WonderTalk〜転移門〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/16〜03/20
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●本文
画面いっぱいの見慣れた青空に、『WonderTalk』の文字とモンスターハンター達のシルエットが重なる。
それは中世ファンタジー世界を舞台とした特撮番組のオープニングだった。
モンスターハンターと呼ばれる冒険者達はハンターギルドにてモンスター退治などを依頼として請け負う。
そして今日の舞台もカラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』。
商業の街として知られるこの街では、人も多い分事件も多いようだ。
「転移門が開かなくなったのよぅ」
相変わらずギルドの受付係は眠たそうに答える。
「おいおい、そりゃ大事じゃねえか?」
けれどそれを聞いたモンスターハンターは驚きの声を上げる。
転移門とは、カラファンの全土に点在する精霊と魔力によって保たれている門のことで、魔力を駆使することによって別の転移門へと瞬時に移動することが出来る移動装置でもあるのだ。
この門が使えなくなると、レザラディカのある西方大陸から、ワレント海域を挟んで存在する東方大陸への移動は、海を使用することになる。
当然のことながら海には海のモンスターもおり、常に危険が付きまとう。
「でも、まてよ? 転移門は王国魔道師団が管理してんじゃねぇのか? それがどうにも出来ないもんを俺らにどうにかできんのか?」
王国魔道師団はその名の通り卓越した魔道師と召喚士によって結成されている王国きっての魔道集団である。
その魔道集団ですらどうにもならないものを、果たして自分達モンスターハンター達で解決できるのだろうか?
眉をしかめるハンターに、受付嬢はにっこりと微笑む。
「んー、問題はわかってるのよぅ。王宮の上空にねぇ、ダーククラウドが出ちゃったのよぅ。奴らったらちょーっぴり食欲旺盛らしく?
魔道師達の能力を王宮から漏れないように包んじゃったのよねぇ」
のほほーんと受付嬢は言うが、言われてるハンターの目はじと目。
ダーククラウドといえば黒い雲のようなモンスターで、主に魔力を餌にする。
大方、王宮から漏れる極上の魔力に惹かれて寄ってきたのだろう。
「‥‥それはつまり、俺達に囮になれってことか?」
「ご名答♪ 皆様にはぁ、王宮を包んじゃったクラウドモンスターがこっちに寄ってきてくれるようにしてもらいたいのよぅ。
寄って来たクラウドモンスターはもちろんさくっと倒してもらえるかしらん?」
うふっ♪
極上の眠たげな笑顔で微笑む受付嬢を思わず突き飛ばしたくなりつつ。
モンスターハンター達は溜息交じりに依頼を受けるのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜転移門〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、モンスターをさくっと倒して転移門を無事、使えるようにしてください。
☆モンスター情報☆
『ダーククラウド』
黒い雲のような形をしたモンスターです。
数は5匹。
レザラディカの王宮をくるっと囲ってしまっています。
主に稲妻による魔法攻撃を得意とし、敵のMP(マジックポイント)を吸収します。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』
春のような暖かい気候が続くその街では、商業が盛んです。
情報屋はもちろん、様々な嗜好品も売られています。
問題の王宮は城下町にあります。
その為、ここで戦闘をしますと王宮はもちろんのこと、町への被害も甚大です。
上手くクラウドモンスターを引き付け、王宮や街に被害が出ないよう、退治してください。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
今後も職業は順次増えてゆきます。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
●リプレイ本文
●ハンターギルド
転移門が開かなくなるという前代未聞の事件に集まったモンスターハンター達は八人。
「‥‥草薙歴だ」
壁際に佇み、女浪人・草薙歴(草薙歴(fa0129))は他のハンター達をねめつける。
後ろ腰に下げていた酒瓶を煽る姿に、幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))は怯え気味になる。
「あら、機嫌がお悪いのかしら? わたくしのような美女を前にして照れているのね。まあ、それも致し方ないこと。ほーっほっほっほっほ!」
そして踊り子にして巫女であるトール(トール・エル(fa0406))は相変わらず高笑い。
「初めまして。私はセルムと申します。こう見えてもモンスター学者なんですよ?」
そしてそんな存在感ある二人に少しも気後れせず、セルム(相沢 セナ(fa2478))はマイペースに自己紹介をする。
厚いレンズの眼鏡をかけ、冴えない風貌の彼は有翼人種なのだろう、背中には大きな黒い翼が生えている。
「今日もよろしくな♪ また一緒に依頼が受けれて嬉しいぜ」
サクヤ(橘・朔耶(fa0467))の挨拶は前半はみんなに、後半はちょっぴり怯え気味のケーナに向けたものだ。
「宜しく、お願い致します」
大勢の人の命がかかっているせいもあって、ケーナの表情はいまひとつ冴えない。
けれどサクヤに頭を撫でられて、ほんの少しリラックスしたようだ。
「紅龍と申す、よろしくお願いします。以前、こちらの街では兄がお世話になった様ですが、今回は兄蒼龍では手出しできない相手だそうで僕が代わりに来ました」
そういって、兄に良く似た青年戦士・紅龍(星蔵 龍牙(fa1670))が深く礼をする。
顔だけでなく、礼儀正しさも兄譲りなようだ。
ただ紅龍の拳には兄とは違い、赤い鍵爪が備わっていた。
「記念すべき初依頼です‥‥いえ、何でもありません!」
僧侶であり、今回の依頼が初めての冒険であるアイリ(霧島 愛理(fa0269))は、期待半分、不安半分の微妙な気持ちで杖を握り締める。
そして最後は見習い吟遊詩人のメメント・パール(阿野次 のもじ(fa3092))。
どたどたとものすごい勢いでハンターギルドに飛び込んできた彼女は、もう既に集まっている面々を見て、
「みなさん、おはーよーございます。さあ、本日も張り切ってまいりましょうっ、ぶい!」
元気いっぱいにピースサイン。
集合時間に遅れたことは少しも気に留めていないようだ。
「照大神がお隠れになってますわね。わたくしの美しさに照れたのでしょうね」
口調はいつもの高飛車なものだったが、ギルドを出て空を見上げるトールの表情は険しい。
空は、ダーククラウドによる黒い影に覆われていた。
●ダーククラウドをおびき寄せろ!
