炭酸戦隊333〜怪談〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/28〜08/01

●本文

 炭酸戦隊333。
 それは巷で話題のヒーローだ。
 特撮番組『炭酸戦隊333』の主役である炭酸レッドは、日夜悪の組織と戦っている。
 そしてそれだけではない。
 本当は、TVの中だけじゃなく、現実に悪と戦っているのだ――。


「ちっくしょう、今度という今度こそ、成功させるわよっ!」
 ぷんすかぷんっ。
 夏のくそ暑い中、漆黒のマントをたなびかせて怪人ジョッカーは不貞腐れる。
 前回、歴代最強といわれた元・炭酸レッドを倒す計画が失敗し、悪の仲間達からより一層笑われる羽目になったのだ。
 この怒り、ちっきり爆発させねば。
「部下A! ちょーっと相談ヨ」
 呼ばれた部下A、いそいそとジョッカーの側による。
 こちょこしょ、こちょこしょ‥‥。
「ぶはっ、ぶはははははっ?!」
「笑ってる場合じゃなーっくってよ! 俺はいたって本気!」
「い、いえ、計画がおかしんじゃなくて、その、脇の手をはなし‥‥ぶははははっ」
 部下A、笑いすぎでそのまま床に転げ伏す。
 相談ついでに脇をくすぐったのはいけなかったかもしれない。
 これで彼が使い物にならなくなったら大変だ。
 なんせ、この間の失敗で部下たちにも愛想をつかされ、残ってくれたのはこの大人しい部下Aだけなのだから。
「よ、良い計画だとおもいます、ええ」
 笑いすぎておなかを苦しそうにかかえながら、部下Aはけなげにもジョッカーに賛同する。
「うむ、いい計画だろう? 小学校をお化けで満たして、お化け屋敷計画!
 名づけて小学校お化け屋敷大作戦!!
 クーラー要らずになって地球温暖化にも優しいし、俺の悪役としての地位もきっと向上。俺って天才!!!」
 じ〜んっ。
 自分の計画に感涙するジョッカー。
 だがしかし。
「あの」
「ん? なんだ部下Aよ」
「いま、小学校夏休みで、クーラー使わないような‥‥‥」
「‥‥‥‥」
 みーんみんみんみんみーん。
 いやーな沈黙の中を、せみの鳴き声が響く。
「え、えええいっ、そんなのわかっておるわ! 小学校がだめなら、大学だっていい!!
 どこかお化け屋敷にしてしまえ><!」
「りょ、了解です〜!」
 ヒステリーを起こしたジョッカーから逃げるように、部下Aは涙ぐみながらお化け屋敷計画を進めるのだった。


〜『炭酸戦隊333!』出演者大募集☆
 特撮ドラマ『炭酸戦隊333!』出演者募集です。
 
 炭酸戦隊333―― 炭酸レッドを中心に、炭酸ブルー、炭酸イエローがいる。
           フルフェイスのヘルメット着用で、正体不明。

 怪人ジョッカー―― 炭酸戦隊の宿敵。炭酸戦隊に何度も戦いを挑むも負け続きで悪役たちにバカにされ続けている。
 前回『炭酸レッド!』にて元・炭酸レッドの一人息子・聡をさらおうとしたが失敗。
 より一層バカにされて怒り心頭中。

 部下A―――――― ジョッカーの唯一の部下。大人しくて、やや挙動不審。

 
 この他にも、参加メンバーによって随時役を増やしてください。
※前回『炭酸レッド!』出演者は、できるだけ前回と同じ役で出演してください。
 ただし、話の展開上前回の役は出番がない場合は、他の役に変更してください。
 
〜ストーリー〜
 悪の怪人・ジョッカーがどこかの学校をお化け屋敷にし、人々の生活を脅かそうとしています。
 炭酸戦隊333は世界の平和の為にこれを見事解決してください。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa3571 武田信希(8歳・♂・トカゲ)
 fa4235 真喜志 武緒(29歳・♂・狸)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa4940 雪城かおる(23歳・♀・猫)
 fa5196 羽生丹(17歳・♂・一角獣)
 fa5345 ルーカス・エリオット(22歳・♂・猫)

