母とママとおかあさん☆アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/16〜05/18
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●本文
ボクのおかーさんは三人いるの。
一人は僕を生んでくれたおかーさん。
三人の中で、一番年上なのです。
ぽっちゃりとしていて、美人じゃないけれど、お料理が上手なのです。
二人目のママは、おとーさんのいもーとで、ボクのほんとのママじゃないの。
でも美人でお洒落でやさしくて、大好き☆
三人目のお母さんは、近所に住んでいるの。
編み物が上手で、良く公園で鳩に餌をあげているの。
ずっと昔に、ボクと同じぐらいの子を亡くしちゃったんだって。
亡くすってなんだろう?
落っことしちゃったのかな?
よくわかんなかったけど、お母さんはボクが「お母さん」って呼ぶととっても喜ぶから、僕はそう呼んでいるの。
でね?
ボク先生に教わったの。
もうすぐ、『母の日』ってあるんでしょ?
母の日には日ごろの感謝を込めて、おかーさんにプレゼントを贈るんだって!
ボクね、三人とも大好きだから、三人にプレゼントを贈りたいの。
どんなプレゼントが喜ぶかな?
ねえ、おねーちゃん達、ボクと一緒に考えて?
☆舞台『母とママとおかあさん』出演者募集☆
『母とママとおかあさん』出演者を募集します。
母の日感謝デーイベントなので、物語の最後はハッピーエンドで。
お母さんは三名以上増やしてもOKですし、主人公の少年は一人っ子じゃなくて実は兄妹いっぱいとかでもOKです☆
●リプレイ本文
●母の日はおかーさん達を大事にするの☆
「ボクの名前は桜花といーます。ボクにはね、ママが三人いるの」
舞台の上で、まだまだ幼い少女の桜花(美森翡翠(fa1521)が客席に向かって挨拶をする。
「おーい、桜花のママ迎えに着たわよ? ボクの耳はとってもいいの」
そうゆう桜花のお友達は、なぜかマッチョなオカマ人形(あずさ&お兄さん(fa2132)のお兄さん)。
「いつも教えてくれてありがとう。ボク、おにーさんみたいな強い人になりたいな」
おにーさんのキルト地のほっぺにちゅとキスをして、桜花は舞台袖に去ってゆく。
どうやら彼女が女の子であるにもかかわらず『ボク』といっているのは、おにーさんの影響らしい。
場面が変わり、桜花と彼女を迎えに来た桜花の叔母であおいママ(白井 木槿(fa1689))と呼ばれている彼女と手を繋ぎ、二人が舞台に上がってくる。
ママは少々たれ目がちで、顔立ち自体はそれほど美しい女性ではなかったが、流行のファッションと緩く全体にウェーブをかけた大人びた髪型に加え、明るく朗らかな雰囲気が彼女を周囲に美人として映し出していた。
「ボクね、今日ね、母の日って教わったの。お母さんに良いことをする日なの」
桜花は今日幼稚園で習ったことを一生懸命ママに伝える。
「そっかー。ほのかおかーさんに良いことをしてあげたら、きっと喜ぶんだよ。
っと、花屋によってもいいかな?」
ママの言葉に桜花は頷き、二人は花屋へと入ってゆく。
そこには、桜花の姉で二卵性双生児である鈴(姫月乃・瑞羽(fa3691))と蘭(姫乃 唯(fa1463))が中学校のブレザーを着てカーネーションの花束を抱えていた。
「あれ? キミもカーネーションを買いに来たのか?」
店長の樹(伊達 斎(fa1414))がママに気づいて笑いかける。
ママはこの店でアルバイトをしているのだ。
そして同時に、樹とは恋人同士でもある。
「‥‥ううん、ちょっと、顔が見たくなったんだよ」
ママは何かを言いかけて、でもやっぱり言い出せずに曖昧に笑う。
母の日は二人が付き合い始めた記念日なのだ。
出来ればその日にほのかおかーさんに樹を紹介したかったけれど、桜花と双子を残して外出するわけには行かない。
三人の本当の母親であるほのかおかーさん(都路帆乃香(fa1013))は身体が弱くて入院していて、だからママがずっと三人の面倒を見ている。
自分の手を握って見上げるあどけない桜花の手をそっと握り締め、樹と少し話をしてから鈴と蘭と一緒に桜花とママは家へと帰ってゆく。
●相談なの☆
「んとね、ボクね、おかーさんたちにプレゼントをしたいの」
夜。
鈴の部屋で桜花は母の日のことを相談する。
姉二人と、なぜか二階の窓を伝って入ってきたお隣に住むあずさ(あずさ&お兄さん(fa2132) のあずさ)が、うんうんと桜花の話に耳を傾ける。
あずさと鈴と蘭は幼馴染で、いつも三人でいることが多い。
「おかーさんたち?」
あずさがツインテールを揺らして首を傾げる。
普通、おかーさんは一人のはずなのだ。
「うん。ボクのおかーさんは三人いるの。ほのかお母さんと、ママと、ゆくるおかあさん」
桜花は嬉しそうに話す。
ほのかお母さんは桜花を生んだ本当のお母さんで、今は入院している。
そして、ママは叔母のあおい。
でも、ゆくるおかあさんとはだれだろう?
