WonderTalk魅惑のハーブアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/09〜03/13
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●本文
青空を写した画面の中に、剣を構えた青年のシルエットと『Wonder Talk』文字が重なる。
ドラゴンが火を噴き、魔法使いが活躍するそれはファンタジー特撮番組『Wonder Talk』のオープニングだった。
中世ファンタジー世界『カラファン』を舞台にモンスターハンター達が剣と魔法と知恵を使い、行く手を阻む魔物達を倒してゆく特撮番組は今回で四話目。
モンスターハンター達はハンターギルドにてモンスター退治や一般人には解決できない問題を依頼として請け負う。
そして今日の舞台はカラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』。
商業の街として知られるこの街では、つい先日も異常に眠くなるという事件が起こったばかりだが、果てさて今回はどうしたのだろう?
「ハーブを摘んで来てほしいのよぅ」
もう眠くなる原因は取り除かれたというのに、ギルドの受付係は眠たそうに答える。
なんでも、この町の好事家が大層ハーブが好きらしく、この時期、ナルカ大平原に生えるマーシュを摘んで来てもらいたいのだという。
「でも、ハーブを摘むだけだったら俺らに依頼は来ないよな?」
モンスターハンターギルドに依頼するからにはそれなりのわけがあるはず。
大剣を担ぐ剣士に、受付上は「ご名答♪」とウィンク。
「春ですからねぇ、ハーブも生えるでしょうけれどモンスターも生えたようで。えぇ、巨大な蛇と蛙がにらめっこしているようなのよぅ。さくっと行って倒しちゃってくれないかしらん?」
いやいや、それは生えたとは言わないだろう?
そんなモンスターハンター達の突込みを余所に、物語は進んでゆくのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜魅惑のハーブ〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、モンスターを倒し、上手にハーブを摘んできてください。
☆モンスター情報☆
『ビック・スネーク』
その名の通り大蛇です。
全長5mはあります。
主にその長い身体を利用した巻きつきを得意としています。
『ビックリカエル』
その名の通り驚いたカエルです。
こちらも全長2mはある大きなカエル。
おもに巨体を利用したアタック攻撃と、特殊攻撃『ヒックリカエル』が得意です。
この特殊攻撃は天敵であるビックスネークに捕まった時に発動するようです。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』
春のような暖かい気候が続くその街では、商業が盛んです。
情報屋はもちろん、様々な嗜好品も売られています。
問題の『ナルカ大平原』はレザラディカの南西にあります。
広々とした草原で、様々なハーブが生えています。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
今後も職業は順次増えてゆきます。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
●リプレイ本文
●ハンターギルド
今日も今日とてモンスターハンター達で賑わうハンターギルド。
そんな中、異国の服を身に纏い壁に貼られた依頼一覧を見て、受付嬢の説明を聞いている魔法戦士・リンフー(MAKOTO(fa0295))が一人。
レザラディカのある東大陸より南、転移門の使用で行き来することの出来る南大陸の獣人種族の一つ、虎人族だろうか?