●リプレイ本文

●お化け屋敷大作戦、開始! 心強い味方も登場だっ☆
 敬愛する上司・怪人ジョッカー(ルーカス・エリオット(fa5345))の命令で近所の小学校を訪れた部下A(真喜志 武緒(fa4235))。
 その手には、『お化け屋敷大作戦作戦計画書』が握られていた。
「ふっふっふ。ジョッカー様の為に寝ずに作成したこの計画書通りに任務を遂行すれば、必ずや勝利は我らの手に! ‥‥我ら?」
 自分の言葉に、ふと作戦書を見つめる。
 徹夜で作った事細かなその作戦書を見るのは所詮部下Aのみなのだ。
 くすん。
 自分以外誰もいない寂しさにほんのり涙が浮かぶ。
 だがジョッカー様の為、頑張らねば。
 びくびく、おどおど。
 校門をくぐり、校舎へ向かう。
 抜き足、差し足、忍び足。
 こっそりひっそり植え込みから植え込みへ‥‥。
「お前、なにやってるんだ?」
「うっぎゃああああああ?!」
「おいおいおいっ、俺だよ俺っ!」
 天が裂けそうなほどの悲鳴を上げる部下Aの口を、部下3号(九条・運(fa0378))が慌ててふさいだ。
「え‥‥うわわ、戻ってきてくれたんですかっ!」
「い、いや、まあ、その、あれだ。困ってんなら協力するぜ? みてらんねぇし」
 ぽりぽり。
 そっぽを向いて頬をかく部下3号。
 マジ泣きして喜ぶ部下Aに照れたらしい。
「貴方がいてくれるなら、この作戦はもう成功したも同然ですっ! さあ、一緒に職員室へー!!!」
「お、おう?!」
 部下Aに半ば引きずられるように部下3号も職員室へと向かうのだった。
  

●餅は餅屋! 本物には敵わない?!
 意気揚々と職員室へと向かった部下Aと部下3号。
 数分後。
 彼らは校門の前にしょんぼりと座り込んでいた。
「‥‥最近の学校はセキュリティが高いですね‥‥」
「おのれセ○ム、俺様にびびったな!」
 部下3号が校舎に向かって拳を振り上げて威嚇するが、とてもむなしい。
 校舎に入るまでは、実に順調だったのだ。
 夏休みのせいか人も少なく、これといって見咎められる事もなかった。
 だが校舎に一歩踏み入った瞬間、警報装置作動!
 耳をつんざく警報音とどたばたと走ってくる人の足音に慌てて二人は逃げ出した。
 先生方の入る職員玄関を利用すれば警報器は通常鳴らないのだが、そんなことは小学校をとうに卒業してしまった二人にわかろうはずもなかった。
「何か、いい案ないですか‥‥?」
「無い」
 涙ぐんで計画書を握り締める部下Aに即答する部下3号。
 どんなに細かく計画を練っていても、肝心の学校に入ることすら出来ないのでは激しく無意味。
「いっぱいお化けを作り上げて、ジョッカー様を喜ばせたかったのに!」
 叫び黄昏る二人のもとに、生暖かい風が流れてくる。
「呼んだかしら」
「「?!」」
 いったい、いつからだろう?
 気がつくと、巴(雪城かおる(fa4940))が二人の側に佇んでいた。
「お、お前、いつの間に俺の横に? っつか、影がねぇ!!!」
 思いっきり部下3号が飛びのける。
 巴には影がついていないのだ。
「あ、あの、あなた、いったい‥‥」
 がくがくぶるぶる。
 震えながらけなげな部下A、気丈にも巴に尋ねる。
「幽霊に決まってるじゃないですか。お化けの話をしていらしたから来たのだけれど‥‥不要なら帰りますわ」
 ツン!
 明らかに気分を害し、巴の姿が薄まる。
「ああああっ、まって、まってください! 僕たちには、貴方が必要なんです!」
 ぐわしっ!
 部下Aが消えかけた巴の手の平を両手で握り締める。
 その瞬間、巴はぼんっと真っ赤に。
 消えかけていた身体もはっきりと、真っ赤に染まっている。
「そ、そこまでいうなら手伝ってあげるわ。か、勘違いしないでよね。貴方のためなんかじゃないんだから」
 ツンツンツンっ。
 ツンデ霊・巴ゲットだぜ?
 部下Aと部下3号、顔を見合わせてガッツポーズ。
「こ、今度こそジョッカー様の為に、しぇーーーー!!!」
 毎朝欠かさずに訓練している叫び声をあげて、部下Aは二人と共に職員室へ駆け込むのだった。