「公園の‥‥人?」
鈴が気づいて補足すると、桜花は大きく頷く。
鈴と蘭が桜花を公園に連れて行ってあげたとき、ベンチで鳩に餌をあげている婦人と出会ったのだ。
桜花は確かその時「ゆくるおかあさん」と呼んでいた。
「そっか、桜花ちゃんはおかあさんが三人もいるんだ。大変だね〜」
良くわからないけれど、桜花が楽しそうだからあずさも細かいことは気にせずに相談に乗る。
「ねねっ? 三人にプレゼントを送るなら、世界一周旅行なんてどうかな?」
「お金‥‥ないと思います」
「じゃあ、町内一周旅行!」
「却下だよ」
あすざは鈴と蘭に両脇から突っ込み&却下を食らってしゅーんと落ち込む。
「ボクも旅行いってみたいな」
しょんぼりするあずさの膝の上に乗っかって、桜花は足をぷらぷらさせる。
「旅行はあたし達にはどうしても無理だけど、カーネーションの一輪挿しとかはどうかな?」
蘭が先ほど花屋で購入し、母の日までに枯れないように花瓶に生けておいたカーネーションの花束の中から、一本取り出して桜花に手渡す。
双子も母の日に何か出来ないかと思い、少ないお小遣いを一生懸命貯めてこの花束を購入したのだ。
「これ、くれるの? ありがとう!」
「お母さんが大事っていうのは‥‥みんな一緒ですものね」
蘭からもらったカーネーションを嬉しそうに見つめる桜花の頭を撫でながら、鈴も頷く。
「一輪挿しをほのかお母さんにあげるとして、あおいさんにはなにをプレゼントしようか?」
「そうね‥‥お休み、とかはどうかな?」
尋ねる蘭に、鈴は答える。
いつもいつもあおいは双子と桜花の面倒を見てくれているのだ。
たまには、ゆっくり休んでもらいたい。
「でも、それだと食事とかはどうしよう?」
中学生になったばかりで、お料理なんてからっきしの蘭はうーんと悩む。
「よっし! そうゆうことならあずさにお任せだよ♪ 明日は一緒にお料理作ってあげるんだよ」
桜花を抱っこしたまま、あずさがどーんと請け負う。
「あずささん‥‥お料理得意だったのですか?」
今まで一度もあずさがお料理をしているところを見たことがない鈴は、驚きに目を見開く。
「ううん、ぜんぜん。でもさ? もう中学生なんだからきっと出来るんだよ」
「うん、そうだよね。あたし達も、もう中学生になったんだから、お家の事も頑張らないとね」
あずさの無意味な自信に力づけられて、蘭もやる気満々☆
「ボクも一生懸命頑張るの」
「あとは‥‥ゆくるおかあさんにはなにをおくるかですね?」
「それはね、手紙を書くといいとおもうんだよ」
鈴がいうと、すぐに蘭が提案。
「おてがみ?」
「いい案だねっ。可愛い桜花さんから手紙をもらったら、きっと喜ぶんだよ」
ぐりぐりぐり。
膝の上の桜花をあずさは撫で回す。
「でもボク、あんまり上手くかけないの」
「大丈夫です。私達が教えますよ」
「決まりだね」
三人の優しいお姉ちゃんに文字を教わりながら、
「ほのかママだけじゃなくて、ゆくるお母さんと、あおいママにもお手紙あげる」
桜花は小さな手で一生懸命三人へのお手紙を書き始める。
●大変っ、お手紙が飛んじゃったのっ!