金地に黒の縞模様の入った尻尾は艶やかに揺れている。
「ふうん、ヘビとカエルかぁ。面白そうなんだよ」
ふむふむと受付嬢に頷いていると、
「あなたもハーブの採取ですか? 私はフィランダー・ウェルネス。見ての通り、戦士を生業としている。どうぞ宜しく」
長剣の戦士・フィランダー・ウェルネス(小比類巻レイジ(fa1107))が手を差し出す。
「ボクはリンフー、よろしくね♪」
がっちりと握手をする二人に、受付嬢が声をかける。
「あちらに、同じ依頼を受けたハンターたちがいるからぁ、一緒に行動してねぇん」
いつものごとく眠たげな受付嬢に促され、二人がギルドの外に出ると、そこには六人のハンターが集まっていた。
「こんにちはニャ〜♪ これで全員揃ったニャ。ニャハハ♪」
エキゾチックな衣装を身に纏い、陽気に笑う踊り子・アヤカ(アヤカ(fa0075))、
「アーティだ‥‥。よろしく」
家族思いの照れ屋なシーフ・アーティ(蘇我・町子(fa1785))、
「こんにちは、魔法使いのチヒロです。マーシュってお料理に最適よね」
ほんわかお料理好きの魔法使い・チヒロ(森宮・千尋(fa1782))、
「ケーナも行く。若菜摘み楽しみにしてる人多いの。ケーナ達頑張る。皆幸せになる」
幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))、
「あら、宜しくお願いしますわね。イケメンとの仕事は嬉しいわ」
魅惑の踊り子・トール(トール・エル(fa0406))、
「蒼龍と申す、今回もよろしくな! 今回はビックスネークにビックリカエルが相手か‥‥拳だけでは済みそうにないな。剣で相手するしかないか‥‥」
そしてラストは戦士の蒼龍(星蔵 龍牙(fa1670))。
ぱしりと拳を鳴らして挨拶をしつつ今回の敵への攻撃方法を思案する蒼龍に、けれどチヒロは青ざめた。
「蒼龍君、今なんとおっしゃったのかしら?」
「ん? 『今回もよろしく』」
「違いますわっ、その後ですのよ!」
「あと‥‥ああ、ビックスネークにビックリカエ」
「いーやーっ!!」
蒼龍がいい終わらないうちにチヒロは耳を塞ぐ。
その目には涙が滲んでいる。
「どうしたニャ?」
「チヒロさん、どうしたの?」
「俺、なんか悪い事いったか?」
口々に尋ね、首をかしげる面々に、チヒロはおっかなびっくり答えた。
「爬虫類は、苦手と言うのにどうしましょう‥‥」
どうやらただのハーブ採取と思い、この依頼を受けてしまったらしい。
「仕方ありませんわね。わたくしが守って差し上げますから安心なさいませ。ほーっほっほっほっほ!」
無駄に自信満々のトールにずるずると引っ張られる形で、チヒロは泣く泣く着いてくるのだった。
●ナルカ大平原
商業の街レザラディカの南西。
日当たりのよいその草原では、多種多様のハーブが植わっている。
「ポポタン、元気?」
以前の依頼でナルカ大平原に植え替えてあげたポポタンを見つけ、ケーナは話しかける。
ポポタンはケーナがわかるのか、ふるふるっとふるえてワタポコを一つ、飛ばす。
「ありがとう」
手の平に落ちてきたそれを受け止めて、ケーナはポポタンを撫で撫で。
「恐怖の大王は、まだいませんわね。えぇ、一生出てきてくださらなくて宜しいですわよ」
きょろきょろと周囲を伺いながら、チヒロは杖を握り締める。
「天気も良いし、楽しく行こうよ♪」
そんなチヒロとは正反対に、リンフーはご機嫌。
暖かい気候に幸せそうに尻尾が揺れる。
「ビックスネークとビックリカエルの弱点は単純明快でしたし、それほど怯えることもありませんわよ」
街でアヤカときっちり情報収集をしていたトールは余裕綽々。
「ハーブの採取自体はそんなに難しくは無い筈だが、問題は大平原に生息するモンスターへの対処だ。ハーブの採取中にモンスターに遭遇する確率は高いだろう。
見張り役とハーブ採取役とに別れて作業を進めないか?」
薬草知識を騎士時代に学んでいたフィランダーは、物静かに提案する。
「ならあたしは見張り役だね。花畑なんぞ久しく来た事はないし、こう言った仕事でもない限り用はないからなあ。あたしにはマーシュがどれだか見当も付かないよ」
愛する息子の為にも何か摘んでいってやりたいがいかんせん、アーティには草原に生えている雑草もハーブもみんな一緒に見える。
「なら僕も見張りだね。魔法は得意だけど薬草学はてんで駄目だったんだよ」
リンフーは肉球な手で金の髪を照れくさそうにかきあげる。
「ふむ。ならば俺も見張りだな。ハーブは握りつぶしてしまいそうだ」
常に周囲を警戒していた蒼龍も、見張り班に決定。
