†雀巫女神社†夏祭り☆アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/03〜08/07
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●本文
埼玉県の片隅にあるその神社は、恋が叶うとして密かに有名だった。
小さな山の上にぽつんと立ち、赤い鳥居と、赤い袴姿の巫女さんがいる、どこにでもある普通の神社。
その神社の境内は、きょうはこれでもかというほど賑わっていた。
山の裾から境内まで露店がずらっと立ち並ぶ。
「えーいらっしゃいらっしゃい! 焼きたての熱々のトウモロコシだよ〜!」
「お嬢ちゃんお嬢ちゃん、金魚すくいやっていかないかい?」
「チョコバナナ一本100円! いまならチョコスプレーもトッピングだぁっ!」
そんな元気な呼び声があちらこちらから上がっている。
そう、これは年に一度の夏祭り。
しかも一週間も続く盛大なお祭りなのだ。
神主も、その娘や巫女さんたちお、一生懸命お手伝いしている。
その様子を、数羽の雀たちが鳥居の上から楽しげに見つめていた。
ぽん、ぽぽんっ☆
雀巫女神社の雀たちが、次々と巫女姿に変わってゆく。
羽織袴に背中に茶色い雀の羽を持った彼女達の姿は、普通の人間にはもちろん見えていない。
「たのしそーだよね〜☆」
わくわくと好奇心に目を輝かせる雀巫女もいれば、
「神主さま、大変そうですわ。わたくしも何かお手伝いしなければ‥‥」
忙しそうな人間達を見て、手伝いを思案する雀もいる。
「あ‥‥あの恋人達‥‥、なんだかもめているような‥‥」
屋台の前でなにやら険悪な雰囲気を醸し出すカップルを心配そうにみつめている雀巫女もいる。
「よーし、いっぱい手伝って、あたし達も楽しんじゃおう!」
元気いっぱいな雀巫女がそう提案し、それぞれが思い思いにこのお祭りを楽しむことになったのだった。
〜雀巫女神社出演者募集〜
特撮番組『雀巫女神社』出演者募集です☆
なぜか人間に変身できる雀達が、恋に悩む人々の願いを叶えてゆきます。
『†雀巫女神社†夏祭り☆』では、お祭りのお手伝いや喧嘩の仲裁、ゆっくりとお祭り見物などなど、それぞれがお祭りをいろいろな形で楽しみます。
そして雀達はそれぞれちょこっとした魔法が使えます。
でもあくまでちょこっとした些細な魔法なので、天変地異を起こすような物は使えません。
背中に雀の羽を生やしていますが、普通の人間に会うときは隠すことも出来ます。
また、通常は雀巫女状態の雀達の姿は人間には見えません。
なお、オープニングには女の子姿の雀しか出てきていませんが、男の子の雀がいてもOKです。
その場合は、巫女服ではなく狩衣などになります。
〜募集役〜
雀巫女
雀巫女以外にも、お話に合わせて役を増やしてください。
※前回までの参加者様は、できるだけ前回と同じ役で出演してください。
但し、前回演じた役が話の都合上出演がない場合は、出演のある役へ変更していただいてOKです。
例)前回はヒロインの友人役だったが、今回はヒロインが違い友人は出演しないので、雀巫女に変更、など
〜成長傾向〜
芝居、軽業、容姿
●リプレイ本文
●さあさあ、夏祭りの始まりだよ☆
「お祭りなの〜」
るんるんるん♪
雀巫女のるう(江見澤るう(fa1320))は子どもらしい愛らしさでくるくるとその場で回る。
その姿はもちろん雀巫女姿。
今日は年に一度の夏祭り、雀姿では楽しめない事がいっぱいあるのだ☆
「るうさん、あんまりはしゃぐと迷子になってしまうんだよ」
そう言いながらるうの手を引く雪菜(風間由姫(fa2057))はちゃっかり浴衣姿。
どこで手に入れてきたのか、紫陽花柄の浴衣は涼しげでよく似合っていた。
「まあ、今日は年に一度の夏祭りやしな。神主も巫女もてんてこ舞いになっとるし、トラブルに巻き込まれへんようにな?」
そして茜(十六夜 勇加理(fa3426))はハッピ姿にサラシをきゅっと巻いて屋台を手伝う気満々。
