まみたんのクッキング☆アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/09〜01/13

●本文

 ほわん♪
 あまーい香りが会場に漂う。
 屋外の舞台の上では、『まみたん』ことお料理大好き・浜松まみがオーブンから大きなアップルパイを取り出している。
 浜松まみは若手のオペラ歌手で、舞台の上でオペラを歌いつつお料理を作り、必ず客席に配るのだ。
 客の中にはオペラにはかけらも興味がないくせに、まみたんの手料理が食べたくてチケットを取るものも少なくないとか。
「うおー! まみたーん、はやくたべさせてー!」
「まみたん、さいこー!」 
 秋葉系からビジネスマンまで、主に男性ファンで埋め尽くされた会場は、はやくまみたんの手作りパイを食べたくて今にも舞台へ駆け上がりそうだ。
「みんな、今日もきてくれてありがとだよっ☆ ちゃんと全員分あるから、もうちょっとまっててね♪」
 パンダ耳を揺らして愛らしくウィンク。
 舞台のアリーナ席でそれを見ていた少年は可愛さのあまり倒れ伏す。
「あわわっ、たいへんっ! スタッフさーん、またですよーうっ☆」
 ぽかぽかとスタッフを叩いて少年を運んでもらうまみたん。
「まみたんのパイを食べる前に倒れちゃめーなんだよっ♪」
 冗談めかして3時間かけて作り上げたいくつものパイを丁寧に切り分けてゆく。 
「はいっ、みんなおまちどーさまっ☆ まみの手作りパイ、おいしく食べてね♪」

『『『はぁーーーーーーーーーーい!!』』』

 小皿に盛り付けて微笑むまみたんに、ファンは元気よく返事した。  

  
  ☆お料理大好きオペラ歌手・まみたんのアシスタント募集☆
 大人気のお料理大好きオペラ歌手・まみたんのお料理アシスタントを募集します。
 今回のお料理は『ビーフストロガノフ』と『パンナコッタ』。
 お料理大好き☆ お料理上手が売りのまみたんは、実はお料理できません。
 お料理ライブを毎回こなしているものの、その実、実際にお料理しているのは周りのスタッフ達なのです。
 観客にばれないように、いかにもまみたんが作っているかのようにフォローしてあげてください。
 

●今回の参加者

 fa0565 森守可憐(20歳・♀・一角獣)
 fa0672 エリーセ・アシュレアル(23歳・♀・竜)
 fa0807 桜 美鈴(22歳・♀・一角獣)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa1291 御神村小夜(17歳・♀・一角獣)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa2544 ダミアン・カルマ(25歳・♂・トカゲ)

●リプレイ本文

●8畳一間の哀の巣で?
 お料理ライブの打ち合わせの朝。
 狭い安アパートで、河田 柾也(fa2340)は漫才コンビの相方・桐尾 人志(fa2341)にレポート用紙を突きつける。
「‥‥桐尾君‥‥やったよ、僕やったよ‥‥」
 山程訂正した跡のある歌詞の書かれたそれは、お料理が出来ないまみたんを上手くフォローしてあげる為の大事な秘密兵器。
「よーやった河田! あとは俺が完璧に推敲したるさかいゆっくり眠‥‥って、同じ仕事なんやから寝るなーっ」
 徹夜で歌詞を考えて、目の下に隈まで作って力尽きた河田を、桐尾は情け容赦なく蹴りっ。
「急いで打ち合わせ場所にいかへんと、間に合わへんで!」
「ううっ、眠らしてください〜」
「しゃーらっぷ! とっとといくでぇっ」
 すっぱーんっ!
 なんばハリセンで気合一発☆
 半分眠りかけている河田を引きずって、桐尾は打ち合わせ会場へと急ぐのだった。
 

