まほぷり☆くらげ!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
霜月零
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
3.6万円
|
参加人数 |
7人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/17〜09/21
|
●本文
七つの虹を超えたその向こう。
色とりどりの花が咲き乱れる場所にその国はありました。
夢と希望と魔法で出来たそのハッピー王国の王女様は、世界をハッピーにする為に今日もお供と一緒に旅を続けておりました‥‥。
「うーーーみーーーーーーーーー☆」
ひゃっほうと歓声を上げて海に飛び込む王女様。
9月とはいえまだまだ暑い今日この頃、がらがらに空いているどころか王女達以外誰もいないこの海にこれたのは幸運といえるだろう。
「いたっ?!」
「姫?!」
従者に作ってもらった浮き輪でぷかぷか生みに浮いていた王女様が顔を顰める。
「か、からだ‥‥あし‥‥‥」
みるみるうちに王女様の顔は青ざめ、従者が慌てて海に飛び込み王女を抱きかかえる。
「うっ?!」
その従者も、足に走った鋭い痛みに顔を顰めた。
「ヤバイ、この海何かいやがるぜっ!」
痛みをこらえて何とか王女を浜辺に運び込むものの、従者もその場に崩れ落ちる。
みれば王女と従者、その足には無数の蚯蚓腫れが!
「これは、海月?!」
神官が即座に解毒呪文を唱えて二人の毒を中和する。
「この海に人がいないのは、そのせい?」
毒が中和され、痺れの取れた王女が呟く。
どこまでも澄み渡り、海底が見えそうなほどの青い海。
よくよく考えれば、これほどまでに美しいこの場所に人がいないなんておかしい。
「ですが姫、このあたりの海では海月は発生しないはずですわ」
神官が地図を見て眉を潜める。
「そういうけどさぁ、現実にいるじゃん? マジ痛かったし。こんな場所、早くいこうぜ」
足をさすり、海を見る従者の目が冷たい。
治療が終わって既に痛みはないとはいえ、長居したくないのは当然だろう。
「うーん‥‥ひええっ?!」
悩む姫たちの前で、そいつは現れた。
どーっぱあああああんっ!!!
盛大な水しぶきを上げて、海の上に海坊主がいた。
いや、海坊主ではない、巨大なクラゲだ!!
「ちょっ、まっ、きいてないぜーーーーーーーーーー?!」
「逃げるんだよっ」
全力でその場を後にする王女達一向。
だが、そんな彼女達を嘲笑う姿があることに、まだ気づいてはいなかった‥‥。
☆出演者募集
魔法のプリンセス☆、略してまほぷり☆、出演者大募集。
世界をハッピーにする使命を負った王女様ご一行を、楽しく演じてください。
☆募集役
王女―― この物語の主役です。
ハッピー王国王女。
12歳。 ツインテール。
まだまだ世間知らずです。
魔法を使う事ができますが、まだ少しコントロールが曖昧です。
前回のお話で魔女の呪いで姿が変化してしまうようになりました。
お供の人―― 数名。
王女様と共に旅をする人々です。
王宮勤めのクレリックや爺や、旅の商人などなど、王女様を手助けする人々です。
参加者に応じて臨機応変に対応してください。
悪役―――― 姫を妨害する人々です。
(必須ではありません)
希望役がかぶった場合は、『王女は二卵性の双子であった』や、『王女様の妹(または姉)も一緒に旅に出ていた』などで対応できます。
そしてライバル国のお姫様をつくってみても良いですし、王女様の命を狙う悪者集団なども設定可能です。
参加者にあわせて役を増やしてください。
※前回までの『まほぷり☆』出演者は、できるだけ前回と同じ役で出演してください。
ただし、ストーリーの展開上前回の役では出番がない場合は、別の役に変更可能です。
そして主人公『王女様』は、呪いのせいで姿が変わってしまいます。
その為、前回とは別の方が演じることも可能ですし、『王女の家族そっくりになってしまった』などで王女の家族や従者が演じることも可能です。
『まほぷり☆旅立ちの日』で王女を演じてくれた方が今回も演じる場合は、『一時的に呪いが収まっている』などで対応します。
〜ストーリー〜
世界をハッピーにする為に、ハッピーノートにハッピーマークを集める王女様達。
ハッピーマークは困っている人々を幸せにすると手に入ります。
そして今回、王女様たちは巨大クラゲに遭遇してしまいました。
世界をハッピーにするために、見事クラゲをやっつけて海に平和を取り戻してくださいね。
そして敵はもしかするとクラゲだけではないかもしれません(謎)
※今後の展開上、呪いはずっと解けません。
●リプレイ本文
●くらげの毒は二分割?
