ぷにっと海賊団☆白と黒アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 2人
期間 04/14〜04/18

●本文

『ぷにっと海賊団☆』
 
 それは悪の海賊団と戦う少年少女たちの物語。
「白の女王。そろそろお遊びはやめましょう?」
 ブラック海賊団幹部『黒の女王』と呼ばれし女性は、漆黒のドレスに身を包み手にした水晶を見つめる。
 そこには、遠い昔の思い出が映し出されていた。
「ねぇ? 思い出は美しいままで終わりはしないのよ?」
 くすくすと。
 黒の女王は楽しげに水晶をめぐらす。
 水晶は過去から、そして現在のぷにっと海賊団を映し出す。
「あなたの大切な『おもちゃ』。‥‥壊れたら、あなたは泣くかしら?」
 薄闇の中。
 本気とも、冗談とも取れる口調で黒の女王は嗤い続ける。


☆『ぷにっと海賊団』キャスト大募集☆
 近日放映予定のぷにっと海賊団『白の女王と黒の女王』のキャストを大募集!!
 毎回主役の違うこの番組では、海賊服に身を包んだ少年少女たちが悪の海賊団と戦います。
 『白の女王と黒の女王』では、ぷにっと海賊団創設者の白の女王と、そしてブラック海賊団幹部黒の女王(もしくは黒の王)との因縁話が中心になる予定です。
 子供から10代前半の少年少女、『ぷにっと感』に自信のある方、そしてまだ一度も素顔を見せていない白の女王役をやりたい方や悪役をやりたい大人の貴方も大募集☆

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0542 森澤泉美(7歳・♂・ハムスター)
 fa0921 笹木 詠子(29歳・♀・パンダ)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa2661 ユリウス・ハート(14歳・♂・猫)
 fa2662 ベルタ・ハート(32歳・♀・猫)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3172 浪井シーラ(26歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●プロローグ〜忘れられない日〜
 薄暗い部屋で、黒の女王(笹木 詠子(fa0921))と呼ばれしブラック海賊団上位幹部は、水晶球を弄ぶ。
 水晶の中では、白の女王の設立したぷにっと海賊団の少年少女が映し出されていた。
「女王。なにゆえ、奴らに興味を示すのですか? 奴等が、白の女王の部下だからですか?」
 ブラック海賊団幹部・翠黒の神官(浪井シーラ(fa3172))は尋ねる。
 彼女は黒の女王が白の女王に並々ならぬ敵意を持っていることは判っていた。
 だが、彼女にはなぜぷにっと海賊団にまで興味を示すのかわからなかったのだ。
「‥‥ビショップ」
 呟き、黒の女王は水晶球に視線を落とす。
 翠黒の神官も女王に習い、水晶を覗きこんだ。
(「‥‥時折見る夢。私にとっての悪夢。彼女が選ばれ、私が認められなかったあの日‥‥」)
 遠い、遠い過去の記憶を水晶球に映し出し、黒の女王は思いを馳せる。


●教えて! 
 それは、本当にいきなりだった。
「白の女王ってどんな人? シャークさん教えて!」
 ぷにっと海賊団海賊船『ぷにっとぷにっと☆』
 その海賊船に白の女王からの伝言を伝えに来たシャーク(阿野次 のもじ(fa3092))は、ぷにっと海賊団のシルバー・アーデル(ユリウス・ハート(fa2661))に腕をつかまれる。
「白の女王と黒の女王の間に何があったのかな? 僕も聞きたかったんだよね」
 ムスビ(大海 結(fa0074))は白くてふわふわのロップイヤーを揺らして小首を傾げる。
「いや、べつに特に何も‥‥」
「イズミ君も気になるですー。教えてくれないですか?」
「もちろん、教えてくれるわよね?」
 口ごもるシャークに、イズミ(森澤泉美(fa0542))とウララも仁王立ちになって逃げ場を塞ぐ。
「ぷにっと海賊団は、どうしてできたの? ぷにっと海賊団に入るには、試験はあるの? 妖精さんって何人いるの? 妖精さんって何を食べているの? ぷにっと海賊団は、大人になってもできるの? シャークさんだけなんで海賊服じゃないの? 黒の女王ってどんな人? 黒の王様ってどんな人? 黒の海賊団って悪の海賊団とどこが違うの? 黒の海賊団って大人ばかりなの? ねぇ、教えて!」
 一体いつ息をしているんだと聞き返したくなるほどにまくし立てるシルバーに、気の短いシャークはぷつっと切れた。
「少年〜!!」
「ぃひゃいいひゃいいひゃひゃい?」
 むにん☆
 シャークがシルバーのぷにぷにほっぺを両手で引っ張る。
「好奇心は猫を殺すっていうだろ?」
「俺はタイガーなの! 猫じゃないの!!」
 日本の諺なのだが、アメリカンスクールに通うシルバーには良くわかっていないらしい。
 シャークもわざわざ訂正せずに、懐から魔石を取り出す。
 七色に輝くそれは、以前白の女王からぷにっと海賊団に届けられた七つのアストラルストーンに良く似ていた。
「でも、まあいい機会か‥‥じゃ下手に話すより『百聞は一見にしかず』ということで」
 ちょいちょい。
 シャークがぷにっと達を手招きし、イズミ、ウララ、ムスビ、シルバーの四人は魔石を覗き込む。
「ほーら、実際見て来るがいい!」
 どーん☆
「「「「えっ?」」」」
 シャークがにまっとわらって四人の背中を突き飛ばし、四人は抵抗する間もなく魔石の中に吸い込まれていった。 

