WonderTalk〜ゲオ山〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
04/27〜05/01
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●本文
春の青空に、『WonderTalk』のロゴが映し出される。
それは中世ファンタジー世界カラファンを舞台に描く深夜特撮番組『WonderTalk』のオープニング画面で、物語の中ではモンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っていた。
そして今日の舞台もカラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』。
商業の街としても知られるこの街では、眠たげなギルドの受付嬢が最近名物になっているとかいないとか。
「ゲオ山で〜、温泉がわいたらしいのよねぇ〜」
自分が名物と噂されていることを知ってか知らずか、相変わらずギルドの受付嬢は眠たそうに答える。
「温泉ねえ。いいことじゃねーの?」
レザラディカの北東、妖精の森を抜けたところにゲオ山はある。
山の麓には転移門が設置されており、レザラディカからの行き来は割合スムーズだから、温泉が湧いたとなれば喜ぶことはあれ、ギルドに依頼になるようなものではないはずなのだが?
「良いことなんだけど〜、ほら、温泉ってモンスターも好きっぽく?
ドラゴンも湧いちゃったのよ〜う。プチドラゴンだからたいしたことないと思うけどぉ、さくっと行って倒しちゃって?」
「さくっじゃねーだろ、さくっじゃ! ドラゴンつーたら、かなりやべぇじゃねーか!」
「そうなのよ〜う。やばくて危険だからぁ、早めに対応お願い〜?」
にこにこにこ。
ブチ切れるハンターに有無を言わさず言い切る受付嬢。
眠たげでも頑固者。
「‥‥報酬は弾んでくれよ?」
もういい加減怒るのも諦めたハンターは、今日も今日とてモンスター退治に出かけるのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜ゲオ山〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、プチドラゴンを倒してください。
☆モンスター情報☆
『プチドラゴン』
プチといっても、それはドラゴン族の中ではの話。
体長3mはあるドラゴンです。
今回ゲオ山にやってきたのはプチドラゴンの中でもとりわけ火に強い『プチ・ファイヤードラゴン』
名前の通り、炎によるブレスを撒き散らし、辺り一面を焼き尽くします。
その鱗は赤く、鉄の強度を誇ります。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンのレザラディカの北東方にある『ゲオ山』
レザラディカからゲオ山までは転移門で移動できます。
ゲオ山は険しい岩山ですが、珍しい鉱石なども取れることで有名です。
なお、温泉は山の中腹にあります。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
今後も職業は順次増えてゆきます。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
●リプレイ本文
●お見送り?
「あら、精々がんばってくださいね」
ハンターギルドの受付で、トールは魔法使いの姉・メイ(メイ・エル(fa3076))に憎まれ口を叩く。
「こんにちはニャ〜♪ トールさんおねーさんがいたニャか?」
踊り子のアヤカ(アヤカ(fa0075))は、ニャハハと笑いながら挨拶をする。
「メイでぇす。そこの生意気な弟の姉でぇ、魔器使いでぇす」
元気にピースサインを出して、メイは爆弾発言。
「いま、弟さんって言ったのかな?」
錬金術師のユイ(大海 結(fa0074))はポロリとお手製の弾薬を落としそうになる。
「よ、世の中には不思議なことがあるものですね」
魔術師でありモンスター学者のセルム(相沢 セナ(fa2478))は落ちそうになる分厚い眼鏡を指で押さえる。
トールとは何度も冒険をともにした仲だが、少しも気づいてはいなかったのだ。
そしてそれは召喚士のケーナ(美森翡翠(fa1521))とて同じこと。
「トールさん、男性? でも女性???」
幼い彼女には女装というものは理解し難い。
「まあ、男性でも女性でもわたくしの美しさには微塵も関係ございませんわ。おーっほっほっ!」
もう完璧に開き直ってトールは高笑いをかますのだった。
「なぬ?! ‥‥プチ! ‥‥今回の相手はドラゴンはドラゴンでもプチドラゴンだと!」
