WonderTalk〜湖の魔女アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
04/06〜04/10
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●本文
どこまでも澄んだ青空の画面に、『WonderTalk』のロゴが映し出される。
それは中世ファンタジー世界カラファンを舞台に描く深夜特撮番組WonderTalkのオープニング画面で、物語の中ではモンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っていた。
そして今日の舞台はカラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』。
商業の街としても知られるこの街では、今日もなにやらトラブルがあったらしい。
「湖の魔女が怒っちゃったのよねぇ〜」
相変わらずギルドの受付嬢は眠たそうに答える。
「ここら辺で湖って言うと、テルディレ湖か?」
レザラディカの北西、丁度、錬金術学院マルフィーネとの中間ぐらいの距離に大きな湖があるのだ。
その湖の名前がテルディレ湖。
飲み水としてはもちろんのこと、錬金術で薬を作り出す時は大抵その湖を使用している。
井戸水でももちろん薬は作り出せるのだが、水の精霊の加護がその湖には強く働いていて、特に回復薬の効能が上がりやすいのだ。
「そうなのよ〜ぅ。あそこに住んでる魔女に貢物を届けるの、さくっと忘れちゃったのよねぇ。ほら、ホムンクルスとかぁ、ダーククラウドとかぁ、トラブル大発生だったじゃなーい?」
結構大変な事態だろうに、相変わらず少しも大変そうじゃないその口調に、ハンター達は溜息をつく。
湖には水の精霊と人の間に生まれたと言われている魔女が住んでおり、モンスターを湖に近づけない代わりに人々からほんの少しの贈り物を受け取っていたのだ。
彼女の加護があるからこそ比較的安全なあの湖は、彼女が消えればモンスターの巣窟になりかねない。
「だからぁ、悪いんだけど彼女にいまから贈り物を届けてほしいのよーぅ。贈り物は彼女の大好きなお酒。東方大陸から直輸入の一級品よぉん♪」
受付の下からひょうたんを取り出して、受付嬢はにこにこと微笑む。
でもハンターたちの目はじと目。
「‥‥怒り狂った魔女に届けものって、それは命がけって言わないか?」
湖の魔女はその強大な力でもって湖をモンスターたちから守っているのだ。
つまりそれほどに強い魔力を持った怒れる相手にハンター達だけで対応しろというのはかなり難題。
「ん〜、そうともいう? でもぉ、魔女は言葉つうじるしぃ、ってゆーかがんばって?」
ハンターたちの抗議をさくっと無視して、受付嬢はさっさとひょうたんをハンター達に押し付ける。
「‥‥マジかよぉ」
ちょっぴり気が遠くなりかけながら、ハンター達は依頼を請け負うのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜湖の魔女』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、湖の魔女に贈り物を届けてください。
けれど魔女はとっても怒っていますから、道中無事で済むとは限りません。
☆モンスター情報☆
『湖の魔女』
人とほぼ同じ姿をしている美しい女性です。
水色の髪と、碧い瞳をしています。
強大な魔力を持ち、主な攻撃は水の精霊による召喚魔法です。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンのレザラディカの北方にある『テルディレ湖』
レザラディカからその湖までは、普段なら特にこれといった障害はありません。
ですが今回は湖の魔女が怒っているので、湖を守る加護が働いていません。
モンスターや、魔女からの使い魔による攻撃もありえます。
なお、湖の周辺でよく見かけられるのはやはり水系のモンスターです。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
今後も職業は順次増えてゆきます。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
●リプレイ本文
●挨拶しつつも情報収集☆ ‥‥って、お名前間違えごめんなさいっ!
