ぷにっと海賊団☆入学式アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 2人
期間 04/07〜04/11

●本文

『ぷにっと海賊団☆』
 
 それは悪の海賊団と戦う少年少女たちの物語。
「カードスラッシュ!」
「必殺! ぷにっとぷにっとすぺしゃーるっ!!」
 ちゅどーんっ☆
 画面の中では今日も今日とて海賊服に身を包んだ愛らしいぷにっと海賊団に、悪の海賊団はなす術もなく吹っ飛んでゆく。
「正義はぷにっと☆」
 勝利のポーズ、きめっ☆


☆次回予告☆
「そろそろ、新しい団員がほしいところよね?」
 魔法の鏡を覗き込み、満開の桜を眺めつつ。
 悪の海賊団は思案する。
 いっつもいっつも×無限大にぷにっと海賊団に負け続けている悪の海賊団には、きっと強力な新人団員が必要なのだ!
「というわけで。あなたたち、新人団員掻っ攫ってらっしゃい!」
 思い付きから部下達にそう命じ、悪の海賊団幹部は高らかに笑うのだった。


☆『ぷにっと海賊団』キャスト大募集☆
 近日放映予定のぷにっと海賊団『入学式?』のキャストを大募集!
 毎回主役の違うこの番組では、海賊服に身を包んだ少年少女たちが悪の海賊団と戦います。
 『入学式?』では、悪の海賊団が新人団員とするべく有力そうな人物を攫いまくりますので、それを阻止してください。
 子供から10代前半の少年少女、『ぷにっと感』に自信のある方、そして悪役をやりたい大人の貴方も大募集です☆

●今回の参加者

 fa0115 縞りす(12歳・♀・リス)
 fa0542 森澤泉美(7歳・♂・ハムスター)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa2604 谷渡 うらら(12歳・♀・兎)
 fa2661 ユリウス・ハート(14歳・♂・猫)
 fa2662 ベルタ・ハート(32歳・♀・猫)
 fa3268 稲川 茨織(12歳・♀・狐)
 fa3269 稲川 華織(12歳・♀・狐)

●リプレイ本文

●新人勧誘☆
 ぽかぽか陽気の春の日。
 悪の海賊団ユート(月岡優斗(fa0984))は新人勧誘のチラシ張りをやっていた。
「何故俺がこんな地味な役回り‥‥あれか、こないだ失敗したからか」
 上司によさげな新人見繕ってこいと言われ、しぶしぶチラシを作ったのだが、なぜか『来たれ! 料理が得意な新人団員! おまえのおいしい手料理を悪の海賊団が待っている☆』などと書かれている。
 悪の海賊団勧誘というより、料理人募集にしか見えないのはきっと気のせい。
「まー、料理人って料理人いねーしうちのトコは。無駄に食べ物出す怪人はいるんだ‥‥ぷにっと海賊団にコックがいてうちにいねーのはおかしいじゃん!」
 あー、早く美味い飯食いたいじゃんとか呟きつつ。
 ユートはせっせとチラシを配ってゆく。


●シオリとカオリ
「あの人たち、本当に何処に住んでいらっしゃるのでしょう?」
 人気急上昇中の双子モデルの片割れ、シオリ(稲川 茨織(fa3268))は、春らしいふんわりとした水色のワンピースを着て、自分と同じ顔をした大切な片割れ・カオリ(稲川 華織(fa3269))に尋ねる。
 悪の海賊団を名乗る正体不明の人達によってめちゃくちゃにされそうだった卒業式を、ぷにっと海賊団と名乗る少年少女達が現れて、みんなを助けてくれたあの日から、シオリはぷにっと海賊団の情報収集に勤しんでいた。
「あの人達の事はあんまり‥‥ううん、なんでもない。早く、見つかるといいね」
 うきうきと嬉しそうにぷにっと海賊団のことを語るシオリに、カオリは曖昧に笑う。
 カオリは、どうしてもぷにっと海賊団の事は好きにはなれなかった。
 ずっと、カオリだけがシオリを守ってきて、これからもずっと二人一緒だと信じていたのに、そんなものは幻想だという事実を彼女達により突きつけられた。
 逆恨みになるとわかっていても、シオリを守れなかったカオリは、自分に出来ないことをあっさりとやり遂げた彼女達が嫌いだったのだ。
 だから、シオリとは裏腹にカオリはぷにっと海賊団よりもずっと強い力を求めていたのだが‥‥。
(「どれもこれも‥‥あまり強そうじゃないわね」)
 カオリはこっそりと抜いておいた新聞の折込チラシを数枚、ポケットの中で握り締める。
 それには、悪の海賊団募集の文字。
 どこからどうみても強さの欠片も感じられず、カオリはふうっと溜息をついた。 
 