トールが去った後、改めてギルドで今回の依頼について相談していた蒼龍(星蔵 龍牙(fa1670))は傍目にもがっくりと肩を落とす。
「ブチ? 白と黒の斑点模様とかでしょうか。それは学術的にも大変珍しく貴重なドラゴンですね」
セルムが真顔でお手製のモンスター辞典をめくり、そこに書かれたドラゴンの情報と照らし合わせる。
「ブチじゃなくて、プチニャ〜♪」
アヤカが楽しげに訂正。
「あぁ、『プチ』ドラゴンでしたね、失礼」
ちょっぴり眼鏡の奥の瞳を恥ずかしげに伏せ、セルムは辞典を片付ける。
「あ〜あ‥‥ドラゴンだからって何もされてないうちから騒ぐなよ‥‥面倒くさいな」
面倒くさがりやのシーフのスー(玖條 響(fa1276))は、事情を聞いて呆れるばかり。
プチドラゴンはこれといって特に悪さをしているわけではないのだ。
「火竜? 温泉発生と関係ない? 倒していい?」
受付嬢を見上げながら、ケーナは再度確認。
「ってゆーかぁ、プチファイヤードラゴンの弱点って氷ってカンジィ?」
愛用の魔銃の手入れをしつつメイはご機嫌。
ドラゴンと戦える機会は早々ないからだろう。
そしてメイとは正反対に気弱な魔法使い・ナツキ(夏姫・シュトラウス(fa0761))は既に半泣き状態。
「‥‥お、お師匠様のお仕置きを受けるくらいなら、ドラゴンと戦った方がましです‥‥うぅ」
ハンカチを握り締めてぐしぐし泣く彼女は、以前にもお師匠様の命令で砂漠のモンスターと戦わされている。
なんというか、人使いの荒いお師匠様である。
そして受付嬢が転移門の時間を知らせ、一同、門をくぐる。
●思い出
「きえぇ、ってか凄い山だねぇ!」
転移門でゲオ山の麓に転移し、メイは頭上を見上げて思わず叫ぶ。
ゲオ山は、噂に違わず険しい山だった。
珍しい石の取れる鉱山であることから、一応道らしき物はあるのだが、坂が急で一歩上るごとに体力を削り取られてゆく。
「相変わらず険しいですね、ここは」
「前にも来たことあるってカンジぃ?」
懐かしそうに山を見つめるセルムに、メイはポニーテールを揺らして尋ねる。
「ええ、以前にもこちらに来たことがありましてね‥‥その時、偶然卵を拾ったのですけど、孵ったのがドラゴンでして。
当然飼えるわけもなく、やむなくお別れを‥‥パピィはどうしているでしょうか‥‥」
「パピィちゃん‥‥元気だと‥‥いいですね」
ナツキはびくびくと杖を握り締めて周囲を伺いながら、それでもしんみりとしているセルムを励ます。
「大丈夫か?」
スーがケーナに手を貸す。
「‥‥登れなくなったらシルフにお願いする、大丈夫」
ちょみっと息切れしつつ、ケーナは笑う。
出来るだけみんなの負担になりたくないのだ。
「無理はするな? 仲間なんだからな」
蒼龍もいつでも背中を貸すぞとケーナに笑いかける。
「温泉ついでに珍しい鉱石とか見つからないかな。何か作るのに使えそうだよね」
ユイはお手製の爆弾がパンパンに詰まったリュックとショルダーバックを抱え、すでに温泉に入ったかのように汗いっぱい。
「いくらプチといってもドラゴンはドラゴンニャし〜☆ 楽しみニャ〜☆」
るんるんと短剣を弄ぶアヤカに、セルムは眼鏡を抑え、
「ドラゴンスレイヤー‥‥竜を討ち取りし勇者に与えられし称号。ひょっとして狙ってません?」
「ニャっ?! そそそ、そんなことニャいニャよ。ニャハハッ☆」
アヤカは短剣を背中に隠してごまかし笑い。
ほんとはちょみっと狙っていたのだ。
「あ、あのっ、あそこらへん‥‥湯気が見えませんか?」
ナツキが指差す方向に、確かに湯気が立ち上っている。
「温泉だ!」
「ってゆーか、ドラゴン発見ってカンジぃ!!!」
蒼龍が温泉に喜び、メイが別方向を指差して叫ぶ。
そこには、噂のプチファイヤードラゴンが炎の尻尾を振り回していた。
●プチファイヤードラゴン
「うわわっ、尻尾があっついニャーっ」
アヤカが用意しておいた耐火マントを羽織り、短剣を握る。
プチファイヤードラゴンは、炎を纏った尻尾をぺちぺちと地面に叩きつけ、キラキラとしたつぶらな瞳でハンター達を見つめている。
「火に強いってコトは爆弾は効果ない‥‥かな。おわっと!」
ユイが爆弾を取り出そうとすると、パンパンに詰まっていたショルダーバックから爆弾が零れ落ちた。
よりによって、ドラゴンの真ん前に。
「ちょっとちょっと、爆弾はやばいってカンジぃ〜?!」
叫ぶメイの手には爆弾よりもやばげな魔銃が握られているのだが、それはそれこれはこれ。
「みんなふせてっ!」
ユイが叫び、アヤカとメイがその場に伏せ、スーはおろおろしているナツキを突き飛ばして守り、蒼龍がケーナを脇に抱えて地面に伏せる。
そしてセルムは。
「パピィ‥‥? うっ!」
カッ!!!
