ぷにっと海賊団☆雛祭りアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/03〜03/07
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●本文
『ぷにっと海賊団☆』
それは、近頃人気の子供向け特撮番組である。
獣耳の少年少女たちが海賊服を身に纏い、海上はもちろんのこと、ところかまわず悪い海賊達をやっつける単純明快なストーリーと、キャストが毎回変わる斬新さが魅力☆
「ぷにっとぷにっとシューティングスター☆」
カードをぷにっとフォンにスラッシュさせて、必殺技発動!
きらきら流れる星屑が悪の海賊団をやっつける☆
「いやーんっ!」
叫び声をあげて逃げて吹っ飛ぶ悪の海賊達。
お星様となった彼らを見送って、勝利のポーズ、きめっ☆
☆次回予告☆
「なんだいなんだい。女の子ばっかりちやほやされてさ」
悪の海賊団本部の魔法の鏡を覗き込み、白い羽の少年は不貞腐れる。
鏡の中ではもうすぐ来るひな祭りの準備が進められていた。
綺麗に着飾り、大きなひな壇を見つめる人間達は、それはそれは楽しそう。
「私だってほしいんだ。女の子ばっかりずるいだろう?」
男の子には子供の日というものがあるのだがそれはそれ、これはこれ。
ぷっくりと膨れた悪の海賊団の少年は、一際大きなひな壇が飾られているデパートにターゲットを絞り、どうやって奪おうか思案するのだった。
☆『ぷにっと海賊団』キャスト大募集☆
近日放映予定のぷにっと海賊団『ひな祭り☆』のキャスト大募集!
毎回主役の違うこの番組では、海賊服に身を包んだ少年少女たちが悪の海賊団と戦います。
『ひな祭り☆』では、悪の海賊団がふてくされて巨大な雛壇を盗もうとしているので、それを止めて頂きまっす。
子供から10代前半の少年少女、『ぷにっと感』に自信のある方、大募集です☆
●リプレイ本文
●ひな祭りは女の子の日?
「女の子ばっかり楽しめて、ずるいじゃん」
悪の海賊団本部で、魔法の鏡を見つめてぷっくりと不貞腐れるユート(月岡優斗(fa0984))。
その背には、イミテーションの白い翼が付いている。
見つめる鏡の中には十二単を纏ったお雛様や五人囃子を飾り付け、自らも母親に着飾られた少女達の姿が。
「子供の日は『子供』の日とか言っちゃってるしな、男の子の日じゃないし。絶対おかしいって」
どうやら女の子が祝われるひな祭りがとってもとっても悔しいらしい。
「くっそう、俺も楽しみたいじゃん!!」
ユートは恐ろしい髑髏マーク入りの黒い海賊服をなびかせながら、地団駄を踏む。
●お人形壊しちゃった?!
「灯りを点けましょ爆弾に〜♪
お花をあげましょ食虫花〜♪
五人林の腹太鼓〜♪
今日は楽しい雛祭り〜♪」
海賊船『ぷにっとぷにっと☆』で、ユメコ(夢宮 宇沙美(fa2906))がなにやら物騒な歌を歌いつつお雛様を飾り付ける。
「酒粕から甘酒も作ったでぃすよ〜。アルコールを飛ばしてるでぃすからリスリスのようなお子様でも飲めるでぃす☆」
リスリス(縞りす(fa0115))がいつものぷにっとコック服でほんのり甘い香りの甘酒をキッチンから持ってくる。
出来たて熱々のそれをひっくり返すと大惨事なのだが、やっぱりドジっ子のリスリスは料理に関しては失敗しないようだ。
「ちらし寿司と菱餅とかもつくったですよ♪」
ぷにっとコック長・チャム(糺 空(fa3050))が小さな身体でよろよろと巨大なチラシ寿司を両手に抱えて持ってくる。
「僕も手伝うんだよ。おいしそうだね」
大きな寿司桶をムスビ(大海 結(fa0074))が支えて覗き込むと、錦糸卵の黄色にピンクのそぼろ、菜の花の緑などで春の彩り満載だった。
「菱餅に雛あられ、ちらし寿司もあるなんて、ん〜これぞ女の子の特権って感じだね♪」
お雛様の飾り付けを手伝っていたミユミユ(猫見みゆ(fa0044))は、首につけた大きな鈴を鳴らしてご機嫌。
「お雛祭りは女のコとお人形のお祭り。このコも仲間よね」
