺちぺち叩く今回の主人公。
「次はこうはいかないぜっ!」
 負け惜しみを吐いて、そそくさと逃げていく雑魚たち。
「今日もぷにっと☆」
 ウィンクして、勝利のポーズを決めるぷにっと海賊団。


 ☆ぷにっと海賊団☆次回予告!

「うふふふふふふっ、美しさは、罪! ビューティーイズパワー!」
 薄暗い部屋で、きらきらと輝く蜘蛛の糸を張り巡らせて、長い黒髪で顔を隠した女性が叫ぶ。
 否、それは女性ではありえなかった。
 腰までは魅力的な女性の姿をしているものの、その下は巨大な蜘蛛の身体。
 さかさかと多足を動かして、部屋の中央に置かれた鏡を覗き込む。
「うふふふふっ、わたしは綺麗。わたしは完璧! でも、こいつらを吸収すれば、わたしはもっと美しくなるわ!」
 差し出した左手から、蜘蛛の糸が鏡に向かって放たれる。
 鏡の中では、成人式で華やかな振袖を纏った女性達が今まさに蜘蛛の巣にまかれて苦しんでいた。
 急げ、ぷにっと海賊団!
 

    ☆『ぷにっと海賊団』キャスト大募集☆
 近日放映予定のぷにっと海賊団『ビューティ・イズ・パワー!』のキャストを大募集!
 毎回主役の違うこの番組では、海賊服に身を包んだぷにっと感溢れる少年少女たちに悪の海賊団と戦って頂きます。
『ビューティ・イズ・パワー』の敵はクイーン・スパイダー。
 上半身美女、下半身蜘蛛の化け物です。
 主な攻撃はその両手から放たれる蜘蛛の糸。
 ピアノ線よりも強固で、粘り気があります。
 このモンスターと戦ってみたい、子供から10代前半の少年少女、『ぷにっと感』に自信のある方、大募集です☆

●今回の参加者

 fa0269 霧島 愛理(18歳・♀・一角獣)
 fa0318 アルケミスト(8歳・♀・小鳥)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa0914 キャンベル・公星(21歳・♀・ハムスター)
 fa1406 麻倉 千尋(15歳・♀・狸)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2604 谷渡 うらら(12歳・♀・兎)
 fa2661 ユリウス・ハート(14歳・♂・猫)

●リプレイ本文

●クイーン・スパイダー誕生!
「こんな感じ‥‥でしょうか‥‥?」
 悪の海賊団本部の一室で、ナツキ(夏姫・シュトラウス(fa0761))は床に描かれた魔方陣を見つめる。
 さまざまな記号が描かれたその中央には、一匹の女郎蜘蛛。
 ナツキは、血を思わせる赤い魔導書をおっかなびっくり開き、女郎蜘蛛に手をかざす。
 女郎蜘蛛は魔方陣にかけられた魔法の効果でその外へ出ることが出来ない分、強暴だ。
 きしゃーと、恐ろしげに口を開き、威嚇してきてナツキは泣きたくなってきた。
「でも‥‥こ、ここで止めるわけにはまいりません‥‥わ、私の代わりに‥‥ぷにっと海賊団と戦ってくれる人を作らなくてはならないのです‥‥」
 極度の恥かしがり屋なナツキには、人と戦うなんて出来ない。
 そもそも悪の海賊団に入ってしまったのだって、スカウトされた時にはっきりと断れなかった為だ。
 やめるといいたくても気弱過ぎてずっと言えずに、今日までずるずると来てしまった。
 ぷにっと海賊団との戦闘にも何度か連れ出されたが、そんなナツキに良い成果が出せるわけもなく、罰としてトイレ掃除をやらされる日々。
「こんな生活とは‥‥お、おさらばするんです‥‥が、頑張るんですっ‥‥モンスターサプライズドユーーー!」
 悪の海賊団に伝わる古代魔法を唱えたナツキのかざした手の平から、黒い光が女郎蜘蛛に向かってうち放たれる。
 そして湧き上がる黒い煙。
「うふふふふふふっ、美しさは、罪! ビューティーイズパーワー!!!」
 どおおおーんっ!
 煙の晴れ出した魔法陣の中で、見事な黒髪をかきあげて微笑む上半身美女@下半身大蜘蛛のクイーン・スパイダー(霧島 愛理(fa0269))!
「ふふん? あなたが私を呼び出したんだよね?」
 ナツキを見据えて嗤うクイーン。
「あ、あのっ‥‥」
「いいかい、感謝するんだよ。あなたには今日からこの私の世話をさせてやるんだからね。この美しい私の忠実なしもべとなるんだよ!!」
 おーっほっほっほと高笑いをしてナツキを下僕認定するクイーン。
(「い、一体‥‥どうなってるんですかーーーっ?!」)
 か弱いナツキは抵抗するすべもないまま、床にへたり込むのだった。