●お茶会でお食事で誘拐?!
 ぷにっと海賊団の海賊船『ぷにっとぷにっと☆』
 その厨房で今日もお料理上手なリスリス(縞りす(fa0115))はクッキーを焼いていた。
「いい焼き具合でぃす。今度は盗まれないようにちゃんと見張っていたでぃす♪」
 ふわふわ&もふもふリス尻尾を揺らし、リスリスはレースを敷いたお皿にほんわか甘いクッキーを盛り付けて、みんなのいる本部室に持ってゆく。
「あっ、リスリス、これを見て欲しいのよ」
「どうしたでぃす?」
 両手にお皿を抱えて本部に入ってきたリスリスに、ここ最近海賊船のエンジニアとしても活躍中のウララ(谷渡 うらら(fa2604))が、ぷにっと作業服のまま数枚のチラシを手に駆け寄ってくる。
「悪の海賊団が、勧誘をはじめてるのです」
 海賊船の操舵手であるイズミ(森澤泉美(fa0542))はそういいながら自動操縦に切り替えてテーブルに着く。
「『来たれ! 料理が得意な新人団員!』‥‥? なんだかリスリスが呼ばれているような気がするでぃす‥‥うわっと!」
「あぶないっ!」
「おっと?」
 ぱしっ!
 がしっ!
 目の前で何もないところでつんのめったリスリスをシルバー(ユリウス・ハート(fa2661))が抱きとめ、イズミが吹っ飛んだクッキーのお皿を見事キャッチ☆
「てへへ、失敗したでぃす♪」
 悪びれずに笑うリスリスのお口には、お皿からこぼれて飛んで来たクッキーがちゃっかり詰まってたり。
「どんまいどんまい。ささ、また転ぶ前にここに座って。みんなに大事な話があるのよ」
 苦笑して、ウララはリスリスを急かす。
 そして席に着くみんなにこほんと咳払いを一つして、
「今日はね、新人勧誘の相談をしたいのよ」
 リスリスに見せたチラシを再びテーブルの上に広げる。
「このチラシは悪の海賊団のものなんだけど、正直言って、このチラシで新団員が悪の海賊団に入るとは思えないわ。
 でも、ブラック海賊団の存在が怖いの。ずっと三つ巴だとも言い切れないし」
 愛らしいうさ耳をぺったんと下げて、ウララは不安そうな顔をする。
 ブラック海賊団は悪の海賊団の上位幹部で、その強さは悪の海賊団をはるかに凌ぐ。
 ついこの間も、ブラック海賊団翠黒の神官と名乗る女性に危うくぷにっと達は敗北しかけたのだ。
 そして翠黒の神官よりさらに上には黒の女王と黒の王の存在が確認されている。
 神官にすら勝つことが出来なかったぷにっと海賊団には、新たな戦力補強が必須なのだ。
「ぷにっとに向いてそうなお友達を見つけたら、俺も声をかけてみるんだよ」
「リスリスはいつの間にか仲間になってたという感じでぃしたが‥‥やはり正義の心がちゃんと良い方に向いていれば、仲間になれるんでぃすよねい」
 シルバーとリスリスがクッキーを頬張りつつ、お友達の顔を何人か思い浮かべる。
(「そういえばあの双子モデルさん、とっても真面目そうでしたねぃ? でも、ああいう純粋な子が悪の海賊団の方に引っ張られちゃうと厄介でぃすねい‥‥そうならないように気を付けなくちゃでぃす」)
 ビスクドールのように端正な顔立ちをしたシオリとカオリは一際目を惹く存在だったから、卒業式を見に行っていたリスリスも良く覚えていたのだ。
 そしてやはりウララも同じように覚えていた。
(「でもあのコ達芸能人だからムリよね」)
 軽く頭を振って否定して、ポケットからキーを取り出してイズミに手渡した。
「これ、使ってほしいの。ぷにっとぷにっとに色々と新機能をつけてみたのよ」
「ええっ、ウララさんお一人で開発したのです? すごいですよーっ」
 イズミがどきどきと興奮気味にキーを受け取り、ぷにっとぷにっとを改めて再起動させる。
 するとどうだろう?
 海賊船が七色に光り輝き、その形を変え、小型でより一層魅力的なフォルムに!
「見た目だけじゃないのよ。白の女王から頂いたアストラルストーンの力で物質透過や高速飛行能力なんかもつけたの。暇な時でいいから、操作に慣れておいてもらえると嬉しいわ」
 どうやら戦力増強の為に徹夜で働いていたらしい。
 と、その時、本部の電話が鳴り響いた。
 イズミがパチンとスピーカーに切り替える。
『シルバーちゃん? ママよ。どこにいるの?』
 シルバーのママ、ブリジット(ベルタ・ハート(fa2662))の声が響く。
「お友達の家だよ」
 慌てて電話兼マイクに駆け寄って、シルバーは早口に応えた。
『ママね、ユート君って言う子のお家にいるの♪ 夕飯までには帰るからいい子でまっててね☆』
「ユート君?」
 首を傾げるシルバーに、ユートの名前にぴくぴくっと反応するイズミ。
『電話代わった、ちょっとお前のママしばらく借りる。んじゃな』
 ブリジットに代わり、少年の声が船内に響き渡り、
「今の声はやっぱりゆーとさんなのです。ゆーとさんは、悪の海賊団なのです。ユリウスさんのママさん、いじめられちゃうです!」
 以前ユートと面識のあるイズミが叫ぶ。
「大変でぃす! 早くママさんを助けないとでぃすっ!」
『!? どっかで聞いた声が聞こえ‥‥もしかしてお前らぷにっと海賊団?!』
 ユートの方もシルバーたちの正体に気づく。
 たまたま道端で出会って悪の海賊団(というかお袋の味料理人?)に勧誘したらあっさりと着いて来たブリジットの息子が、まさか宿敵ぷにっと海賊団だったとは。
「ちょっとちょっと、ユート君? どうしてシルバーのお母様と一緒にいるのか判らないけれど、シルバーのお母様を返しなさい!」
「そうでぃす、誘拐はいけないでぃす! そういう悪い子にはクッキー作ってあげないでぃすよ?!」
『だー、うっせぇ! 返して欲しかったら学校の校庭とか言う所に来い。俺に勝ったら返してやるぜ! 負けたらお前らも俺の配下だ!』
 突然の誘拐劇に慌てふためくぷにっと達に、ユートは挑戦状を突きつける!
 さあ、戦闘開始だっ☆
 