●職員室占拠! 私達、どうなっちゃうのーーー?!
「きゃーっ! 誰なの貴方達!」
 芹香(姫乃 唯(fa1463))の叫びが職員室に響き渡る。
 母校である小学校へ訪れたところ、ジョッカー一味が現れたのだ。
「‥‥なんだ、身体が‥‥」
 咄嗟に教師・赤城大輔(羽生丹(fa5196))が子ども達を背中に庇うが、その身体がいまいち上手く動かない。
 丁度忘れ物をとりに学校へきていた滝川英弘(武田信希(fa3571))もあまりの事態に腰を抜かす。
「流石本物だな。警報装置も止めれるし、金縛りも出来るし、巴は完璧だ!」
「いやだわ、そんな、当たり前のことですわ」
 部下3号に絶賛され、巴は満更でもない様子。 
 職員室には巴の能力で人魂がふよふよ飛び回っていた。 
「あぁ‥‥良かった‥‥! これでジョッカー様をお呼びできます」
 部下Aは感涙に咽びつつ、ジョッカーに携帯を鳴らす。
 いや、ジョッカーは携帯持ってないんだけどね?(汗)
 普段は怒られるから使わない携帯を使ってしまうぐらい喜ぶ部下Aは、赤城が不審な動きをすることに気づかないのだった。