 
●白の女王と黒の女王
 四人がたどり着いたのは、見知らぬ王宮だった。
 虹色に輝く雲が城の外に見える。
「ここ、一体何かな?」
 ムスビが不安そうに周囲を見回す。
「これっ、身体が突き抜ける!」
 シルバーが城の城壁に手を差し伸べると、すっと腕が吸い込まれる。
『これは女王から受け継いだ記憶を元に作ってるから、こっちからは干渉できないよ』
 シャークの声が、直接みんなの頭に響く。
「向こうから声がするわ」
「いってみるです!」
 イズミが真っ先に声のするほうへかけてゆく。
 声は、開け放たれた謁見の間から響いていた。
『この世界は、君たちがいつも住んでいる場所とはほんの少し違う世界だ。そしてこの王宮で世界を守る為の次期女王を決定する『王位継承試験』が行われた。試験のお題は『世に善き組織』‥‥』
 シャークの説明にあわせ、ムスビ達はこそこそと物陰に隠れるように謁見の間に入ってゆく。
『そんな風に隠れなくても大丈夫だ。向こうからは此方の姿は見えていないよ。これは過去の出来事なんだ』
 そういわれても、やっぱりちょっとおっかなびっくりなぷにっと達の目の前で、二人の美女が女王の質問に答えている。
(「あれ? あの人‥‥」)
 イズミが女性の片割れにどきりとする。
 少々化粧がきつめだが、豊かな黒髪を青いレースで綺麗に結い上げて、髪飾りと同じ青いドレスの上に黒いドレスを纏った女性は、イズミの母親に良く似ていたのだ。
 成り行きを固唾を呑んで見守るぷにっとの前で、女王の質問に白姫と呼ばれた銀髪の女性は、
「世界の全てを自分の子供のように愛する事」
 と答え、
 黒姫と呼ばれた黒髪の女性は、
「軍事力の強化です。綺麗事だけでは、大切な物を守りきることなど出来ません」
 と答えた。
 女王は、暫し悩み、そして選ぶ。
 選ばれたのは―― 白の姫。
「民の期待に背かぬ様、誠心誠意尽します」
 一瞬、驚いた表情を浮かべた後、白姫は深く頭を垂れる。
「‥‥認めない。認めないわ!」
「黒姫?!」
「世界を護るのに相応しいのは、私の作った『軍』。それを、わからせてあげるわ!」
 黒姫はそう宣言し、ぷにっと達を突き抜けるように謁見の間を飛び出してゆく。


 そしていきなり場面が変わる。
「今度は、これは何処なのかな?」
 ぐるぐるとめまぐるしく変わる景色にムスビは眩暈を起こしそうになる。
「あれは、白姫?」
 シルバーが気づく。
 先ほどの試験の時よりも幾分か歳を取った白の女王(ベルタ・ハート(fa2662))と、一人の少年が言い争っている。
 少年の顔は何故かぼやけて良く見えない。
「私は、あなただけを特別にすることはできません‥‥」
 心痛な面持ちで、白の女王は少年を諭す。
 そしてその小さな頭を撫でようとするが、少年はその手を振り払った。
「どうして‥‥? どうして僕だけを見てはくれないの? ‥‥お母さんなんて、大っ嫌いだ‥‥!」
 泣きながら、少年は駆け去ってゆく。
 そしてそんな少年に黒姫―― 黒の女王が手を差し伸べた。
「一緒においでなさい」
 黒の女王は母親の愛情に飢えた白の女王の息子を自分の軍―― ブラック海賊団へと誘う。
 少年は黒の女王の手を取り、そして黒の女王は。
「自分の子に届かぬ愛が、世界をどう救うと言うの?!」
 叫び、その強大な魔力を解き放つ。
「一体何が起こったというのです。衛兵!」
 突如崩れだした城に、白の女王は叫ぶ。
「女王、ご無事ですか?!」
 白の女王の側近、ホワイトウルフ(亜真音ひろみ(fa1339))とリッターファルコンが駆けつける。
 リッターファルコンは以前ぷにっとぷにっと☆に謎の助っ人として現れたターバンの女性に間違いなかった。
 駆けつけた二人は女王を守るべく崩れる城から女王を運び出す。
 だが、とき既に遅し。
 白の女王の身体は、黒の女王の魔力によって、徐々に石化し始めていた‥‥。