●決闘!
「逃げずに来たな。その度胸は褒めてやるじゃん」
 悪の海賊団・ユートが校庭の真ん中でふんぞり返っている。
 その背にはいつものレプリカの白い翼はなく、ふんわりリス尻尾と頭にはリス耳がついていたりする。
「ママは何処?!」
「そう慌てるなって。ちゃんと連れて来てる」
 くいっと指差す先には、小さな黒い飛空挺。
 ブリジットは何も気づかずにお料理を作っているらしい。
「一対一の勝負を提案するわ」
 ウララが提案する。
「これを使うといいのです」
 イズミがサッカーボールをシルバーとユートの間に投げる。
 パスっとシルバーがそれを受け取った。
「審判はリスリスがするでぃす☆」
 ウララから笛を受け取って、リスリスがピーっと吹く。
「いくぜっ、俺のキックを受け止めて見やがれ!」
「ママは誰にも渡さない!」
 シルバーとユートのブリジットをかけた熱い戦いが始まった。


(「あれは‥‥ぷにっと海賊団!」)
 シオリは驚きの余りその場に立ち尽くす。
 たまたま小学校に立ち寄ったシオリとカオリは、偶然にも捜し求めていたぷにっと海賊団と悪の海賊団の対戦現場に居合わせたのだ。
 咄嗟に二人、物陰に隠れる。
「が、がんばって‥‥」
 こっそりとシオリはシルバーに声援を送る。
 けれどそれを見つめるカオリの瞳は冷たかった。
(「‥‥どうせ、後ろの奴らが出てくるんでしょ?」)
 自嘲めいた笑みを浮かべ、カオリはシルバーとその後ろで見守るぷにっと達に唇を噛み締める。
 カオリが欲しいのは、一人でもシオリを守れる強さだ。
(「やっぱり、一人じゃ無理なの?」)
 諦めかけたその時、カオリは目の端を横切った黒い何かに包み込まれ―― 次の瞬間、黒の女王の前にいた。