爆弾が破裂し、眩い閃光が迸る。
「ピイイッ、ピッ、ピイイ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
プチファイヤードラゴンが驚いて暴れまわる。
けれど外傷は無いようだ。
ハンター達も全員、何処にも怪我を負っていない。
「よかった、ただの光彩弾だったんだ」
ユイがほっとして立ち上がる。
様々な爆弾を持ち歩いているユイだが、音や光が出るだけの爆弾も持っていたようだ。
「ピイイイイーッ!」
ごうっ!
ほっとするのも束の間、ドラゴンの口から炎が吐き出される。
90度コーンのファイヤーブレスがハンター達に襲い掛かる!
「天にあまねく極光の帳‥‥フローディア!」
「カラファンの風の王! 貴方が名を付けし娘の声が聞こえるならその加護を! 私の仲間を守る為炎の竜に風の刃の裁きを!!」
ナツキの防御魔法とケーナの召喚魔法がハンター達を包み込み、ギリギリの所で炎を急き止める。
だが、それだけではなかった。
ケーナの風の魔法がプチファイヤードラゴンを切り裂いていた。
「待って下さい、あれは、パピィなんです‥‥私が以前拾ったドラゴンなんです!」
セルムがこれ以上みんながプチファイヤードラゴン―― パピィを傷つけないように止める。
パピィには、おでこの所に一枚だけ青い鱗が付いていたのだ。
深い蒼色をしたその鱗は、セルムの魔力を帯びた指輪の色と同じ。
間違いようが無い。
「でも、このままだと、みんな危険‥‥えっ?」
ケーナが耳を押さえる。
いま何か、声が聞こえたような?
「セルムには悪いけどぉ、あのドラゴンちょっぴり正気を失ってるみたい。ってゆーか、やばいってカンジぃ!」
パシュッ!
メイが魔銃をドラゴンの角めがけて撃ち放つ。
目や身体でなく、角を狙ったのは威嚇の為だ。
だがドラゴンはそんなメイの気持ちも知らずに再び炎を撒き散らす。
「一緒に温泉に入りたいところだったが‥‥止む終えまい、牙龍拳‥‥護身術奥義‥‥龍人!」
蒼龍の拳が竜の鱗のようにきらめき、極限まで高めたオーラがその身を守りドラゴンの炎を防ぎ、パピィの硬い鱗を拳が突き破る。
「ピイッ、ピイイイィ‥‥‥っ」
パピィは痛みに呻き、炎の尻尾をばしばしと地面に叩きつける。
そしてそんなパピィとハンター達の間に、今までずっと黙っていたスーが割ってはいる。
「面倒だけど‥‥我が主の敵は我の敵‥‥ってね。少し下がっててくれない?」
「危ないニャよ、気をつけるニャっ」
スーが何をしようとしているのか判らないが、パピィはかなり興奮している。
だからアヤカはセルムには申し訳ないけれども、パピィがいつスーに襲い掛かっても止めれるようにパピィの目を狙い、短剣をダーツのように構える。
『我が遣えし紅き竜よ、我等の願いを聞いて欲しい』
皆が固唾を呑んで見守る中、スーは聞き取れない言語を口にする。
荒れていたパピィはその言葉を聴き、一言二言、たどたどしくスーと同じ言語で話し、だんだんと大人しくなってゆく。
「あれは‥‥古の竜の言葉‥‥?」
ナツキはお師匠様の所で昔に読んだことのある文献を思い出し、その独特の発音に聞き覚えがあった。
そしてケーナは、皆が聞き取れずにいるその言葉を何故か理解できる自分に困惑していた。
(「ドラゴンの言葉、わかる? 何故? ‥‥頭、痛い」)
思い出そうとすると、ケーナの頭に鈍い痛みが走る。
「終わったぜ。こいつ、探し人をしていたみたいだ」
セルムを見つめ、スーは「お前を探していたんだよ」と伝える。
「パピィ? 本当に私を探して?」
セルムが駆け寄ると、パピィは嬉しそうに尻尾をぱたつかせた。
「うひゃあっ、もう一匹来た! ってゆーか、親ってカンジぃ?」
