新人強化合宿☆弥生アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
2.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/06〜03/19
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●本文
そろそろ春の声が聞こえてきそうな暖かい日。
「おらおら、テメぇら休んでんじゃねぇ!!」
びしいっ!
どすの聞いた怒鳴り声で、いまどき珍しい熱血マッチョが竹刀を振るう。
ビシビシと竹刀を振るわれつつ怒鳴られているのは新人芸能人たち。
ジャージ姿の彼らはこれまた古風にうさぎ跳びなんぞをやらされていた。
「いいか? いまどきの芸能人はなんだってできなきゃなんねぇ!
可愛いけりゃ売れる時代は終わったんだ。
顔はもちろん、歌も踊りも演技も出来なきゃこの業界で生き残れるとは思うなよ。
おらおら、休んでんじゃねぇ!
今度は校庭二十週だ!」
ビシイッ!
一際大きく竹刀が振るわれ、新人芸能人たちは泣きながら校庭を走るのだった。
☆新人芸能人強化合宿参加者募集☆
新人芸能人の強化合宿をやります。
今回は主に体力重視。
芸能人たるもの、体力がなければすぐに倒れ、ビックチャンスをさくっと逃しちゃうかもしれません。
そうならないためにもしっかり基礎体力を鍛えましょう!
●リプレイ本文
●筋肉☆
「筋肉、それは男の美学。筋肉、それは鍛え抜かれた究極の美。筋肉、それは男のロッマーーーーーーーーーーーンッ!!」
ざっぱーんっ☆
背景に幻覚の荒波を背負い、引きまくってる新人達の前に権田原教官は登場する。
正真正銘の脳筋系。
「‥‥周りも教官も脳筋系なのはデフォですか?」
げっそりとした様子でその美貌を曇らせ、辻 操(fa2564)は溜息をつく。
辻はグラビア撮影の為に程よいスタイルを維持しようとこの新人強化合宿に参加したのだが‥‥合宿終了後に脳筋系の仲間入りをしていないことを祈るばかりである。
「よーし、トレーニングすっぞー! って、その前に。権田原教官殿、是非ともコレの着用を」
うきうきるんるん?
Dr.ノグチ(fa3080)は辻とは正反対に満面の笑みを浮かべ、バックからスポーツウェアを取り出して権田原教官に差し出す。
「なんだね、これは? 俺は賄賂なんぞ受け取らんぞ!!!」
「いやいや、違いますよ。俺も使ってるんですけど、コレは汗を吸い込み易いうえゲルマニウム繊維が使われていてマイナスイオンがどーたらこーたら」
「む、むう?」
「と、とにかく、俺が見て楽しい‥‥じゃなくって、これは現代医学に基づいた確実・完璧なウェアなんです。医師免許を有する俺の言葉をどうか信じてください!」
「わ、わかったから、その、身体を撫で回すのはよせ」
額にちょっぴり冷や汗を流しつつ、権田原教官はノグチからウェアを受け取って距離をとる。
うん、マッチョだけどそっちの気はないし。
ノグチは名残惜しそうに教官の筋肉から手を離し、
「おい、SIGMA! お前もはけ!」
隣にいたSIGMA(fa0728)の背をバンバンと叩く。
無駄な脂肪を極限まで鍛えて落としたSIGMAの身体は、筋肉フェチ(?)のノグチの格好の餌食。
「なぜ俺まで?」
「俺とお前の仲じゃねーか」
「‥‥‥」
びりっ。
「ああっ、俺の自慢のぴっちぴち筋肉強調ウェアがーっ!」
差し出されたウェアをSIGMAは無言で破り捨てる。
普通布はそう簡単に引きちぎれないものだが、SIGMAの前では紙切れ同然。
「みんなで仲良く、大人数でトレーニングなんて、団体に所属してた時以来だわ‥‥」
現実から目をそらすように、リネット・ハウンド(fa1385)は一人懐かしそうに微笑む。
「運動して、体力をつけますよ〜。ADはやっぱり、体力が無いと勤まりませんから」
マッチョな男達の掛け合い漫才にちょっぴり固まっていた日向 美羽(fa1690)は、リネットの言葉に気を取り直す。
「アヤは、プロレスラーとして試合をこなせるだけの体力と、アイドルとして歌と踊りができる体力、それに身体をしぼって‥‥かわいい水着を着てグラビア撮影ができるような体型になりたいです☆」
周りの女性陣―― 特に辻を見て、泉 彩佳(fa1890)はナイスバディーを目指す。
でもどこからどう見ても華奢で繊細な美少女の泉がプロレスラーを目指しているという事実はかなり驚愕だ。
「教官。あんたに頼みがあるんだ。今回の合宿では根性をつける為の訓練ではなく、最近のスポーツ医学に則った訓練にしてくれ。
特にうさぎ跳びは現在スポーツトレーニングにおいて体を壊してしまうので禁止されてるんだぜ。訓練で身体壊したら元もこもねーじゃんか」
カンフーレスラーの孫・華空(fa1712)は、理に叶った提案をする。
けれど脳筋系&体育会系のマッチョムキムキにはそんなものは通用しなかった。
「貴様、教官に盾突く気だな? 校庭五十週!!!」
バチインッ!