●まみたんの秘密。
 今回のまみたんのお料理コンサートが行われる野外コンサート会場。
 お昼を過ぎたばかりだというのに、真冬の気温は一向に上がる気配を見せない。
「野外でオペラでお料理ライブ‥‥日本で暮らして、初めて思ったの。萌えって怖ろしい‥‥」
 がたがたぶるぶる。
 コートを着ていても震えずにはいられない北風が吹き荒ぶ中、ヴェネツィア出身の作曲家エリーセ・アシュレアル(fa0672)は遠い目をする。
「この寒空の下で観客がまみさんの手料理を食べるのなら、暖かいビーフストロガノフは喜ばれますね」
 森守可憐(fa0565)も実際に現場に来て、その寒さを実感。
「皆様こんにちはーっ。お手伝いに来てくれてありがとうなのでっす♪」
 臨時スタッフ達6人が寒さに震える中、パンダ耳を揺らしてお料理ライブの主役・まみたんこと浜松まみが駆け寄ってきた。
「まみさん、はじめまして。よろしくお願いいたしますね」
 艶やかな黒髪を風になびかせて桜 美鈴(fa0807)はやんわりと微笑む。
「料理のイロハをみっちりとたたき込んであげるわよ〜☆」
 郭蘭花(fa0917)はまってましたとばかりに愛用のカメラを構えてパシャリっ。
 今回の郭蘭花はライブのお手伝いというより、お料理好きなのにお料理の出来ないまみたんにお料理を教えに来たのだ。
 でも肝心のまみたんはきょとん。
「お料理を教える?」
「日本には『料理のさしすせそ』って言葉があるらしいけど、欧米でも同じような物があるのは知ってる? 基礎からゆっくり、覚えていこうね」
 家事全般が得意な帰国子女ダミアン・カルマ(fa2544)がにこやかに握手を求めても、やっぱりまみたんはきょとんと小首を傾げる。
(「まさか‥‥」)
 御神村小夜(fa1291)がいやな予感に額に冷や汗を流し、
「まみさん。ちょっと確認したいことがあるんです。あなたは料理が出来るようになりたいですか?
 それとも今のままファンを騙し続けたいですか?」
 恐る恐る尋ねてみる。
「だます? んとんと、まみたんはお料理得意なんですよ〜ぅ?」
 ほわわんと微笑む様子は、とても嘘を言っているようには思えない。
 顔を見合わせる臨時スタッフ6人。

(「「「まみたんは、気付いてない?!」」」)

 衝撃の事実。
 まみたんはお料理を自分で作っていると思い込んでいるようだ。
「これは、一筋縄ではいかないようですね」
 御神村は衝撃でずり落ちかけた眼鏡をつんと押し上げて、気持ちを立て直す。
「マミさんに調理講座を開くというのはどうかしら? お料理上手なマミさんがより一層おいしいお料理を作れるように」
 エリーセが絶妙なフォローを入れる。
 そこへ、遅れてきた河田と桐尾が近くの公道を走るトラックの荷台から飛び降りてきた!
「うわっ、二人とも無茶やらかすわね」
 パシャリ。
 思わずシャッターを切る郭。
「遅れて申し訳ありませんでしたっ」
「いやいやいやいや、河田は悪くないんや。乗ったトラックが反対方向に行ってもうて別のトラックに乗り込むのにえっらい時間かかってもうたんや。
 交通費浮かそうと思ったんが失敗やったわ」
 必死に謝る河田に豪快に笑ってごまかす桐尾。
 楽しい笑いが広がった。


●実践! お料理講座☆
 まみたんのスタッフに事情を話してお料理講座用に部屋を借りてもらい、エリーセとダミアン、そして郭と森守がまみたんの特訓に当たる。
「料理の基本‥‥5つのS。Salt、Sugar、Sauce、Spice‥‥そしてSpirit。
 Spiritは心。
 料理が好き、美味しく食べて欲しい。喜んで欲しい。そんな心が大切な味付けになるんだ」
 厚手の鍋に油を引いて、ダミアンは均等な大きさに切った野菜を入れて炒めだす。
「うわぁい♪ まみたんよりもずっとずっとお上手です〜。まみたんは本番では成功するんだけど、お家でお料理を作ると絶対に失敗しちゃうのです〜」
 ぷるるっ。
 パンダ尻尾を震わせて、まみたんは手さばきに感動してダミアンの手元を覗き込もうとする。
「料理は数学同様、然るべきレシピ通りに進めれば一定の成果は出るはず‥‥っと!」
 何にもないところでずるっとつんのめって、そのままダミアンのお鍋に突っ込みそうになったまみたんの腕をエリーセが掴んで止める。
「失敗するのは生来のドジっ娘気質が原因なのかな?」
 苦笑しつつ、幼い娘に教えるように、ゆっくりと。
 包丁の持ち方から順に教えてゆく。


