ぷにっと海賊団☆卒業式アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/24〜03/28

●本文

『ぷにっと海賊団☆』

 それは、悪の海賊団と戦うぷにっとな少年少女たちが主人公の特撮番組だ。
 海賊服に身を包んだ少年少女たちは、妖精さんの力を借りて必殺技でアターック☆
「うわーん、今日もふっとぶのです〜〜〜〜〜?!」
 スカートの裾を押さえ、吹っ飛んでゆく悪の海賊団。
「勝利はぷにぷにっ☆」
 勝利のポーズ、ぷにっと決めっ☆


☆次回予告☆
 卒業式。
 中学校の制服に身を包み、今年卒業する小学生達が卒業証書を握り締めて歌を歌う。
 その様子をいつものように見つめていたのは悪の海賊団。
「卒業式ですか。懐かしいわねぇ。わたくしにもこうゆう時代があったのですわ」
 三つ編み眼鏡でセーラー服を着て、学校の先生に怒られて。
「ん? 怒られて?」
 懐かしく昔を思い出していた悪の海賊団は眉間に皺を寄せる。
「‥‥そう、そうだったわ。わたくしったら、先生によく怒られていたんですわよ。
 もうもう、こんなこと思い出したくなかったですのに。
 こうなったら、卒業式をぶち壊して差し上げますわーっ!」
 はっきりきっぱり逆恨みなのだが、悪の海賊団に常識はきっと通用しない。
 自分が正義と信じて疑わない悪の海賊団は卒業式をぶち壊すべく行動を開始するのだった。


☆『ぷにっと海賊団』キャスト大募集☆
 近日放映予定のぷにっと海賊団『卒業式☆』のキャストを大募集!
 毎回主役の違うこの番組では、海賊服に身を包んだ少年少女たちが悪の海賊団と戦います。
 『卒業式☆』では、小学校の卒業式をぶち壊しにやってきた悪の海賊団と戦ってもらいます。
 子供から10代前半の少年少女、『ぷにっと感』に自信のある方、そして悪役をやりたい大人の貴方も大募集☆
 

●今回の参加者

 fa0115 縞りす(12歳・♀・リス)
 fa1511 ルーファス=アレクセイ(20歳・♂・狐)
 fa2604 谷渡 うらら(12歳・♀・兎)
 fa2853 紗雪(13歳・♀・兎)
 fa2906 夢宮 宇沙美(13歳・♀・兎)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3268 稲川 茨織(12歳・♀・狐)
 fa3269 稲川 華織(12歳・♀・狐)

●リプレイ本文

●ゴシック・レディー
「そう、わたくしの卒業式の日もこんな感じだったのですわ」
 小学校の卒業式を魔法の鏡で映し出し、黒いドレスに身を包んだ悪の海賊団ゴシック・レディー(ルーファス=アレクセイ(fa1511))はキリキリと黒いレースのハンカチを捻る。
「あの日も、わたくしは最愛のゴスロリを着て式に臨みましたのよ。なのに担任ときたら『着替えて来い』だなんて‥‥もうもう、絶対に許せないんですのよー!」
 ぶちっとハンカチを引き千切り、ゴシック・レディーはくるっと振り向く。
「ねぇ、お兄様。わたくしの願い、叶えてくださいますわよね?」
 妖艶に微笑むその先には、ゴシック・レディーの双子の兄シルクハット・ダンディー(ルーファス=アレクセイ(fa1511)一人二役)が佇んでいた。
「私は気が進みません。第一、貴方のそれはもう過去のことでしょう? 大体、卒業式にそんな格好で赴けば止められるのは必然ですよ」
 妹のとばっちりで自分も卒業式に怒られたシルクハット・ダンディーは眼鏡を抑えて溜息をつく。
 我がまま、傲慢、高飛車が服を着て歩いているようなこの妹に付き合うと、はっきりきっぱりろくな事がない。
「お兄様っ、わたくしのことを愛していらっしゃらないのねっ、たった二人の兄妹ですのにーーーーーーーー!!」
 兄に否定されたゴシック・レディーはドレスを翻し、黒いソファーにわっと泣き伏せる。
「あぁ、待ってください。誰も愛していないなどとは言っていないでしょう?」
「じゃあ、愛してる?」
「えぇ、大切な妹です」
「なら卒業式を壊すの手伝ってくれるわよね?」
「ええっ?」
「ね?」
 にこにこにこ。
 さっきのは嘘泣きだったのだろう、ばっちり決めたメイクは少しも崩れておらず、ゴシック・レディーは満面の笑みを浮かべて有無を言わさずシルクハット・ダンディーの腕を取る。
「さあ、憎っくき卒業式をぶち壊して差し上げますわーっ、おーっほっほっほっほっほ!」
 高らかに笑うレディーに引きずられるように、ダンディーも卒業式へと向かうことになるのだった。