「おかあさんに知らせてくるねー」
そういって、一生懸命書き上げた手紙をもって桜花は部屋をかけてゆく。
でもその時、運命の悪戯が。
「うきゃっ?!」
舞台の上に突風が吹き、桜花の手から手紙が飛びだす。
「うわっ、バラバラだねっ、なくさないようにしなくっちゃだよ」
双子とあずさが桜花に駆け寄り、封筒から飛び出してバラバラになってしまった三つの手紙を集めて封筒に入れなおす。
「せっかく書いたのに‥‥無くなってしまわなくて良かったです」
無事だった手紙に鈴もほっとする。
けれど四人は気づかなかったのだ。
三人のお母さんにあてた手紙の中身が、バラバラに入れ替わってしまったことに。
●家事はてんやわんやで超大変っ☆
「母の日だからママ役お休みね。お姉ちゃんたちがてつだってくれるって」
お手紙を渡しながら、桜花はママにお休みをプレゼントする。
「嬉しいけど、でも、ご飯の用意とかしなくちゃだよ?」
ママは驚いた様子で、桜花に気持ちだけで十分だと言おうとする。
けれど、それを遮ってあずさと双子が言い切った。
「大丈夫っ、それは私達に任せてなんだよ」
「あたし達は大丈夫だから、店長サンとゆっくりして来て!」
「桜花さんのことも‥‥ちゃんと面倒を見ますから」
三人に押し切られて、ママは「それじゃあ、明日はお休みをもらうね? ありがとうだよ」と微笑んだ。
次の日。
ママがお洒落をして家を出るのを見送って、鈴と蘭、そしてあずさは腕まくり。
「中学生になったんだから、家の手伝いもしっかりやらなといけないよね‥‥蘭ちゃん?」
どきどきと、お料理の本をめくっていた鈴は、蘭の行動に首を傾げる。
蘭はなぜか食器用洗剤を持っているのだ。
もう食器は綺麗に洗ってあるし、他に洗うものなんてないはずなのだが‥‥。
「あ、あれ? お米を炊く時って、水はどの位入れるんだったっけ?」
そんな鈴の目線に気づかずに、蘭は食器用洗剤をお米の中に入れようとする。
舞台を見に来ていた会場のお母様方から『洗剤なんて入れちゃ駄目よー』と声が上がった。
「蘭ちゃん‥‥洗剤はだめだって、何処からか声が聞こえたの。だから入れちゃ駄目です」
鈴がアドリブをきかせて蘭をとめる。
「そっか、洗剤で洗うんじゃないんだね。水は多分これくらいで‥‥えーと?」
危うげな手付きで何とかお米を炊く準備を終えると、その隣ではあずさがジャガイモを前に苦戦していた。
「えっと‥‥これ、次どうするのっ? やったことないからわかんないよっ」
きいっと叫びそうになりながら、三人はそれでも一生懸命ご飯の準備を進める。
「ゆくるお母さん、これ、受け取って」
近所の公園で、今日も鳩にメロンパンをあげていたゆくるお母さん(湯ノ花 ゆくる(fa0640))は、桜花に手渡されたカーネーションと手紙に驚く。
「これ‥‥わたしに‥‥?」
おっかなびっくり、封筒を開く。
そこには、桜花が本当のお母さんに当てた手紙が入っていた。
風で飛んでしまったあの時に、中身が入れ違ってしまったのだ。
(「もしもゆくるの子供が生きていれば‥‥やっぱりこんな風に自分にプレゼントを渡してくれたのかな‥‥」)
生まれてまもなく亡くなってしまって、生きていれば丁度桜花と同じくらいの一人娘を思い出す。
子供部屋を作り、女の子が大好きなぬいぐるみも一杯取り揃え、亡くしてしまった娘を思っても決して生き返ることはなく、そして夫は二度と子供の産めない身体になってしまったゆくるを責めて家を出て行ってしまった。