「大きな魔法使うなら、一番大きな広場を使っても被害出る。南西のナルカ大平原か、南の時の眠る遺跡なら十分な広さあるけど‥‥」
ケーナが城下町レザラディカの周辺で、戦闘が行えそうな場所を思案する。
「時の眠る遺跡がいいと思うぞ、私は。ナルカ大平原は、身を隠す場所がない」
予め高台に上り城の状態とダーククラウド、そしてレザラディカの周辺を確認しておいた草薙は短く呟く。
「こらこら、あんまりぶっきらぼうにするんじゃないよ。ケーナがまた怯えるだろ? ほら、ケーナ、おねーさんは怖くないからな?」
大きな茶色い瞳を潤ませるケーナを撫でながら、サクヤは草薙を叱る。
叱られた草薙はばつが悪そうに酒瓶を煽った。
「街から離れた場所で囮として魔力を解放すれば、誘き出せるでしょうか?」
ダーククラウドが覆ってしまった城はレザラディカの中にある。
このままこの街で戦闘を行えば街への被害はもちろんのこと、城も無事ではすまない。
だからダーククラウドを城から引き離し、被害の出ない場所へおびき寄せる必要がある。
セルムは城を覆う黒い影を見つめ、黒い髪をかきあげる。
その仕草は、サクヤに誰かを思い起こさせた。
「お前、どこかで会ってないか?」
「‥‥え? 人違いではないでしょうか。世の中に似た人は3人いるといいますし」
セルムはずり落ちそうになるメガネを人差し指であげる。
「まあ、そうだな」
納得してサクヤも城に目を向ける。
「城が壊れない程度に攻撃魔法で挑発してみませんか? アレは魔力を糧としているのでしょう?」
アイリがちょっぴり物騒なことを提案する。
ダーククラウドは、城から漏れる極上の魔力に惹かれて集まってしまったのだ。
だから、魔力でおびき寄せることは有効なはず。
でも今ここで魔力を開放したら、ダーククラウドの攻撃が街に被害を及ぼしかねない。
流石に、街から何キロも離れた場所から攻撃魔法は撃ち放てないだろう。
「こっちにひきつけるなら、一端転移門の魔力止めれない?」
草薙から隠れるようにサクヤの背に潜み、ケーナが提案する。
でもやっぱりちらちらと草薙を伺っている。
また否定されそうで怖いのだ。
「‥‥それは、いい案だと思うぞ、私も」
怯えるケーナに草薙はやっぱりぶっきらぼうに答え、けれど腰に下げていた酒瓶を差し出す。
「?」
「‥‥豆から取った祖国の調味料だ。温まるぞ」
中身はケーナがあまり見たことのない調味料で、黒に近い茶色をしている。
けれどお酒ではない様だ。
無愛想な草薙なりに、幼いケーナに気を使っているのだろう。
そっぽを向く頬が赤い。
「ありがとうですの」
一口飲んでみるとその味はとんでもない物だったが、ケーナはお礼を言って微笑んだ。
●ダーククラウドVSモンスターハンター!
