WonderTalk〜天空の塔2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 06/11〜06/15

●本文

 はるか遠く続く青空に、『WonderTalk』のロゴが映し出される。
 それは中世ファンタジー世界カラファンでの冒険を描く深夜特撮番組『WonderTalk』のオープニング画面。
 物語の中ではモンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っている。
 そして今日の舞台も天空の塔。
 商業の街としても知られるレザラディカのギルドの依頼を受け、先日、モンスターハンター達は塔の下層部分を調べたのだ。
 今回の探索はその続きとなる。
 幸い、前回の調査の成果か、塔の周囲を渦巻いていた強風は綺麗に消えていた。
 ハンター達は気を引き締めて、塔の内部へと再び足を踏み入れるのだった。


☆Wonder Talk出演者募集☆

 ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜天空の塔〜』出演者募集です。
 剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、天空の塔を調べてください。
 

☆モンスター情報☆
『闇精霊』
 塔を守るように、数体、目撃されています。
 正確な能力は不明。
 召喚士の呼び声に答え、協力してくれる精霊達とは違う、邪悪な存在です。
 魔法に長け、また、耐性もあります。
 主に、闇魔法を使用してきます。
 闇魔法はまだまだ解明されていない点も多いのですが、確認されている魔法は以下のとおりです。

『ダークミスト』
 黒い霧を作り出し、様々な症状を引き起こします。
 幻覚、誘惑、焦りなど、精神面に主に働きかけるようです。

『ダークネス&ダークネス』
 闇精霊数体による重複魔法です。
 闇の光が無数の鋭い刃となり、敵に襲い掛かります。

『ダークブレイク』
 即死魔法です。
 死亡確率は使用者の魔力と、かけられた相手の魔力耐性によります。
 この魔法で死亡した場合、高位のクレリックによる蘇生をすぐさま行うことにより蘇生が可能です。
 
 また、闇精霊以外のモンスター出現の可能性もあります。


☆地域情報☆
 今回の舞台は、レザラディカの西方にある『天空の塔』
 レザラディカから天空の塔までは徒歩で移動します。
 魔力が乱れ、転移門(瞬間移動装置)が上手く作動しません。
 ジェルダラ渓谷の手前に天空の塔は出現した為、渓谷を越える必要はありません。
 そして天空の塔の周囲には激しい風が吹き荒れていましたが、前回の探索により今回は風は吹いていないようです。
 

☆選べる職業☆
 戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
 僧侶 :治癒魔法を得意としています。
 魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
 踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
 召喚士:精霊を召喚し、使役します。
 吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。 
 シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
 錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。

 なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
 今後も職業は順次増えてゆきます。
 また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
 

☆テンプレート☆
 WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。

【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
   〜台詞例〜  
  【挨拶】「伝説は、本当なのだろうか‥‥?」
  【戦闘開始】「厄介だね、ほんとに」
  【必殺技使用時】「もう、許さない!!」
  【仲間死亡時】「ねぇ‥‥? 嘘でしょう? 嘘だといって!」
 *台詞例はあくまで例です。なので色々台詞や設定追加推奨です。
           
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらどんどんこちらへ明記ください。

●今回の参加者

 fa0190 ベルシード(15歳・♀・狐)
 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)

