WonderTalk〜東方大陸アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
2人
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期間 |
05/11〜05/15
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●本文
Wonder Talkは中世ファンタジー世界『カラファン』を舞台にモンスターハンター達が剣と魔法と知恵を使い、行く手を阻む魔物達を倒してゆく物語だ。
「緊急事態、よ‥‥」
いつもの眠たげな受付嬢ではなく、何処かぶっきらぼうな彼女は眉間に皺を寄せてハンター達に告げる。
「なんだ?」
その険しい表情にただならぬ気配を感じ、ハンターは腰の大剣を握る手に力を込める。
「東方大陸、日出国がトロールの襲撃に遭いました。直ちに生存者の救出に向かってください。‥‥最善の注意を払って」
抑揚がなく冷たい口調のまま、けれど受付嬢の顔色は真っ青だ。
「あんたのほうが倒れそうなんだが?」
心配げなハンターをきっと睨み、受付嬢の平手が飛ぶ。
「ふざけないで下さい。東方大陸にだってハンターギルドはあるんです。
なのに、こちらに依頼が来た理由を考えなさい!」
「‥‥すまなかった。必ず助けてくる」
涙目になる受付嬢にハンターは詫び、依頼を請け負うのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜東方大陸〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、モンスターを退治してください。
☆モンスター情報☆
『トロール』
身の丈4mの巨人です。
数体います。
人間の子供程度の知恵を持ち、その大きな身体から繰り出される攻撃は凄まじい破壊力を秘めています。
☆転移門☆
移動は転移門を使用していただきます。
転移門は王国魔道師たちに管理される瞬間移動装置で、一瞬にして東方大陸へつくことができます。
☆地域☆
今回の舞台は東方大陸『日出国』
小さな島国で、主にお米の栽培が盛んです。
日出国の南方、『死国』にて、トロールは発生した模様。
なお、東方大陸の死国以外の転移門は何故か使用できず、急遽西方大陸に依頼が入りました。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
●リプレイ本文
●どーいうことですのーっ!
「これはいったいどういうことですの!」
だんっ!
怒りで戦巫女と化したトール(トール・エル(fa0406))が華奢な拳をギルドの受付に叩きつける。
「落ち着け。この人に当たっても意味ないだろ?」
吟遊詩人のケイ(氷咲 華唯(fa0142))が怒れるトールを宥める。
そんなケイの手には普段とは違いかなりの量の荷物が抱えられている。
『怪我したときのためにお薬とかいっぱい渡しておくね。喉に良いお薬もあるから使ってね。絶対絶対無事に帰って来るんだよ?』
そういいながら親友のユイが涙目で押し付けてきたのだ。
錬金術師であるユイのお手製の爆弾はもちろんのこと、ありとあらゆる調合薬の数々を全て手渡され、でも全て持ち歩くことは不可能だったから、ケイはこれでもある程度選んでもってきたのだが‥‥いかんせん、まだまだ多い。
「状況は理解したけど、彼の言うとおりキミは少し落ち着かないと駄目だよ?」
虎人の魔法使い・リンフー(MAKOTO(fa0295))もトールを宥める。
普段と変わらずトールは高飛車だったが、何度も一緒の依頼を受けたことのあるリンフーには彼女が完全に冷静さを失っているのが良くわかるのだ。
