WonderTalk〜遺跡〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/23〜02/27

●本文

 青空を写した画面の中に、剣を構えた青年のシルエットと『Wonder Talk』文字が重なる。
 それはファンタジー特撮番組『Wonder Talk』のオープニングだった。
 中世ファンタジー世界『カラファン』を舞台にモンスターハンター達が剣と魔法と知恵を使い、行く手を阻む魔物達を倒してゆく特撮番組は今回で二作目。
 モンスターハンター達はハンターギルドにてモンスター退治や一般人には解決できない問題を依頼として請け負う。
 そして今日の舞台はカラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』。
 商業の街として知られるこの街では、最近奇妙なことが起こっているという。
「んー、なんか異常に眠くなるのよねぇん‥‥。特に風の強い日とか。
 『時の眠る遺跡』に秘密があるらしいんだけどぉ‥‥ちょっといって調べてきてくれないかしらぁ‥‥あふぅ」
 眠たげに目を擦るギルドの受付に頷いて、モンスターハンター達は遺跡調査に出かけるのである。


☆Wonder Talk出演者募集☆

 ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder talk〜時の眠る遺跡〜』出演者募集です。
 剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、モンスターを倒してください。
 
☆モンスター情報☆
『ワタボコ』
 時の眠る遺跡にふわふわと漂っています。
 白く、タンポポの綿毛に似ていることからワタボコと呼ばれています。
 ワタボコを大量に吸い込むと、呼吸困難や幻覚症状などを通常は引き起こすようです。
 また、このモンスターは『ポポタン』というモンスターから生み出されるといわれています。
 日当たりの良い場所を好み、大きな花を咲かせるそれは、自分で動くことが出来ません。
 その為ポポタンは非常に臆病な性質を持っており、何かが近づくとワタボコを大量に生み出して自己防衛をします。 


☆地域情報☆
 今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』 
 春のような暖かい気候が続くその街では、商業が盛んです。
 情報屋はもちろん、様々な嗜好品も売られています。
 問題の『時の眠る遺跡』はレザラディカの南にあります。
 広々とした草原に大小さまざまな岩を組み合わせたかのような不思議な外観を持っています。 
 

☆選べる職業☆
 戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
 僧侶 :治癒魔法を得意としています。
 魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
 踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
 召喚士:精霊を召喚し、使役します。
 吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。 
 シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。

 なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
 今後も職業は順次増えてゆきます。
 今回追加職業は『シーフ』です。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0318 アルケミスト(8歳・♀・小鳥)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa2604 谷渡 うらら(12歳・♀・兎)
 fa2882 ユスカ(10歳・♂・狼)

