炭酸レッド!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや易
報酬 1.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/25〜06/29

●本文

 炭酸レッド。
 それは巷で話題のヒーローだ。
 特撮番組『炭酸戦隊333』の主役である炭酸レッドは、日夜悪の組織と戦っている。
「炭酸レッド、かっこいいよなー!」
 日曜の朝からテレビにかじりつき、聡はレッドの真似をする。
 えいっ、とうっ!
 そんな掛け声と共に、足を大きく蹴り上げる。
「ぐはっ?!」
「あっ」
 どたーんっ。
 聡の振り向きざまに蹴り上げた右足がお父さんのおなかを直撃!
 お父さんはよろよろとそのまま居間にぶっ倒れた。
「あらあら、聡ったら部屋の中で暴れちゃダメよ?」
 朝食を作っていたお母さんが笑う。
 でも聡は笑わない。
 ちぇっと舌打ちして居間を出る。
 お父さんが痛そうに顔を顰めながらへらへらと頭をかいても無視。
(「なんでお父さんって、こんなに情けないんだろ」)
 炭酸レッドと比べて、お父さんは弱すぎる。
 いつもへらへら笑って、怒るってことがない。
 ヒーローっぽくないお父さんにイライラしながら2階に上がり、お父さんの部屋に入る。
 お父さんはちっともヒーローっぽくないくせに、ヒーローグッズがいっぱい部屋に飾ってあるのだ。
 中にはレア物の非売品なんかもあって、聡にとって宝の部屋だった。
 聡は本棚に飾られた炭酸レッドのフィギュアを背伸びして手に取る。
 だが上手く取れない。
「もう‥‥ちょいっ‥‥あっ!?」
 がたんっ!
 本が倒れた。
「ああっと、戻さないとお母さんにまた怒られるよっ‥‥ん?」
 倒れた本の後ろに、何かある。
 何かを包んだ袋だろうか。
 好奇心にかられて聡は懸命にそれを取る。
 なんとか取り出したその中身は‥‥。
「炭酸レッド?!」
 綺麗に折りたたまれてしまわれていた真っ赤なコスチュームは、間違いなく炭酸レッド!
「なんでこれがこんなところに‥‥? まさか、お父さんが?!」
 一瞬、お父さんが炭酸レッドと思いかけて、けれどすぐに聡は首を振る。
「うん、違うよね。だってお父さんはあんなにかっこよくないし」
 でもコスチュームを本棚に戻す手が心なしか震える。
 炭酸レッドは、常にフルフェイスのメットをかぶっていて、その正体はいまだ不明なのだ。
 強くてかっこいい炭酸レッドが、もしかしたらお父さんかもしれない。
 ありえないけど、でも。

 ティンタラリンロンロンロン、ドカーン!

 炭酸レッドのオープニング曲が流れ出す。
 聡の携帯だ。
 慌ててポケットから取り出す。
「メール? でも誰から‥‥怪人ジョッカー?!」
 差出人を見て、聡は携帯を落としそうになる。
 怪人ジョッカーといえば、炭酸レッドの宿敵だ。
 そいつからなんで聡にメールが?
「明日、僕を捕まえに来る?!」
 メールの内容に聡は今度こそ携帯を落っことした。
 怪人ジョッカーは悪の帝国のために子ども達を人質にとり、炭酸レッドを窮地に追い込んだこともあるのだ。
 聡を狙ってもおかしくない!
「助けて‥‥炭酸レッドおおおお!!!」
 聡の叫びが部屋中にこだました。


〜『炭酸レッド』出演者大募集☆
 特撮ドラマ『炭酸レッド』出演者募集です。
 
 炭酸レッド―― 真っ赤なコスチュームとフルフェイスのメット着用。年齢不明。
 聡―― 主人公です。小学校低学年。男の子。お父さんが嫌い?
 