八百万の神々と契約の結べるほどの力を持った巫女である彼女は、今回は須佐之男命と契約を結んだという。
男嫌いの僧侶で、ただ一人の神に仕えるアイリ(霧島 愛理(fa0269))は次々と神々と契約を結び直すトールのことを「な、なんて無節操な‥‥」といいつつ、その実力を認めている。
力があり、尚且つ神に認められなければ契約を結ぶことなど出来ないのだから。
「これが落ち着いていられますか! わたくしの故郷が、トロールの襲撃にあっているというのにっ」
身体に似合わぬ大剣を背負ったトールは、悔しげに唇を噛み、剣の重みによろける。
「面倒くさいな‥‥」
面倒くさいが口癖のシーフ・スー(玖條 響(fa1276))はそんなトールをさり気なく支える。
今回、モンスターハンター達が向かう先は東方大陸。
だが、東方大陸の死国以外の国への転移門はなぜか使用不可能となり、その事実が余計にトールの気持ちを焦らせていた。
「なぜ死国以外の転移門が使用できない‥‥そこまで破壊されたと考えるべきか‥‥」
牙龍拳の継承者であり、基本的には楽観主義者である蒼龍(星蔵 龍牙(fa1670))にも、最悪の考えが浮かぶ。
「事態は急を要するようですね、手短に身支度を済ませ早く向かうべきでしょう」
黒翼の魔術師・セルム(相沢 セナ(fa2478))はずり落ちそうになる分厚い眼鏡を指で押し上げる。
その背に、いつもの黒い翼がない。
東方大陸では翼人は目立ちすぎるという理由で消したらしい。
「まぁまぁ皆様お茶でも飲みながら、転移門の時間を待ちましょう?」
料理好きのヒカル・マーブル(ヒカル・マーブル(fa1660))が蜂蜜ティーを差し出す。
その蜂蜜は一年ほど前から知り合いだった受付嬢に頼み、キラー・ビーの作り出す極上の物を使ってあったりする。
戦いの前に少しでも心を落ち着けなくては、本来の力の半分も発揮できない。
「よりにもよって、東方でこんな酷い話になっているとはな‥‥」
転移門が開くまでは、どんなに焦ろうと東方大陸へ渡ることはできない。
ヒカルから蜂蜜ティーを受け取って、召喚士たるサクヤ(橘・朔耶(fa0467))も深く溜息をついた。
●死国
「待っておったぞ!」
ハンター達が転移門から死国へと転移した瞬間、日出国の召喚士・水蓮(朝葉 水蓮(fa2986))が駆け寄ってきた。
「よく、耐えたな。もう大丈夫だ」
水蓮の憔悴しきった、けれど決して諦めてはいない顔を見て、サクヤは安心させるように力強く頷く。
死国の転移門は王城にあった。
城の奥には避難した一般市民が身を寄せ合って震えている。
「疲れているところをすまないが、戦況を教えて欲しい」
蒼龍は日出国にもある牙龍拳の門下生からある程度の情報は得ているが、正確な状況を知る為に尋ねる。
水蓮は軽く首を振り、
「‥‥死国はほぼ、壊滅状態じゃ。死国の巫女達はトロールが城に侵入するのを防ぐ為に次々と命を落としてしもうた‥‥今生きておる巫女はうちだけじゃ!
うちは、皆が残した結界と、この転移門を維持するのがやっとじゃった‥‥トロールが全てを滅ぼしてしもうたわ!」
水蓮の頬を涙が伝う。
「トロール? 鬼ではないのですの?」
トールが注意深く尋ねる。
「うむ、トロールじゃ。鬼どもではない。あのような鬼は見たことがないし、西方大陸からの情報もそれを示しておった」
その言葉に、トールは深く考え込む。
本来日出国にはいないはずのトロールが、なぜ数体も出現したのか?
日出国は小さな島国の集まり。
偶然でそうそう辿り付ける場所ではないはずだ。
だが、考えに耽るトールを凄まじい破裂音が現実へと引きもどす。
「今の音は?!」
「いかんっ、結界に綻びが出始めておるっ!」
全員、武器を手に城の外へ走る!