●黒の女王
「戯れにもならぬ物を見せてしまったわね。私もやはり‥‥寂しいのかもねぇ‥‥ふふ」
 黒の女王はそういいながら水晶球を弄ぶ。
「黒の女王。あなたの導きで私は今を生きています。あの時から私はあなたの手伝いをしたいが為におります」
 水晶を通し、全ての経緯を見た翠黒の神官は黒の女王に再び忠誠を誓う。
 翠黒の神官がブラック海賊団に入ったのは、女王試験が終わった後。
 もともと、別の海賊団に所属していたのだが、仲間内での争いに巻き込まれ、船を追い出された。
 寂しくて悲しくて、独りぼっちになってしまった彼女に手を差し伸べてくれたのが黒の女王だった。
 黒の女王の為なら、翠黒の神官はどんなことにも耐えて見せるだろう。
(「女王の為に彼らを倒さなくては」)
 翠黒の神官は黒の女王に一礼し、部屋を立ち去る。
 その立ち去る後姿を見送って、黒の女王は思う。
「‥‥白の女王よ、見せてやろう。世界を統べるに必要なのは愛ではない。力だという事を。私とお前の子である『キング』、そして私の可愛い部下達と共に」
 白の女王を自分の力の前に跪かせ、そうして、必ず『女王』という仮面を引き剥がし、キングに本当の愛を注がせる為に。
 その為には、まだ手駒が足りない。
 黒の女王は水晶をじっと見つめる。
 そこに映し出されていたのは‥‥。
 

●戦え、ぷにっと海賊団!
「これが、二人の因縁だ。黒の女王は白の女王の息子を取り込み、ブラック海賊団をより一層強化したんだよ。
 そして今だに白の女王の呪いは解けない。動くことが出来ない女王に代わって世界を守ってもらう為にぷにっと海賊団を設立したんだ」
 過去の記憶の中から現実へと戻ってきたぷにっと達に、シャークが説明する。
「どうして大人って、すぐ争う方に物事を考えちゃうのかな。争うことって一番悲しいことだと思うんだよね」
 ムスビが涙ぐむ。
 と、その瞬間、ぷにっとぷにっとに警報が鳴り響いた。


「悔しい。なんで勝てないんだよ!」
 ぷにっと☆ペットを握り締め、シルバーは悔しさに歯噛みする。
 彼らの前には翠黒の神官に使役された魔獣が立ち塞がっていた。
「戦うのは嫌いだけれど‥‥いくよっ!」
 ムスビが魔獣にぷにっと光線銃を撃ち放つ。
 光の銃弾が魔獣に命中するが、魔獣はものともせずにぷにっと達に襲い掛かる!
「きゃあっ!」
 ウララが魔獣に体当たりを食らわされる。
「ウララさんに何するですかっ! くらえっ、ぷにっと‥‥」
「待つんだ!」
 イズミが攻撃を繰り出そうとした瞬間、制止する声と共に突き飛ばされる。
 瞬間、魔獣の口から吐き出された炎が今までイズミが居た場所を焼き尽くす。
「あなたは、ホワイトウルフ?!」
 シルバーが驚きに目を見開く。
 銀色に輝く狼の尾と耳を生やした精悍な女性は、過去の記憶の中で見た城の女王の護衛氏が一人、ホワイトウルフに他ならなった。
「シャークさんがいなければ、翠黒の神官に俺達は一回負けているんだよ。助っ人なんかなくても、戦えるようにしなくちゃ!」
「力だけが優劣を競うものじゃないだろう、ゆっくりでも学んで行けばいいさ」
 ホワイトウルフは咄嗟に突き飛ばしてしまったイズミを抱き起こしながら、悔しがるシルバーを優しく諭す。
「ありがとうです、助かったですっ」
「礼はいい。それよりも‥‥ほら、第二弾だ!」
 ゴオウンッ!
 ホワイトウルフがぷにっと達の手を引いて炎を避ける。
「あの魔獣、水を避けているわよ!」
 ウララが気づき、指摘する。
 魔獣は、確かに水溜りを避けて攻撃してきていた。
「水が苦手ってこと?」
「正解☆ さあ、少年少女達よ、思う存分水をかけるがいい!」
 いままでどこへいっていたのだろう?
 シャークがギターをかき鳴らし、水道に繋げた長いホースをぷにっと達に投げて寄越す。
「ラージャー!! これでも食らえですっ」
 イズミが魔獣に向かって水の迸るホースを向ける。
 水を身体中に浴びた魔獣は見る見る小さくなってゆき、やがて消え去った。 


●エピローグ
「ぷにっとになるため家を飛び出したきりです‥‥お母さん、心配してるかな‥‥」
 イズミは母親に良く似た黒の女王を見たことにより、寂しさが一気に募っていた。
 そして同時に、自分の子供を愛さなかった白の女王への不信感も。
「‥‥でも、白の女王様だったから入ったわけではないですし。ぷにっと海賊団だからイズミ君も仲間に入ったのです」
 心に浮かんだ嫌な気持ちを追い払うように、イズミは大好きなぷにっとぷにっと☆の舵を取る。


 何処か遠くで、黒の女王の笑い声が響いた。