●リプレイ本文

●始まりは挨拶で
「あんたらも天空の塔の探索に来たんだ? 俺は錬金術師のショウってんだ、宜しく」
 粋でいなせな錬金術師・ショウ(志羽翔流(fa0422))が、ぴっと人差し指と中指をそろえて頭の横で振る。
「うん。ボクもキミ達と一緒。フェイトって言うんだよ。ねねっ、その眼鏡格好いいね。僕にもかけさせて?」
 そんなショウの眼鏡に、深紅のライトアーマーを纏ったフェイト(ベルシード(fa0190))は速攻で手を伸ばす。
「あら、フェイト様は眼鏡がお好きなんですか? それなら、あたしの眼鏡も貸しますよ」
 眼鏡を外し、近眼でとろんと焦点の合わなくなった瞳でヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))はフェイトに眼鏡を差し出す。
「わわっ、ありがとう♪ ボク珍しい物が大好きなんだよ」
 わくわくとヒカルとショウの眼鏡を弄りつつ、フェイトはご機嫌。
「眼鏡って言えば、セルムさんがいないね?」
 虎人族の魔法使い・リンフー(MAKOTO(fa0295))は辺りを見回す。
 リンフーと同じく魔法使いのセルム(相沢 セナ(fa2478))はそれはレンズの分厚い眼鏡をかけているのだ。
 フェイトが会ったら、とても喜びそうなのだが‥‥。
「あら? 噂をすれば影ですわよ」
 八百万の神々に使えることの出来るトール(トール・エル(fa0406))は、血を思わせる妖艶なルージュで嫣然と微笑む。
 その目線には、噂の黒翼の魔術師セルムとドラゴンの翼を持つ見知らぬ青年が佇んでいた。
「すみません遅くなりました。ちょっと王立図書館に寄っていたものですから」
 セルムは詫びて、眼鏡を指で押さえる。
「うわー、ほんとに眼鏡だっ。ねね、触らせて!」
 フェイトはセルムの答えを待たずにぴとっと眼鏡を触って満足げに笑う。
 相当行動的なようだ。
「そちらのイケメンは?」
 ちょっぴり困惑気味のセルムに、トールが助け舟を出す。
「セルムさんとは、王立図書館で会いましてね。私も今回の探索にご一緒することになりました。ノアと申します。未熟なる修行中の身ですが、よろしく頼みます」
 竜神官のノアは礼儀正しく深礼をする。
「ケーナ、体調が悪いのか?」
 そしてそんなやり取りの横で、シーフのフィオナが幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))の表情が硬いのに気づき、声をかける。
「‥‥頑張る」
 強張った表情のまま、ケーナは頷く。
 天空の塔を調べた時に、聞こえてきた謎の声。
 昔の記憶が殆どないケーナに、何か関係があることなのだろうか?
「みんな揃ったね? これが前回調べた下層フロアのマップ。んじゃあ行こ〜」
 リンフーが羊皮紙に書いておいた天空の塔の地図を振った。 
 

●天空の塔
「この先に、聖地が‥‥。果たして何が呼んでいるのか‥‥」
 ノアは初めて見る天空の塔を見上げ、胸元に下げた竜神官の証である竜の聖印を握り締める。
 天高く聳え、蒼い剣を思わせるその塔は、無言の威圧感を醸し出す。
「ねぇケーナさん。闇精霊って、魂も消滅させることができますの?」
 トールがケーナに尋ねる。
 このメンバーの内、一番精霊に詳しいのはケーナだ。
「闇と夜違う。夜の精霊は安らぎを与えるもの、闇は精霊の敵」
 ケーナの胸に下げた水晶に灯る精霊達が、心なしか怯えているように見える。
「この塔にいるのが闇の精霊なら‥‥」
 セルムは図書館で調べてきた情報と、自ら作り上げた独自のモンスター辞典の情報を照らし合わせ、その事実が示すものに意識を向ける。
(「このまま天空大陸を目指していいものなのか‥‥まさか『その時』が近づいているというのでしょうか? いやしかし‥‥」)
 分厚い眼鏡を抑え、セルムは塔の扉を押し開いた。


●魔法陣
「わわっ、あれ綺麗なんだよ!」
 フェイトは塔に入り、前回発見することに成功した魔法陣をみて、言うが早いかいきなりそこに飛び込んだ。
「あらあら、あわてんぼさんですね?」
 そんなフェイトにおっとり気味のヒカルは口元を手で押さえる。
 これは、もしかしたら常にフェイトの側にいて守ってあげないと、とても危険かもしれない。
「度胸あるな。よし、いくか」
 お手製の爆弾をいつでも使えるように腰に下げ、ショウもその後に続く。
「やはり、この魔法陣を使うしか上へ至る道はないようですね」
「うむ」
 翼を持つセルムとノアが上空に飛翔してみるが、一向に上へと至る気配がない。
 見えない壁に阻まれ、ある一定までしか飛翔できないのだ。
 フェイトを追い、次々と魔法陣へ足を踏み入れる。


●闇精霊
「ここまでのフロアはこの間ので完璧、でもココからは未知数だよ」
 今まで使用していた地図をしまい、リンフーは魔法陣から新たなフロアへと降り立つ。
 そしてハンター達全員がが魔法陣を抜けた瞬間、その声が脳裏に響いた。

 ―― ‥‥逃げて‥‥――

「何処からともなく感じるこの視線は‥‥? それにこの声は‥‥」
 セルムが周囲を警戒しつつディサーチを唱え、罠のある場所がほんのりと光る。
「またあの声! ねえ、貴方は誰〜?」
 リンフーが必死に虎耳を澄まし、謎の声に尋ねる。
 だが、声は答えない。
「確かに‥‥これは怪しいですね」
 前回の調査結果は既に熟読済みのノアは、謎の声にも驚かない。
 冷静に状況を判断しようと試み、そして事前に皆に即死魔法への抵抗力を高める祝福の魔法を唱え、敵からの奇襲に備える。
「キミ、どこにいるの?」
 だがフェイトは違った。
 まだ若く、悪戯好きなフェイトは、罠も敵も関係なく謎の声を探そうとそのまま全力で駆け出していく。
「駄目です、下手に動くと危険です!」
 ヒカルが咄嗟にその腕を掴んで止めようとするが、間に合わない。
 奥へと駆けて行くフェイトについてゆくのが精一杯だ。
「来る!」
 ケーナが精霊のざわめきを感じ取って叫ぶ。
「二人とも戻れ‥‥っうわっ!」

 ドンッ!