ウララ(谷渡 うらら(fa2604))はそういいながら、豪華な雛人形の下に、古びた金髪碧眼のビスクドールをそっと飾り付ける。
次の瞬間、大きく船体が揺らいだ。
「みんな、掴まってです〜!」
船の舵を握っていたイズミ(森澤泉美(fa0542))が叫ぶ。
どうやら乱気流に飲み込まれたようだ。
船の周囲に張り巡らされたバリアに、激しく稲妻が吹き荒れる。
二度、三度、大きく船は傾ぎ、そして綺麗に飾りつけた雛人形が揺れに耐え切れずにぽろぽろと落ちてくる。
「おいイズミっ、揺らすなーっ!」
「人形がっ」
「舵が‥‥重いんです〜っ」
ユメコやウララの叫びにイズミは必死に答えて舵を取り、船を青空へと導いた。
「ふーっ、何とか抜けたのです〜」
額に浮いた汗をぬぐい、みんなを振り返ったイズミは、けれどそのまま凍りついた。
ウララが頬の割れたビスクドールを抱きしめ、うずくまっている。
「‥‥お祖母様がウララにくれた、たった一つの形見だったのに」
きっと一瞬イズミを睨み、そのままウララは泣きじゃくる。
気丈なウララの泣き顔を見て、イズミは途方にくれた。
「ごめんなさいです、わざとじゃなかったんですっ」
「よし! まずは右手の小指からな。爪は二十枚あるから気合入れろよ?」
おろおろとその場に立ち尽くすイズミに、ユメコがペンチをちらつかせる。
「え? えっ?!」
「泣いて謝って土下座して許されるなら拷問官はいらねぇよ!」
ドスの聞いた声で、右手にペンチ、左手でイズミの手を押さえてユメコはペンチをパキパキと鳴らす。
マジか?
マジなのか?!
TV画面の下に、
『*注意! 大変危険です。良い子のみんなは絶対に真似してはいけません!!!』
と大きくテロップが流れる。
「ち、ちがうんです、イズミくんは、イズミくんは‥‥うわあああんっ!」
愛らしい姿とは裏腹に、恐ろしい言葉を紡ぎだすユメコにイズミは本気で泣き出して駆け去ってゆく。
「チッ! 逃げやがった‥‥」
「そんなにイズミ君ばっかり責めるのは良くないと思うよ。本人だって悪気があったわけじゃないんだし。
それに、そんな勢いで責め立てたら逃げ出したくなる気持ちもちょっとわかるもん。みんなで、探しに行こう?」
ムスビに促され、パーティーを中断して探しに行くぷにっと達。
ただ一人、ウララだけは壊れたビスクドールを抱きしめてその場に留まるのだった。
●悪の海賊団にチャンス到来?
魔法の鏡を見つめ、どうにかして女の子のお祭りであるひな祭りを妨害しようとユートは企む。
「やっぱ、でっかい奴が欲しいよな。どーんとしたひな壇。みーんなが羨ましがるようなやつ!」
そうして人間界を物色していると、デパートの屋上に飾られた巨大なひな壇が。
「おっ、いい感じじゃん! これならみんな羨ましがるな。‥‥でもまてよ? どーせ、奴らが邪魔しにくんだよなー」
ユートはいままでの悪の海賊団の失敗を振り返って物思いにふける。
いつもいつも、あと一歩というところでぷにっと海賊団に邪魔されてきたのだ。
今度は邪魔されないようにしなくては。
「ん?」
悩むユートの前に、魔法の鏡が宿敵☆ ぷにっと達を映し出す。
それは、憎っくきひな祭りを楽しんでいたらしいぷにっと達が、仲間割れをしているシーンだった。
「これってばチャンスじゃん? こいつを仲間に誘えば‥‥よーしっ!」
泣きながら海賊船を飛び出してゆくイズミに狙いを定め、ユートは急いでミニ飛空挺で飛び出すのだった。
●甘い誘惑
「悪の海賊団!」
髑髏マークの黒いミニ飛空挺から、目の前に突然舞い降りた白い翼の少年にイズミはぷにっとフォンを構える。
「おっと、待ってくれよ。俺は何もお前を攻撃しに来た訳じゃないぜ?」
「じゃあ何をしに来たんですか!」
「なーに、お前がちっとばかし哀れだったからさ、同じ男として声かけに来ただけ。ひな祭りなんてずるいよな。女ばっかりちやほやされてさ。お前もそうおもわねぇ?」
「イズミくんはべつに‥‥」
「じゃあ何でおまえは泣いてんだよ! 女は男を邪魔者扱いしてるだろっ!」
ユートの言葉に、ウララとユメコの顔が脳裏に浮かぶ。
(「本当にわざとやったんじゃないのです」)