●トロール
その姿は強大にして凶悪。
トロールは、辺り一帯に地響きを轟かせながら、その巨体を晒していた。
「お、大きいっ!」
ロッドを構えたアイリが率直な意見を言う。
城の外から今まさに結界を破り進入しようとしていたトロール共は身の丈三メートル。
人とは明らかに違う緑の皮膚は硬く、その表情は般若の如し。
手にした棍棒をあたり構わず振り回し、結界の外の綺麗に手入れされていた松の木が数本、薙ぎ倒された。
耳障りな雄たけびはざらざらと嫌悪感を沸き立たせる。
「あらあら‥‥やんちゃですねぇ」
のんびりとした口調とは裏腹に、剣を構えるヒカルに隙はない。
普段のおっとりとした雰囲気からは想像もできないが、彼女は熟練の戦士なのだ。
恐らく、試験さえ受ければ王国騎士団に所属できるほどの。
「俺のとっておきの歌を聞かせてやる」
「私も補佐するわ」
リュートを奏でるケイに合わせ、黒髪の吟遊詩人・エルティナも呪歌を口の端にのせる。
吟遊詩人達の奏でるハーモニーはハンター達の防御力を強化する。
「体格には死角が、威力には隙が、如何なる長所にも付け入る場所は有る!」
ちょみっと本能的に虎尻尾が丸まりかけたリンフーは、そんな自分を叱るようにトロールを睨みつけ、銀の杖を構えて呪文詠唱を始める。
「幾ら子供並の思考とは言え侮れませんよ。ある意味手強い相手になるでしょうね」
セルムは愛用のモンスター辞典を閉じ、右手中指に嵌めた蒼い指輪に意識を集中させる。
「面倒事はさっさと片付けよう」
「動きを止める!」
スーは太股に巻いたベルトに嵌めた短剣に油断なく手を添わせ、青龍は拳を鳴らす。
トロールが見えない壁に力一杯棍棒を叩きつけたその瞬間、
ギギ‥‥ギッ、パキーンッッ!!!
軋む音と、ガラスが砕けるような音があたりに響き、結界が消滅!
トロールが一気になだれ込んできた!
「許しませんわ!」
トールが叫び、須佐之男命の力を借りてその背の大剣を抜きざまにトロールに切りかかる。
動きの鈍いトロールはその剣を避ける事叶わず青い体液を飛び散らせた。
先ほどまで重い剣によろけていたのが嘘のように、トールの身のこなしは軽い。
「あれが、須佐之男命の力なのね? なんて凄まじい力なのかしら‥‥私も、負けていられませんわ! 波状結界っ」
アイリがハンター達の後方で防御結界を周囲に張り巡らせる。
波状形のそれは通常の結界よりも弾力性に富み、また、狭い範囲であればあるほどその強度を増してゆく。
アイリが倒れない限り、その結界は壊れることなく城の中に残る避難民達を守ることが出来るはずだ。
「痛そうだね? でも生憎‥‥お前達を許してやれる程、俺は寛容ではないようでね。熾火を纏う我が愛しき獣よ、悪しき者達へ制裁を与えよ!」
トールに切り刻まれ、暴れるトロールにサクヤは冷たい双眸を向ける。
琥珀色と、赤茶色のその瞳には、モンスターに対する深い憎しみと悲しみが込められていた。
サクヤに召喚された炎を纏いし召喚獣は、彼女の命ずるままにトロールに襲い掛かる。
だが、トロールは一匹ではない。
そして仲間がやられていることを理解する知能もある。
炎に巻かれる仲間を助けようと、別のトロールが棍棒をサクヤに叩き付ける!
「!!!」
召喚獣を操ることに意識を集中していたサクヤは、数メートル後方に吹っ飛ばされた。
すぐさま水蓮が式神を飛ばしサクヤの援護にまわる。
だが、これまた別のトロールが目の前に立ち塞がる!
「‥‥終わりじゃな」
岩山のように行く手を阻む敵に、水蓮は成す術もない。
身を守る式神はサクヤに飛ばしてしまったのだ。
背中は壁。
逃げ場は何処にもない。
小さな子供のように楽しげに笑いを浮かべ、トロールが大きく腕を振り下ろし、水蓮は硬く目を閉じる。
「‥‥?」
だが、何も起こらない。
そして目の前で腕を振り上げたままだったトロールがゆっくりと倒れ、その後頭部には深々と短剣が突き刺さっていた。
「少しの間黙っててよ。もっとも、もう二度としゃべることはないだろうけど」
スーが魔力を帯びた短剣を構えて立っていた。
魔力は龍の姿を形取り、スーの手首に絡みつく。
「あ、あぁ‥‥すまぬ‥‥」