顔を真っ赤に染め、生徒に逆らわれた教官は竹刀を地面に振るう。
これが男性であったなら、きっとその顔面に竹刀は叩き込まれていたことだろう。
危険を察して孫は慌ててグラウンドに走ってゆく。
こうして、恐怖の(?)新人強化合宿が始まった。
●挑戦! マッチョムキムキVS焔 恐怖の百段坂!!!
「権田原。俺がこの合宿に参加した目的は只一つだ。俺と勝負しろ!」
ビシィッ!
人差し指を突きつけて、焔(fa0374)は権田原に挑戦状を突きつける。
格闘技術は高いものの体力はないに等しい焔は、筋肉の権化ともいえる教官相手に果たして何を考えているのか?
いや、きっと何も考えていないのだろう。
彼にとって、教官への挑戦は譲れない一戦、いや一線なのだ。
「‥‥よかろう、その挑戦、受けて立つ!」
ドーン☆
ノグチの用意した筋肉ぴちぴちスーツを着込んだ権田原教官は、その挑戦を真正面から受けとめる。
「なら、ミサが審判をするわ」
余計な筋肉をつけすぎないようにする辻にとって、審判役はもってこいだった。
「俺も参加させてもらおうか。依存はないだろう?」
SIGMAはバサリと上着を投げ捨てる。
そうすると鍛え上げた胸筋があらわになり、
「三人とも、もしもの時は俺に全てを任せるんだぜ。怪我も肉離れもぜーんぶ俺が筋肉を触って‥‥げふんげふんっ、きちんと治療してやるじゃん♪」
ノグチのあつーい視線が注がれる。
「うむ、貴様らに真の肉体というものを見せてやろう。俺について来い!!」
無駄に熱い教官に、生徒達はいそいそと着いて行く。
そうして五分ほど歩いただろうか?
どこまでも伸びている石造りの階段の前で教官は立ち止まる。
階段のはるか上のほうに、小さく赤い鳥居が見える。
「山登り、ですか?」
日向が希望的観測を口にする。
ハイキングとか山登りとかマラソンとか、そういう持久力を鍛えるトレーニングを希望していた日向にとって、只の山登りだったらどんなに素敵だったか。
だが現実はとっても厳しい。
「うむ、この石段を百往復だ!」
「「「えええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!」」」
「文句を言うなぁ! これが俺のやり方だ!!」
ビシイッ!
再び竹刀が地面に叩きつけられる。
「そ、そんな、アヤ、そんなこと出来ないようぅ〜‥‥」
恐怖のあまり、泉はぽろぽろと泣き出してしまう。
「ねぇ、教官。もちろんそれをやるのはSIGMAさんと焔さん、それに教官の三人だけでしょう?」
リネットは泣き出した泉を背に庇いながら尋ねる。
「うむ。男と男の勝負だからな。女子供は見学か審判だ。俺達の戦いをその目に焼き付けるがいい!」
叫ぶマッチョに、焔の目がマジになる。
(「何が何でも、負けられないだろう?」)
軽く身体をほぐし、石段を見上げる。
「準備はいいかしら?」
辻が教官の竹刀を借りて振り上げる。
石段の前に一直線に並び、頷く三人。
「GO!」
パアアンッ!
竹刀が地面に振り下ろされ、SIGMA、教官、焔が一斉に石段を駆け上がる!
●眠れない夜のお友達?