責めた二人の言葉は、深くイズミの胸に突き刺さる。
「なあ、思い当たることがあるだろ。どうだ? おまえも俺と一緒に反抗しないか?」
やんちゃに笑うユートの手を、イズミはそっと取る。
「イズミくん、一緒に行くことにするのです」
(「イズミくんなんかいなくったって、きっとみんな困らないのです」)
「やったー、そうこなくっちゃ! でっかいひな壇を奪い取って、俺達だってひな祭りを楽しもうぜ!」
喜び勇むユートはイズミの悲しい気持ちに気づかなかった。
「イズミ君、いっちゃだめだよっ!」
飛び出したイズミを一生懸命探していたムスビは、ミニ飛空挺に乗り込むイズミを見つけて叫ぶ。
一瞬、ムスビを見て立ち止まったイズミは、けれどユートに強引に手を引っ張られてそのままミニ飛空挺の中に。
「イズミ君、イズミくーーーんっ!!」
飛び去ってゆく黒い飛空挺に、ムスビは成す術もなく叫ぶのだった。
●大変! みんなで、助けに行こう!!!
「みんな、大変なんだよっ、イズミ君が悪の海賊団に連れてかれちゃったんだよっ」
全員に回線を繋いだぷにっとフォンにムスビは叫ぶ。
急がないとイズミを永遠に失ってしまうかもしれない。
『ぷにっと海賊団、出動だよっ!!』
『了解でぃす!』
電話口から次々にぷにっと達の返事が聞こえる。
悪の海賊団から、イズミを奪還だっ!
●大切なもの
ぷにっとフォンから聞こえるみんなの声を聞きながら、壊れたビスクドールを抱きしめていたウララは祖母を思い出す。
二年前に他界してしまった祖母は、このビスクドールをそれはそれは大切にしていたのだ。
そしてこう、言っていた。
『この子はね、ウララ。私が子供の頃、フランスのお友達に友情の証として贈られたものなの。
人生において一番大切なものは友達よ。どうか忘れないで』
祖母はなぜ人形を大切にしていたのか。
ウララは涙を拭いて、瞬間接着剤で壊れたビスクドールを補修しだす。
●対決!
真夜中。
デパートの屋上に降り立つ黒いミニ飛行船。
「大きいからな、気をつけて運べ。怪我すんなよ? 俺は良いけど親御さんが泣く」
うんせ、うんせとイズミとユートは巨大ひな壇を一生懸命運び始める。
でも二人だけじゃどうやったってそのまま運ぶことは出来ないから、お雛様やお内裏様を一つずつ運びだす。
「あれ? なんかいま、お雛様の首が動いたです?」
イズミが抱きかかえたお雛様をツンツンとつついてみる。
ちゅどーーーんっ!
「うわっ?!」
「えええーっ?!」
いきなりお雛様の首がロケットよろしくぶっ飛んで、ユートの脇すれすれを横切って壁に激突!
慌てふためく二人に、カッとスポットライトが当たる。
「「「ぷにっと海賊団、参上っ!」」」
叫び、ひな壇から飛び出してくるぷにっと海賊団☆
「お前ら、何でこんなところにいんだよっ!」
「悪の海賊団の考えることなんて、ぷにっと海賊団は全部お見通しです!」
飛び出してきたぷにっと達に慌てふためくユートに、シュガーチョコを粋にくわえたチャムがチッチと指を振る。
「ふふん、僕の『ぷにっとミサイル雛祭り』はどうだった? 驚いたかよ」
ユメコが不遜に笑い、
「お雛さんは女の子の夢なんでぃす! それを盗むだなんて許せないでぃす! そしてイズミさんを盗むのはもっと許せないでぃす!」
「イズミとお雛様は渡さないんだよ!!」
リスリスとミユミユのふわふわ尻尾が怒りでぶわっと逆立つ。
「イズミ君、正気に戻ってだよ。僕、イズミ君と戦うなんて辛いんだよ」
ムスビの柔らかいロップイヤーが寂しげに揺れる。
でも。
(「ウララさんは、やっぱりいないんですね‥‥」)
ぷにっと海賊団の中にウララがいないことに、イズミの心はきゅっと締め付けられる。
「イズミくんは戻らないです! もうイズミくんは悪の海賊団として生きるんです、このお雛様の命が惜しかったらあきらめるですーっ!」
仲間達から目をそらし、ぶっ飛んだお雛様の首を回収してぺちぺちとイズミは叩く。
「わかったろ? イズミはもうこっちの仲間だぜ。俺達には誰もかなわないじゃん!」
ユートが叫び、攻撃を繰り出した!
