WonderTalk〜砂漠の薔薇アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
04/13〜04/17
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●本文
青空を写した画面の中で、古の魔法使いが杖を振るう。
そして魔法使いのシルエットに『Wonder Talk』の文字が重なった。
ドラゴンはもちろんのこと、獣人族や妖精、魔法使いが活躍するそれはファンタジー特撮番組『Wonder Talk』のオープニング。
中世ファンタジー世界『カラファン』を舞台に、モンスターハンター達はハンターギルドにてモンスター退治やさまざまな問題を依頼として請け負う。
そして今日の舞台はカラファンの西方大陸『ミュリデリル』の城下町レザラディカ。
商業の街としても知られるこの街は、いつも人で賑わっている。
「砂漠の薔薇がほしいのよーぅ」
ギルドの受付嬢は気だるげに答える。
以前ハーブの採取をギルドに頼んだこの街の好事家が、今度は砂漠の薔薇を欲しがっているのだという。
「砂漠なら、グラだな。転移門は使えるか?」
砂漠の薔薇は名前こそ薔薇だが、植物ではない。
砂漠で見つけることの出来る鉱石だ。
レザラディカ大陸の西方にはグラ砂漠があり、砂漠のオアシス『グラ』まで転移門を使えば一瞬で移動できる。
「もちろんよーぅ。歩いていったら戦う前に疲れちゃうわぁ〜ん」
「戦う前? ‥‥つまり、またモンスターがいるのか?」
「ご名答♪ 以前はビックスコーピオンがいたらしいんだけどぉ、今度はラージ・アントリオンが巣を作っちゃったみたーい」
「みたいって、他人ごとのようにいうなよ‥‥」
「でもぉ、そのお陰で砂漠の薔薇は結構散らばってるみたいだし? 穴掘る手間が省けたと思えば‥‥ねぇん?」
「ねぇんって、おい」
呆れるハンターに少しも悪びれずに受付嬢は笑う。
そうして、いつものごとくハンター達はモンスター退治に出かけるのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜砂漠の薔薇〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、モンスターを倒し、砂漠の薔薇を入手してください。
☆モンスター情報☆
『ラージ・アントリオン』
いわゆる巨大蟻地獄です。
数体おり、砂漠に潜んでいます。
主に巣穴に落ちてきた獲物を食します。
また、巣の中から獲物に砂をかけて巣へ落とすこともあるようです。
☆アイテム情報☆
『砂漠の薔薇』
白薔薇を思わせる白い鉱石で、水や強い衝撃に弱いです。
手の平に収まるくらいの大きさで、本来は砂漠の中に埋まっています。
ですが今回はラージ・アントリオンが巣を作る時に地中を掘り出したらしく、現地へ行けば見つけるのはそう困難ではないでしょう。
☆地域情報☆
砂漠のオアシス『グラ』
ファンタジー世界カラファンの西方大陸『ミュリデリル』西方に位置する砂漠のオアシス『グラ』。
グラのさらに西方にグラ砂漠は広がっています。
グラの街からグラ砂漠に行くには『妖精の踊る小道』と呼ばれる夜になると光り輝く石造りの小道を抜けなければなりません。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
●リプレイ本文
●受付嬢はいい加減?