「力が欲しいのね?」   
 水晶球を弄びながら、黒の女王(笹木 詠子)はカオリを上から下まで舐める様に観察する。
 そして黒の女王の側に控えるのは黒衣のナイト(広瀬・和彦)。
 カオリをこの異空間に瞬時に連れ去ったのは彼だった。
 ブラック海賊団上位幹部たる黒の女王には、カオリの心など全てお見通しだった。
 その悪の海賊団をはるかに凌駕する圧倒的な存在感に、カオリはこくりと息を呑む。
「‥‥欲しいわ。私は、力が欲しい!」
 いま望んでいた物が手に入る。
 悪の海賊団よりも、ぷにっと海賊団よりも、強い力が!
「ふふっ、いい子ね?」
 黒の女王は、黒鳥を思わせるレースの扇をぱちりと鳴らす。
 瞬間、カオリを黒き力が霧となって包み込み、カオリの身体に染み込んでゆく。
 そして衣服も暖色系のそれから、漆黒のそれへと変化していった。
「私は‥‥ブラック海賊団、黒きポーン、カオリ‥‥!」
 もう戻れない一線を、カオリは踏み越えたのだった。
  

「こんなのつまんないぜっ!」
 ユートがサッカー対戦に飽きてボールを見当違いの方向に蹴っ飛ばす。
「あっ、なんてことするでぃすか!」
 審判のリスリスが叱るが、ユートは知らん顔。
 ボールを受け止めたイズミが、思いっきりユートに向かって蹴り飛ばす。
「正義は勝ちます! 悪は必ず滅びちゃいます! ゆーとさんも良い子になって、一緒に勝ちましょうです! ゆーとさん、パスです、受け取りやがれですっ」
 どぎゅんっ!
 イズミのマジキックがサッカーボールに炸裂☆
 ボールは凄まじい勢いで砂埃を巻き上げてユートに突撃!
「あっぶねぇ‥‥ってゆーか怪我するじゃん!」
 咄嗟に避けてユートは冷汗をぬぐう。
「あんなのも取れないですか‥‥」
 心底残念そうに呟くイズミ。
 いや、取ったら足とか絶対折れちゃうし!
「もう俺マジ怒ったじゃん! 本気でいくぜっ!」
 ユートが叫んでぷにっと達に襲い掛かる!
 けれどユートは素早い動きでぷにっと達を翻弄するが多勢に無勢。
 勝負は戦う前から決まっていた。
「リスリスのぷにっとぱーんちでぃす☆」
「悪いけど吹っ飛んでね!」
「ママは僕のだからねっ」
「いつかいい子になってくれるってイズミくんは信じてるのです。だからいまはこれを食らいやがれですっ!」
 四人のパンチ&キックがユートに炸裂☆
「次は覚えてろ、絶対ぎゃふんと言わすじゃん!」
 ユートは捨て台詞と共に吹っ飛んでいく。
 くるっ!
 カメラ目線で振り返るぷにっと達。
「「「「「正義はぷにっと!」」」」」
  勝利のポーズ、きめっ☆


●エピローグ
「あら? みんなシルバーちゃんのお友達?」
 全てが終わり、乗り捨てられた悪のミニ飛空挺にぷにっと達が飛び込むと、ブリジットがのほほーんと微笑んでいた。
 安堵しつつ、飛空挺の外に出たウララの前に、物陰からシオリが飛び出す。
「わ‥‥私‥‥っ、私もあなた達のように強くなりたい‥‥お友達になりたいんです!!」
 必死なシオリをみて、ウララは一瞬驚く。
 そしてほんの少し考えた後、
「貴女の目の前に片割れと幼い子供が崖の端にしがみついている。どちらを助ける?」
 真っ直ぐに、シオリを見つめる。
 果たして彼女はなんと応えるだろう?
 シオリは突然問われた言葉とありえない状況に一瞬、戸惑う。
 けれどぎゅっと目を瞑り考え、答えを決めた。
「子供を助けて、後でカオリを助けるわ‥‥!」
 真っ直ぐに自分を見つめるカオリに、ウララは微笑む。
「ようこそ、ぷにっと海賊団へ!」
 わっと喜ぶシオリは、カオリの姿が見えないことに気づかなかった‥‥。