●リプレイ本文

●始まりはモンスターハンターギルドで。
 街中が何故か眠くなるという事件が発生している城下街『レザラディカ』のハンターギルド。
「はっじめまして〜。ボクはカリンカ。よっろしっくね〜」
 草原妖精の出身・カリンカ(谷渡 うらら(fa2604))はとんがり帽子を揺らしてぴょこんとお辞儀する。
「あら、宜しくお願いしますわね」
「おまえ、草原妖精か? 珍しいな」
 肩を露出し、魅惑的な和服の踊り子・トール(トール・エル(fa0406))は扇で口元を隠しながら微笑み、夢を追う吟遊詩人・ケイ(氷咲 華唯(fa0142))はバイオリンの弦を弾く。
「おったからオッタカラお宝〜! ボクはお宝を探しにきたのだ〜☆ ねねっ、時の眠る遺跡にはお宝埋まってるのかな〜?」
 くるくるくるっ♪
 小さな矢筒を背負ってくるくると飛び跳ねる姿は愛らしく、その姿は一瞬たりともじっとしていられない小さな子供のようだ。
 そして子供といえば、召喚士のケーナ(美森翡翠(fa1521))、見習い戦士のアルミ(アルケミスト(fa0318))、そして魔法使いのユスカ(ユスカ(fa2882))もそうだ。
「ユスカ? 砂漠であったよね。こっち来たんだ?」
 以前、砂漠のオアシス『グラ』で起こった事件をユスカと一緒に解決したケーナは、胸に煌く水晶のペンダントをそっと握り締めて小首をかしげる。
 その水晶には、彼女に協力を申し出てくれた精霊達が封じられている。
 もちろん、封じるといってもそこから出られないようにする為ではなく、その精霊が存在する為に必要なエネルギーを留めてあるといったほうが正しいだろう。
 上級召喚士ならばこのカラファンの世界に存在する全ての精霊に呼びかけ、自分の魔力によって精霊をどのような場所にでも呼び出すことが可能だが、通常ならば精霊は水の精霊ならば水の、風の精霊ならば風のある場所にしか存在出来ないのだから。
「家はもう見つかったのかな?」
「‥‥お家、まだ見つからない‥‥」
 ユスカの問いに、ケーナは俯く。
 彼女には、召喚士になる前の記憶がほとんどない。
 唯一覚えているのは『風の吹く丘の家』。
 その場所を求めて彼女は旅を続けているのだが、中々見つかるものではないらしい。
「なんか色々事情があるみたいだな? あたしも力になってやるから頑張るんだぞ。そうそう、あたしはラーグ、よろしくな」
 がしがしがしっ。
 しょんぼりと俯くケーナの頭を女戦士・ラーグ(尾鷲由香(fa1449))が豪快に撫でる。
「戦士の‥‥アルケミスト‥‥アルミで‥‥結構‥‥よろしゅう‥‥に」
 その小さな身体には大き過ぎる大剣を引きずり、アルミも小さく会釈する。
「なんだなんだ、駆け出しパーティーか?」
 妖精&お子様合わせて四人もいるパーティーを見て、武道派僧侶・アスカ(ブリッツ・アスカ(fa2321))は呆れたように肩を竦める。
「‥‥ま、いいか。とりあえず、よろしく頼むな」
 けれどあまり物事を細かく考える性質ではないのだろう。
 にかっと気さくに笑って手を差し出してくる。
「メンバーは揃ったようですわね。さっそく、情報収集に向かいましてよ。おーっほっほっほっほ!」
 無意味に高飛車なトールに促され、パーティーは眠くなる原因を突き止めるべく情報を収集しだすのだった。


●アルミの秘密
「時の眠る遺跡ってあるらしいんだけど知ってらっしゃいます?」
 するりと男の肩に手を回し、情報収集に励むトール。
 耳元で囁かれる彼女の吐息に、男は目を白黒させながらもなんとか聞かれたことに答える。
 街中が眠くなってぼんやり状態でも、トールの魅力の前には思考も冴えるというもの。
 もっとも、どこからどう見ても美女な彼女は実は男性だったりするのだが。
「こっからどう行ったら近いの?」
 そしてそのすぐ側ではちまっこいユスカも道行く人に時の遺跡への近道を尋ねている。
「シルフに問題あるように言われるの、やだ」
 そんななか、精霊を友とする召喚士であるケーナがポツリと呟く。
 風の精霊であるシルフを悪く言われているようで嫌なのだろう。
 風の強い日に特に眠くなるという街の人々の言葉に唇を噛み締める。
「まあまあ、誰もシルフが原因なんて言ってないさ。ただ風の強い日はワタボコとか言うモンスターが発生しやすいってだけだろう? そんなに気にすんな」
 やっぱりにかっと笑ってラーグはケーナを慰める。
「おい、おまえ。俺の馬に乗るか? その剣は重過ぎるだろう?」
 大剣を持ち上げることが出来ずに、引きずりながら皆の後に必死について来ていたアルミに、ケイが自分の馬を示す。
「あり‥‥がとう‥‥」
 ケイの優しさに素直に頷いて、アルミはうんしょと馬によじ登る。
 その弾みで、背中に背負っていたリュックが地面に落ちた。
「って、お前、有翼種族だったのか?!」
 アルミの背から直接生えている白い翼にケイは驚きの声を上げる。
「その羽の色だとエンジュだな? だがエンジュは確か数年前にダークドラゴンに滅ぼされたはずだ」
 戦女神に仕える神官たるアスカは、その知識に照らし合わせアルミの種族を言い当てる。 
 数年前、ダークドラゴンの襲撃にあったエンジュの里は、一瞬にしてほぼ壊滅状態になってしまったのだ。
 王国騎士団が編成され、里を訪れた時にはもう、全てが終わった後だったという。
「‥‥パパ‥‥の意思‥‥は‥‥私が‥‥引き継ぐ‥‥」
 大剣をぎゅっと抱きしめ、アルミは口をつぐむ。
 その目の端には、大粒の涙が滲んでいる。
「‥‥一緒に、モンスターを退治しような?」
 がしがしがし。
 ラーグに頭を豪快に撫でられながら、アルミはこくりと頷くのだった。