●晴れやかな成人式☆ ‥‥でも?
 今日は成人式。
 ぷにっと海賊団のメンバー、チヒロ(麻倉 千尋(fa1406))の家では、その準備で朝から大忙しだった。
 もちろん、チヒロの成人式――ではなく、その姉、公美(キャンベル・公星(fa0914))が出席するのだ。
「お姉ちゃん、綺麗なんだよ」
 姉をチヒロは憧れの目でみつめる。
 艶やかな振袖を身に纏い、ウェーブがかった長い黒髪をアップにした公美は本当に美しかった。
「ありがとう、チヒロ」
 そういって微笑む公美の目元には魅力的な泣きボクロ。
(「あたしもいつか、こんな風に綺麗になれるかなあ?」)
 そんなこと思ったとき、ぷにっとフォンが鳴った。


「ええっ、悪の海賊団?」
 こそこそこそっ。
 とっさに物陰に隠れて、小声でチヒロは青ざめる。
『うん。妖精が予言したんだよ。成人式会場の遊園地が狙われるって!』
 電話の相手は同じぷにっと海賊団のメンバー・ウララ(谷渡 うらら(fa2604))。
 ウララはぷにっと海賊団の海賊船『ぷにっとぷにっと☆』から緊急メールをしてきたのだ。
「そんなぁっ。よりによってお姉ちゃんの行く会場が狙われるなんてあんまりだよっ。ウララさん妖精と変わってもらえるかな?!」
『予言した肝心の妖精は‥‥え、冬物最終バーゲンに行っちゃった?』
 電話の向こうではきょろきょろと周りを探す雰囲気と、『うん。ブランドのスーツが欲しいっていってたんだよぉ』とぷにっと海賊団見習いメンバー・アルミ(アルケミスト(fa0318))の声。
 ついでウララの大きな溜息。
「わかったんだよ。何にもなければお姉ちゃんの晴れ姿も見られるし、頑張るんだよ」
 肉球ぷにっ☆
 思わず半獣化してぷにっとフォンを握り締めるチヒロだった。


●ぷにっと海賊団☆
「セイジンシキ? それってなんだよ」
 さらさらの銀髪をかきあげて、シルバー・アーデル(ユリウス・ハート(fa2661))が首を傾げる。 
 アメリカンスクールに通うシルバーは、日本の風習に疎い。
「成人式っていうのは、黒髪和服の美女が着飾ってパーティーすることよ」
「ネイトは物知りだね♪」
 海賊といえばしゃべるオウム?
 眼帯と嘴をマッチョな人形につけてネイトと名付け、腹話術のように一人芝居をする不思議美少女・アズサ(あずさ&お兄さん(fa2132))。
 左目には☆マークのついたアイパッチをつけて、海賊そのものな彼女のこの行動はいつものことなのか、周りのぷにっと達は違和感なく対応している。
「黒髪の着物美女がいっぱい集まるんだな? 早く会場に行こうぜっ!」
 銀色の虎(ほんとは猫)しっぽを揺らして一気にやる気を出すシルバーは、綺麗なお姉さん大好き。
「こらこら、成人式っていうのは二十歳になる人々を招いて、祝福する行事だよ。綺麗なお姉さんを集める行事じゃないんだよ」
 ウララが単語帳をポッケにしまいつつ訂正。
「ええーっ? じゃあ綺麗なおねーさんはこないのかな?」
「きれいなおねーさんもくるんだよぅ。チヒロさんのおねーちゃんもいるんだもん」
 舌っ足らずな口調で、幼いアルミも補足する。
「あの美人のおねーさんが見れるんだな? よっし、早くセイジンシキに行くんだよっ」
「やれやれ。現金ね」
「私たちも行くんだよ」
 肩にネイトを乗せて、アズサも準備OK☆
「あたしはここでオペレーターとして待機するわ。受験日も近いしね。
 ぷにっとスターを遊園地の上空に飛ばすから、何か情報が入ればぷにっとフォンで知らせるわ」
 ウララはぷにぷにした感触を持つ、目がついた星型の半機械生命体『ぷにっとスター』を取り出す。
 ぷにっとスターはスパイ衛星的な能力を持ち、仲間の居場所と『悪』のオーラを持つ存在の位置を知らせる事ができるのだ。
 けれど誰かが基地でモニターを見ながらの面倒な操作が必須。
 敵の弱点や具体的な能力までは知ることが出来ないし、普段妖精がいる時はあまり使用されないのだが、今回の妖精は冬物バーゲンでいなくなっちゃったし。
「シルバー、アルミ、迷子にならないでね?」
 ぷにっとスターを船外へ飛ばし、ウララは念を押した。


