WonderTalk〜天空の塔〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 05/25〜05/29

●本文

 はるか遠く続く青空に、『WonderTalk』のロゴが映し出される。
 それは中世ファンタジー世界カラファンでの冒険を描く深夜特撮番組『WonderTalk』のオープニング画面。
 物語の中ではモンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っている。
 そして今日の舞台もカラファンの東方に位置する城下町『レザラディカ』。
 商業の街としても知られるこの街では、眠たげなギルドの受付嬢が珍しくしゃっきりとしていた。
「天空の塔が現れたわぁ」
 見た目はしゃっきりとしているものの、口調は相変わらず眠たげなギルドの受付嬢は不思議なことをいう。
 見た目がしゃっきりしている分、脳が寝ているのだろうか?
「天空の塔は、伝説だろ?」
 レザラディカに古くから伝わる伝説の中の一つで、天空の塔は精霊達が住む天空大陸への道を開くといわれている。
 だが、天空の塔などというものは何処にも存在しないはずなのだ。
「でも湧いちゃったのよ〜う。ここから西方のぉ、ジェルダラ渓谷付近にあるっぽく?
 ちょっといって、さくっと調査してきてん?」
「‥‥塔っつーもんは、ふつーいきなり湧かないもんだが?」
 ハンターの目はじとめ。
 さくっと調べてこいなどといっているが、いきなり出現した塔がまともなはずはなく、間違いなく魔力が働いているに違いない。
「そうなのよ〜う。不思議現象でぇ、なぜか風が吹き荒れてて近づけないしぃ、がんばって?」
 にこにこにこ。
 相変わらず有無を言わさず言い切る受付嬢。
 これに文句を言うだけ無駄。
 ハンターは心の中で溜息をつき、今日も今日とてモンスター退治に出かけるのだった。 


☆Wonder Talk出演者募集☆

 ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜天空の塔〜』出演者募集です。
 剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、天空の塔を調べてください。
 

☆モンスター情報☆
『ホムンクルス』
 塔を守るように、数体、目撃されています。
 正確な能力は不明。
 魔法に長けたものもいるようです。
 塔の外ではなく、内部にいる模様。

 このほかにも、モンスター出現の可能性はあります。


☆地域情報☆
 今回の舞台は、レザラディカの西方にある『天空の塔』
 レザラディカから天空の塔までは徒歩で移動します。
 魔力が乱れ、転移門(瞬間移動装置)が上手く作動しません。
 ジェルダラ渓谷の手前に天空の塔は出現した為、渓谷を越える必要はありません。
 そして天空の塔の周囲には激しい風が吹き荒れ、まるで人々が中へ入るのを拒んでいるかのようです。
 

☆選べる職業☆
 戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
 僧侶 :治癒魔法を得意としています。
 魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
 踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
 召喚士:精霊を召喚し、使役します。
 吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。 
 シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
 錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。

 なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
 今後も職業は順次増えてゆきます。
 また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
 

☆テンプレート☆
 WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。

【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
   〜台詞例〜  
  【挨拶】「風、か‥‥」
  【戦闘開始】「やはり、お前達が現れたな‥‥」
  【必殺技使用時】「本当はこんなこと嫌だけど‥‥でも、さよなら!!!」
 *台詞例以外にも色々台詞や設定追加推奨です。
           
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらどんどんこちらへ明記ください。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2475 神代アゲハ(20歳・♂・猫)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

●モンスターギルド
 商業の街レザラディカのハンターギルド。
 そこでは、顔馴染みのハンター達はもちろんのこと、天空の塔の噂を聞いたハンター達が集まっていた。
「‥‥しかしこの受付嬢、何が起きたら眠たげから普通になるんだろうな?」
 ギルドの名物(?)眠たげな受付嬢に聞こえないように、吟遊詩人のケイ(氷咲 華唯(fa0142))はぽそりと呟く。
「最も手強いのは、もしかしたら目の前にいるこのひ‥‥あ、いえ」
 分厚い眼鏡を指で押さえ、学者にして魔術師のセルム(相沢 セナ(fa2478))も言葉を濁す。
 当の受付嬢は今日も今日とて眠たげにあふぅと欠伸を漏らした。
「ユウだ‥‥よろしくな」
 そしてそんな受付嬢に動じることなく、漆黒のシーフ・ユウ(蘇芳蒼緋(fa2044))が挨拶をする。
 天空の塔の伝説はまちまちで、これと言った確証はつかめない。
 だが、何かしらの魔力的罠は施されていると思ったほうが良いだろう。
 その点、罠の解除を得意とするユウの参加はありがたい。
「しばらくの間だがまぁ、よろしく‥‥」
 ユウと同じように黒衣を纏った風の剣士・サイガ(神代アゲハ(fa2475))が眼鏡をほんの少しずらして挨拶をする。
 一見、冷たい雰囲気を纏った二人だが、優しく、面倒見が良い事を知る者は多い。
「もう、肉体労働はこりごりですわ」
 姉はまだかしらとも呟きつつ、巫女服の上に白衣を纏ったトール(トール・エル(fa0406))は溜息をつく。
「で? 今回は何の神様と契約したの?」 
 そんなトールに、もう何度も冒険を共にしたリンフー(MAKOTO(fa0295))は虎尻尾を揺らして悪戯っぽく微笑む。
 巫女であり踊り子でもあるトールは、八百万の神々と契約を結べるのだ。
 依頼や気分に合わせ、様々な神に仕えなおすトールの今回の神様は思金神。
 思想や知恵を神格化した神で、完璧に頭脳労働派。
 よほど前回仕えた須佐之男命の破壊神的肉体労働は堪えたらしい。
「‥‥精霊界への扉? あるの?」
 幼い召喚士のケーナ(美森翡翠(fa1521))は、炎の精霊を呼び出して尋ねてみる。
 けれど何故だろう、精霊は曖昧に笑って掻き消えた。
「‥‥?」
「あらあら‥‥精霊さんは恥ずかしがりやさんなのですね」
 応えてくれなかった精霊に小首を傾げるケーナに、薄皮の鎧を纏った剣士のヒカル・マーブル(ヒカル・マーブル(fa1660))がおっとりと微笑む。
 そう、精霊だって、色々な種類がいる。
 たまたま、恥ずかしがり屋さんの精霊を呼び出したのかもしれない。
 ケーナは、胸によぎる一抹の不安を心の中から追い出した。