そうして話し合いの結果、ハーブを見分けることの出来るケーナとトール、そしてアヤカと絶対巨大爬虫類なんて見たくないチヒロがハーブ摘みに、見張りにはリンフーとフィランダー、アーティと蒼龍がつくことになった。
●おいしいハーブ摘み
「おいしそうニャねー♪ サラダに最適ニャ♪」
マーシュを摘みながらアヤカは頬を緩ます。
味にクセがなく、サラダやスープによく使用されるマーシュは、ちょっぴり食いしん坊で美味しいものに目がないアヤカのご用達ハーブといってもいいかもしれない。
「好事家さんへの物とは別に、料理に使えそうなら皆さんに振舞おうと思ってますのに、なかなか見つかりませんわねぇ」
さくさくと見つけて摘んでいるアヤカに比べ、チヒロの摘んだハーブは思いのほか少ない。
料理好きの彼女なら、数種類のハーブをすぐに見分けることが出来そうなのだが、やはり爬虫類がどうしても気になって上手く集中できていないのだろう。
「‥‥初めて食べる‥‥筈? なんか、懐かしい‥‥」
ケーナが摘んだばかりの新鮮なハーブを一口食べてみて、きょろきょろと辺りを見渡す。
「‥‥ずーっと昔、大勢でハーブ摘み、やった‥‥?」
召喚士になる前の記憶のない彼女には、それがいつのことだったか思い出せない。
草原に吹く風がただ、彼女の記憶の中にある昔の手がかり『風の吹く家』と違うということがわかるだけ。
「このわたくし自ら摘んであげることを感謝なさい。ほーっほっほ!」
トールは相変わらず高笑いしながらさくさくとハーブを摘んでいる。
と、その時。
地響きがあたりに響きだした。
●対決! ビックスネーク&ビックリカエルVS冒険者!
「ふん。蛇風情が、この私の邪魔をするとはな‥‥!」
目の前に突如として現れたモンスターに、アーティはサバイバルナイフを構える。
「ターゲット発見! 火よ! 破壊の光となれ、ファイアーレーザー!」
リンフーが叫び、ビックスネークへ向けて炎の光線が突き刺さる。
だがもちろんそんな一撃ではビックスネークはびくともしない。
長い尻尾がハンターたちを横一直線になぎ払った!
「くっ‥‥さすがに凄まじい破壊力ですね!」
吹き飛ばされながら、それでもフィランダーは長剣でその尻尾を切りつける。
ザシュリと小気味良い音をさせて切り裂かれるビックスネークの身体は、鱗に覆われている割には意外と脆いようだ。
しかし切り裂かれた痛みはきっちりと感じるのだろう、怒りのままにビックスネークはフィランダーに突撃する。
「させん! 牙龍拳‥‥剣術奥義‥‥第一節の二、エアーブレイド!」
蒼龍が剣をなぎ、拳の速さで繰り出された剣から真空波が引き起こされ、空気の刃がビックスネークを切り付ける。
痛みに狙いを外したビックスネークはそのままフィランダーの横にあった岩に頭突きを食らわせ粉砕する。
そしてそのままアーティに狙いを定め、巻きつける!
「はっ、くっ‥‥!」
5mの巨体から生み出される力は半端でなく、アーティーの意識はすぐに遠のいてゆく。
「いくら待っても時間の無駄か‥‥俺たちで片付けるしかないのか?!」
蒼龍はビックリカエルとビックスネークを戦わせ、出来れば無意味な殺生をせずにハーブを摘みたかったのだ。
だが、現実はそう甘くはないらしい。
額に、冷や汗が伝う。
「きゃー嫌、きゃー嫌、いやったらいやーーーーーーーーーーっ!!」
草原にチヒロの叫び声が響き渡る。
リンフーたちがビックスネークと戦っている頃。
ハーブを摘んでいたアヤカ達にも恐怖の大王が訪れていたのだ。
大王の名前はビックリカエル。
「ゲロゲーロッ!」
鳴き声はカエルのようだが、カメレオンのように目が飛び出て一見驚いているかのように見えるそれは、通常よりもより一層シュール。
視覚の暴力といえるその外見は、只でさえ爬虫類嫌いなチヒロの冷静な思考力をさくっと奪い去る。カエルは爬虫類ではない、と言ってももう通じない。
「母なる大地、我を守って。敵を滅する石の礫を!」
ケーナが大地の精霊に願い、それに応えて大地に転がる小石が一斉にビックリカエルに降り注ぐ。
「いっくニャ〜! 必殺ローリングソードニャ〜♪」
アヤカが蝶のようにひらりと舞い、ビックリカエルの腕を切り裂く。
「‥‥しかたありませんわね」
トールが目いっぱい嫌そうな顔をしながら華美な上着を脱ぎ捨てる。
露出の多い白い着物と、赤い袴姿になった彼女は、天に向かって祈りの舞を捧げる。
「天照大神よ、彼の物に裁きの稲妻を与えたまえ!」
いつもの魅惑的な舞とは違い、神々へ捧げるそれは神秘的。
祈りを聞き届けた天の怒りが、ビックリカエルに突き刺さる。
「ゲーロゲロゲローーーッ!」
ダンダンダンッ!
