WonderTalkロレナの灯台アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/30〜04/03
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●本文
銀色の鎧を着た戦士がモンスターを切り裂き、暁の錬金術師がそれを補佐する。
どこまでも澄んだ青空は高く遠く、『WonderTalk』の文字が画面に映し出される。
中世ファンタジー世界を描く深夜特撮番組WonderTalkでは、モンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っていた。
そして今日の舞台はカラファンの南方に位置する『ロレナの灯台』。
南のシェーレン・ティーラ海を照らすその灯台で、近頃女の幽霊が出るのだという。
「よく来てくださったのぅ。この街にはなんもないものじゃから、各ハンターギルドにに斡旋をお願いしましたのじゃ。来てくださって本当によかったですじゃ」
ロレナの灯台の近く、ロレナの街のハンターギルドの受付係は、そういってしわしわの顔をより一層しわしわにして微笑む。
ロレナの街は、街とは名ばかりで寂れており、岬の小さな灯台を見に来る観光客で成り立っている街だった。
その灯台も寂れて、若い者はみな、レザラディカのような大きな街へ出て行ってしまい、この街に残っているのは自分のような年寄りばかりだという。
「灯台に幽霊が出ているのですってね? そんな物は幻ではなくて?」
集まったハンターのうちの一人が高飛車気味に尋ねる。
「いやいや、わしらも初めは幻じゃとおもうとったんじゃが、街の者が何人も見ておるし、わしもこの目でしっかりと見ましたですじゃ!
見ただけで体の力が抜けてゆくようなあの恐ろしい赤い瞳に叫び声‥‥おお、どうか一刻も早く幽霊を退治してくだされ!」
その時のことを思い出し、震える受付係に、ハンターは眉を寄せる。
「赤い、瞳? それに叫び声? ‥‥えぇ、わかりましてよ。必ずや退治してご覧に入れますわ!」
自信満々に応えるハンターたちに、受付係は再び頭を下げるのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talkロレナの灯台』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、ロレナの灯台に出るという幽霊を退治して下さい。
☆モンスター情報☆
『バンシー』
赤い瞳をした、実体を持たないモンスターです。
主に女性の姿をしています。
その鳴き声は聞くものの心を乱し、錯乱させます。
また、通常の武器では太刀打ちできないでしょう。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンの南方に位置する『ロレナの灯台』
岬に佇む小さな灯台で、三階建てです。
最上階には、明かりを灯す台座があります。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
今後も職業は順次増えてゆきます。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
●リプレイ本文
●幽霊の噂
―― 岬の灯台に、幽霊が出る‥‥
ロレナの町は、その噂で持ちきりだった。
「あいつがいるかと思ったが‥‥どうやら見当違いだったようだな。フリードだ、宜しく」
剣士のジークフリード・ブリューテ(レーヴェ(fa2555))はハンター達に偽名を名乗り、軽く会釈する。
無表情で近寄りがたい彼は、ここには人探しで立ち寄ったようだ。
背が高く、どことなく高貴な雰囲気を漂わす彼は、先日の錬金術アカデミーでの事件を解決したハンター達の中にいた少女を髣髴とさせる。
性格も顔立ちも似ておらず、性別も年齢も違うこの二人。
辛うじて金髪と青い瞳は同じなものの、これといって共通点はなさそうなのだが。
「幽霊が居るっていうんなら、見ておくに越したことはないよな。そういうのが良い詩作るヒントにもなるし」
何事も経験経験と呟いて、吟遊詩人のケイ(氷咲 華唯(fa0142))はリュートを爪弾く。
「幽霊か〜。珍しいもんだね〜」
カラファンの南大陸出身の虎人族で魔法使いのリンフー(MAKOTO(fa0295))は黒と黄色の縞々尻尾を振る。
「あぁ、できるなら素敵な殿方の幽霊ならよかったですのに」
魅惑の踊り子にして巫女であるトール(トール・エル(fa0406))は心底残念そうに溜息をつく。
問題の灯台に現れる幽霊は女性の姿をしているらしいのだ。
「この世に何の未練を残しているんだか‥‥」
そう呟く召喚士のサクヤ(橘・朔耶(fa0467))の表情はどこか寂しげだ。
「‥‥何か思い遺す事があったのだろうか‥‥出来れば叶えさせてやりたいが‥‥」
戦士の紅龍(星蔵 龍牙(fa1670))は、今回も兄の代わりに来たようだ。
礼儀正しく皆に礼をする。