「なんつーか色々いい加減な受付嬢だな‥‥。いいのかこれで」
転移門が開くまでの間、ギルドで待機していた吟遊詩人のケイ(氷咲 華唯(fa0142))はリュートを抱きしめて呆れ顔。
けれどケイが呆れるのも無理はなかった。
今回の仕事は砂漠のオアシス『グラ』に赴き、砂漠の薔薇を入手してくることなのだが、サンプルが一つもない。
見たこともないそれをどうやって探せというのか。
「ん〜? たぶん現地に行けばわかるわよ〜ぅ」
眠たそうに片肘付いて、受付嬢は悪びれもせずに笑う。
本当にかなりアバウトな性格らしい。
「きっと大丈夫ニャよ。薔薇のように見える白い石なんて早々ないニャ」
いつも元気な踊り子のアヤカ(アヤカ(fa0075))は手にマントを抱え、呆れ顔のケイの背中をぱしぱしと軽く叩く。
「ところでその『砂漠の薔薇』、どれ程持ち帰れば宜しいのでしょう?」
魔法使いでありモンスター学者でもあるセルム(相沢 セナ(fa2478))が尋ねる。
「依頼人が言うにはぁ、直径三センチ位のが三つくっついてるタイプが一番欲しいらしいわよ〜う? 娘さんの髪飾りに加工したいっぽく。でもぉ、適当な大きさのを五個も持っていってあげれば十分じゃないかしらん?」
「‥‥本当にアバウトね」
黒髪の吟遊詩人・エルティナは幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))の手を繋ぐ。
なんとなく、この受付嬢の言うとおりアバウトに行動していると、ケーナに大怪我を負わせてしまいそうな気がする。
「そんなに心配しなくても、ケーナ、もう元気」
心配げなエルティナの手を握り返し、ケーナは微笑む。
その首元には水晶のネックレスが輝き、その中では精霊の光が踊っていた。
「いい加減でも何でも、ボク、これで一つ成功させないと娘々さまに見捨てられてしまうんです! 娘々さま、きっと成功させますから見ていてください!」
そしてカラファンの南方大陸に多い獣人族である虎娘(稲荷 桜(fa3254))は、ちっこい手をぐぐっと握り締めて決意満々。
ちなみに娘々とは彼女が仕える天仙で、人々を幸せにする度に星の詰まった宝珠を授かることが出来るのだが、元来のドジっ子気質のせいで星は中々貯まらないようだ。
「奇遇だね。ボクも頑張るんだよ。借金して大きな買い物したからね、何が何でも成功させる!」
同じく虎獣人の魔法使い・リンフー(MAKOTO(fa0295))もぐぐっと拳を固める。
そんなリンフーは以前にはなかった装飾品を身体中につけている。
ブレスレットにアンクレットにネックレスはもちろんのこと、ピアスやらベルトやらかなりの量だ。
「それは、魔力制御用ですか?」
セルムが中指で分厚い眼鏡を押し上げる。
その彼の手にも、シンプルだが大きな蒼い宝石をあしらった指輪が輝く。
「そそっ♪ これで増幅と制御が出来るようになるといいんだけどね〜」
リンフーはご機嫌だが、これほどの量となると借金の額は相当なものに違いない。
物の価値を知っているセルムはちょっぴり冷や汗。
「転移門の準備が整ったらしい」
全身漆黒の衣服を纏い、少々威圧感のあるシーフのユウ(蘇芳蒼緋(fa2044))は転移門を親指で指し示す。
「これで日出国へは行けますの?」
踊り子にして巫女でもあるトール(トール・エル(fa0406))は用意の整った転移門を見て、自分が巫女として修行していた国のことを尋ねる。
「ん〜、多分行かれるはずっぽく? でも当分あの国には行かないほうがいいわよーぅ。なんか荒れてるっぽいしぃ」
受付嬢は再び欠伸をしながら聞き捨てならないことを言う。
「ちょっとお待ちなさい。荒れてるってどうゆう‥‥」
「まあまあ気にしなーぃ? ほら、早く行かないとぉ、門締まっちゃうわよーぅ?」
トールの言葉を遮って、受付嬢は門へと促す。
「‥‥仕方ありませんわね。わたくし、待つことは大っ嫌いですのよ」
肩を竦めてトールは着物の裾を裁いて仲間達と転移門をくぐる。
ほんの少しの浮遊感のあと、そこはもう、砂漠のオアシス『グラ』だった。
●グラ砂漠
グラは砂漠のオアシスというだけあって、本当に蒸し暑い。
通年春のような気候のレザラディカから、転移門で着いたばかりのハンターたちの身体にどっと汗が滲み出す。
「砂漠なんて、肌が荒れますわ」
トールは愛用の日焼け止めを肌に塗りつつ、予め用意しておいた黒い日傘を差す。
「準備万端ニャね」