城の魔術師に連絡を取り、一時的に魔力の放出を抑えてもらったハンター達は、時の眠る遺跡で各々の武器を構える。
「さあ、こっちにきてもらうよ、ダーククラウド!」
メメントが銀の竪琴を奏で、魔力を込めた呪歌を紡ぐ。
♪〜
春の花は誰にも優しい
野に咲く可憐な花 風に吹かれて 人を幸せにする薫り運ぶ
花咲くように笑顔で生きていければ素晴らしい
時には辛い人生も 花咲くように行くのです
〜♪
メメントの歌声に合わせ、召喚士であるサクヤとケーナ、そして魔術師であるセルムは己の魔力を高め、杖に集中させる。
時の眠る遺跡の草花が呪歌に応えてざわめき花も咲き乱れる。
そうして。
「‥‥これでは兄では手出しできないか‥‥」
「おやすみの時間だぜ♪」
レザラディカの街から一直線に自分達に向かってくる五つの黒い雲を見つめ、紅龍とサクヤは楽しそうに腕を鳴らす。
「さあ、皆さん。わたくしのためにもがんばって戦ってくださいませ」
トールが巫女の舞を舞い、全員に雷に対する加護を施した。
「気合を入れて行きなさいっ!」
怖気づきそうになる自分に向けて、アイリは杖を構える。
ダーククラウドはもう、すぐそこまで迫っていた。
「戦闘はあまり好きではないのですが‥‥仕方ありませんね。かの者の力となりて光の刃よその姿を具現させよ! ライトセイバー!」
セルムが呪文を唱え、草薙の愛刀に魔法属性を付与する。
ぼうっと輝くそれは、通常攻撃の効かないモンスター、そう、実体のないに等しいダーククラウドにも効果があるだろう。
「‥‥感謝する」
短く呟き、草薙は遺跡の岩陰に隠れながらダーククラウドに切りつけるチャンスを伺う。
「蒼氷を統べる深遠の大蛇よ、悪しき者らへ束縛を!」
「天駆ける紫の戦乙女達よ我等に力を! 目前の敵を打ち倒したまえ!!」
二人の召喚士の呪文が完成し、氷の大蛇が具現化し、二匹のダーククラウドを拘束、そして風の精霊が天空を駆けるといわれるヴァルキリーのようにその鋭い風の刃で敵を切り刻む。
「危ないっ、隠れるんだっ!」
紅龍が叫び、召喚魔法に集中していたケーナにダーククラウドの稲妻が降り注ぐ!
「きゃあっ‥‥あ?」
けれどケーナは無事だった。
「ふっ、お役に立てたかしら?」
アイリが結界を張り、ケーナを守ったのだ。
不遜に笑う彼女の膝はちょっぴり笑っている。
けれどほっとしたのもつかの間、別のダーククラウドがケーナの身体を一瞬にして覆い、その魔力を吸い取ったのだ!
「ケーナッ!」
「しっかりしなさい、わたくしが全て治療して見せますわ!」
魔力を奪われたショックでその場に倒れ伏したケーナにトールが駆け寄り、アイリと共に治療に当たる。
「許さん‥‥師匠より譲受し鳳凰の爪、とくと味わうが良い‥‥牙龍拳爪術奥義、鳳爪!」
ダーククラウドにとっては巨大な魔力に惹かれて狙ったに過ぎないのだろうが、一番幼いケーナを狙われたことで紅龍の瞳に怒りが湧き上がる。
聖なる力を宿す赤き鍵爪が、紅龍の素早い動きによってまるで鳳凰のように地上に降りてきたダーククラウドを切り裂く。
(「もう少し‥‥あと少し!」)
そして草薙は遺跡から遺跡へ身を潜めながら蛇行し、ダーククラウドに近づいてゆく。
その表情は般若の如し。
怒っているのは、紅龍だけではないのだ。
よりによってケーナを襲ってしまったことは、ダーククラウドの大きな敗因だったろう。
「うおおおおおおおおっ!!」
叫び、草薙は怒りのままにダーククラウドを斬り付ける。
魔力を帯びた刀による切り傷は、まるで生身の肉体を切ったかのような確かな手ごたえを草薙に与えた。
「ラランラララララン、ラララララララ〜♪」
おちゃらけた印象のメメントが、術者達の能力を増幅させるべく呪歌を奏でる。
「この状態なら、いけそうですわね。ほら、いい加減にすねてないで、出てきなさい!」
メメントに能力を増幅されているトールは天をみつめ、舞を舞う。
それは、東方大陸に伝わる神々の力を借りる舞。
ダーククラウドによって隠されていた本当の空から、地上に向かって裁きの雷が突き抜ける!
「これで終わりです。アイスストーム!」
セルムの攻撃魔法が発動し、まだ生き残っていたダーククラウドに氷の嵐が吹き荒れる。
そしてそれが本当に最後となり、ダーククラウドは消え去った。
●エピローグ
「終わった、の?」
目を覚まし、呟くケーナをそっと撫で、アイリは自分の魔力を移し与える。
ケーナの身体が心なしか温まった。
「まあ、あなたったらそんな技も使えますのね? わたくしにもお分けなさいな」
口調は高飛車なままでも、トールの額には大粒の汗が浮かんでいる。
あれほどの大技を使えば、その身にある魔力全て使い切ってもおかしくはない。
「‥‥えいっ!」
「いたあああいっ、なんてことするのよ、この年増!!」
アイリにすっぱーんと平手打ちをかまされた頬を押さえ、トールが叫ぶ。
「うるさいですね! 同じやり方だったじゃないですか!」
ぷいっとそっぽを向くアイリ。
笑うハンター達。
白い雲の合間から、暖かい太陽の光が零れて溢れ出し、今回の依頼が無事成功したことを告げるのだった。