兄よりも幾分熱血気味の紅龍は、その拳に聖なる力を帯びさせる事が出来るのだ。
実体の無く、尚且つアンデット系であろうと思われる今回のモンスターには、とても有効な攻撃を繰り出すことが出来るだろう。
だがあまり攻撃することに乗り気ではないのは、その表情を見ればわかる。
「同行させて頂く、セルムです。ひとつよろしく。‥‥灯台に出現するのですか‥‥生前、その場所に未練でもあったのでしょうか?」
「お前達、あまり感情移入するなよ?」
分厚い眼鏡をずりあげて考え込む有翼人種であり魔法使いであるセルム(相沢 セナ(fa2478))と紅龍にサクヤが釘を刺す。
サクヤは知っているのだ。
今回のモンスターが決して説得の通じる相手ではないことを。
「なんかみんな暗いんだよ。景気づけに歌を歌ってしんぜよう♪」
見習い吟遊詩人のメメント・パール(阿野次 のもじ(fa3092))が銀の竪琴を奏でながら歌を歌う。
妙に明るいその歌は、呪歌ではないのにハンター達の心を軽くした。
●灯台
岬には、妙に生暖かい風が吹いていた。
トールは露出した肩を抱きしめる。
「嫌な風ですわね」
「足場が悪いな。気をつけて」
寂れた岬は雑草が枯れ、さらにその下から新しい芽が芽吹き、只でさえ暗くて見え辛いハンター達の足を取る。
よろけるトールに手を貸してやりながら、サクヤは街で購入しておいたランタンを掲げる。
雲に隠れ気味の弱々しい月の光とランタンに照らされて、灯台はぼんやりと白く輝いた。
「明かりは灯されていないのだな」
「幽霊騒ぎで、きっと誰も近づけないんだね〜」
ケイは愛馬をギルドに預けておいてよかったと言い、リンフーは早く幽霊をやっつけてあげなくちゃと歩く速度をちょっぴりペースアップ。
虎人族である彼女は、闇でも物が良く見えるようだ。
もともとの身軽さもあって、足場の悪さをものともせずに先へ先へと進んでゆく。
たどり着いた灯台には鍵もかかっておらず、リンフーはそっと扉を押し開ける。
「リンフーさん、気をつけて。西方大陸の幽霊にはそれほど詳しくありませんが、バンシーはとても危険なモンスターですのよ」
物怖じせず灯台の中に入ってゆくリンフーに、遅れてたどり着いたトールが警告する。
「出るのは果たしてバンシー1体だけなのか、他に仲間がいるのか‥‥行動は慎重にですね」
セルムが街で得た情報からは、バンシーは一体だけのようなのだが、ここまで寂れていると他にモンスターが住み着いていてもおかしくは無かった。
三階建ての灯台の中は殺風景で、一階から三階の中ほどまで吹き抜けになっており、壁に沿った螺旋階段をハンター達は上ってゆく。
「蝋燭を灯しておこう。ランタンだけでは見通しが悪い」
サクヤは階段の接する壁に所々設置されている蝋燭に火を灯す。
蝋燭の長さはまちまちで、事が終わるまで持つのか少々不安になったが、蝋燭を灯してゆくにつれ、辺りは大分明るくなった。
「元気だホーイ♪ 元気だホーイ♪ 朝から昼まで元気だホーイ♪」
メメントは相変わらず陽気な歌を歌い続ける。
山彦のように声が灯台の中に響き渡る。
と、その時。
『―― フフフフフフッーーー』
メメントの声に覆いかぶさるように、別の声が響き渡った。
●バンシー
「なんだ、今の声?」
ケイは声のした方に目を細める。
「おいでなすったか?」
サクヤがランタンを向ける。
白い影が、最上階から一気にハンター達を目指して突撃してくる!
「くっ、なんだこの力はっ!」
「力が‥‥抜けてゆくんですのよ」
白い影に身体を通り抜けられたケイとトールは、その冷気と得体の知れない何かに片膝をつく。
ジークフリードの魔剣がカタカタと小刻みに動き熱を帯びる。
「また、血が欲しいのか?」
語りかけ、柄を握るジークフリードから、魔剣は生命エネルギーを吸収する。
ジークフリードの家に代々伝わるその魔剣の名はウングリュック。
持ち主の生命エネルギーを吸収し、アンデットを倒す光の剣へと変わるのだ。
「第二撃、来るぞ!」
紅龍が叫び身構える。
白い影は再びハンター達を突き抜けてゆく。
衝撃がハンター達の身を貫く。
狭い螺旋階段の上では逃げ場が無かった。
「ここは不味い。足場が悪すぎだ。全員、最上階へ!」
ランタンを掲げ、サクヤが先導する。
けれど白い影にはハンター達の目的が分かっているのか、階段を上らせまいと執拗に攻撃を繰り返す。
「僕がひきつけましょう」
セルムがその黒い翼をはためかせ、空を舞う。
白い影は階段のハンター達からセルムへ標的を絞った。
「すまないっ!」
セルムに詫び、飛ぶ術を持たないハンター達は階段を駆け上がる。
「噂の女性の姿ではありませんね。さしずめ、バンシーの下僕といったところでしょうか。情けはかけませんよ?」
魔法使いであり、モンスター学者でもある彼の知識は深い。
眼鏡を人差し指で抑え、中指に装備した蒼い指輪が魔力を帯びて光り輝く。
「聖なる炎よ、悪しきモノをその赤き怒りにて焼き払いたまえ‥‥フレイムウォール」
一直線にセルムに向かってくる白い影を地中から噴出した火柱が包み込む!