●遊園地は迷子?
「怪我をしないように、お友達と仲良くね?」
「うん、ちゃんと待ってるんだよ」
 半ば強引に遊園地についてきたチヒロとその友人達を心配しつつ、公美は成人式に参列する。
 遊園地に作られた特設会場は、成人式に出席する人以外は一緒に並べないから、式が終わるまでチヒロ達は遊園地で遊びながら待つことになったのだ。
 屋外会場だから離れた場所でもいくらでも様子を伺える。
「ほんとーに美人だよな、チヒロのおねーさん」
 白い虎の刺繍が入った青いスカジャンをひっかけて、ジーンズ姿のシルバーはうっとり。
 美人で黒髪で和服。
 まさにチヒロの姉はシルバーの好みど真ん中なのだ。
「お姉ちゃんはあげないんだよ?」
「なんだよ、ケチ!」
「ねえねえ? アルミはどこかしら?」
 ネイトを操り、辺りをきょろきょろとアズサは見回す。
「あれっ、さっきまでここにいたんだよっ」
 どこにも姿の見えない彼女に焦る。
「嘘だよね? ウララに気をつけろっていわれてたのに!」
「とにかくウララに連絡しようっ」


「うぐっ‥‥えぐっ‥‥ここは‥‥どこですかぁ?」
 ぽろぽろぽろ。
 大粒の涙を流し、みんなとはぐれてしまったアルミは遊園地を彷徨う。
 背中に背負った小さなリュックから生えているかのような白い翼も、しょんぼりとしおれている。  
「ね、ねぇ‥‥? どうしたの‥‥?」
 おっかなびっくり。
 海賊の髑髏マークが左胸に刺繍されている黒のワンピースに、右目にアイパッチをして、黒い瞳を長めの前髪で隠した女性が話しかけてくる。
 手には『ビューティー飲料』だとか『食物繊維入り』だとか書かれた健康飲料を持っていたりする。
「みんなと、はぐれちゃったんだよぅ」
 えぐえぐえぐっ。
 より一層激しく泣きじゃくるアルミに、
「じゃ、じゃあ‥‥私が一緒に探してあげる」
 きゅっ。
 飲み物をコートのポケットにしまい、安心させるように手を握って探し出すその女性――悪の海賊団ナツキ。
(「は、はやく飲み物を買って帰らないと‥‥きっとクイーンに叱られるけど‥‥で、でもほうっておけないです‥‥」)
 お互いに敵同士だとは気づかないまま、二人は親密になってゆく。


『アルミが迷子に? 判った、すぐに探すわ』
 ウララが電話口で焦る。
 ぷにっとスターを使えば位置の割り出しなど簡単に出来るのだが、コントロールパネルはボタンがいっぱいで操作がなんせややこしい。
 どうにか操作すると、モニターには悪の海賊団とアルミの仲良さげな姿が。
『‥‥なんでアルミが悪の海賊団メンバーと一緒に居る訳? とにかく位置をメールしたから、すぐ急行して!』
 チヒロとシルバーとアズサは顔を見合わせて、全力で走り出した。