「とりあえず、逃げ出したけど、戦略的撤退というものよ!」
ぜぇぜぇぜぇ。
息を切らしながら巨大くらげから逃げ出した王女(山南亮(fa5867))は見栄を張る。
はっきりきっぱり足はカクカク震えているし、くらげに刺された足の痛みはひいたものの、なんだか身体が妙だ。
「い、いきなりあんなデッカイやつが出てくるからビックリしたぜ」
額から滝のような汗が迸るのは暑さのせいか冷や汗か。
王女と一緒に逃げた盗賊のマリク(瑛椰 翼(fa5442))も驚きを隠せない。
「本当に、何故あのような巨大くらげがいるのでしょう」
マリクの隣にいた王女(バッファロー舞華(fa5770))も深く溜息をつく。
ん?
王女???
「って、何で王女が二人なんだ?!」
マリクが慌てて飛びのく。
目の前にはさっきまで一緒に行動していた王女と、もう一人の王女が出現していた。
顔も性格も姿もまるで違うのに何故王女とわかるのか?
それは世界のお約束というヤツである。
「えっと、本物?」
小柄でボーイッシュな王女A、大柄な王女Bを見上げる。
王女Bは170cmを越える長身で、元々が12歳の王女とは思えないほどナイスバディなのだ。
「同じ質問を返したいところですけれど、本物です」
いきなり二人に分かれてしまったことに戸惑いを覚えつつ、王女Bは手にしたハッピーノートを見せる。
「ノートは間違いなく本物だな。こっちの王女も持ってるのか?」
マリクが王女Bのハッピーノートを覗き込み、王女Aも自分のハッピーノートを見せる。
外装はもちろんのこと、今まで集めたハッピーマークもどちらのノートにも納められている。
「くはっ、なんだって二人になったんだ?! ジョルトもいなくなっちまうし、わっかんねー!!!」
マリクがガシガシと頭をかきむしるが、なってしまったものはもうしょうがない。
「とりあえず、あのお化けクラゲをどうにかしないとこの地域の人がきっと困るわ」
「世界をハッピーのするためにも、あのクラゲを退治しましょう」
姿が二人に変わっても心根の優しさは変わらない。
マリクは二人の王女に戸惑いつつ、
「そういやクラゲは珍味として逸品だと‥‥聞いたことがあるな。よし、ちょっと情報収集してくるぜ!」
地域住民への聞き込み調査を開始するのだった。
●悪の女王、その名はエカテリーナ・グリューネワルト・エッシェンバッハ・セレブ!
「ふふふ、いい感じね」
有り余る富と権謀で世界を操るセレブリアのお姫様・エカテリーナ・グリューネワルト・エッシェンバッハ・セレブ(銀城さらら(fa4548))は魔族・クラゲキング(イーノ・ストラーダ(fa5820))の報告にご満悦。
もともと、セレブリアの所有以外のビーチをクラゲだらけにし、セレブリアの観光施設の収益を上げる計画だったのだが、ハッピー王国の王女が引っかかるとは。
棚からぼた餅とはまさにこのこと。
「エカテリーナ様、いかがいたしましょう」
真っ白いタキシードに身を包んだクラゲキングは指示を仰ぐ。
「そうね‥‥にっくき王女を懲らしめるのもおつだけれど‥‥」
豪奢な椅子に腰掛けていたエカテリーナは立ち上がり、扇で顔を隠すようにクラゲキングに耳打ちする。
「部下を一名、つけて頂けますか」
エカテリーナの指示を真剣な面持ちで聞いていたクラゲキングは尋ねる。
「なにに使うの? お前にならいくらでもクラゲを操れるでしょうに」
エカテリーナの問いには微笑でもって答えない。
「まぁ良いわ。部下など腐るほどいるのだしね。‥‥ナギ、ここにおいでなさい」
パチン。
エカテリーナが扇を閉じると、ナギ(蒼流 凪(fa3623))が部屋に現れる。
クラゲキングと同じく魔族の血を引くナギは、深く頭を垂れる。
「お呼びですか?」
「ええ。クラゲキングの手助けをして頂戴」
「仰せのままに」
立ち上がり、ナギは背中の皮翼を広げクラゲキングに付き従う。
「いい? お前達。手段は選ばず必ずや本を奪ってきなさい」
高飛車に言い切るエカテリーナに、二人の魔族は闇に掻き消えた。
●巨大クラゲvs王女様ご一行!!!