 以上ニ役は確実に埋めてください。
 また、炭酸レッドのほかに炭酸イエロー、聡の友人などなど、参加メンバーに合わせて役を増やしてください。
 

〜ストーリー〜
 正義のヒーローに憧れ、弱いお父さんを好きになれない聡君の元に、TVの悪役・怪人ジョッカーからのメールが届きます。
 果たしてそれは本物なのか?!
 そして本棚に隠されていたコスチュームはなんなのか。
 聡のお父さんがTVヒーローの炭酸レッド?!
 数々の謎を解き明かし、聡とお父さんを仲よしにしてあげてください。
 なお、炭酸レッド登場時には、特撮技術を駆使した派手なエフェクトが使用されます。
 

●今回の参加者

 fa4558 ランディ・ランドルフ(33歳・♀・豹)
 fa4946 二郎丸・慎吾(33歳・♂・猿)
 fa5035 ラファエロ・フラナガン(12歳・♂・狼)
 fa5345 ルーカス・エリオット(22歳・♂・猫)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)
 fa5487 ヒノエ・シオン(12歳・♂・狼)
 fa5494 乃路 芹(24歳・♂・亀)
 fa5867 山南亮(9歳・♂・アライグマ)

●リプレイ本文

●怪人ジョッカー? そんなの、いないって!
「お父さんもっとしゃっきりしてよ。これじゃ、粗大ゴミだよ!」
 どすっ。
 居間で朝食をとっていたお父さんに蹴りを入れて、炭山聡(山南亮(fa5867))は家を飛び出す。
 お父さんが飲んでいたコーヒーを胸にこぼして、お母さんが叱る声が聞こえたけど、そんなの無視だ。
 だって、いま聡の携帯にはとんでもないメールが届いているんだから!
 信じたくないけど、信じずにはいられないそのメールは、怪人ジョッカーからのものだ。
『炭酸戦隊333』に出てくる怪人ジョッカーは、それはそれは悪いヤツ。
 メールの予告どおり、いつ聡を誘拐しに来るかと思うと気が気じゃない。 
 なのにお父さんはちっとも頼りにならないし。
 チェッと小石をけって、聡は鞄を背負い直す。
 

「はん、未だに炭酸333なんて見てるんだ? 今、時代はロックだ!」
 べーんっ☆
 そんな効果音がつきそうな勢いで、クラスメイトの花平孝史(ラファエロ・フラナガン(fa5035))は鼻で笑う。
 半ズボンについた細い鎖とアメカジ系のシャツがいかにもなバンド少年だ。
 少女めいた甘い美貌も手伝って、教室の女の子がちらほらと彼を見ている。
「ねえ、孝史っ、本当にジョッカーは来るんだよ! 喜は信じてくれるよね?!」
 孝史に笑われた聡は、やっぱり同じクラスの親友・喜(ヒノエ・シオン(fa5487))を振り返る。
 お父さんが頼りにならないいま、頼れるのはこの二人だけだ。
「そっかー。炭酸レッドって、何処にいるんだろうね〜。一度会ってみたいよね」
 でも喜は喜でのんびりとそんな事をいう。
 もう、いまは一刻を争う時なのに!
「このまんまじゃ、ぼく誘拐されちゃんだよ?!」
「何だって誘拐される? それは大変だ、警察に電話しよう」
「やっと信じてくれるの?」
 警察に言おうという孝史に、聡は目を輝かす。
「信じるって‥‥おいおい、まさか誘拐するのは怪人ジョッカーとかいわないよな?」
「そうだよ、さっきからそういってるじゃん!」 
「聡、それはテレビの見過ぎだって。そんなに怖いなら帰り一緒にかえろーぜ」
 授業のチャイムが鳴って、孝史は聡の肩を苦笑しながら叩いて席に戻ってゆく。
 振り返ると、喜もいつの間にか席についている。 
 携帯を握り締めて、聡もしぶしぶと席に着く。


●天知る地知る誰ぞ知る‥‥その名は、怪人ジョッカー!
「ふっふっふっふ、先代レッドの情報を良くぞ手に入れたな!」
 黒い仮面を身につけた怪人ジョッカー(ルーカス・エリオット(fa5345))は携帯を握り締め、部下(乃路 芹(fa5494))を褒める。
 褒められた部下兼パシリはてへへと照れくさそうに頭をかいた。
「悪役たる者、一度や二度よい子をさらわねばならない! そしてそれが先代レッドの子どもなら、俺の悪役株も赤丸急上昇。俺ってば頭イイ!」
 拳を握り締めて悦に浸るジョッカーに、部下はすかさず喝采を送る。
 憧れの悪の道に入ったものの炭酸戦隊に負け続き、他の悪役に馬鹿にされるは子供達の人気はゲット出来ないわの辛い日々にもこれでもうおさらばだ。
 最強と名高かった先代炭酸レッドをやっつけたとあれば、もうジョッカーを馬鹿にするやつなどいはしない。
「さあ、部下よ、先代炭酸レッドの一人息子、聡を連れてくるのだーーーー!」
 ばっさばっさとマントをはためかせ、ジョッカーは部下に高らかに命じるのだった。