何が起こったかわからずきょとんとしていた水蓮は、はっとしてスーに礼を言う。
スーは苦笑して水蓮が無事だったことにほっとしつつ、次の敵に向かってゆく。
そしてトロールに吹っ飛ばされ、意識を失っていたサクヤは水蓮の式神に守られ、アイリの治癒魔法で治療されどうにか無事のようだ。
だが、戦況は芳しくない。
一匹でも厄介なトロールが数体、しかも仲間意識を持ちながら襲ってくるのだ。
連携というほどのものは取れずとも、とてつもなく厄介だ。
次第に、ハンター達は追い詰められてゆく。
「ファイアーレーザー零距離撃ち!」
目の前まで迫ってきていたトロールを、リンフーが咄嗟に魔法を打ち込んで後退させる。
だが、トロールはまたすぐに襲い掛かってくる。
「きりがありませんね‥‥グラビティウェーブ!」
セルムが指輪の力で増幅させた魔力を解き放ち、大地を揺らしてトロールを転倒させる。
だが、その攻撃も余り効いてはいないようだ。
ハンター達の中に諦めにも似た焦りが生まれる。
けれどその時、ケイの心の中に何かが宿った。
知らず知らずのうちに、歌詞が次々と脳裏に浮かび、心のままにケイは歌を紡ぐ。
人の歌声でありながらそうではない不思議なその歌は、疲弊したハンター達の気持ちを癒し、トロールたちを恐慌状態に陥らせた。
混乱し、判断能力を失ったトロール達は、ただ闇雲に腕を振り回す。
「では‥‥参ります‥‥獅子紅蓮剣!」
「牙龍拳究極奥義‥‥氷龍吼拳!」
ヒカルのロングソードが深々とトロールを切り裂き、蒼龍のオーラを凝縮した拳は青く輝き、その渾身の一撃を受けたトロールは瞬時に凍りつく。
「疾風よりも速き汝、神鉄よりも強き汝、光と闇を従えし汝、雄々しく偉大なりし魔神の皇よ! 勇気ある誓約の下、我が呼び掛けに応え邪悪を滅する裁きをココに。ファイアーブラスター!!!」
リンフーの身体中につけたきらびやかな装飾品が魔力を増幅して光り輝き、超高熱エネルギーが熱線となってトロールを燃やし尽くす。
「‥‥光と闇の狭間に眠りし我が眷属よ、その存在を光と変え、立ちはだかる敵を撃ち滅ぼさん‥‥ルナフレア!」
セルムが種族魔法を唱えると、光の粒子がトロールの身体に染み込み、次の瞬間跡形もなく消え去る。
全てを光へと変えたのだ。
「覚悟しなさい!」
トールが最後のトロールに渾身の一撃を与える。
深々と突き刺さった大剣は、見事にトロールを討ち取った。
●エピローグ
「世話になったのぅ‥‥今度は平和な時に遊びに来るが良い」
全てのトロールを倒し終え、ハンター達に水蓮は深く頭を下げる。
「転移門が復活してよかった。どうやら本州は無事だったようだな!」
トロールたちを全て殲滅した瞬間、死国の転移門が輝き、本州から日出国のモンスターハンター達が援軍に現れたのだ。
無事だった門下生を発見し、蒼龍も破顔する。
「あらあら、そんなに急いで食べなくとも大丈夫ですよ? まだまだ沢山ありますからね」
ヒカルは得意の料理をここでも披露し、憔悴しきった死国の避難民に身体の温まるお粥を振舞う。
「‥‥こ、この小さな粒‥‥食べられるんですか?」
セルムは初めて見る日出国の主食・米を目にし、興味深げに観察している。
「え? この国にはたくさん神様がいらっしゃるんですか?」
アイリは温存しておいた魔力をフルに使って避難民を治療しながら、驚きの事実に目を丸くしている。
「面倒くさいな‥‥」
例によって例のごとく呟くスーの膝の上には、意識を失ったトールが眠っていた。
神々の力は強力だが、その分、後の反動も大きい。
普段のように魔力による使用だけならトールの類稀なる能力内で反動も処理出来ていたが、今回はあれほど肉体も行使したのだ。
生身の身体には負荷が大きすぎた。
意識のないトールを、スーは内心不安に思いながらその額に冷たいタオルを乗せてやる。
そしてリンフーは一本に編みこんだ豊かな金髪を風になびかせながら、遠く、西方大陸を見つめていた。
「嵐が来るね‥‥厄介な嵐が」
虎人の本能か、それともその身体の内に眠る魔人族との契約による物か。
どちらにせよ、このままではすまない、何か大きな災いが迫っていることを感じ取ってた。