元々大阪生まれの熱血雀、祭りと聞いてじっとしているはずがない。
「夏祭りはいつも賑わうんだよ。去年はわたあめ食べたけど、今回は何してようかな〜? ‥‥ん? るうちゃんも一緒にいく?」
こちらも雀巫女姿の菫(月 李花(fa1105))は足元のるうと目が合い、尋ねる。
夏祭りがはじめてのるうは既にきょろきょろと危なっかしい。
いくら雀巫女とはいえ、この人込みの中に小さなるうが一人で紛れると危険だ。
「もちろんあたいもばっちり参加よ!」
「お祭り‥‥面白そうですので、私もついて行きます〜」
文(アヤカ(fa0075))は元気いっぱいに拳を振り上げ、なつめ(柊棗(fa4808))は相変わらずほわわーんと眠たげに同意する。
「なら僕は、見回りを担当します。先ほどもお賽銭泥棒が発生したりして神主さんも大変そうです」
雀巫女にしては珍しい男の子の葉月(ノエル・ロシナン(fa4584))は紺色の袴の裾をすっと捌く。
葉月は声変わりすらもまだしていない幼さだというのに、しっかり者だ。
「落し物なら探せるのですがぁ〜‥‥泥棒さんは警察の方に任せておいたほうが良いのではぁ〜‥‥?」
なつめの提案に、けれど葉月は首を振る。
「迷子探しも泥棒探しも確かに警察の仕事ですが、この神社で起きた事なら自分で処理したいのです。では、見回りにいってきます」
ぽんっと雀姿に戻り、葉月は夕空に舞い上がる。
雀なのに夜目が効くのは雀巫女のせいか、それとも屋台の照らす光で周囲が明るい為か。
迷うことなく、葉月は境内から山の麓へと降りてゆく。
●お祭りは美味しいものいっぱい☆ ‥‥でもきょろきょろしていると、はぐれちゃうぞっ。
「葉月さんは相変わらず真面目ね。あたいも見習うべきかしら? でもその前に美味しいもの食べたいわね」
きょろきょろきょろ。
文も雪菜を見習って浴衣にぽんっと魔法で着替え、屋台をきょろきょろと見回している。
「リンゴ飴を買ってきたんだよ」
みんなの分のリンゴ飴を買ってきた雪菜は、ふと、屋台の裏で深刻な顔をしている男女に足を止める。
「え〜っと‥‥どうしましょうかぁ?」
おっとりしたなつめも気づき、雪菜と二人でそっとカップルの側に忍び寄る。
「‥‥どうやら、それほど深刻な話じゃないんだよ」
じっと木陰で聞き耳を立てていた雪菜は、話の内容にほっとする。
「金魚さんがぁ、多すぎですかぁ〜。確かにいっぱいいるのですよぉ」
なつめもほのぼのとした話題についつい、金魚の数を遠目に数えてみたりする。
カップルが深刻な顔をしていたのは、屋台で捕まえた金魚が多すぎて、飼うスペースをどうしようということだった。
相手の男性が彼女の前だから気合入れまくりでとった結果、軽く二桁。
スペースに悩むのも無理はない。
「二人とも、お祭り見物に戻るんだよ。‥‥あれ?」
なつめと文、二人に声をかけたつもりの雪菜だったが、文の姿が見当たらない。
「‥‥あらぁ? どこに行ったしまわれたのでしょうかぁ??」
なつめもほんのりと辺りを見回すが、文の姿はどこにも見えない。
「取り敢えず‥‥あの白いふわふわしたものを食べたいですねえ」
文の事をサクッと忘れてわた飴をうっとりと見つめるなつめに、雪菜はずっこけた。
まあ、当の本人の文は危なっかしくともるうよりはずっと大人。
はぐれてしまったことはそれとして、きっと一人で楽しんでいるに違いない。
巡回中の葉月もいることだし、きっと大丈夫☆
●外人さん、イラッシャーィ! ニッポンのお祭りを楽しんでね☆
「Oh‥‥ドウシマショ」
日本に旅行に来ていたリタ(アイリス・エリオット(fa5508))はぺリドットを思わせる神秘的な瞳を瞬かせる。
友人と共に日本の祭り見物と洒落込んでいたのだが、写真をとっている間にはぐれてしまったらしい。
「お姉さんどうしたの?」
途方にくれているリタに一早く気づいた菫が声をかける。
菫に手を引かれたるうも「おねえさん、へーき?」と小首を傾げる。
「WAO、巫女さん、ビューティフォー!」
だきゅっ☆
羽こそ隠してあるものの巫女姿の二人にリタは感激!