メイがゲオ山のはるか上空から滑空してくるファイヤードラゴンを指差す。
ハンター達は一瞬身構えたものの、パピィの数倍はあるそのドラゴンは本当にパピィの親だったらしい。
スーによれば、はぐれた子供を捜しに来たのだそうだ。
(「さっき聞こえた声は、パピィちゃんのお母さんのですの」)
先ほど聞こえた声は、今目の前にいるドラゴンと同じ声だった。
「びっくりさせてごめんね?」
ユイが申し訳なさそうにパピィの頭を撫でて、飲みやすい疲労回復薬を飲ませる。
「ピピィ、ピピキュ♪」
パピィは嬉しそうにそれを飲み込み、ケーナが精霊に頼んでパピィの傷を癒す。
●エピローグ
「さあて、これにて一件落着だ。風呂に入ろう!」
「おー!!」
蒼龍が一番に温泉に飛び込み、みんなも後に続く。
二匹のドラゴンも尻尾の炎を消して、先っぽだけお湯に浸かってみたりしている。
セルムはひとしきりパピィとの再会を喜んだ後、ふと、恥ずかしくなったのか、
「私は鉱石探しでもしてきますので、皆さんでごゆっくりどうぞ。では」
といって、そそくさと温泉を離れて鉱石を探しにいった。
「やっぱり温泉っていいよね〜。和むもん」
ユイはほわわんと温泉につかって幸せそうに微笑む。
そして男性陣と少し離れた場所では、
「はわわわわっ、うきゃーっ」
どっぼーんっ☆
タオルできっちりと身体を隠し、でも温泉が嬉しくて浮かれていたナツキは何も無いところでものの見事にすっころび、頭っから温泉にダイブ。
「やっぱりぃ、温泉は気持ちいってカンジィ」
メイは何事も無かったように澄まして温泉に入る。
「ドラゴンスレイヤーにはなれなかったニャけど、温泉は幸せニャ☆」
「うー‥‥白い建物‥‥」
ケーナはドラゴンの言葉がわかる理由をまだ考えていたらしい。
悩みすぎてぶくぶくとお湯に沈みそうになるのをアヤカが抱き起こす。
「白い建物って、なんニャ?」
「思い出せないの‥‥でも‥‥ホムンクルスがいた気がするの‥‥っと、きゃうっ?」
アヤカがびくっと震え、ケーナを落っことしそうになる。
「ニャハハ、ごめんニャー。うんうん、きっとそのうち色々思い出すニャー」
ニャハハと笑って、アヤカは誤魔化す。
ホムンクルス。
それは、アヤカの両親を目の前で殺した魔法生物。
そして、ケーナにも深くかかわりがあるものらしい。
「おーい、セルムはもう戻ってきた? うわっぷ!」
「こっち来ちゃだめってカンジぃ!」
ドラゴンと話していたスーが間違って女性陣の場所に声をかけ、メイに思いっきりお湯をかけられる。
これが敵だったら間違いなくスーはブチ切れているところだが、相手は大切な仲間。
「面倒くさいな‥‥」
と濡れた髪をかきあげる。
「呼びましたか?」
そしてひとしきり周囲を歩いてきたセルムは分厚い眼鏡を中指で押し上げる。
「ああ、うん。あなたドラゴン飼う気ある?」
「え?!」
「パピィだっけ? こいつ、セルムと一緒に生きたいらしい」
パピィを撫でながら、スーが子猫を飼う気軽さで尋ねる。
「‥‥現実的に、無理、ですね」
一瞬、一緒に冒険に出たい衝動に駆られたが、セルムはぐっとこらえて首を振る。
「だよなぁ。でもこいつ、セルムを探して親元を離れるぐらいだし、たまには会ってやってくれない?」
「ええ、もちろんです。でも、何故そこまでしてくれるのです?」
面倒くさいといいつつ、スーがその実とても面倒見がいいことは何度かの冒険でわかっていたが、それでもドラゴンと自分との間をここまで取り持ってくれる理由がわからない。
「俺は裏切り者、だからね。償わなきゃいけないんだ」
苦笑するスーには、それ以上の質問を出来ない雰囲気があって、同じように影を持つセルムはそれ以上追求せずパピィの首を抱きしめるのだった。