「こんな風にクラゲが大量発生するなんて裏があって当然よ。あら? もう‥‥調べはついたんだ」
問題の浜辺に戻ってきた王女様ご一行。
王女Aはマリクの集めた情報に聞き入る。
「この当り一帯は、やはり元々はくらげなんて出ない海だったんだ。だが今年の夏、純白のタキシードの男が現れてからクラゲが大量発生したらしいぜ」
「そうしますと‥‥あのタキシードの男性が怪しいです!」
王女Bはハッピーノートを足元に置き、海辺に浮かぶ人影を指差す。
そこには、浜辺に乗り上げてくる巨大クラゲの上に立ち、ナギを従えて悠然と微笑むクラゲキングの姿。
「くそっ、待ち伏せされていたのか?!」
マリクが二人の姫を背に、魔力を帯びたダガーを構える。
城下町で再会した弟がお守り代わりにくれた魔法のダガー。
これが、あの化け物クラゲにどれほど力を発揮するかはわからない。
だが、いま王女を守れるのはマリクだけだ。
「私の火炎魔法なら多少大味だけど、クラゲを焼き尽くせるわ―― 上手くいけばね‥‥」
王女Aも魔法のステッキを構える。
元々不安定な王女の魔力、そして以前かけられた魔女の呪いで姿が安定しない状態、そしてさらにクラゲの毒のせいか二人に分かれてしまったいま、魔法がまともに発動する確率は果たして何パーセントだろう?
語尾にいやがおうにも不安が混じる。
そして王女Bは身体中の魔力を総動員して自らの身体を強化する。
「我が最愛のエカテリーナ様のために、貴方達にはここで永遠の眠りについていただきます」
クラゲキングの宣言と当時に、巨大クラゲの口から無数のクラゲ達がミサイルの如く吐き出される!
「そんな攻撃は、通りません!」
見た目はそのままに、通常より遙かに強靭な肉体を手に入れた王女Bはクラゲキングの操る飛来する無数のクラゲ達を手刀で叩き落す。
「人の柔肌に傷を付けておいて良い訳が通るとでも思っているの? 懲らしめてやるんだから!」
王女Aも不安を払いのけ、魔法発動!
魔法のステッキがドラゴンの息吹の如く炎を吐き出し、飛来するクラゲを焼き尽くす。
だが。
「いっけぇ! 全部焼き尽くしちゃえ!!! ‥‥うわっと?!」
ビシッ!!
飛来する無数のクラゲを影に、巨大クラゲの足が姫Aの腕に絡みついた。
「姫に触れるな!! うっ!」
二人の姫を守るようにクラゲを切り捨てていたマリクと姫Bも、姫Aに絡みついたクラゲに気をとられて束縛された。
三人を絡めとった巨大クラゲに乗るクラゲキングが腕を上げる。
瞬間、三人にイナズマに打たれたかの衝撃が走った!
悲鳴を上げ、苦しむ三人。
「ふふふっ、今日こそいい感じ!」
豪奢の馬車の中からオペラグラスで事の成り行きを見学していたエカテリーナは苦しむ姫様ご一行をくすくすと嘲笑う。
そう、世界をハッピーになんてさせはしない。
そんな事になったら、セレブリアの繁栄が妨げられてしまうではないか。
「ハッピーノートさえ手に入ればよかったけれど、このまま王女達に消えてもらうのもよさそうね‥‥ん?」
ふふっと笑うエカテリーナは、浜辺に映った影に目を凝らす。
「あれは‥‥盗賊王子!!!」
なぜかお子様に変貌しているが間違いない。
エカテリーナが愛して止まない盗賊王子(相麻静間(fa5719))その人だ!