ちっこいるうを抱きしめる。
「んー、もしかして一緒の人とはぐれてしまったのかな? 菫達と一緒にいく? 人数多いほうが楽しいんだよ!!!」
ほんの少し先の未来を視た菫は、リタをちょっぴり強引に誘う。
「モチロン、ぜひぜひ」
ぎゅううううっ☆
日本の象徴とも思える巫女姿の二人の手を握り締め、リタは笑顔で即答。
「‥‥今日はお祭りだし、ちょっとくらい良いよね?」
射的をしてみたいというリタの隣で、るうは珍しく故意に魔法を使う。
ふだんからるうの側にいるだけで他人はささやかな幸せに見舞われるのだが、魔法を使われたリタは果たして凄まじかった。
「OH MY GOD!!! スゴイデス、ドマンナカデーッス!」
初めてだというのに、的のど真ん中に見事命中して景品ゲット☆
子どものように大仰にはしゃぐリタに、るうも大満足。
誰かが喜ぶ姿は、いつもても楽しい。
「あの丸くて茶色いの、何デス?」
景品のぬいぐるみを抱きしめ、屋台めぐりに再び戻ったリタは、見慣れない食べ物を指差す。
そこでは、茜がこれでもかというほど豪快にたこ焼きを焼いて呼び込みをしていた。
「粉モンはなぁ、出汁と手際が命なんや。外はカリカリ、中はしっとりや! どんどん食ってきぃ!」
「茜さん、お疲れさまなの〜」
「おっ、なんやなんや、えらいべっぴんさん連れてるやないか。ここはいっちょ、ウチがおごっちゃるきに、茜流タコヤキ食べてみ!!」
くるくると器用に千枚通しを操り、たこ焼きを焼いてゆく。
かたどられた鉄板の上でコロコロ回ってゆくたこ焼きの姿も目に楽しいが、味も絶品だった。
「ニポンの女の子、元気! タコヤキ、最高デス!」
出来たての熱さにわーおと感激しつつ、リタご満悦。
「そやろ、うちのタコヤキは特別やで! 出汁は三日間も煮込んだおでん汁やろ、それからうちの手際のよさ。この二つが合わさって最高のモンができあがるっちゅう寸法や。
ほんまは外人さんには中身はタコより蒟蒻が喜ばれるんやけど、タコも口にあったようやな」
へへんと胸をそらす茜に三人は礼を言い、菫の勧めで境内の方へ歩いてゆく。
●お祭り終了☆ みんな、いっぱい楽しめたかな?
「りんご飴にわたあめ、イカ焼きに焼そば、それにタコヤキ‥‥あと食べてないのはなんだったかしら」
雪菜となつめとはぐれてもぜんぜん戸惑うことなく屋台めぐりをしていた文は、ぽんと誰かに肩を叩かれた。
「ん?」
「貴方は、一人で何をしていらっしゃるんですか」
振り返ると、そこには葉月が雀巫女姿で立っていた。
「何って、お祭り見物よ?」
見ればわかるでしょうといわんばかりの文に、葉月は偏頭痛が起きそうになる。
「雪菜さんとなつめさんはどうしたんですか。二人が必死に探しているんです」
そんなに心配しなくても大丈夫なのだが、雪菜が特に不安がって文を捜し歩いていたらしい。
「悪いことしちゃったかしら。あ、そうだ。葉月君もタコヤキ食べよ?」
「僕は見回り中です」
「もうそろそろ祭りも終わるから大丈夫よ。茜さんのタコヤキ本当に美味しいのよ」
断る葉月を強引に引っ張って、文は茜のところに連れて行った。
「OH、マイフレンド!」
境内にリタたちが着くと、そこにはリタの友人が佇んでいた。
携帯も国外で通じないし、友人もリタと逸れて途方にくれていたらしい。
「アナタ達のおかげ、とても楽しカッタ!」
日本の祭りをめいっぱい楽しんで友人とも再会したリタは、嬉し涙をこぼして感激する。
菫には、この未来がチラッと視えたのだ。
「お祭り‥‥楽しいの‥‥」
途中で寝落ちてしまったるうは、菫の背中でぽつっと寝言を呟く。
幸せそうな寝顔から察するに、夢の中でもお祭りを楽しんでいるに違いない。
「あ〜張り切ってタコヤキ焼いてたら、すっかり終わってもうてるなぁ」
既に片付け始められた屋台を見て、茜はしょんぼりと溜息をつく。
「この夏こそ恋の予感がしたのに‥‥ガッカリや」
夏は恋の季節。
ウルトラビューティーな茜には恋人の一人や二人と出会える気がしてたのに。
「茜さんのタコヤキ、美味しかったです」
落ち込む茜に、葉月が声をかける。
半ば文に強引に食べさせられたタコヤキだが、本当に美味しかったのだ。
「よっしゃぁ! 来年も美味しいの焼いたるから楽しみにしときや!」
葉月の言葉に一気にご機嫌になった茜は、来年に向けてにんまりと笑うのだった。