「あううっ、できないですよ〜ぅっ」
 数十分後。
 まみたんの悲痛な叫びが部屋に響き渡る。
「身近にどじっ娘がいるから、多少のことじゃ驚かないけどね‥‥あの娘は料理ができるからまだマシか」
 郭は部屋の惨状に苦笑する。
 よくもまあ指を落とさなかったねといいたくなるくらい、キッチンはしっちゃかめっちゃか。
 エリーセの真似をすれば綺麗に切れるはずなのだが、なぜかまみたんは予想の斜め上を行ってしまうドジっ子らしい。
「料理を作るときに手順が頭の中でごちゃごちゃになってしまっているようですね」
 エリーセが汚れたキッチンを手早く片付ける。
「それぞれのペースというものがあります。
 誰かはもうできたから‥‥自分は駄目だから‥‥ではないんです。
 たとえ今は出来なくとも、まみ様のペースで諦めなければ、何時か必ず‥‥」
 ほろほろと泣き出したまみたんの手を握り、森守は励ます。
「そうね。ここで諦めたらだめよ。まみたんの料理をファンはみーんな待ってるわよ」
「手順がわからなくなるなら、いっそアドリブで変えてしまえばいい。
 アドリブ式の舞台と同じ要領ね。雰囲気、自分の役柄、テーマ、到達するべきシーンを読んで考えて、場の流れを掴む事。
 きちんと知識と発想力があるのだから、読めない流れなんてない。そこから今自分がするべきことを掴むということね」
「それって、難しそうですよぅ‥‥」
「大丈夫。必ず出来るようになります。不器用で失敗続きでもいいんですよ。失敗は明日に進むための杖になってくれますから」
「まみちゃんも、お料理がいつでも成功するようになれるといいね」
「‥‥まみたん、がんばるですっ」
 3人に説得され、まみたんは涙をぬぐって包丁を握り締めた。


●舞台はオペラじゃなくてオペレッタ?
 ダミアンたちがまみたんにお料理を教えている頃。
 御神村はオペレッタの台本を急ピッチで整えていた。
 今回集まった臨時スタッフ達の提案がまみたんマネージャーに通り、まみたんの同意も得られたことからいつものオペラではなくオペレッタに変更になったのだ。
「こことここをこうすれば、料理のすり替えもしやすいはずね」
 舞台の上で料理をするときの配置と、河田が徹夜で作った歌詞を盛り込んで、白雪姫をモチーフとした御神村の台本は大詰め。
 台詞を短く短期間で覚えられるように工夫されたそれはあともう一息で出来上がるだろう。
「舞台装置を作る方にいろいろお願いして、入れ替えの為のしかけをあちこちに仕込んでおいていただきましたわ」
 桜が気を利かせてある程度決まっている設定を元に、まみたんのスタッフに話を通してきた。
「そう、助かるわ。わたしも手伝いたいけれど、これを書くのでもう手いっぱい」
 お手上げポーズをとって照れ笑いする御神村は、うーんと伸びをした。


●いよいよ本番! ライブはどうなる?!
「はいはーい、今日も着てくれてありがとーだよっ☆」 
 舞台の上で、まみたんが元気よくファンに声をかける。
「「「うおおおーっ、まみたーーーーーーーーーんっ!」」」
 沸き立つ観客。
「今日はね、オペラじゃなくてオペレッタを開催しまっす☆
 みんな、いい子で見てねー?」
 ぱちんっ☆
 ウィンクして舞台袖に隠れるまみたん。
 舞台袖には、臨時スタッフ8人勢ぞろい。
「大丈夫。自信を持って頑張るんだよ」
 不安そうな彼女をダミアンが励ます。
 まみたんは何だかんだいって臨時スタッフ達の特訓を頑張り、ドジさえ踏まなければなんとかお料理らしきものを作れるようにはなったのだ。
 ビーフストロガノフならば野菜の切り方を間違えたり、鍋に入れる順番をめちゃくちゃにしない限りはなんとかなりそうだし、パンナコッタは元々簡単。
 でも失敗したとき用にきちんとすり替え用の料理も準備して置けば完璧だろう。
 初の試みオペレッタ、いざ開幕!