●ジョッカー様万歳! 我らの勝利はすぐそこだっ?! 助けて、炭酸戦隊!
「お前達ホント凄いな! 感動したっ!」
 抱きゅーーーーーv
 このくそ暑い中、スキップしながら登場したジョッカー、黒いマントをやっぱり脱ぎもせずに汗だくなまま部下Aと部下3号を思いっきり抱きしめる。
 あまりの暑苦しさに当事者達よりも見ている周囲が思いっきり引いた。
「これって、精神攻撃ってやつだね‥‥」
 英弘が思いっきり嫌そうにぼそっと呟く。
 相変わらず身体は動かない分、視覚効果ダメージが凄まじい。
「貴方はもしや、怪人ジョッカー?! いつも炭酸戦隊333に負けてばかりいる、あの!」
 喜びまくるジョッカーに見覚えのある芹香が驚愕の事実を告げる。
「いわれてみれば、本物?!」
 英弘もはっとする。
 いつもTVで見ている特撮番組『炭酸戦隊333』。
 いま目の前で暑苦しいスキンシップをかましているその人物は、負けっぱなしの悪役・ジョッカーに間違いない!
「ふんっ、負けっぱなし発言は気に入らないけど、そう、この俺は怪人ジョッカー! 
 この職員室お化け屋敷大作戦が成功したいま、先生はプールの監督が出来ずに子供達はさぞかし困る筈。宿題の相談も出来ずもっと困る筈‥‥うはっ、俺様大復活の予感!」
 じ〜ん。
 勝利の快感に酔いしれる。
 と、その時。
「ちょっと待ったー。まーた、やってるね君達」
 ラーメン屋の出前・樋野エンジ(Iris(fa4578))がひょっこりと現れた。
 手にはもちろん出前一式を持っていたりする。
「貴様、どうやってここにはいってきた?!」
 部下3号が唖然とする。
 巴の力で学校は今、だれも入れないはずなのだ。
 そればかりか職員室と同じくふよふよ人魂が周囲に浮かびまくっているはず。
 七三分けの地味な髪型と野暮ったい眼鏡、よれたバイト服。
 見るからにぱっとしないアルバイターだが、ただのアルバイトがここまでたどり着けるはずが無いのだ。
「お前、只者じゃないね‥‥!」
 ジョッカーが気づき、マントを払って戦闘体勢をとる!
「ふっ、バレてしまったんなら仕方ないんだよ。‥‥レッド!」
 エンジが赤城に炭酸バッジを投げ渡す。
 その瞬間、赤城が光り輝き、炭酸レッドへと変身!
「助かったよ、イエロー」
 赤城が、いや、レッドがにやりと笑う。
 そう、部下Aが携帯をいじっている間に、レッドはイエローに緊急連絡を入れていたのだ。
「ジョッカーめ、学校を占拠するとは許せん。当直の間、クーラーで涼む作戦が台無しじゃないか―― 八つ当たりじゃないぞ」
 ビシッ。
 レッドも戦闘体勢をとる。
「いやー、レッドから連絡受けてきてみたけど、マジでお化け屋敷を作っているとはねー。本気でこれやってるんだから信じられない。これはない、ないよ」
 苦笑しながらイエローも変身。
「ええい、おだまりっ。お前達、やっておしまい!」
「‥‥ええっと、二人しか、いないんですけど‥‥」
 しーん。
 いやんな沈黙が流れる。
「やっぱり部下に逃げられたのね‥‥」
 不憫なといわんばかりの目で、芹香が呟く。
「あ、いや、ほら、あれだよな? 里帰り! ブルーもいま里帰りだしさあ」
 かわいそうになって、慌ててレッドがフォローを入れた。
「そ、そう、他の部下もお盆帰り中だ! 部下A、部下3号、そして怪人巴、やあっておしまいっ!」
 きいっ。
 レッドのフォローに真っ赤になりながら、ジョッカーが命令する。
 だがその命令に巴が切れた。
「怪人、ですって‥‥?」
 辺りの気温がぐっと下がる。
「そ、そうだろう? お前、部下Aがスカウトした怪人じゃないのか?」
「あわわっ、ジョッカー様、彼女は正真正銘の幽霊ですよー!」
「ひっ?!」
 ジョッカー、巴からびくううっと後ずさる。
「ジョッカー、足が震えてるんだよ」
 英弘が呆れてつぶやく。
 ジョッカーのすらりと長い足は小鹿のようにプルプルと震えていた。
 スタイルが良い分、震えが余計目立つ。
「お、お黙り、お黙りいっ! とにかく怪人でも幽霊でも何でもいい、炭酸戦隊をやっつけろ!」
「何で?」
「へ?」
「この私がなんで戦わなくてはいけないのかしら。怪人呼ばわり、許さなくってよ‥‥」
 ピシシッ、パリンッ‥‥。
 巴の姿が揺らぎ、職員室にラップ音が響き渡る!
「「「ひえ、ひえええええ?!」」」
 怯えて再び引っ付くジョッカーと部下A&3号。
 だが逃げ場はどこにも無い!
「知っているかしら? 人魂の正体ってプラズマなのよ。喰らって地獄に落ちなさい。プラズマエクスプロージョンッ!!」
 巴の怒りのままに稲妻がジョッカー一味に降り注ぐ。
「ふむ、まだ息があるな。ジョッカーだろうが何だろうが、正義の前には悪即斬! 食らえ炭酸ジェット!」
「痺れるといいよ。スパークリングビーム!!!」
 虫の息なジョッカー一味に炭酸戦隊の必殺技が炸裂!
 赤と黄色の炭酸を思わせるスプラッシュが当たり一面に巻き起こる。
「プラズマより、テンプラが好きだ〜〜」
「覚えていやがれヨーーーーー!!!」
「ジョッカー様、お許しを〜〜〜><!」
 チュドーン!!!
 派手な爆音と共に、ジョッカー一味が吹っ飛んでいく。


●エピローグ〜正義はいつも333ヴィクトリー!
「やっぱり炭酸戦隊333って素敵‥‥! 有り難う、炭酸戦隊333!」
「正義って、やっぱり勝つんですね!」
 芹香と英弘がうっとりとした目で炭酸戦隊の二人を見つめる。
「助かったよ、ありがとう」
 イエローが巴に微笑む。
 彼女がブチ切れてくれたお陰で必殺技を発動することが出来たのだ。
「か、勘違いしないでよね。別にアンタ達のためにやったんじゃないんだから。幽霊なんだから祟っただけよ」
 ツンっ。
 巴は頬を染めながら空中に掻き消える。
「え‥‥ほんとに幽霊‥‥? きゃーーーーーっ!」
 いまさらながらに事実を理解した芹香の悲鳴がこだました。