 フェイトとヒカルに駆け寄ろうとしたショウが叫ぶ。
「ごめん、でもこれしか思いつかなかったんだ」
 咄嗟に攻撃呪文を発動したリンフーが詫びる。
 ショウがいままさに踏もうとし、軽く爆ぜたその床には、古の文字が刻まれ、セルムのディサーチによりほんのりと光っていた。
 罠だ。
「いや、助かったよ。あんがとさん。だが、ゆっくり礼をしている暇はなさそうだ。敵が来なすったぜ!」
 ショウが見据えるその先には、黒衣を纏い、闇色に輝く精霊達が浮かんでいた。
  

●ハンターVS闇精霊
『お客様いっぱいね』
『楽しいわ‥‥楽しいわ‥‥』
 クスクスと笑いながら、闇精霊達は攻撃を仕掛けてくる。
「ボク、怖いよっ」
 ヒカルに庇われながら、みんなとかなり離れてしまっているフェイトは剣を握りながら涙ぐむ。
 向こう見ずで強気で、剣の腕は若いわりにそこそこの彼女だが、その分魔法抵抗力は弱い。
 闇精霊の撒き散らす負の感情に当てられたのだ。
「大丈夫です。フェイト様は、あたしが守ります」
 ロングソードを構え、ヒカルは一番近い闇精霊にその切っ先を向ける。
『ふふふっ、倒せるの? そーらっ!』
 そんなヒカルを嘲笑うかのように、闇精霊は力を振るう。
 周囲を黒い霧が立ち込め、ヒカルを、フェイトを、そしてハンター達を包み込んでゆく。

 ‥‥その霧に触れた瞬間、思い出したくない過去が脳裏に蘇る。
 たとえ、本人が忘れていても。

 誰にでも、触れられたくない過去というものはある。
 ましてやハンターとなれば、常に死や不幸と隣り合わせだ。
 それぞれの記憶の中に否応もなく蘇るその記憶は、ハンター達の精神を覆いに疲弊させた。
 クスクスと闇精霊は嗤う。
「目には目を歯には歯をですわよ。おっほっほ! 下級種族がでしゃばるなんてふてぶてしいですわよ」
 伊邪那美に仕えたトールは、闇魔法に対しての抵抗力が格段に上がっていた。
 そして嫌な過去に負けるほど弱い精神力も持ち合わせていない。
「貴方達、正気にお戻りなさいませ!」
 すぱーん!
 手近にいたセルムとショウ、そしてノアの頬を次々に引っ叩く。
 流石に幼いケーナと女性のフィオナとリンフーには手を出さないが、叩かれた男性陣の目に正気が戻る。
「‥‥命は大切に、攻撃は計画的にいきますよ」
 軽く頭を振り、脳裏にこびりついた過去の記憶を討ち払い、ノアは歌を歌う。
 神々しいその歌は、聖戦の歌。
 神聖魔力を込めたその歌声は、仲間達の士気を高め、体力を回復してゆく。
「随分とおいたが過ぎましたね? ‥‥イレイズ!」
 冷静なセルムが、その黒い瞳に冷たい怒りを称え、闇精霊の魔力を吸収し、ダークミストの効果を消してゆく。
 だが、闇精霊は再びクスクスと笑い、セルムの魔法をものともせずに数匹が輪を描き呪文を唱えだした。
 ノアの歌声に正気を取り戻したリンフーが四肢を飾る魔力制御装置を発動させて攻撃魔法の限りを尽くしても全て無効にされてゆく。
「嘘っ、効いてない?! なんてレジスト!」
 リンフーが叫び、闇精霊の術に対抗すべく再び呪文を唱える。
『ダーク&ダークネス!』
 だがそれよりも早く、闇精霊の魔法が発動!
 四方八方に無数の闇の刃が飛び散り、ハンター達を貫いてゆく。
「重複魔法?! 世界を存続させる精霊達よ、私と仲間達に闇に負けない力を貸して!」
 無理やり思い出さされた過去の記憶にズキズキと痛む頭を抑え、ケーナはそれでも懸命に精霊達に仲間の加護を願う。
「皆、ちょいとだけ眩しくなるから気をつけな。いくぜ!」
 貫かれた足を根性で立たせ、ショウは腰につけた爆弾を投げつける。
 眩い閃光が迸り、闇精霊達は一瞬視界を失った。
「あらあら、手がお留守ですよ? 秘剣・霞斬り!」
 ザシュリ。
 口調こそおっとりしているものの、ヒカルの剣に曇りはない。
 高速の抜刀術でカマイタチを作り出し、一番手近にいた闇精霊を瞬時に切り裂いた。
『!!!』
 闇精霊達にも仲間意識があるのだろうか。
 斬られた仲間を抱きかかえ―― ヒカルを闇の魔法が貫いた。