アヤカもヒラヒラとしたシースルーの踊り子の衣装の上から、持ってきておいたマントを羽織る。
マントを羽織ると暑さが余計に増すのだが、白い肌が日焼けや砂で荒れてしまうよりはマシだった。
そしてケイはセルムに頼み、愛用のリュートに砂が入らないように補助魔法をかけてもらう。
「助かるよ。何かあってからじゃ遅いからな」
手入れは怠っていないものの、これから行く場所は砂漠。
本来なら布でぐるぐる巻きにでもしておかなければ砂が中に入り、壊れかねない。
けれど布で巻いてしまうと音を奏でることは出来ず、結果、セルムの補助魔法を頼むことになったのだ。
魔力を帯びたリュートは、見た目こそ変わらないものの、試しにケイが砂を一つまみかけてみると、パラパラと弾いた。
「耐火符を貼っておけば、暑さもある程度やわらぐかな‥‥?」
ぜいぜいと暑さでちょっぴり息の荒くなった虎娘は、太股のニーソックスに隠しておいた呪符を何枚か取り出す。
短く呪文を唱えて背中に張ってみると、微妙に涼しくなったような気がする。
「‥‥‥」
漆黒のユウは無言で砂漠を見つめている。
暑くないわけではないのだろうが、強い精神力でそれを制御しているようだ。
「塗って差し上げますわ」
トールがケーナの白いほっぺたに日焼け止めを塗ってやる。
赤くなり始めていたケーナの頬がひんやりと冷えていった。
「ありがとうですの」
「どういたしまして。お肌の手入れは女性の嗜みですわよ。オーッホッホ!」
トールはご機嫌に高笑いをする。
ここまで見事な美女ぶりを披露しているトールが本当は男性なのだと知ったら、女性陣は倒れるに違いない。
てくてく、てくてく。
ハンター達は砂漠を道なりに進んでゆく。
「全く、日差しが強すぎますわ」
トールは天照大神に仕える巫女とは思えない暴言を吐く。
『妖精の踊る小道』と呼ばれる場所までは、舗装が良いとはいえないがそれなりに道があった。
「妖精の踊るってだけあって良い感じの雰囲気だね」
妖精の踊る小道に差し掛かったリンフーは、丁度日が翳りだして光の粒子が舞う様子に心躍らせる。
「月夜に光る道に、砂漠の薔薇か。歌にするにはもってこいの情景だよな。面倒な敵さえ居なきゃ」
ケイはそう呟きつつ、吟遊詩人らしく鼻歌を口にのせる。
「これは、ウィスプ? いや、光の精霊にしては妙ですね。燐粉に近いような」
セルムは今まで書き溜めてきたお手製のモンスター図鑑を開き、知識と照らし合わせながら光が何故か溢れる小道に首を傾げる。
「娘々さまのお屋敷のように綺麗です。あううっ、娘々さま〜‥‥!」
虎娘はちょっぴりホームシックにかかってしまったようだ。
夜空の星に「早く立派な導師になれますように」と祈りを捧げている。
「白鳥の嘴があっちだから‥‥後少しで小道出る」
ケーナが星を読み、迷いやすい砂漠の方角を正確に捉える。
●ラージ・アントリオン
それは、突然起こった。
ケーナが精霊たちに語りかけ、比較的安全な場所にテントを構え、ハンター達が採掘準備をしていると地面が盛大に揺れだしたのだ。
「いきなりなんですのっ?!」
トールがテントから飛び出す。
「アリジゴクニャか?!」
アヤカがマントを脱ぎ去り、剣を構える。
けれど敵の姿が見えない。
「あそこだ!」
ユウが叫ぶ。
その指さす方向にはすり鉢状の大きな穴が開き始めていた。
「あのすり鉢状の砂の中に入っちゃうと厄介ニャね。みんなの身体をロープで縛るニャ!」
アヤカがレザラディカで購入しておいたロープをテントにくくりつけ、それぞれの身体を縛ってゆく。
多少動きが束縛されるものの、砂の中に落ちてモンスターに食される率はかなり減ったといえよう。
「ギギギギッーーーーーーーッ!!!」
ラージ・アントリオンはハンターたちに気づいたのか、すり鉢上の砂の底から顔を出し、嫌な声を上げる。
「仕事の邪魔だ」
ユウはクナイをラージ・アントリオンの目を目掛けて撃ち放つ。
けれど敵は意外と素早い。
自分に向かって飛んできたそれを避ける為か、はたまた偶然か、さっと砂の中に潜ってしまう。
「ええい! 潜るな隠れるな! さっさと出て来い!!」
リンフーが苛立たしげに攻撃呪文を撃ち放つ。
指先から迸るファイヤーレイザーが敵の巣穴を直撃する。
だが、肝心のモンスターは土の中。
無意味に砂埃が巻き上がるだけだった。
馬鹿にするかのようにラージ・アントリオンが砂底から顔を出して尻を向け、ハンターたちに向かって一気に砂を蹴りだした!