「どれくらい遅れたのかしらねぇけど、少しくらい大目に見てくれたっていいじゃねぇか。怒ったってお互い何にも得しねぇだろうに」
モンスターハンター達が集うハンターギルド。
その受付の前で、砂漠のオアシス『グラ』で良く見かけられるシースルーの民族衣装に身を包み、赤銅色の肌で健康美を誇る踊り子・ライラ(ブリッツ・アスカ(fa2321))は呆れ顔。
「忘れられちゃったら怒るのは当然だと思うよ。湖の水は僕も必要だから、ご機嫌直してもらえるように頑張らなきゃね」
そんなライラに、錬金術師・ユイ(大海 結(fa0074))はまだ見ぬ湖の魔女をほんわかとフォローする。
「やだなー‥‥面倒くさい」
面倒くさがりのシーフ・スー(玖條 響(fa1276))は早くも口癖の『面倒くさい』を口にしている。
かなり面倒くさがりなスーの願いはただ一つ。
『どうか面倒なことは何一つ起きないで旅が終りますよーに』
けれどそう簡単に願いが叶うならハンターギルドの依頼にはならないわけで。
せめて大怪我はしないことを祈るばかりである。
「行き違いから生まれた問題だから、出来るだけ互いが傷つけあう事無いように解決したいなぁ‥‥」
小鳥のさえずりを思わせる吟遊詩人・ミーア(ミーア・ステンシル(fa0745))は、歌うように呟く。
「‥‥どうしましょう?」
そしてハンターギルドの受付から話を聞いた和服の巫女・トール(トール・エル(fa0406))は柳眉を顰める。
「珍しいですね。キミが不安がるなんて」
トールとは何度か一緒の依頼を受けたことのある魔法使い・セルム(相沢 セナ(fa2478))は分厚い眼鏡の奥で意外な顔をする。
彼女はその整った美貌と同じくらい常に完璧に高飛車で、おおよそ不安がるなどということは無いのだ。
「だってわたくしが行ったら、わたくしのあまりの美しさに嫉妬されていまいますわ。女の嫉妬って恐ろしいんですのよ?」
真顔で言い切るトールに、幼い召喚士のケーナ(美森翡翠(fa1521))は破顔する。
「トールさんらしいんですの」
そしてくすくすと愛らしく笑う彼女の側には、黒髪の吟遊詩人・エルティナが控えていたりする。
先日、ケーナは錬金術師アカデミーでのホムンクルスたちの暴走を仲間達と共に止めたのだが、そのあと熱で寝込んでしまったのだ。
もしかしたら、過去の記憶が無いケーナの心の奥底に眠るホムンクルスへの精神的なダメージが深かったのかもしれない。
だからまだ本調子じゃないケーナを心配して、友人であるエルティナは今回同行する事にした。
「‥‥おいおい、大丈夫か、お若いの。仕方ないな、また俺が面倒を見てやるとするか。よろしく頼むぜ!」
砂漠のオアシスでケーナとビック・スコーピオンを倒したことのある熟練の戦士・ケルヴィン(烈飛龍(fa0225))は、幾分顔色の悪いケーナに保護者のような気持ちになって頭を撫でる。
実際、ケルヴィンの年齢ならばケーナぐらいの歳の子供がいてもおかしくは無かった。
「お待たせいたしました。『ケルム』様の手続きが完了いたしました」
いつもの眠たげな受付嬢とは違い、今は黒髪を束ねた三十路ぐらいの受付係がセルムに声をかける。
でも何気なくお名前を間違えていたり。
「いえ、ケルムではなく、セルムです」
眼鏡を抑え、冷静に訂正するセルムに受付係は慌てて頭を下げる。
「あわわっ、ご免なさいね? 魔法使いのセルムさんっと‥‥はい、これで今度こそ手続き完了です」
すみませんすみませんすみませんっ。
土下座する勢いで、受付係はセルムに書類を押し付ける。
そうして全員手続きを終え、ハンター達は湖の魔女の住むテルディレ湖へと向かうのだった。
●敵はいっぱい?
城下街レザラディカからテルディレ湖までは、これといった障害は無く、石畳の道なりをハンター達は進んでゆく。
「こ、これは八岐大蛇を酔わしたという『八塩折りの酒』ではありませんか。まさか、西方大陸でこれにお目にかかれるなんて思いませんでしたわ」
魔女への貢物として預かった東方大陸からの直輸入地酒をみて、トールは驚きの声を漏らす。
「そんなに凄いお酒なのかな?」
ユイは興味深々に小首を傾げる。
「八岐大蛇といえば、東方大陸の有名なドラゴンだな。レッドドラゴンの亜種で八つの首を持っていたという伝説だが、そのドラゴンを倒す時に使われた酒がこいつってわけだ」
ケルヴィンは力強い顎鬚に触れながら、東方大陸の伝説を語る。
そして、「戦士たる者、一度はドラゴンの首を落としてみたいものだ」とも。
「そんなお酒ぐらい届けなかったからって、自分で取りに来ればいい事なのに面倒くさい‥‥」
興奮気味な仲間からぶつぶつと不機嫌にスーはそっぽを向く。
と、その目の端を何かが横切った。
「‥‥‥?」
石畳の道は真っ直ぐに湖の魔女の家まで続いていると言う事で、迷う心配も無いのだが‥‥。
「スーさん? どうかしましたの?」
緊張を帯びるスーの気配に、ケーナは小首を傾げる。
「おいでなすったな。俺が攻撃を防いでいる間に、自分の為すべき事を成せよ、お若いの!」
ケルヴィンもバスタードソードを構える。
そして次の瞬間、木陰や草むら次々とスライムが飛び出してきた!