●帰り道は危険がいっぱい? 危ない、そいつは偽物だよっ!
「なあ聡、まだ心配してるのか? ありえないから安心しろって!」
 学校からの帰り道。
 流行のロックを口ずさみ、孝史はバンバンと聡の背をたたく。
「炭酸戦隊って毎日、悪と戦ってて疲れないかなぁ‥‥怪我もするだろうし、皆強いけど大丈夫なのかなぁ‥‥」
 その隣では相変わらず喜がのーんびりとそんな事をいう。
 と、その時、聡が道端でうずくまる人影に気づいた。
「あれ、何か困って居るんですか?」
 涙ぐんでメモを握り締めていたその人影―― ジョッカーの部下は聡の顔を見てぱっと顔を輝かせた。
 聡を誘拐するべく事前に調べておいた帰り道で待ち伏せしていたのはいいものの、当の聡が中々こなくてマジで涙ぐんでいたのだ。
「あっあの‥‥ここまでの道、教えていただけませんか?」
 部下は涙でくちゃくちゃになったメモをそっと聡に差し出す。
 もちろん、メモの場所にはジョッカーが待ち構えている。
「ちょっと、ここからは遠いのかな? ぼくだとわからないから何か知っていそうな大人の‥‥うわ、何をする?!」
 がばっ!
 涙ぐんだままの部下が咄嗟に聡を抱きかかえる。
 道案内をしてもらえないばかりか、大人なんて呼んでこられたら計画がパアだ。
「あっ‥‥え〜っと‥‥道を案内して頂けると、大変助かるのですが‥‥ついでに一緒に来てもらいますっ!」
「えええええええ?!」
 びょーんっ!
 あっけにとられる子どもたちの前で、部下は超人的なジャンプ力で聡をかかえたまま屋根の上にジャンプ!
 そのまますたこらさっさと逃走!
「まって、聡君をかえして‥‥っ!」
 こけっ。
 慌てて追いかけようとした喜はものの見事にすっころんだ。
 かわいい膝小僧に血が滲む。
「ちくしょう、喜に怪我させやがって! もどってきやがれーーーー!!」
 孝史が叫ぶが、もう部下の姿も聡の姿も見当たらない。
 喜は座り込み、痛む膝小僧に鞄から取り出した絆創膏を取り出して貼り付ける。
「お前、用意いいな?」
「僕よく転ぶからって、お母さんが持ってなさいって入れてくれたの。‥‥あれ?」
「ん? ‥‥これはっ!」
 喜のすわった道端にメモが落ちていた。
「聡をさらったやつの持ってたメモだ!」
 孝史が叫ぶ。
 慌てていた部下がうっかり落としていったのだ。
「ここに聡がいる?」
「でも‥‥僕たちじゃ助けられないよ‥‥」
 途方にくれる子どもたちの後ろに、正義の影が差し掛かる。
    

●決戦! ジョッカー対炭酸戦隊!
「ふっふっふ。人質も脅迫状も完璧! 俺ってば悪役の中の悪役、もう、最高っ!!」
 椅子に縛り付けられた聡を見て、ジョッカーは最高に高笑い。
 ここは一つ葉巻でもプカーと吹かしたいところだがそこはそれ、お子さま番組。
 美容と健康と人気の為にぐっと我慢なのだ。
「ところでお前、演技上手いな。涙ぐんでいるところなんか俺には真似できないぜ」
 聡を部下が攫う時、こっそりひっそり様子を伺っていたジョッカーは部下を褒めちぎる。
 うん、泣き真似じゃなくてほんとに泣いてたんだけどね?
 そんな突っ込みを心の中で入れながら、部下は曖昧に笑って誤魔化す。
「そういやお前、トイレはへいきか?」
 ジョッカーは椅子に縛られた聡にふと声をかける。
 かれこれ二時間ぐらい縛りっぱなしだ。
 三時のおやつにチョコレートとジュースをあげたから、そろそろお手洗いの時間かも?
 だが気遣うジョッカーに聡はぷいっとそっぽを向く。
 ほんとは怖くて仕方がないけど、精一杯の強がりだ。
「なんだなんだその生意気な態度は! 俺ですら持ってない携帯電話も小学生の癖に持ってるし! ズルイから没収っ!」
「返せよ、馬鹿ジョッカー!!!」
 聡はじたばたと足をばたつかせて抵抗するが、ジョッカーが今度はぷいっとそっぽを向く。
「早く‥‥早く助けに来て、炭酸レッドぉぉっ!!!」
 聡の叫びは、果たして届いた。