白い羽から無数の羽の矢が飛び出し、さながら雨のようぷにっと達に降り注ぐ。
「うわわわわっ」
「こうなったらこっちも攻撃だ?!」
「駄目だよ、イズミ君に当たっちゃうんだよ!」
実質イズミを人質に取られているぷにっと達は攻撃できない。
どんどん、壁際に追い詰められてゆく。
●真打ち登場☆
「なーるほど。囮捜査をしてたのね。イズミくん、やるぅ!」
ユートの攻撃に手も足も出せず、防戦一点張りだったぷにっと海賊団達の頭上から声が響く。
見上げるそこには海賊船で現場に駆けつけたウララの姿が。
「ウララさんっ」
「待たせたわね」
船から軽やかに飛び降りて、悪の海賊団とぷにっと海賊団の間に立つ。
「囮‥‥? 違うですっ、イズミ君はもう、悪の‥‥!」
「戻ってきなさいよ」
イズミの言葉をさえぎり、ウララが笑いかける。
その笑顔には、裏も打診もない。
大切な仲間を、友人を迎えるそれ。
「イズミくんを、迎えに来てくれたですか? お人形、壊しちゃったんですよ?」
「うん」
頷くウララに、他のぷにっと達も同意する。
「戻ってきて」
「僕達は仲間だから」
「一緒に、がんばるんだよ!」
仲間達に笑顔を向けられて、イズミの寂しさは吹っ飛んだ。
「イズミくんは、イズミくんはっ、ぷにっと海賊団です〜っ」
うわああんんっと嬉し泣きして仲間の元へかけてゆく。
「お、おい、イズミ? ちっ、まじかよっ!」
今日という今日こそ勝利を確信していたユートはたじたじ。
「形勢逆転だよっ!」
「いくです、座布団菱餅あたーっくっ☆」
「うさ耳アタックだよっ」
「お雛様だけが追尾弾じゃないぜ。お内裏様もいっけえっ☆」
「食らいなさい! ぷにっとレインボー・バブルGボム!」
ミユミユ、チャム、ムスビ、ユメコ、ウララの連続攻撃がユートに襲い掛かる!
「うわっ、まっ、ちょっ、マジ痛いじゃんっ!」
「とどめなのでぃす。ぷにっとひなあられボンバー!」
ちゅどーんっ☆
最後の一撃!
慌てふためくユートにリスリスの必殺技が決まった。
「まだ勝負は付いてねぇー」
きらんっ☆
叫び、吹っ飛んで夜空のお星様になるユート。
くるっ!
イズミを中心に、画面に向き直るぷにっと達。
「「「「正義はぷにっと☆」」」
勝利のポーズ、きめっ☆
●今日は楽しいひな祭り☆
「あれ‥‥リスリスの尻尾が一つ‥‥二つ‥‥」
再開されたひな祭りパーティーで、マタタビに酔ってしまったのかミユミユがリスリスの尻尾を弄んでいる。
「ひやぁぁあ〜その服なんだよぅ〜」
その後ろでは、チャムが何故か三人官女の仮装をさせられて涙ぐみ、仮装させた張本人のユメコは、
「やっぱり雛祭りはお祝いなんだから、みんなと楽しむのが一番だよね☆」
と何事もなかったようにチャムとリスリスの作った豪華な食事をぱくついていたりする。
そしてウララとイズミは。
「紹介がまだだったわね。エミットよ。どうか抱いてあげて?」
修復したビスクドールを差し出すウララ。
「ありがとうです」
笑って人形を抱きしめるイズミ。
楽しいパーティーはまだまだ続いていくのだった。