筋肉の壁は厚かった。
「いてっ、いててっ!」
「うおっ、ノグチ、もうちっと優しく出来ねーのか?!」
男部屋で焔とSIGMAは力尽きて倒れ、ノグチの手厚い(?)看護を受けていた。
そう、勝負は二人の負け。
『十年早ーい!!』
石段を駆け上がっても教官は息一つ乱さずに二人の前に立ちはだかったのだ。
そして言いだしっぺの焔はトイレ掃除を罰として命じられ、SIGMAはバーベルを肩に乗せたまま兎跳びをやらされた。
身体を壊さずに済んでいるのはきっと根性。
「って、お前どこ触ってるんだ?!」
SIGMAがノグチを突き飛ばす。
背中のツボを押していたノグチの手がいつの間にかするりとSIGMAの胸に伸びていたのだ。
「マッサージしてやってるんだ、安心しろ。ちゃんと真面目にヤる、いや、やるって。や、ほら! 乳にしこりでもあったらヤバいだろ?」
「俺は女かあああああっ!」
どかばきげしっ☆
渾身の力でSIGMAに殴り飛ばされたノグチは夜空の星になった。
そして女性部屋では、マッチョな男達とは裏腹にほのぼのフィールドが展開されていた。
「枕投げ、ですか?」
「みんなで楽しめるレクレーションをしてみたくて。どうでしょうか?」
尋ねるリネットに、
「うん♪ みんなでやったら楽しいんだよ」
ぎゅう☆
パジャマ姿の泉は枕を抱きしめる。
「あ、でもその前に、みんな足を出して頂戴」
辻が消炎スプレーを片手に振る。
「辻さん、用意がいいですね」
「モデルの鏡だぜ!」
日向と孫はスプレーをかけてもらいながら笑う。
今日は女性陣は男性陣ほどキツイ運動はしていなかったのだが、それでもやっぱり疲れている。
辻にスプレーをかけてもらうと、パンパンに張っていた足がヒヤッとした。
「さ、いいわよ。枕投げ開始ね!」
「いえいっ☆」
みんなで一斉に枕を投げあう。
白い羽が舞い散った。
●エピローグ〜みんなマッチョ?!
「ちょっとぉ、これってどうゆうことよーーーーー!」
合宿最終日。
辻が自分のお腹を見て叫ぶ。
「どうゆうことって? ナイスバディじゃん」
孫が怪訝に首を傾げる。
「ぜんっぜん、ナイスバディじゃないわ。なんだか余分な肉が付いた気がするのよ!」
この世の終わりのような顔で、辻はお腹に手を当てる。
周りの人には何のことかわからないが、辻にはよくわかっている。
なにやら腹部にうっすらと、縦に線が入っているのだ。
そう、筋肉が付いて割れてきている。
余分な筋肉をつけないように頑張っていた辻だが、マッチョ教官のメニューをそれとなくこなしているうちについてしまったのだろう。
「ううっ、そんな程度いいじゃないですか〜。私なんて‥‥私なんて〜っ」
日向は辻のナイスバディを恨みがましく見つめてマジ泣きする。
そんな日向の体型は合宿が始まる前よりもぽっちゃりしたようなしていないような?
『やっぱり内容は肉料理? でも炭水化物もきちんと摂らないとですし‥‥バランスが偏るといけませんから、とりあえず全部食べちゃいましょう♪』
そんなことを言いつつ、出される料理を全て平らげていたから仕方がないのかもしれない。
「アヤも少しは強くなれたかな〜?」
泉は白く細い腕をくの字に曲げて、力こぶを作る真似をする。
「お前達、二週間よく頑張った! もうお前達に教えることは何もない。これから、芸能界という荒波の中を力強く生きていけ。俺は、お前達を教えることが出来て誇りに思う!」
うおおおううっと大泣きし、最後まで熱い権田原教官に見送られ、新人芸能人たちは合宿所の門をくぐる。
こうして、恐怖の合宿は無事、幕を閉じたのだった。
●お・ま・け☆
「だれかー、下ろして下さいー、もう悪さはしないって誓うんだぜ〜〜〜っ」
大きな木の枝に、簀巻きにされて逆さに吊るされたノグチが叫ぶ。
その顔は竹刀で殴られたのか、ぼっこぼこ。
ノグチは無謀にも深夜に教官の部屋に忍び込んだのだ。
なぜそんな時間にそんなところに行ったのかは不明だが、
『ほほう、寝込みを襲うとはいい度胸だ。‥‥俺の●●が××で△△だとぅ? よかろう、地獄を見せてやる!!』
教官のそんな怒声があったとかなかったとか。
「たーすけてーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
ノグチの悲鳴が、合宿所に響いた。