●時の遺跡〜ワタボコいっぱい☆
 時の遺跡に足を踏み入れると、そこは一面真っ白いワタボコで溢れていた。
「なんだ、こいつら? これが騒ぎの元凶なのか?」
 アスカが遺跡を多い尽くすそれに眉を潜める。
「わたくしのあまりの美しさのために、敵が寄ってきてしまいましたわ。おーっほっほっほっほ!」
 高らかに笑い、トールは扇子を舞わせて纏わり付いてくるワタボコを打ち払う。
「いいぜ、来いよ、どんな相手だって受けて立つぜ?」
 そうしてバンダナで口を覆い、両手持ちの剣・ツヴァイハンダーを振りかざすラーグが斬りつけた相手は、けれどケイだった。
「うわっ?!」
 咄嗟にその剣先を避け、ケイは数歩後ずさる。
 馬が驚いて暴れ、その背からアルミが振り落とされた!
「アルミさんっ!」
 ユスカが小さな身体で殆ど押しつぶされるように彼女を抱きしめ、そのまま倒れ付す。
「ラーグが幻覚にやられてるのだ、危険なのだぁっ!」
 ワタボコを吸い込んでしまったことによって引き起こされる幻覚症状で、なおもラーグは闇雲に剣を振り回す。
 その剣を避けながら、白いハンカチで顔の半分をマスク代わりに覆ったカリンカは、ワタボコの発生源を探す。
「うー、ふわふわがボクのお宝ロードの邪魔をする‥‥」
 けれどすばしっこいカリンカの行動を大量のワタボコが阻害した。
 妖精であるが為に幻覚症状への耐性はあったものの、視界の悪さまではどうにもならない。
「風の乙女、大気を動かして。我と仲間に風以外のものを近寄らせないで!」
 ケーナが風の精霊に願い、その願いを聞き届けた精霊たちによって大いなる風がワタボコたちを吹き飛ばす!
 新鮮な空気が一気にハンター達を包み込み、また幻覚によって暴れていたラーグにも一瞬隙が出来、アスカが取り押さえて解毒を試みる。
「あんまり手間かけさすなよ、ったく」
 口は悪いものの、アスカは丁寧にラーグの毒を拭い去った。
「すまない」
 短く詫びて、毒の抜けたラーグは頭を振る。
 その目線に、うずくまるユスカの姿が目に止まる。
「もしかして、あたしのせいか?」
「ううん、大丈夫。気にしないで‥‥うっ」
 ラーグを気遣い、笑って首を振ろうとしたユスカはしかし痛みに顔をしかめる。
 アルミを抱きとめた時にしこたま身体を地面に打ち付けたようだ。
「くそっ、あたしせいで‥‥みんな、すまない」
 土下座せんばかりのラーグに、アスカはけらけらと笑う。
「安心しろ。俺が付いてるかぎり死人は出させないぜ。思う存分暴れるんだな」
 ユスカに手を触れ、アスカが短く治癒魔法を唱えると、ユスカの身体の痛みはすっと消え去った。
「見つけたのだっ、あそこにポポタンがいるのだ〜☆」
 くるくるっと踊りながらカリンカが指差す。
 そこには、風に吹き飛ばされたワタボコをなおも大量に吹き上げるポポタンの姿が。
「ワタボコ‥‥迷惑してる? いやしてるよね。やっぱり。退治しないと駄目?」
 ユスカが微妙な面持ちでポポタンを見つめる。
「会話が通じる相手じゃなさそうだからな。仕方ないだろう。くらえ! エアースラッシュ!!」
 ポポタンの姿は黄色く大きな花で、漂う香りも愛らしく、ユスカが躊躇うのも無理はない。 
 戦うことを迷うユスカに代わり、ラーグがその剣から繰り出される風の刃でポポタンを攻撃!
「ポポタンを大人しくさせる歌なんてあったかな‥‥でも眠らせることなら出来るか?」
 ケイがバイオリンと共に呪歌を奏でる。
 その音色はケーナの風に乗ってポポタンに届き、ポポタンは二、三度身震いすると少しだけワタボコを吐き出すペースが衰えた。
「一撃‥‥必殺‥‥どちぇすとぉ‥‥!!!」
 アルミが無謀にもよろよろと大剣を振り上げてその勢いのままポポタンに振り下ろす! 
 いや、振り下ろすというよりもむしろ、大剣の重さにアルミがそのまんま引っ張られて突撃といったほうが正しいかもしれない。
 そしてそれがとどめとなり、アルミと大剣に押しつぶされたポポタンはワタボコを飛ばすのをやめてその黄色い花弁をパラパラと散らすのだった。    