●クイーン!
「おーっほっほっほっほっほ!」
 妖精の予言どおり、高笑いと共に成人式会場に光臨するクイーン・スパイダー。
 恐怖に逃げ惑う人々をその強靭な蜘蛛の糸で縛り上げて次々と美しさを奪ってゆく。
 美しさを吸い取られた被害者の中には、公美の姿が。
「うそ‥‥!」
 窓ガラスに映った自分の姿に愕然とする公美。
 髪はパサパサに乾き、美しかった肌は老婆のようにカサカサ。
「おーっほっほっほっほ、私ってば、どこまで美しくなっちゃうんでしょう?」
 うきうきるんるん。
 人の美しさを奪ってさらに美しくなるクイーンは、蜘蛛の下半身すら美女のそれへと変化させる。
 すらりと伸びた足は艶やかで、それは公美から奪った肌の艶そのもの。
「お姉ちゃんっ」
 駆けつけるぷにっと海賊団。
「いやっ、私を見ないでっ」
 とっさに顔を隠し、公美は会場の隅でうずくまる。
 お姉ちゃんと呼ばれたのに、ぷにっと海賊団の一人がチヒロだということにも気づいていない。
 公美の心の中は、恐怖でいっぱいだった。
 好きな人のために、綺麗になりたい。
 その想いを踏みにじられた屈辱と恐怖。
 長年努力を重ねて今の美しさを手に入れたのに‥‥。
「お願い‥‥誰も私を見ないでっ」
 決して顔を上げようとせずに泣き伏せる。
「人の一生懸命を踏みにじって、自分だけ簡単に綺麗になろうだなんて‥‥許せないよっ!」
 チヒロの怒りが頂点に達した。


「た、大変です‥‥」
 戦闘が始まった会場の隅で、アルミを抱きしめて震えるナツキ。
「遅いんだよっ、さっさとこいつらを始末するんだよ!」
 すかさずクイーン・スパーダーが見つけて命令する。
「おねーちゃん、私たちを、やっつけるの?」
 うるうるうるっ。
 必殺、おめめうるうる攻撃!
 愛らしさ抜群ぷにっと感完璧のアルミにそんな瞳で見つめられて、逆らえるやつなどいはしない。
「ち、違うのです‥‥こ、これには深い事情が‥‥」
「私のこと、まもってだよぅ」
 ぎゅう。
 しっかりナツキを抱きしめて戦線離脱させ、
(「先輩たち、頑張って! あるみが付いてるよ! 見てるだけだけど☆」)
 アルミはクイーンと戦うチヒロ達を見守る。


「ほらほらっ、そんなニャンコなおててじゃ私は倒せないんだよっ!」
 ビシュンッ!
 クイーンの指先から放たれた蜘蛛の糸が、シルバーに襲い掛かる!
「にゃんこっていうなー! 俺『タイガー』なんだからー!!」
 攻撃を避けながら胸の刺繍を指差すシルバー。
 でもどっからどう見てもぷにぷに猫さんなのは言ってはいけないお約束?
「ヒトから奪った美しさなんて、そんなのホントの美しさじゃないよっ! このキャプテン・アザーの攻撃、くらえっ!」
 アズサはぷにっとしなやかに曲がるフックのついたロープを振り回し、蜘蛛の糸を絡め取り、勢いに任せてターザンアタック☆
「きいいっ、痛いんだよっ、ぷにぷにの癖にーーー!」
 蹴られた腹をさすり、よろけるクイーン。
『この赤いオーラの色は‥‥嫉妬?』
 回線を繋ぎっぱなしだったチヒロのぷにっとフォンから、ウララの声が漏れる。
 ウララの見つめるモニターには、クイーンが赤い嫉妬のオーラを出しているのが良くわかるのだ。
「嫉妬だろうとなんだろうと、お姉ちゃんの、みんなの美しさは返してもらうんだよ!」
 チヒロは必殺技の描かれたカードを取り出して、ぷにっとフォンにスラッシュ!
「必殺、ぷにっと☆シャワー! 皆、元通りになあれっ!」
 巨大な散水ポンプ風ウェポンから光のシャワーが降り注ぎ、クイーンから美しさが光り輝く欠片となって奪った人々に戻ってゆく。
「や〜ん、かわいい〜! 私の負けよ〜!」
 ぼしゅんっ。 
 光のシャワーを振りまくチヒロのぷにぷに感にノックアウト!
 クイーン・スパーダーは元の女郎蜘蛛に戻ってそそくさと逃げ出してゆく。
「‥‥え、えーと、えーと‥‥その‥‥ご、ごめんなさい!!!」
 アルミをそっとぷにっと海賊団のほうへ差し出して、勢いよく頭を下げ全力で逃走するナツキ。
 くるりっ。
 カメラ目線で振り返るチヒロ。
 集まるぷにっと海賊団。
「「「正義は、ぷにっと☆」」」
 勝利のポーズ、きめっ☆

 こうして乙女達の美しさは元に戻り、世界の平和は今日も保たれたのでした。