●シオリとカオリ
 卒業式を控えた教室で。
 シオリ(稲川 茨織(fa3268))とカオリ(稲川 華織(fa3269))は溜息をつく。
 双子のモデルとしてデビューした二人は、そのアンティークドールの様に端正な顔立ちはもちろんのこと、演技力もあることから人気急上昇。
 学校へ通うのもままならないほど芸能活動が忙しく、卒業式の今日だけは無理を言ってお休みをもらったのだが‥‥。
「式が終わったら、取材だって‥‥」
 シオリが窓の外を眺め、呟く。
 そこには、朝から取材陣が張り込んでおり、流石に校舎の中までは入ってこないものの、朝から二人の写真を撮られて憂鬱だったのだ。
 もっとも、二人とも芸能人だから、そんなことはおくびにも出さずに営業スマイルを振りまいていたのだが。
「‥‥カオリたちだって皆と何も変わらないのに‥‥。卒業式くらい普通に出たかったね」
 寂しく呟くカオリの手には、真っ白なサイン帳がある。
 シオリとお揃いで買ったそれは、まだ誰のサインも書かれていない。
 クラスのみんなは楽しそうにサイン帳をお互いに回しあい、住所や記念の言葉を書き込んでいるというのに、二人にはそんな当たり前の光景に溶け込んでゆくことが出来なかった。
 寂しさが募り、シオリはカオリの手をぎゅっと握り締める。
 そんなシオリに、カオリは自分だって寂しいのに、安心させるように手を握り返し、頷いてみせる。
 もうすぐ、式が始まる。

●卒業式
 整然と並べられたイスに座り、ウララ(谷渡 うらら(fa2604))はとても緊張していた。
 努力家で勉強も運動もできる優等生なウララは、当然のことながら卒業生代表に選ばれたのだ。
 しかも今日の日の為に海外へ出張していた両親も帰国し、式場の後ろでウララを見守っている。
 きちんと答辞も用意してあり準備は万全なのだが、まだまだ十二歳の女の子。
 やっぱり、緊張するものがある。
「らしくないぞっ!」
 そんなウララに、隣に座ったユメコ(夢宮 宇沙美(fa2906))がこそっと小声で突っ込みを入れる。
 ウララは卒業生代表として一番前の席に座っているのだが、ユメコは問題児過ぎて一番前に座らされたのだ。
『あ、これ? 今までお世話になった先生に『お礼』をしようと思って』
 式の前。
 大きな袋を引きずるように歩いていたユメコに気づき、同じぷにっと海賊団団員達の卒業式を見に来たリスリス(縞りす(fa0115))が声をかけると、にこにことユメコはそう応えたのだが、なぜか空を見上げていたリトルスノー(紗雪(fa2853))がこけてユメコに突撃☆
 袋から中身が飛び出して、手動ドリルにいつぞやのペンチ、ニッパーにバールといった工具全般に、金槌だの猿轡だの五寸釘だの、一体どんなお礼なんだと突っ込みたくなる品々が散乱。
 もちろんそれはすぐさま教師に没収され、ユメコは本来の席から変わり、一番先生たちの目の届く真ん前の席に座らされることになったのだ。
「‥‥ここで‥‥見てる‥‥。みんな‥‥いっしょ‥‥かも」
 リトルスノーも小声で囁く。
 ウララの席からだと振り返らなければ見えないからわからないけれど、きっとリスリスも見守ってくれている。
『卒業生代表。谷渡うらら』
 司会の声にハイと元気よく返事をして、ウララは壇上へ上がってゆく。