稲妻に打ち抜かれたビックリカエルは地面を激しく叩きつける。
「トールさん、巫女? どうして‥‥」
「このわたくしが例え神と言えど誰かを頼るなんて嫌だったからよ。そんなことより、はやくこの場を離れるわよ! リンフーたちと合流したほうがいいわ!」
以前もトールと共に依頼を受け、踊り子だと思っていた彼が巫女でもあったことに驚きを隠せないケーナだったが、いまはそんなことを言っている場合ではない。
「もうもう、私を怒らせると怖いんだからー!! ライトニングブリザードMAX!!!」
蛙は嫌い蛙は嫌い蛙は嫌い。
そんな叫びと共にチヒロの最大級攻撃魔法が炸裂する。
その攻撃にビックリカエルが怯んだ隙を見て、
「戦術的撤退ニャ!」
暴れ狂うビックリカエルに追いかけられながら、四人は蒼龍達との合流を目指す。
「きたっ!」
それは、まさに天の助けだった。
アーティを捕らわれ、追い詰められたいたフィランダー達の元に、ハーブ採取班が駆けつけたのだ。
「助かったよ‥‥って、カエル付きっ?!」
リンフーが目を剥く。
駆けつけたというよりハーブ班は殆ど全力で逃げてきたといったほうが正しかったようだ。
だが、運命はハンター達に味方した。
「う‥‥あっ?!」
ぽいっ。
ビックスネークが唐突にアーティを放り捨てたのだ。
落ちてきた彼女を咄嗟にフィランダーが抱きとめる。
「一体なぜ急に‥‥」
怪訝に思いつつ、答えはすぐに出た。
ハーブ班を追っかけてきていたビックリカエルがその場に立ち竦み、たらたらと脂汗を流している。
そしてビックスネークは表情があるならばまさににやりと舌なめずりをしてビックリカエルに近づいてゆく。
「蛇に睨まれた蛙、と言うからね」
「これでナメクジがいたら三竦みニャね☆」
アヤカも楽しそうに事の成り行きを見守る。
●エピローグ
「お遊びはここまでだ‥‥」
「さっきはよくもやったね? お返しだよ!」
フィランダーとトールに癒されたアーティがビックスネークに剣を振るう。
ビックリカエルとの戦いで傷付いていたビックスネークはそれが最後の一撃となり、力尽きた。
「ふ〜う。強敵だったニャ」
「二度と! 私はもう二度とここへはきませんわ‥‥」
艶やかな髪が心なしがくったりとしてしまうほど、チヒロは精神的ダメージを受けているようだ。
目の前で巨大な蛙が巨大な蛇に飲み込まれるのを見れば、爬虫類嫌いに拍車がかかるのも無理はないだろう。
目の前に横たわるビックスネークのお腹は、丸呑みしたビックリカエルの分だけごろんと膨らんで気持ち悪さ当社比1・5倍。
「あたしはハーブは摘めなかったけど、こいつの鱗でも持っていってやろうかね」
一人息子の為に、アーティはバタフライナイフで器用に鱗を剥ぎ取る。
並みの鱗よりもはるかに大きいそれは、日に透かすとモンスターの物だとは思えないぐらいきらきらと輝いて美しかった。
刺青を施したキツイ顔立ちが、自然とほころぶ。
「さあ、敵はいなくなりましたし、ハーブ摘み再開ですわよ。ほーっほっほっほ!」
トールのご機嫌な高笑いが青空に響き渡った。