「♪〜美味しそうなお肉 選んで 叩いて
 細く細く切るの 私のように細く

 玉ねぎは意地悪よ 私を困らせる
 だけど涙こぼれても 細かく刻むわ
 フライパンの油の池に 玉ねぎ流して
 色が変わってきたなら 牛肉も仲間入り

 スパイス ハーブ ぱらぱらり
 熱くなり過ぎたら 火をゆるめて
 小麦粉 トマト 入れましょう
 これで も少し 火を通す

 酸っぱいクリームを添えて〜♪」

 白雪姫の格好をしたまみたんと、魔女の姿をしたエリーセが河田の作詞した曲を高らかに歌う。
 歌詞に合わせた曲は、エリーセの作曲。

『徹夜で頑張るわ』

 オペレッタ用の曲がないと知ったとき、彼女は即座に作曲を開始し、見事ライブ前日までに曲を完成させたのだ。
 まみたんはオペラ歌手だし、エリーセは元々歌手。
 歌い慣れた二人には一日あれば曲を覚えることなど余裕だった。
 舞台の上で歌いながら大鍋をかき混ぜて、中に入れるのはニンジン、玉ねぎ、ジャガイモなどなどビーフストロガノフの具材。
 まみたんと一緒に具材を切り分けたのは小人の衣装を身に纏った森守。
(「食べていただける方々の顔を思い浮かべながら、『美味しい』って笑顔にさせてあげたいな‥‥」)
 そんなことを思いながら優しくやさしく鍋を一緒にかき混ぜる。


「どないしよ〜! ぼん・きゅ・ぼん☆ のナイスバディの姫さんが、魔法使いの料理にハマってもうてボン・ドン・バーンになってしもた!」
 トンガリ帽に靴を履き、緑のチュニックを着込んだ小人姿の桐尾が舞台の上でムンクの叫びの如し大げさに青ざめる。
 舞台の上では、金髪縦ロールの鬘をかぶり、どピンクのドレスを強引に着込んだ髭面河田のおデブな姫さんがどーんとふんぞり返ってる。
 本物の白雪姫たるまみたんは、裏方に回った郭のライトニングテクニックで一瞬舞台から消えたように観客に見せかけて、舞台袖に隠れたのだ。

 まみたんの姿が舞台から消えて、ブーイングを飛ばす観客達。

「‥‥ええい、お前らだって分かるやろ、彼女の作った料理なら皿までイケるっ!」
 
 煽る河田に爆笑する会場。
 まみたんが着替える間の場を絶妙に繋ぐ漫才コンビまいむ☆まいむ!
 彼らが笑いを取って間を持たせている頃、舞台裏ではダミアンと御神村がパンナコッタを完成させていた。
「この調子なら、ビーフストロガノフは交換しなくても大丈夫そうです」
 御神村は眼鏡を抑えて目を細め、舞台の上の大鍋をみつめる。
 森守が上手く火加減を調節しつつ焦げないようにかき混ぜて、辺りには既にとてもいい香りが漂っていた。
「パンナコッタも作れそうだけれど、量が量だからね」
 流石に会場にいるファン全員分のパンナコッタを舞台の上の冷蔵庫に入れて冷やして作るのは無理がある。
 だから、足りない分は裏でこっそり冷やすのだ。
 でも何気に舞台が始まる前にまみたんにバニラエッセンスを振りかけさせてあったりする。
 なぜならファンが食べたいのはまみたんの手料理だから。
 ほんのちょみっとでもまみたんの手の加わったものを食べさせてあげる為だった。
 
 
 白雪姫から王子様の衣装に着替えたまみたんが、舞台の袖から従者役の桜に手を取られ、太っちょお姫様の河田に歌いながら歩み寄る。
 
「♪〜雪のよに白いクリーム 甘い甘い砂糖とともに
 熱過ぎぬ愛情で温めて ゆっくりと溶け合わせて

 緩やかに固めよう 蕩けるよな熱い心
 時が経てどこの想い けして変わらぬように

 これはこれは魔法の秘薬 バニラの香り 甘き酒
 二つ混ぜ合わせて ゆっくりと冷やそう

 冷たい氷の中で 柔らかく揺れるよ
 僕のこの想い 白く 甘く 柔らかく
 どれほど冷たく冷えても 僕のこの想い
 君には伝わるだろう きっと きっと きっと〜♪」

 作詞は桐尾で、作曲はやっぱりエリーセ。
 森守も、エリーセも、桜も、桐尾も河田も。
 舞台裏ではダリアンも御神村も郭も。
 そして客席のファン達も巻き込んでみんな一緒コーラス!

 桜が大きな布を広げ、河田とまみたんを包み込む。
 ぱっと会場のライトを郭が操作して一斉に消して、次にライトをつけた時には白雪姫に戻ったまみたんと、ダリアンと御神村が作ったいっぱいのパンナコッタが舞台に並ぶ!
「さあみんなっ、おいしいお料理召し上がれ☆」
 まみたんが舞台の上でウィンク。
 舞台は歓声の渦に巻き込まれ、大成功を収めたのだった。