●悪の海賊団、登場!
「ふふん? もう式は始まってるのね。わたくしの許可もなく傲慢だこと」
 ゴシック・レディーはピンヒールをカツリと鳴らして顎をそらす。
「ぜええええったい、ぶち壊しますわよ〜!」
 三つ子の魂百までも。
 一度覚えた恨みは決して忘れない粘着気質な彼女はレースのリボンをピシリと構える。
 柔らかかったそれは一瞬にして剣の様に硬くなる。
「それを使うつもりですか? いくらなんでも危険では‥‥」
 彼女というより愛らしいぷにっと達の身を案じてダンディーは引き止める。
「ええい、往生際が悪いんですのよお兄様! 私はやり遂げて見せますわーっ」
 高らかに宣言して、レディーは式場へと飛び込んだ。

「おーっほっほっほっほっほ! このわたくしの目が黒い内は決して卒業式などさせませんわよ!」
「悪の海賊団!!」
 壇上に上がり、今まさに答辞を読み上げようとしていたウララは叫ぶ。
 突如として現れた悪の海賊団は式場のドアを壊し、嫣然と微笑んでいる。
 咄嗟にいつもポケットに入れているぷにっとフォンに手を伸ばし、何もはいっていないことにはっとする。
(「公式行事だから、携帯電話は教室に残せって先生に言われてたわね」)
 式場に入る前に、リスリスにぷにっとフォンは預けてしまっていたのだ。
 リスリスとリトルスノー、そしてユメコがすぐさま壇上へ駆けつける。
 けれど今ここで変身するわけには行かない。
 お父さんもお母さんも、先生や生徒達みんなが見ているのだ。
「ふふん、わたくしの邪魔は誰にもさせはしないわ!」
 レディーはビシビシとムチのようにリボンを振るい、イスも机も会場も全部壊してゆく。
 生徒も先生も保護者たちも、叫び声を上げて半ばパニック状態!
 シオリとカオリもその混乱に巻きこまれ、身動きとれずにいる。
 特にカオリは大切な片割れを守りたいのに何一つ出来ずに人の波に押しつぶされ、痛みと無力さに涙がこぼれる。
「ここにいる皆の想い出を、悲しいものにはさせないわ」
 ウララは呟き、手にしていた答辞を下ろす。
 そしてすっとマイクに向かい、
「‥‥私達は、銀に輝く剣と白き翼を携え飛び立ちます。目の前に立ちはだかる闇き壁を砕き、光輝く世界を護ってゆく為に」
 予定とはぜんぜん違うそれを迷いなく言い切る。
 リスリスも、ユメコも、リトルスノーも、ウララに頷く。
 みんな、思いは一つだ!
 次の瞬間、ばっと緞帳が下り、全ての明かりが消え去った!
 驚くぷにっと達を後押しするように、突如ハイテンションなアナウンスが流れ出す。
『Boys&Girls Be Ambitious! 学校生活3年間☆ いいこと一杯あったかなっ』
「この声は、シャークさんでぃす!」
 リスリスが気づき、ウララが放送室に目をやるとシャーク(阿野次 のもじ(fa3092))がぱちんとウィンク☆
『さて君達の旅立ちは前途多難だ。理不尽なこともあるだろう。だが決して挫けてはいけない。何故なら正義の心はいつも君達とある』
 シャークの演説は続いている。
 どうやら緞帳やライトはシャークの仕業のようだ。
「みんなお願い! 早く物陰へ‥‥変身して!」
「了解っ☆」
「まかせて‥‥かも‥‥?」
「ウララさん、ぷにっとフォンでぃす!」
 リスリスからぷにっとフォンを受け取って、ウララも合わせて全員、舞台袖に隠れて変身!
(「充分に時間稼ぎはできた‥‥後は‥‥」)
 シャークはぷにっと達が変身したのを確認してスイッチを入れる。
 緞帳が一気に上がり、舞台の上のぷにっと海賊団に一斉にライトが当てられた!
「「「「ぷにっと海賊団、参上!」」」」
 わあっと会場から歓声が上がる。
「ふん、現れましたわねぷにっと海賊団! 子供だからって容赦しませんわっ」
 ビシリとリボンが振るわれて床に亀裂が走る。
「このままだとみんな危険でぃす。外に誘導するでぃす!」
「よっしゃ、任せるんだよ! ぷにっとMAXハンマー☆」
 ユメコがどこからか巨大ハンマーを取り出して大きく振り被り、そのまま勢いに任せてレディーに振り下ろす!
「きゃーっ、何する気ですのっ、もう少しエレガントに動けませんこと?!」
 レディーは咄嗟に避けて眼鏡をつんと押し上げる。
「何で避けんのさ! 大人しくくらえば、みんなの心に永遠に光り輝く記憶になって残るよ!」
 いやいや、そんなもんで押しつぶされたら残るのはトラウマだけですってば。
 そんなナレーションの突込みをさくっと無視し、ユメコはがむしゃらにハンマーを振り回す。
 マジな勢いのユメコにたじろぎ、レディーは外に飛び出した!
「悪の海賊団には‥‥ぷにっと海賊団がお仕置き‥‥なの」
 リトルスノーもぷにっとスコップを構え、レディーを追いかける。
「妹をいじめるのはそれくらいにしていただけませんか?」
 成り行きを見守っていたダンディーがぷにっととレディーの間に割って入る。
「キミの相手は私だよ。伊達男くん」
 けれどいつの間にか追いついていたシャークがギターをダンディーに突きつける。
「‥‥あまり、戦いたくはないのですが致し方ありません。ローズイリュージョン!」
 ダンディーが胸元の薔薇を手に取りかざし、無限とも思える薔薇の花びらがシャークに襲い掛かる!
 それを避けながらシャークはぷにっと達とダンディーを引き離すべく距離をとる。
「お兄様に負けていられませんわ。リリーダンス!」
 ぷにっと達に押され気味だったレディーは気を取り直して必殺技発動!
 剣のように鋭く、ムチのようにしなやかなリボンが踊るようにぷにっと達を切り裂いた。
 叫び、ぷにっと達は桜の舞い散る地面に倒れす。
「おーっほっほっほ! ぷにっと海賊団なんて大したことありませんわよ。止めを刺して、完璧に卒業式を破壊して差し上げますわ」
 ダンディーと違い、情け容赦のないレディーはその双眸を冷たく輝かせる。
「そんなこと‥‥させないでぃす‥‥感動と涙の卒業式を邪魔する海賊団は、このリスリスが成敗するでぃすっ!」
 リスリスの構えたお玉から、沢山の桜吹雪がレディーに降り注ぐ。
「チェリーブロッサム‥‥想い出して。辛い思い出より、楽しかった思い出の方が一杯あった筈だから!」
「ぷにっとスノー‥‥雪月花」
 魔力を帯びさせたウララの桜吹雪と、リトルスノーの作り出す粉雪がリスリスのそれと交じり合い、レディーを包み込む。
「わたくしは‥‥わたくしは! 楽しい卒業式を迎えたかったのですわーーーーー!!!」
 叫び、レディーは桜霞の中に消えてゆく。
 そしてダンディーもシャークの振り下ろしたギターを片手で受け止めて、
「今日は、引き上げるとしましょう。さようなら、美しいお嬢さん」
 薔薇の花びらが舞い散り、ダンディーの姿も掻き消える。
 くるっ!
 ウララを中心に、カメラ目線で振り返るぷにっと&シャーク。
「「「「「正義はぷにっと!」」」」」
 勝利のポーズ、きめっ☆