白い影は悲鳴すら残さずに消え去ってゆく。
けれどこれは雑魚。
本体は、この白い灯台のどこか、おそらく上にいる。
ケルムは翼をはためかせ、仲間達のあとを追う。
最上階へ駆け上がったハンター達を待ち構えていたのは、美貌のモンスター。
白い肌、白い髪、赤い瞳。
非現実的な美しさを持つそれは、赤い瞳に憎悪を募らす。
「冥土の土産に、あなたが何故バンシーになったか聞いてあげますから、さっさと話しなさいな」
トールはそんな非現実的な者相手にも高飛車な態度を崩さない。
『‥‥ココハ、ワタシノバショ‥‥ワタシノイバショ‥‥コノバショハ‥‥ダレニモ‥‥アゲナイ!!』
けれどバンシーは聞く耳などはなから持っていなかった。
バンシーの身体から白い影がいくつもいくつも飛び出して、ハンター達を攻撃する!
「女の姿形をしていても、油断はできんな」
「相手は雲‥‥ホムンクルス‥‥ときて、今度は幽霊ですか。私に出会った事を後悔する時が来たようですね!」
紅龍の鳳凰の爪が襲いくる白い影を次々と切り裂いてゆく。
足場の悪い階段では身動き取れなかったが、ここは最上階。
灯台を照らす台座を支える為に広くスペースが取られ、ハンター達の行動を阻害するものは何も無かった。
「今更何なんだけど‥‥実は僕、広域破壊みたいな派手なビジュアルの魔法以外って殆ど覚えてないんだな〜コレが。
でも、ここなら思いっきり発動しても大丈夫っぽいよね♪ ファイアーレーザー!」
リンフーは身軽に白い影を避けながら、呪文を唱える。
炎の帯が一斉にリンフーの身体から発射され、白い影と、そしてバンシーをことごとく貫く。
「しかたありませんわね、強制的に成仏させてあげますわ」
バンシーは元々人間の魂。
この世に何か未練―― 強い悲しみとか――をもった魂の成れの果てであることを、巫女であるトールは知っていた。
そしてサクヤと同じく、バンシーと成り果ててしまったからにはもう、説得などは通じないことも。
それでも出来れば、話し合いで浄化したかったのに。
トールは心に沸いた同情の念を軽く頭を振って振り払い、舞を舞う。
太陽の巫女であるトールには月の夜ではその力が半減してしまうが、それでも舞による祝福は多少なりともハンター達の身を護る。
『フフフフ‥‥キャハハハハハハハハハーーーーーーーーーー!』
自分の身が切り裂かれているというのに、バンシーは楽しげな悲鳴を上げる。
狂ったその声は耳を塞いでもハンター達の中に響き渡り、そうして。
「うわっ、何をする?!」
サクヤの身体を、ジークフリードの剣が貫く。
幸い、ジークフリードの魔剣は彼の生命エネルギーを糧に光の剣へと変化していたことからサクヤは外的怪我を負う事は無かった。
けれど魔剣に魔力を吸い取られ、サクヤはその場に片膝をつく。
「混乱しているのか? ‥‥効くかわからないけれど」
ケイが精神を安定させるべく、歌を紡ぐ。
リュートの音色に合わせ、バンシーの悲鳴に混乱させられたジークフリードの心にケイの歌声がそっと届いた。
けれどその間にもバンシーは攻撃の手を緩めない。
その指先から冷気を迸らせ、ハンター達を排除にかかる!
「間に合いましたね。ライトセイバー!」
セルムが合流し、紅龍の鳳凰の爪に魔法効果を付与する。
「‥‥感謝する。‥‥牙龍拳‥‥爪術奥義‥‥鳳凰翼凍牙!」
紅龍の必殺技が発動し、聖なる力を宿し爪で両腕から繰り出される拳は、鳳凰が羽ばたくかの如く。
衝撃は受けるもの全てを凍結させ破壊する!
『キャアアアアアーーーーーーーーーーーーー!!』
バンジーは今度は苦しげな悲鳴を上げ、凍りつく身体を抱きしめる。
「今、楽にしてやろう」
「お前の為に鎮魂を祈ってあげよう‥‥熾火を纏う我が愛しき獣よ、悪しき者達へ制裁を与えよ」
サクヤが炎の精霊を召喚し、バンシーを焼き、さらにジークフリードが苦しむそれに止めを刺す。
氷と、炎と、光の剣。
その全てをその身に受けたバンシーは、白い影と共に泣きながら消え去った。
「この世にどんな心残りがあるのか知らないが死んだ者がいつまでもいていいってわけじゃない。ここからは迷わず逝ってくれ」
ケイがバンシーの為に鎮魂歌を奏でる。
その音色に合わせ、トールが舞う。
「懐かしい過去を夢見ながら、今はおやすみなさい‥‥」
サクヤはそっと、呟いた。
●エピローグ
「あっ、メメント、どこにいってたのさー?」
ひょっこりと、メメントが現れる。
戦闘中姿の見えなかったメメントは、灯台の管理人と話をしていたという。
「さっき、ここの人が親切に教えてくれたの。この塔のお守りさんだって‥‥それじゃーね」
何も無いところに手を振るメメント。
ハンター達の背中に、冷たいものが伝うのだった。