冥土のお仕事☆DVD!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
10/25〜10/29
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●本文
――思い遺したことはなんですか?
――行きたかった場所はどこですか?
――泣いている人はどこですか?
――その願い、その苦しみ、わたくしたちが解決しましょう‥‥。
スタジオのスクリーンにオレンジと黒、ハロウィンの色彩に彩られる町並みが映し出され、少女の声でナレーションが流れる。
そしてカメラの前ではジャックオランタンを手に、メイド服姿の少女達やスーツ姿の男装の麗人が和気藹々とおしゃべりをしていた。
「巨大かぼちゃ、入荷しました〜♪」
そしてスタッフの女性が巨大かぼちゃを手にスタジオに現れると、部屋中にどっと笑いが溢れる。
「ちょっとちょっと、なにがおかしいんですか〜! こっちは必死に運んできたんですよ〜?」
よっこらせっと掛け声をかけながら、スタッフの女性は両手でギリギリかかえていた巨大かぼちゃを床におろす。
そのかぼちゃには、
『冥土のお仕事☆DVD特別編☆』
とかかれている。
そう、今回は昨年まで放送されていた深夜特撮番組『冥土のお仕事☆』総集編の撮影なのだ。
ハロウィンにちなんだオリジナルストーリーを作っても良し。
今までの裏話を入れてもよし。
出演者の希望によって、特別編は編集されるのだ。
カメラが回る中、出演者はどんなストーリーを演じてくれるのだろうか?
〜冥土のお仕事☆DVD! 出演者募集☆〜
◇出演資格◇
いままで『冥土のお仕事』シリーズに出演したことのある方。
●リプレイ本文
●ハロウィンカラーに彩ろう☆
黒とオレンジ、ジャックオランタン。
そんな色合いに染められてゆく町並みに合わせ、メイド喫茶『Entrance to Heaven』もメイド達によってハロウィン色に飾り付けられていた。
「うー、ちょっと届かない‥‥」
高梨雪恵(風間由姫(fa2057))はちょっときつそうに胸元を押さえ、背伸びする。
蝋燭を灯したジャックオランタンを壁の飾り棚に飾ろうとしたのだが、小柄な彼女にはちょっと無理がある。
ひらひらとしたメイド服だから、余計動きづらいかもしれない。
危うくメイド服に傾いた蝋燭の火が移りかける。
「Hey、無理するな」
「あ、レイさん、ありがとうございます!」
ウェイター姿のレイ(シヴェル・マクスウェル(fa0898))が雪恵の手からそれを受け取り、長身を生かしてあっさりと飾り付けた。
「とりっく・おあ・とりーと! いたずらしないとお菓子食べちゃうぞ〜☆」
ぴょこん☆
さなえ(碓宮椿(fa1680))が猫耳&猫尻尾を揺らしてお菓子を持ってくる。
本来、『お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ☆』のはずなのだが、美味しいお菓子をぱくつきながら笑うさなえに帆乃香(都路帆乃香(fa1013))もついつられて笑う。
ちなみにそのお菓子は納谷橋(堀川陽菜(fa3393))が即席でつくったパンプキンクッキーだったりする。
カボチャ本来の甘さを生かしつつ、カボチャ型にくり抜いたクッキーは本日無料配布。
きっとお客さんも喜ぶだろう。
「大分進んでいますね」
代理店長(イルゼ・クヴァンツ(fa2910))が飾り付けられた店内の様子を見て微笑む。
ハロウィンは、それこそクリスマス並みに街のディスプレイも盛り上がるのだが、いかんせん、家庭で祝うという話はあまり聞かない。
グッズ等はそれこそ飛ぶように売れるのだが。
だがハロウィンと呼ばれる十月三十一日。
この日はこの世と霊界との間に目に見えない『門』が開き、この両方の世界の間で自由に行き来が可能となる日なのだ。
だからきちんとお祝いという儀式をし、門から溢れた霊達を心地よく向こうの世界へ戻してあげねばならない。
皆がきちんと祝う事で、霊たちは迷うことなく門の向こう側へ帰れるのだから。
「あら? どこから入ってきたのでしょう?」
雪恵がふと気づき、声をかける。
その目線の先には一人の少年。
幼い少年はいつの間にか店内に佇んでいた。
●見知らぬ子供
「霊のようですね」
納谷が赤い眼鏡を外し、確認する。
普段は人ならざるものが見えすぎてしまう為に特殊な眼鏡でその力を封印しているのだが、眼鏡を外せばすぐに力を解放できる。
雪恵が見つけた少年は、特殊能力をもつEHで働く彼女達にしか見えない存在―― 幽霊だった。
だが少年は自分が何故ここにいるのか、そして霊である事すらもわかっていないようで、きょとんとしていた表情がどんどん不安気にくすんでゆく。