●エピローグ
「‥‥私も‥‥私もあんな風になれるかな‥‥ううん、なりたい‥‥っ」
 ぷにっと達の戦いをずっと見ていたシオリは、ぷにっと海賊団に強い憧れを抱く。
 けれど大切な片割れであるカオリの表情は暗かった。
「力が欲しい‥‥あの子達よりも。大切な物を守る為の力が‥‥」
 悪の海賊団が乗り込んできたとき。
 何も出来ない無力な自分が悔しかった。
(「あの子達、カオリ達とそんなに年は変わらない‥‥なのに。何も出来ない‥‥カオリは、あの子達みたいに何かをする事は出来ない‥‥」)
 大切なシオリを守りたいのに、守れなかったカオリ。
 その劣等感は黒い小さな染みとなり、ぷにっと海賊団への嫉妬へと変わる。
「大変な騒ぎでしたねえ。シオリさんもカオリさんもご無事でよかったですよ〜」
 雑誌の記者が騒ぎに乗じてこれ幸いとばかりに校内に入り込み、カオリにマイクを向ける。
「楽しい出し物でした」
 そんな記者達に、カオリは本心からそう応える。
 そう、本当にそうなればいい。
 楽しい出し物と思えるくらい強くなればいい。
(「力がほしい。強い力が‥‥」)
 カオリはもう一度、心の中で呟いた。