●天空の塔
 ジェルダラ渓谷の手前にあるといわれていたその塔は、一見、剣のような形をしていた。
 ぼんやりと青く輝き、今まさに天から大地に向かって突き刺されたかのように、地中にその切っ先は埋まっている。
 そして、ギルドの情報とリンフーが集めた情報どおり、塔の周りには強風が渦巻き、何者も中に踏み入る事を拒む。
「入るなと塔に拒絶されているようだが、だからといって調べないわけにもいくまい」
 サイガは塔の周りを吹き荒れる強風に黒髪を乱しながら、腰の剣に手を当てる。
「この間といい今回といい、正直な話どう思う?」
 一本に束ねて編んだ金髪を押さえ、リンフーは仲間に尋ねる。
「この前転移門異常あった‥‥関係あるの?」
 つい先日、東方大陸で転移門の異常があり、死国を除いて使えなくなるという事態が発生したのだ。
 そして今回も転移門が不具合を起こしている。
 関連性を感じるのは、当然の事だった。
「わたくしの『知識』を用いても、詳しいことまではわかりかねますわね。関連性については感じるものがあるのですけど」
 ギルドで姉のメイから借りた神具・真眼鏡をきらりと輝かせ、トールが思金神の力を行使する。
 だが、やはり詳細までは知ることが出来ない。
「‥‥この遥か先には会いたくない人物がいるんですよね‥‥いえ、なんでも」
 ポツリと呟いたセルムの言葉に首を傾げるヒカルに、セルムは少し俯いて曖昧に語尾をぼかす。
「やはり、中に入るしかなさそうですねぇ」
「伝説をこの目で見られるチャンスを、逃す手はないしな」 
 ほんのりとヒカルが呟くと、ケイも頷く。
「この風‥‥精霊に頼んでみる‥‥【カラファンの風の王、貴方が名を付けし娘の声が聞こえるならその加護を‥‥我等を拒む魔力の風を阻み、我等の前に道を開き給え‥‥】‥‥ええっ?!」
 ケーナが風の王に祈りを捧げる。
 だが祈った瞬間、思いがけないことが起こった。
 塔の周囲を渦巻いていた風が冒険者達に―― ケーナに向かって襲いかかってきたのだ!
「くっ‥‥シャドウドール!」
 咄嗟にセルムが術を唱え、ケーナの分身を生み出してその攻撃を反撃し、ケーナを守る。
 そしてその一瞬出来た隙にユウがケーナを抱きかかえて横に飛び、風の攻撃軌道からケーナを逃した。
「そんな‥‥自然の風、違う? ‥‥みんな、こっち! いそいでっ!」
 襲い来る風とは別の、ケーナに馴染み深い精霊達が作り出した風の道に気づき、その道に仲間を誘導する。
 風の道はトンネルのように邪悪な風を防ぎ、冒険者達を塔の中へと誘った。


                  ――‥‥逃げて‥‥ 

「‥‥? いま、何か言った?」
 塔に入った瞬間、冒険者達の脳裏に直接、かすかな声が響いた。
 リンフーが虎耳をそばだててもう一度聞き取ろうとするが、もう聞こえない。
 それどころか、多数の足音が塔の中に響きだし―― 塔の奥から、ホムンクルスが現れた!
 