「‥‥すでに空間が開いてきていますね。磁場に乱れが生じています」
帆乃香がノートパソコンを開き、店の周囲の磁場を調べる。
完全に空間が開くのは深夜だが、それでも多少なりとも現世に影響が出始めているのだろう。
『ハロウィン‥‥お祭り‥‥』
泣き出しそうな表情で、少年が呟く。
「もしかして、仮装パーティーに行こうとしていたのですか?」
代理店長がはっとする。
少年は仮装こそしていないものの、その手には火の灯らないジャックオランタンを下げていた。
代理店長の言葉に、少年の顔に笑顔が戻る。
どうやらビンゴ。
「そうゆうことなら‥‥」
帆乃香が周囲に結界を張り巡らす。
「なるほど。この状態なら一緒に遊べますね」
眼鏡をかけ直した納谷が納得する。
その霊力を封じた状態の納谷にも、少年の姿が見えていた。
「これで数時間は昔みたいに過ごせますから、楽しみましょうね」
帆乃香が少年に『触れる』。
そう、帆乃香が張った結界の効果で、霊である少年はあたかもそこに生身があるかのように存在できているのだ。
「タイミングが良いですね。お客様も訪れたようですよ」
代理店長が外を見る。
そこには、普段馴染みの客はもちろんのこと、ハロウィンということでお菓子が配られる事を知った子供達もご両親に連れられて遊びに来ていた。
「Wait a minute.ちょっと出てくる」
レイが何かを思いつき、席をはずす。
さあ、パーティーの始まりだ☆
●ハロウィンパーティー
「さあみんなっ! 一緒に歌おっ☆ 踊ろっ♪ 楽しもっ♪♪」
明るく、それでいてどこか幻想的なケルト楽曲に合わせ、さなえが歌を歌う。
くるくると陽気に踊る姿はまさにハロウィン。
子供達も踊りやすいように大きな振り付けで盛り上げる。
もちろん、雪恵や帆乃香、納谷お手拍子で参加☆
店内は帆乃香の手配していた仮装グッズを身に纏ったお客で溢れていた。
「いついかなる時、いかなる相手でも‥‥死者の魂を救うのがこの店ですから」
代理店長が少年と共に控え室から現れる。
少年はかわいいチビマントを羽織り、そのマントの背にはちっこいコウモリ羽までついている。
もちろん、こちらも帆乃香のコーディネイトだ。
結界を張る帆乃香の負担を減らせるように、代理店長は少年に霊力を送る。
霊力が強ければ、その分結界の力だけに頼ることなく姿を維持できるから。
そして丁度曲が途切れ、ふっと照明が揺らぐ。
「私こそは夜の住人‥‥Vampire!」
漆黒のマントを羽織り、ヴァンパイアの仮装をしたレイが登場!
どうやらこの準備の為に席を外していたらしい。
赤髪が漆黒に映え、まるで血のように輝く。
そのあまりにもはまりすぎる姿に店内の子供達は号泣!!!
「‥‥レイ」
あまり表情を露わにしない代理店長が恐ろしいほどの笑顔でにっこりと見つめている。
はっきりきっぱり、目が笑っていない。
「‥‥sorry」
慌てて謝り、レイはちびヴァンパイア状態の少年を抱きあげ、肩に担ぐ。
「It is a festival today! ヴァンパイア姉弟も共に祝おう。Happy Halloween night!」
少年を高い高いしつつ、ウィンク。
喜ぶ少年と親しみのもてるウィンクに店内の子供達も再び元気に遊びだす。
●天国への扉は、ずっと、この場所に‥‥
「ほら、お姉ちゃん達もいるから心配しなくても大丈夫ですよ」
店仕舞いをした店内で、帆乃香が少年を促す。
その先には、代理店長が開いた天国への扉がある。
怖くないように光り輝く鎌を隠しつつ、雪恵も少年が天国へいけるように霊力を注ぐ。
光溢れるその場所へ、少年は一歩踏み出す。
少年を受け入れ、ゆっくりと閉じてゆく天国の扉。
そしてそれを優しく見守るメイド達。
「お疲れ様。さあ、まだ閉店には時間があります。頑張りましょう」
代理店長が皆を促す。
そう、店は今日で終わりではない。
明日も、明後日も、死者の魂が彷徨う限り、店はいつまでも続いてゆくのだ。
ここは、Entrance to heaven。
天国への扉なのだから‥‥。
●最後は座談会。思い出を語ってね☆
「ついに終わりましたね〜」
座談会会場で、雪恵こと風間由姫はほっと一息。
会場にはたったいまDVD用の撮影を終えたメンバーが勢ぞろいしていた。
「あ、そうそう‥‥クッキーなども焼いてきましたので、皆さんでどうぞです☆」
納谷役の堀川はさっきの撮影でもつくったクッキーを配る。
大家族の長女だから、自然と料理上手になったのだろう。
「ふむ。やはり落ち着くな」
レイ役のシヴェルも席に着く。
座談会会場はEHの店内を使用しているのだ。
お茶会のようにくるりとテーブルを囲って座る事を提案したのも彼女で、やはり撮影で何度も使用した店内はとても馴染み深い。
シヴェルの隣に代理店長ことイルゼが腰掛ける。
そしていよいよ座談会開始!