「む? 来たな炭酸レッド!!!」
 バサリ。
 ジョッカーがマントを翻す。
 炭酸レッドがスポットライトに照らされて、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
 そしてその隣には元炭酸ブルー・塩津早太(二郎丸・慎吾(fa4946))もいる。
 塩津は元炭酸レッドである聡の父に会いに行く途中、途方にくれている孝史と喜にであった。
 事情を聞いて、すぐさま元炭酸レッドに連絡を取り、この場所に来たのだ。
「ジョッカー、相変わらずせこいな。そんなんだから歴代最弱の『名誉な』あだ名で呼ばれるんだぜ?」
「うるさい、黙れブルー! この人質が見えないのか?!」
「はなせっ、はなせよっ!」
 ブルーの挑発に怒り沸点、ジョッカーは聡を抱きかかえる。
 聡が必死にもがくが、力の差は歴然だ。
 聡の姿を見て、レッドは動くに動けない。
「そうそう、ブルー、お前もレッドを見習ってじっとしてなさい。さもないと人質をいぢめるぞ!」
 にやりと口の端を歪めて笑うジョッカーはもう完全に悪の帝王気分。
「さあ、部下よ、やあっておしまい!!」
「「「シェーーーー!」」」
 部下と、さらに暗黒炭酸から作り出された炭酸人形達が炭酸戦隊に襲い掛かる!
 殴られ、蹴られ、なす術もなく耐える炭酸レッドに聡の目に涙が浮かぶ。
「だめだ、ぼくはどうなってもいいから─── こんな怪人やっつけて!」
 がぶっ!
 聡が渾身の力でジョッカーの指に噛み付いた!
「おわっ、このくそガキ何をするっ、‥‥って、あっ、動くのか?! お前酷い、サイテーヨ!」
 ケリッ!
 人質のいる油断から完全にブルーを舐めきっていたジョッカーの身体にブルーの飛び蹴りが決まった。
 そのままブルーはもんどりうって倒れるジョッカーの腕から聡を救い出す。 
「レッド! お前の力‥‥見せてやれ!」
 ボロボロにされたレッドに、ブルーは必殺変身アイテムを投げる。
 受け取った炭酸レッドは、その瞬間スパークした。
 金、銀、パールの光の泡が炭酸の如く弾け飛ぶ!
「うおおお、眩しい、ぐわあああああっ!」
 ちゅどーーーーんっ!
 ジョッカーが炭酸レッドのパワーに吹っ飛んだ。
 慌てて逃げてゆく部下たち。
「お、覚えてらっしゃいーーーーーー!!」
 でも捨て台詞は忘れない。


●お父さんは炭酸レッド!
「お父さん‥‥?」
 聡は、立ち去るレッドの背中に呼びかける。
 聡には見えたのだ。
 ボロボロにされた炭酸レッドの破けたスーツの下に、コーヒーの染みのついたシャツが。
 炭酸レッドは答えない。
 けれど力強く微笑む。
「お父さんは本物だったんだね‥‥日曜に家でゴロゴロしていたのは、土曜日にタンサニウムを使い果たしていたから、そのチャージをしていたんだね?
 ぼく、将来はお父さんみたいになる!!!」
 ぎゅー。
 炭酸レッドの背中に、聡が抱きつく。
「‥‥いいねぇ。俺もそろそろ結婚考えるかな」 
 幸せそうな親子を見て、炭酸ブルーはそんな事を呟くのだった。