●ホムンクルス
 ホムンクルスは大小さまざまで、数十体いる。
「嫌いっ!!」
 ケーナが叫び、心の奥底に眠る恐怖に震えながら精霊に呼びかけ、氷の刃でホムンクルスを切り刻んだ。
「右、緑色のリングをしているホムンクルスは補助系の魔法を使用しますわ。
 真ん中の巨体は、トロールと同じような物よ。力はあるけど知能はないから足を狙いなさい。
 一番小さいのは雷撃系の攻撃呪文が得意だわ、でもその分水系の呪文には弱いはずよ。
 後は十羽一からげの雑魚だけど、油断しないで!」
 トールが神に働きかけ、個体別に能力の違うホムンクルスの弱点を次々と見破ってゆく。
「ま、そう簡単にはいかせてくれなさそうだな」
 ケイが呪歌を歌いながらリュートを奏で、仲間の士気を向上させる。
「オレと敵対したこと、恨むんなら自分の運のなさを恨むんだな」
 トールの助言を得て、サイガは力任せに腕を振り回して破壊行動を行う巨大なホムンクルスの足に剣を振るう。
 二、三度。
 たったそれだけしか振ったように見えないその剣は、風の精霊をその身に宿し、幾重もの真空の刃をホムンクルスの岩の様に硬い足に叩き込み、切り落とす。
 片足を失い、ホムンクルスは大きくバランスを崩した。
「では‥‥参ります‥‥」
 ヒカルが緑のリングをしたホムンクルスへ踏み込もうとしたとき、
「止まれっ!」
 ユウがその二の腕を掴み、大きく後ろに跳び退く。
 瞬間、ヒカルの居た床が爆ぜた。
「トラップだ。まったく、面倒なことをしてくれる‥‥」
 クナイを投げて襲い来る雑魚に投げつけ、絶命させる。
「ありがとうございます‥‥えいっ!」
 ヒカルは礼を言いつつ、わらわらと寄ってくる雑魚を剣で薙ぎ払う。
 大きな胸が揺れることにコンプレックスを抱きながら、ヒカルは次々と雑魚を切る。

               
                   ――‥‥来ては‥‥駄目‥‥

「またっ?!」
 謎の声が再びハンター達の脳裏に響く。
「今はこっちに集中しないと! 
 大気に踊りし雷精達よ、天地を貫く神柱となりて、彼の者を必滅する威力となれ!
 集え、裁きの轟雷よ。偉大な勇者の御業をココにっ、サンダーブレーク!!!」
 謎の声を脳裏から追い出し、リンフーの必殺技炸裂!
 部屋中を稲妻が迸り、ホムンクルスの身体を貫いた。
「命亡き者、その身体に眠りし闇の力よ、光と共に消え去りなさい‥‥ルナフレア」
 セルムが中指に嵌めた蒼い魔力制御リングに意識を集中し、種族魔法を発動させる。
 光の粒子が舞い上がり、粒子は残ったホムンクルスの身体に染み込み、そして闇の力を消滅させる。
「ホムンクルス‥‥倒せた‥‥? でも、ホムンクルスがいるってことは‥‥誰か錬金術師がもう入って調べてる? それとも元々いた? ‥‥頭、痛いっ」
 ホムンクルスが消え去り、一時的に危険は去ったはずなのに、ケーナは激しい頭の痛みに蹲る。
「苦しいのか?」
 サイガがフード付きのマントを脱ぎ、震えるケーナを包んで抱き上げる。
「一緒に‥‥逃げたの‥‥」
「ん?」
「竜の子‥‥ケーナを知ってる誰か‥‥」
 痛みと共に、何かがケーナの脳裏に思い出される。
 それは、ケーナの失った過去の記憶。
 誰かと共に、どこかから逃げた思い出。
 けれどそれ以上は思い出せない。
 この塔の謎が解けた時、彼女の記憶も解けるのだろうか‥‥?


●エピローグ
 塔の上へと至る階段を探している時だった。
「‥‥おや? ここに何か文字のようなものがありますよ?」
 セルムが分厚い眼鏡を指で押さえ、壁に描かれた文字に気づく。
「こちらにもありますわね」
 トールが真眼鏡を覗き込む。
「精霊文字?」
 ケイが先祖に伝わる歌が描かれた楽譜に良く似たその文字に興味をそそられる。
「まぁまぁ、もしかしてこれもそうでしょうか?」
 ヒカルが一部だけ凹み、そして同じように文字の描かれた壁に手を添える。
 と、その瞬間、部屋の中央の床が激しく輝き、魔法陣が現れた。
「上に向かって伸びている?」
 ユウが言うように、魔法陣から迸る光は、真っ直ぐ塔の上に向かって伸びている。
「転移門と同じようなものですわね。恐らく塔の上の階に移動できるはずよ。どの階に出るかまではわからないけど」
 真眼鏡がきらりと輝く。
「このまま上を目指すか? だが‥‥」

                 ―― ‥‥娘を‥‥どうか‥‥逃げて‥‥

「うわっ、またこの声だよ、どっからしてるの?!」
 リンフーが咄嗟に耳を押さえてきょろきょろと辺りを見回す。
「娘、ですか‥‥」
 セルムが考え深げにケーナを見つめる。
 ケーナは、サイガの腕の中で頭の痛みに顔を歪めている。
「まあ、今回はここまでか‥‥」
 ユウが調査を切り上げる事を提案する。
 ケーナのこともそうだが、この魔法陣が何処へ飛ぶのかも確定していない状態で、これ以上の強行調査は危険だった。
「戻りましょう」
 一同、頷く。
 ――塔の風は、いつの間にか吹き止んでいた。