まず最初は風間。
「あたしの場合、特殊能力が0からかなりの強さにまでなっていくという風になりましたので‥‥その辺の能力に対する戸惑いというのを演じるのが難しかったですね」
風間演じる雪恵は、最初は普通の女子高校生だったのだ。
そして悪霊に狙われ、EHで働く事になり霊力開眼。
亡き兄にしてその生まれ変わりの死神の力も受け継ぎ、強力な霊力を発動させていた。
普通の女子高生ならば年齢的に素のまま演じていても違和感ないのだが、徐々に強大になっていく霊力を扱うとなると、演技力がものをいってくる。
いまも素の口調ではなく雪恵口調なのは、DVDを見るであろうファンの為に雪恵を演じているのだろう。
「そう言えば、私最初の収録の時に役の名前を考えてくるように言われたのを忘れて。じゃあ、帆乃香でいいんじゃ、って言われて決まったんですよね」
最初の収録時を思い出して、都路は苦笑する。
冥土のお仕事の収録では、役名を撮影前に役者自身に決めてもらうことが多かったのだが、そうゆう撮影はあまり多くないらしく、忘れる役者さんもしばしば。
けれど皆、芸名が素敵だから撮影でそのまま使用しても違和感がない。
撮影中いつも手にしていたノートパソコンは実は本当に都路の愛用のパソコンで、今日も持ってきている。
パソコンを開き、
「私の役はパソコンを使ったテクニカルな感じで気に入ってるんですよね、その分専門的に見えるような演技をするのは大変でしたけど」
軽くキーボードに触れる指先は素早く、とても手馴れていてさまになっている。
「ボクの想い出話はそうだなあ‥‥『冥土のお仕事☆交差点』がボク最初の演技のお仕事だったから、色々と緊張したような記憶があるかな?」
ぱくぱくとクッキーを食べつつ、さなえ役の碓宮もう〜んと記憶を遡る。
歌が上手な元気っ子を演じた碓宮の本職はボーカリスト。
お腹が満腹になってほんのり眠いのか、どことなくぽけぽけとした雰囲気がある。
「役作りも何も、ボク自身に近い役だったと思うし。それからいくつか演技のお仕事経験したけど、ボクあまり上達してないかなー、あははー」
あははーと笑う碓宮の声は歌うように響いた。
「私の場合は一回だけのスポット的の参加でしたので、これと言った出来事はないですけど‥‥やはり特殊能力がらみの動きというのが大変でしたね。
目の前に普段見えない物が見えるというのは経験したことのないことですし‥‥」
撮影でも使っていた赤いフレームの眼鏡を少しずらし、堀川は語る。
確かに普段目に見えないものが見えるということはまずないわけで、けれど撮影ではそこに見えないものをあたかも見えているかのように演じなくてはならないのだから、苦労は押して知るべし。
眼鏡をかけている時は見えない設定であるのもまた難しい。
今回撮影したDVDの霊役の少年はちゃんと実は一緒に撮影していたのだ。
透ける加工や霊的な表現はCG技術で後付される為、堀川は眼鏡をかけている時はそこに少年が見えているにも関わらず、設定上見えない演技をしなければならなかったのだ。
「思い出といえば‥‥戦禍衆3の回や夏祭りの時は、さすがに台本を読みながらつい笑ってしまったがな」
くくっと含み笑いを持って、シヴェルは隣に座るイルゼを見る。
ずっと澄ましていたイルゼの顔が一瞬にして真っ赤になった。
もちろん女性同士、怪しい関係などでは決してないのだが、撮影中役柄的にパートナーとしてからみが多く、ましてやシヴェルの話した回を思い出すと恥ずかしさでいっぱいになる。
「色々貴重な経験でした」
辛うじてそういい、赤面を隠すようにイルゼはふいっとそっぽを向く。
その仕草にシヴェルは再び大笑い。
台本のせいとはいえ、誰だって真顔で『綺麗だな』などと面と向かって言われれば赤面しますって。
そして沢山の思い出が語られる中、座談会は楽しく幕を閉じるのだった。