●エピローグ〜日のあたる場所で
「モグラが原因だったんだよ」
 ポポタンの周囲の地面をユスカが指差す。
 そこには、無数の穴と、掘り起こされた土のあと。
 どうやら春が近づき、冬眠していたモグラが一斉に活動しだしてポポタンを刺激してしまったらしい。
「なるほどな。臆病なポポタンはその振動でワタボコを撒き散らしていたというわけか」
「ちょっと、かわいそう」
 モンスターハンター達に倒されたポポタンは、今にも枯れそうな位ぐったりとしている。
「そうだ! 埋めなおしてあげようよ」
「「「え?」」」
 ユスカの提案に、みんな首を傾げる。
「ポポタンには悪気はないんだし。でもここにまた埋めるとレザラディカの街の迷惑になっちゃうから、もっと別の場所!」
「うっくっく、それなら絶好の場所があるのだ〜。みんな着いてくるのだ☆」
 カリンカが笑ってくるっと踊る。
 そうしてアスカとラーグが重たいポポタンをどうにか掘り起こして抱きかかえ、みんなでカリンカに付いてゆくとそこは日当たりの良い大平原。
「ナルカ大平原って言うんだよ☆ ボクも何度か来た事があるのだ〜☆」
「ここなら、風向きも大丈夫って、シルフ言ってる」
 精霊と話すケーナも頷く。
「なら、決まりだな。ここに埋めてやろうぜ。なーに、いまはあたしたちの攻撃でぐったりしてっけど、曲がりなりにもモンスターだしな。根っこは痛んでないし生命力はそれなりにあるだろ」
「「「おー!」」」
 全員でスコップ&素手&魔法でざっくざっくと地面を掘って。
 そっと植え替えて土をかけてやると、ぐったりとしていたポポタンは再び大きく花開いた。
「お水、かけてあげるの」
 ケーナが精霊に頼んで、水を撒く。
 陽にきらめくそれは虹色に輝いて、ハンター達を温かく見守るのだった。