「水系モンスターと聞いて、てっきり二本足の生えた魚かと思っていたんですけどね‥‥冗談です」
雑魚と呼んで差し支えの無いモンスターの出現に、セルムは軽口を叩きながらライトニングアローを発動する。
雷の矢はすばしっこい動きのスライムを見事に細くして次々と消し去ってゆく。
「一応言っとくけど、俺の動きに見とれるなよ? スライムに見とれる知能は無いと思うけどなっ」
ライラが湖で泳ぐ魚のごとき優雅な動きで敵を翻弄し、儀式用の豪華な短剣で敵を切り裂いてゆく。
「まあ、こんな低俗なモンスター如きにわたくしの力を振るうのは不本意ですけれども、舞って差し上げましてよ。感謝なさい」
おーほっほっほと女王様笑いも高らかに、トールはゴージャスな舞を舞う。
魔力を帯びて光り輝くその身体は、まさに神秘。
天照大神の祝福が仲間達に降り注ぐ。
「炎の娘舞い踊って! 彼の敵をその抱擁で焼き尽くして!!」
「これも魔女の歓迎かしら? ‥‥癒しの風よ、我が歌声に応えてそなたの愛しき子を護りたまえ」
ケーナはいつもの様に精霊を使役しスライムを焼き払い、エルティナはそんなケーナが体力を消耗しすぎて倒れてしまわないように癒しの呪歌を歌う。
「ミーアも‥‥うっきゃあっ?!」
ぺーんっ!
呪歌を歌おうとしたミーアの背中に太っちょなスライムがダイレクトボディアタック!
ミーアは力いっぱいむぎゅっと地面に叩きつけられた。
トールの祝福の魔法が掛かっていなかったら、結構大怪我をしたかもしれない。
「次から次へと際限のない! いい加減くたばりやがれっ」
ケルヴィンがバスターソードを一気に薙ぎ払い、ミーアを押しつぶしていた太っちょなスライムはもちろんのこと、側にいた数匹も叩き斬る!
「本当は戦いたくないけど‥‥ごめんね」
ユイはモンスターに詫びつつ、ショルダーバックからえいっとお手製の小型爆弾を放り投げる。
見事に破裂した爆弾はスライムの集団を豪快に吹っ飛ばす。
「やだなー‥‥面倒くさい」
そしてスーが最後の一匹に止めを刺した。
瞬間、
「えっ?!」
ざしゅり。
スーの頬を何かが切り裂く。
「あなたは‥‥」
ケーナは目を見開き、エリティナの袖を握る手に力が篭る。
湖を背景に此方を鋭い目付きで見つめる碧い瞳の美女が、水の精霊を纏わせて佇んでいる。
スーの頬を切り裂いた人物。
それは、湖の魔女に他ならなかった。
●湖の魔女
「あら、怒ってらっしゃいますわね。神楽でも舞って落ち着かせてさしあげますわ」
トールは相変わらず強気で何処まで本気かわからないことを言う。
魔女は傍目に見てもわかるほどにものすっごく怒っていた。
その身に纏わる水の精霊達も、とても友好そうには思えない。
「今回のことは全面的にこちらが悪い。いかようにも謝罪する。だから、今回だけは何とか寛恕願えないか? 不満なら俺のこの首を差し出しても良い」
余りの威圧感に少々萎縮気味だった中間達から一歩前に出て、ケルヴィンが魔女に交渉をしだす。
けれど魔女の対応は芳しくない。
「そなたの首をもろうたからとゆうて‥‥わらわが待ち続けた時間が戻るわけでもあるまいに‥‥‥‥」
ねっとり。
魔女はその美貌とは裏腹にボソボソと粘着質な口調で不機嫌なまま。
「あのなぁ‥‥短気は損気、っつーだろ? アンタがかんしゃくを起こすとモンスターがのさばる。
モンスターがのさばるとこの辺が危険になって人が来なくなる。そしたらアンタに会いに来るヤツもいなくなるし、貢物だって二度と手に入らないんだぞ?」
あんまり気の長いほうではないライラも苛立ち気味に説得に当たる。
けれどどうやら地雷を踏んでしまったらしい。
ぶちっと音がしそうな勢いで魔女はブチきれた。
「‥‥人が、来ない‥‥? そんなものは‥‥いつものことじゃーーーーーーっ!」
どっぱーんっ!