『ダークブレイク!』

「っ?!」
 闇精霊の即死魔法。
 それを、至近距離でまともに受けたヒカルはぷつりと糸の切れたマリオネットのように床に転がった。
「そこ、寝たふりしてんじゃねぇ‥‥って、ま、まさか‥‥嘘だろ‥‥?」
 ショウも爆弾を構えたまま唖然とする。
「安心なさい。ヒカルさんは無事でしてよ」
 思考停止を起こしそうなハンター達に、けれどトールは嫣然と微笑む。
 その手の平には、柔らかく、緑色に光る何かが浮かんでいる。
「まさか、それは‥‥!」
「ええ、そう。そのまさかよ。これはヒカルさんの魂ですわ。
 敵が即死魔法を唱えるならば、こちらはそれが発動する前に魂を抜けば済むこと。
 抜け殻の肉体に即死魔法をかけても、なんら意味などありませんものね。
 おーっほっほっほっほっほ!」
 トールはここぞとばかりに高笑いをする。
 その笑いのなんと頼もしいことか。
「レーザーもボムも駄目、他は威力が足りない、魔神系は日が悪い‥‥となればアレしかないか。キミ、僕に協力して!」
 リンフーがフェイトに呼びかけ、目と目で合図を取る。
「羽ばたけ光の翼、飛翔せよ神なる鳳、万物を突き抜け越えてゆけ‥‥オウルフェニックス!」
「ボクだって負けてらんないんだよっ、星へと至る極光の柱!」
 リンフーの身体から光の不死鳥が飛び出し闇精霊を浄化し、そしてフェイトの魔法剣に込められた魔力が光に変わり浄化された闇精霊を吸収していった。


●蘇る記憶
「怪我したんだったらこれ飲め。あっという間に直っちまうぜ」
 ショウは調合した治療薬を皆に配る。
 子供でも飲みやすいように甘めに味付けされたそれは、見る見るうちに傷を回復してゆく。
「さ、これで大丈夫ですわよ」
「ありがとうございます」
 トールは抜き取ったヒカルの魂を再びその身体に戻し、魂となっても周囲の状況は見えていたヒカルはほっとして礼を言う。

 ―― ‥‥どうか‥‥ここから離れて‥‥娘をつれて‥‥逃げて‥‥――

 皆がゆっくりと傷を癒すその時、再び謎の声が響き渡った。
 そしてケーナの瞳から涙が溢れた。
「‥‥過去見せられた‥‥。ホムンクルスと一緒に追いかけてきたの‥‥闇精霊だったんだ‥‥」
「記憶が戻りましたの?」
 ケーナの呟きに、トールはハンカチを差し出し、その顔を覗きこむ。
「うん‥‥全部じゃないけれど‥‥それでも、逃げた時の恐怖思い出した。一緒に逃げた子がいたはずなの‥‥テラノーファ」
「テラノーファ。『太陽の子』という意味ですね」
 ノアが興味深げに頷く。
 神官であるがゆえに、古代語全般と伝承関係には詳しい。
「テラが、言ってたの。『僕は仲間とここに残るよ。けれど僕の名の元に火の精霊は君に力を貸すだろう。君が風の娘でも僕の大切な友達だから』って‥‥でも逃げる前の事はまだ‥‥」
「この声の主については、思い当たるかな?」
 リンフーの問いに、ケーナは首を振る。
「これは‥‥やはり『深淵の魔獣使い』と呼ばれる者が仕向けたのでしょうね‥‥」
 ケーナの話しを聞きながら、上層部への道を探していたセルムが呟く。
「それは、あの伝説のことですか?」
 ノアがすぐに反応を返す。
 その額には、薄っすらと冷や汗が滲む。
「王立図書館で調べてきたんです。天空の塔について。そして天空大陸についても」
 人差し指で眼鏡を押し上げるセルムの表情は硬い。
「深遠の魔獣使いって何かな?」
 フィオナが再び瞳を輝かせた時だった。
 眩いばかりの光がハンター達を包み込む。

 ―― ‥‥どうか、逃げて‥‥ドラゴンが‥‥闇の‥‥――

 謎の声が再び脳裏に響き、気がつくとハンター達は光の渦と共に塔の外へと放出されていたのだった。