「‥‥っ、砂に飲み込まれるのはまっぴらご免です‥‥ライトニングアロー!」
普段冷静なセルムだが砂を浴びせられてちょっぴりキレ気味に稲妻の矢を撃ち放つ。
それはラージ・アントリオンの毛むくじゃらな尻にものの見事に命中し、痺れて動けなくさせる。
「きゅうきゅうにょりつりょ! われ命ずる、わが敵を討て!」
虎娘が呪符を用い、ラージ・アントリオンに止めを刺す。
呪符の発動で痺れたまま燃え上がったラージ・アントリオンはそのまま息絶えた。
「油断はまだ出来ませんね。一匹‥‥二匹‥‥三匹。この周辺にはあと三体の敵の気配を感じます」
セルムが身体の砂を叩きながらライトサーチを行い、敵の数と大体の方向を調べる。
「全部を倒す頃には、砂漠の薔薇も粉々だな。悪いが敵を退き付けて置いてもらえるか?」
ユウがラージ・アントリオンにかけられた砂と共に混じっていた白い薔薇のように見える石の結晶を手に取る。
それこそが捜し求めていた砂漠の薔薇に他ならない。
だが、砂漠の薔薇は無残にも真っ二つに割れ、所々欠けてしまっている。
おそらく、今の戦闘で壊れたのだろう。
「美しい物は脆く儚い、ってヤツだな。ま、そういうもんだからこそ余計に欲しくなるんだろうけど」
ケイが薔薇のかけらを手に取り、呟く。
「ケーナ、探すの手伝える。シルフが教えてくれる」
ケーナが風の精霊を呼び、砂の薔薇を探すように命じる。
愛らしい乙女の姿をした風の精霊達は嬉々として砂の薔薇を探しに砂漠へ散ってゆく。
「本来なら、共に着いて行きたい所だけれど、私は足止めに残るわ」
エルティナが得意とするのは呪歌。
敵を眠りに誘ったりするのは得意だが、探し物には向いていない能力だ。
「わたくしが祈って差し上げますわ。しばらくの間動きが良くなるはずでしてよ」
トールが照りつける太陽に舞を舞い、ハンター達に大いなる祝福をもたらす。
太陽の光に包まれたハンター達の身体は心なしか軽い。
そして再び、地響きが鳴り響き、ハンター達は二手に分かれる。
「さて、あいつらに惹きつけてもらってる間に依頼品を探すか」
「風の精霊、こっちにあるっていってる」
ユウとケーナは、アヤカ達が敵をひきつけている間に砂漠の薔薇を探して回る。
「ケーナ、それ重そうだな。持ってやろうか?」
近寄り難い外見とは裏腹に、笑うとユウはとても優しい雰囲気を纏う。
ちまちまと荷物を背負って歩くケーナに手を差し伸べる。
「ありがとうですの。でもケーナ、シルフがいるから大丈夫」
いいながら、ケーナはシルフに頼んでふんわりと浮遊する。
「便利だな」
笑いながら、でも大急ぎで二人は砂漠の薔薇を探す。
「とりあえず、眠っておきなよ」
ケイがリュートを爪弾き、エルティナが歌う。
ハンター達の攻撃に暴れるラージ・アントリオンはその音色に動きを鈍らす。
だが、別のラージ・アントリオンが思いっきりリンフーの顔面に砂をかけた。
「うふふふふふ‥‥そうだよね〜、被害を気にしてたらダメだよね〜」
ちょっぴりいっちゃってる笑みを浮かべて、リンフーは杖に魔力を込める。
身体中の装飾品がそれを増幅!
「集え炎精! 舞い踊れ火球! 僕に従い敵を爆炎で包み込め! ナパームフレア!!!」
ちゅどーんっ!
リンフーの最大攻撃魔法が炸裂!
あたり一面火の海になり、爆風でラージ・アントリオンがその巨体ごと天に吹っ飛ぶ。
「わわわっ、落っこちてきたニャー、これでも食らえニャっ!」
重力に従ってハンター達の頭上に燃えながら落ちてきたそれを、アヤカが踊るように剣を舞わせ、粉々に切り刻む。
「‥‥とんだ砂まみれですね。けほっ」
火の海で舞い上がる砂に、セルムは軽く咳き込んだ。
●エピローグ〜砂漠の薔薇
「いや〜‥‥ボクの服がぁ‥‥」
えぐえぐっと、虎娘は焦げた服の裾を握り締めて涙ぐむ。
どうやら一張羅だったらしい。
娘々に願えば服の一つぐらい支給してもらえるのだが、無料ではない。
虎娘が一人前の導師になれるのは一体いつのことやら。
「無事に見つかったですの」
「依頼品も手に入ったし、一応仕事は完了だな。皆お疲れ様」
ユウとケーナが合流し、砂漠の薔薇をみんなに見せる。
手の平サイズのその鉱石は、薄い石が何枚も折り重なって、本当に薔薇のようだった。
「なんで一応なのかニャ?」
アヤカが手の平でコロンと砂漠の薔薇を弄びつつ、ユウに首を傾げる。
「なんで『一応』かって? きちんと帰り着くまでが仕事だろ?」
困ったように笑うユウに、みんなで笑って。
今回の依頼を無事に終えたのだった。