水の精霊達が魔女の怒りに呼応して、湖の水ごとどっとハンター達に襲い掛かる。
「説得もタイミングですね」
冷静に状況を判断していたセルムは、予め魔女の攻撃に備えて意識を集中していた。
だから、即座にイレイズの魔法を発動させ、魔女達の魔力を奪い、その攻撃の威力を半減させる。
「お願い魔女さん! どうか落ち着いて話を、きゃあっ!?」
ミーアは思いっきり水に足をとられて流されそうになる。
「‥‥早く終らせよう」
薄皮一枚とはいえ傷つけられ、さらに水浸しにされたスーも魔女に負けず劣らず静かにブチ切れていた。
手にした短刀が剣呑な光を帯び、水の精霊に狙いを定める。
「死なせちゃ駄目! 水の精霊魔女のお友達!」
けれどその剣が水の精霊を切り裂く前にケーナが止めた。
召喚士たるケーナは、精霊がどういう存在かわかっている。
魔女を愛し、魔女もまた精霊を大切の思っているからこそこの場に共にあるのだ。
「殺しちゃ駄目? 面倒くさいなあ‥‥」
そういいつつも、スーは精霊達を短剣の刃を鞘に収め、柄での攻撃に切り替える。
けれど倒さなければやられるばかりだ。
「毒薬‥‥は使えないよね、やっぱり」
ユイはショルダーバックの中に入れておいた毒薬に触れ、首を振る。
そんなものをここで使ってしまったら、確かにこの戦いには勝てるだろうが湖の水は二度と使い物にならないだろう。
水浸しのまま、ミーアは立ち上がる。
そして、優しい歌を歌いだす。
「♪〜
春の草原に吹く風の如く‥‥新緑の褥
〜♪」
「♪〜
青き空を写して冴えわたる‥‥生命の源
〜♪」
ミーアの歌声に合わせ、エルフィナがそれを増幅するように歌を紡ぐ。
二人の吟遊詩人の歌声は、魔女と水の精霊の高ぶる気を抑え、ゆっくりと和ませていった。
●エピローグ
「ほら、これでも飲んで騒ぎませんこと」
落ち着いた魔女に、トールは貢物の八塩折りの酒をどんと手渡す。
「ふむ、よい香りじゃのう。わらわはこれがないと生きてゆけぬ」
すりすりすり。
上機嫌に魔女は酒の入ったひょうたんに頬ずりする。
そして湖では、ミーアとエルティナ、そしてライラが水浴びをしていた。
『あーあ、服が水浸しになっちゃったよ‥‥乾かすついでに、水浴びさせて貰えないかな?』
そんなミーアの可愛いお願いに機嫌のいい魔女はあっさりと頷き、三人は元気いっぱいにはしゃいでいる。
ケルヴィンとスー、そしてセルムとユイは女の子達から離れた場所で水浴び。
覗こうなどという不届き者は一人としていないが、彼らと湖の間には魔女の力で薄いのに不透明な不思議な水の壁が張り巡らされていた。
「‥‥そなたも純粋な人間じゃないようじゃのう。風の王の力が借りられるということは、風と縁深い獣人族の高位の巫女の家系か、はたまた片親が風の精霊か‥‥にしては4大精霊皆と親和性深いようじゃしのぅ。不思議なことじゃて」
炎の精霊に身体を温めてもらうケーナを見て、魔女は不思議そうに目を細める。
ケーナにも判らない過去の秘密。
それは、いつか明らかになるのだろうか?
お酒の甘い香りが漂う中、ケーナはゆっくりと瞳を閉じた。