「ストーップストーップ! クラゲキング、王子を攻撃しては駄目よー! あぁん、盗賊王子素敵ー!!」
エカテリーナは慌ててクラゲキングに悪の電波で命令を下し、盗賊王子に黄色い歓声を張り上げた。
「世界の平和を乱しゅ奴は、このボクが許さないじょ!」
とうっ!
エカテリーナの歓声がどこか遠くで響く中、盗賊王子が巨大クラゲの足を蹴りつける。
蹴られた痛みに三人を放り出した巨大クラゲに、盗賊王子は薔薇を投げ捨てビシッとポーズ。
その姿にエカテリーナが馬車の中でメロメロ、悪の電波でエカテリーナの意思を感じ取っているクラゲキングは盗賊王子には手が出せない。
「二度と俺に気安く触んな」
マリクは巨大クラゲを魔法のダガーで切り刻み、突然の状況変化についていけないクラゲキングの喉元にダガーを突きつける。
戸惑うクラゲキングの隙を突き一気に間合いを詰めていたのだ。
「‥‥仕方ありません。ここは一旦引き上げさせていただきます。‥‥ナギ!」
クラゲキングは降参した振りをして、待機していたナギに命令を飛ばす。
予め機会を伺っていたナギはすぐさま実行に移した。
「それはハッピーノート!!」
「返しなさいっ」
ナギは王女Bが浜辺に置いたハッピーノートを奪い、すぐさま上空に舞い上がり掻き消える。
そして王女達がノートに気を奪われている隙にクラゲキングも消え去った。
●正義は勝つ! でも‥‥
「怪我がなかっただけ、よかったじゃん?」
ハッピーノートを一冊とはいえ奪われ、落ち込む姫の肩をマリクはそっと叩く。
二人に分かれていた姫は、クラゲキングが消え去ると同時にまた再び一人になっていた。
そして助けてくれた盗賊王子も薔薇を残して消え去ってしまい、浜辺にはマリクと姫だけ。
「それにさ、この巨大クラゲを売れば一儲けも出来るしさ。当分の旅費に困らないぜ? なぁ、元気出せって」
バンバンバン!
元気付けるべく背中を叩くマリクに姫は曖昧な笑みを浮かべる。
その時、ノートがぱあっと光り輝いた。
パラパラとページが開き、どこからともなく現れた沢山のハッピーマークが飛び込んでいく。
「これ‥‥一体?」
次々とノートに入っていくハッピーマークに王女は驚きを隠せない。
「これは、この街のやつらの思いに違いないぜ! ほら、見てみろよ!」
マリクが指差す方向に、この浜辺の近辺に住む人々だろうか?
クラゲがいなくなった事を喜ぶ大勢の人の姿があった。
「一冊はとられちまったけどさ、こうしてお前は人々を幸せに出来たし、それに何よりまだ一冊あるんだ。ハッピーマークが集まってるって事はこの残ったノートにも世界をハッピーにする力はあるってことじゃん?」
「そっか‥‥まだ終わってしまったわけじゃないよね? 私、世界をハッピーに出来るよね?」
「当然だな。なんせこの俺様がついてるんだし。ドーンと構えてりゃいいじゃね?」
にかっと強気で笑うマリクに元気を貰い、姫は海に手をつける。
「もう、海冷たくなっちゃったね。でも気持ちいいよ」
「遊べなかった分、遊ぶかー!」
「おーっ!」
ざぶーん☆
ちょっぴり冷たい海に、二人は飛び込んだ。
「ふふふ、やっと私のものになったわね」
エカテリーナはハッピーノートを手に入れて妖艶に微笑む。
このノートを手にいれてすることは‥‥言わなくてもわかろうというもの。
豪奢な馬車の中、エカテリーナの勝利の高笑いが鳴り響くのだった。