それからずっと、一人ぼっちで鳩に餌をあげて生きてきたゆくるが最近笑顔を取り戻し始めたのは、全部桜花のおかげだ。
桜花が、ゆくるをおかーさんと呼び、笑いかけられるたびに、ゆくるの心に明かりが灯った。
全部、桜花のお陰だ。
それなのに、いままたこうして本当の母親ではない自分にまで桜花はプレゼントをくれた。
「‥‥ありが‥‥とう‥‥」
感極まって泣き出すゆくるに、桜花は「どっかいたいの? だいじょうぶ?」と心配そうにする。
そんな桜花に泣き笑いで大丈夫だといい、ぎゅうっとゆくるは桜花を抱きしめた。
「いつも心配かけてごめんね、最近は大分調子が良いのよ」
母の日ぐらいはと仮退院してきたほのかお母さんは、花屋の店先で桜花を抱き上げ、出迎えたあおいに苦笑する。
何故花屋にいるかといえば、家事を手伝おうとして厨房を追い出されたからだ。
『いいのいいの、お母さんはじっとしてて!』
自宅に戻り、早速家事をしようとしたほのかを、双子とあずさが仁王立ちで拒否したのだ。
三人の手には所々絆創膏が貼られており、ほのかは正直心配でたまらなかった。
でも厨房をチラッと覗くとカレーの良い香りが漂っていて、もう殆ど完成しているようだったから、桜花の手を引いて切れていた醤油の買い出しに来たのだ。
そしてその途中であおいのバイト先に立ち寄った。
「いつもお世話になっております」
樹が緊張気味にほのかに挨拶をする。
「こちらこそ、あおいさんにお世話になりっぱなしで。二人とも幸せになってくださいね」
ほんのりと微笑むほのかに、樹は赤いカーネーションを手渡す。
そして桜花も、
「ほのかお母さん、プレゼントなの」
カーネーションと手紙を手渡した。
「まあまあ、二人ともありがとう」
カーネーションの花束と、桜花の一厘を受け取り、そして手紙を開く。
そこには、ゆくるお母さんに当てた手紙が書かれていた。
「ゆくるお母さんは、いま、どこにいるのかな?」
手紙の内容から、ゆくるのことを桜花が母親のように慕っていることを知り、体が弱くて側にいられないほのかはちょっぴり寂しく思いながら尋ねる。
「公園なの。いつもそこにいるの」
「そう。なら、今日はゆくるお母さんにもお家に来てもらいましょう」
みんなでパーティーをすれば楽しいと提案して、桜花も元気に頷く。
「君には、これを」
そして樹はピンクのカーネーションの花束をあおいにさしだした。
「こ、これっ!」
その花束の意味に気が付いて、あおいは真っ赤になってうつむく。
「ママ、どうしたの?」
小首を傾げる桜花に、花言葉の意味をこっそり教える。
それは、『あなたを熱愛します』。
熱愛の意味がわからない桜花に、「とっても大好きってことだよ」といって、再び真っ赤になってうつむいた。
●みんなでお食事☆
「これ、美味しいんだよ」
ほのかおかーさんにゆくるお母さん。そしてあおいママ。
三人を中心に、双子とあずさ、樹さんと桜花がテーブルに座ってカレーを食べる。
双子とあずさが作ったカレーはちょっぴりジャガイモが不恰好だったりニンジンが硬かったりしたけれど、愛情たっぷりで美味しかった。
「きょうは、本当にありがとう」
三人のお母さんは、子供達の優しさに再び涙ぐむ。
高価なプレゼントよりも、桜花や鈴や蘭、それにあずさがやさしい子に育ってくれていることが何よりも嬉しい。
母の日の、最高のプレゼントだった。