WonderTalk〜封印3〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3.6万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
08/31〜09/04
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●本文
はるか遠く続く青空に、『WonderTalk』のロゴが映し出される。
それは中世ファンタジー世界カラファンでの冒険を描く深夜特撮番組『WonderTalk』のオープニング画面だ。
物語の中ではモンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っている。
「ちょっとちょっと、この間は随分な情報を提供してくれましたわね!」
ばんっ!
ハンターの一人がツインテールを振り乱し、眠たげな受付嬢の座るテーブルを叩く。
つい先日、天空の塔に封印されている塔の管理者の封印を解くべく、ハンター達は突如輝きだしたシェーレンティーラ海へと赴いたのだが、残念ながら封印とは関係がなかったのだ。
怒れるハンター達にけれど受付嬢は余裕綽々。
「あらん? いつもいつも真実とは限らないのは、ハンターの常じゃなぁい?
それに、最初からいってあったでしょ。天空の塔も大陸も、全ては伝説と思われてきたもの。正確な情報なんてわからないわよぉん。あふぅ」
例によって例のごとくあふぅと欠伸を漏らして言い切った。
その開き直る態度にさらにハンターは激怒するが、側にいた仲間が首を振る。
(「この人に、なにを言っても無駄ですってば‥‥」)
そう、この受付嬢とまともに話そうとするともういい加減何度目かわからない脱力感ばかりがハンター達を襲うのだ。
「‥‥今度の情報は確かなのでしょうね?」
気を取り直して問うハンターに、受付嬢は眠たげに笑う。
「んー? たぶん? さくっと言ってきてもらえばわかるっぽく」
「ああああ、もうもうっ! わかりましたわよ、行けばいいんでしょう、行けばっ!」
「落ち着いてください、わたしの調べた情報でも時の眠る遺跡に封印がある可能性は高いんです。一緒に行きましょうっ」
普段冷静な眼鏡の青年が仲間のあまりのブチ切れ振りに慌てて止めに入る。
王立図書館で調べた情報は膨大ながら確実といえる物は少なく、けれど時の眠る遺跡に地下迷宮が存在した可能性は高いのだ。
「みんなで、がんばるんだよ」
ハンターのうちの一人が鞄を抱きしめて頷く。
こうして、ハンター達は封印を解くべく時の眠る遺跡の地下迷宮へと調査に赴くのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜封印3〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、封印について調べてください。
☆モンスター情報☆
『ゾンビ』
迷宮には必ずといっていいほどいるお約束なモンスター。
脅威の体力と攻撃力を誇りますが、動きは鈍く、また、知能も低いです。
『スケルトン』
ゾンビをさらに強力にしたモンスターで、人型の骨の姿をしています。
知能はゾンビよりも高く、また、好戦的です。
説得や対話は不可能でしょう。
なお、ゾンビ、スケルトン共に数は多いようです。
この二種類以外にも、モンスター出現の可能性はあります。
☆地域情報☆
今回の舞台は、レザラディカの南に位置する『時の眠る遺跡』 。
遺跡の地下に、迷宮があるといわれています。
王宮図書館と、ハンターギルドの情報では、時の眠る遺跡の地下迷宮はそれほど広くはないようですが、入り組んでいて、迷いやすいようです。
そして、花崗岩のような白い壁面をしています。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
☆テンプレート☆
WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。
【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
〜台詞例〜
【挨拶】「今度は、ガセじゃないよね?(びくびく)」
【戦闘開始】「ゾンビなんて、一生地面に埋まってなさい!」
【必殺技使用時】「うわー、聖水なんて持ってないけど、火炎瓶なら!」
【勝利時】「うう、臭いよう怖いよう、でもやったよーっ!!!」
*台詞例はあくまで例です。色々台詞や設定追加推奨です。
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらどんどんこちらへ明記ください。
●リプレイ本文
●冒険の基本は挨拶で
「今回の調査に同行することになったシマツリだ。宜しく」
ハンターギルドの受付で、シマツリ(志祭 迅(fa4079))は後からやってきたトール(トール・エル(fa0406))とエル(メイ・エル(fa3076))に挨拶をする。
だが二人は言い争っていてシマツリのことになかなか気づかない。
「トールは魔導石の使い方も知らないんだね。勉強不足ってカンジィ」
「知らなくて悪かったわねっ」
トールは勾玉に加工された魔導石を弄ぶメイの手を振り払い、ぷいっとそっぽを向く。
メイにその気はないのだが、なぜか弟のご機嫌を損ねることだけは天下一品らしい。
「おいおい、二人とも。彼が挨拶しているのに無視ってるぞ?」
唖然としているシマツリに助け舟を出すように、吟遊詩人のケイ(氷咲 華唯(fa0142))が言い争う二人の間に割ってはいる。
このままだと取っ組み合いの姉弟喧嘩を始めてしまいそうだ。
「あら失礼。イケメンの前ではしたなかったわね。わたくしはトール。姉が馬鹿だと苦労しますわ、おーっほっほっほっほ!」
「オカマにばかって言われたくないってカンジぃ」
高笑いをかますトールに、メイがすかさず突っ込みを入れ、
「こ、こ、こ、このっ、ちょこっと先に生まれたぐらいで態度でっかいんですのよーっ!!!」
トールは今度こそつかみ掛からんばかりにブチ切れる。
「落ち着いてください。何でも言い合える家族がいることは素敵な事ですよ」
冷静沈着な黒翼の魔術師・セルム(相沢 セナ(fa2478))がトールの振り上げた二の腕をしっかりと掴んで止める。
トールはどこからどう見ても美少女にしか見えないのだが、正真正銘男性。
踊り子もしていたから筋力はそれなりにあるのだが、一見華奢に見えるセルムに掴まれた腕が振り払えない。
「もうもう、お放しなさいーっ!」
トールがきいっと駄々をこねる間にも、続々と周囲には仲間達が集まってくる。
「まぁまぁ、相変わらず仲良しさんですね」
緑の軽鎧を纏い、お料理上手なヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))がおっとりと微笑む。
「「仲良くなーいっ!」」
トールとメイの声がものの見事に重なった。
「なあなあ、時の眠る遺跡に行くのってあんたたち?」
くすくすと楽しい笑いを響かせる面々に、黒いノースリーブに同色のショートパンツを合わせた活動的な女性が声をかけてきた。
「そうだけど、あんたは?」
シーフのスー(玖條 響(fa1276))が面倒くさげに聞き返す。
「あたしはジョウ。地下迷宮なんて最高に面白そうだから参加させてもらうよ。宜しくね」
ジョウ(門屋・嬢(fa1443))はいいながら、隣に無言で佇むホムンクルス・ジョニーに荷物を預ける。
「あんた、それはホムンクルスか?」
フィオナ(エルティナ(fa0595))がジョニーの正体に気づき、ほんの少し眉を潜める。
「うん、そう。あたしが作ったんだ。口が聞けないけど、こっちの言うことはわかるし、あたしとなら意思疎通可能だからジョニーに何か頼みたいことあったら言ってね。
‥‥でも、もしかしてホムンクルスの同伴は不可だった?」
フィオナの表情が険しいことに気づき、ジョウはちょっぴり戸惑う。
「いや、そんなことはないよ。ただ、等身大のホムンクルスは珍しいと思っただけ。気にしないで」
そんなジョウにフィオナは表情を和らげて誤魔化す。
(「ケーナがこの場にいなくて、本当によかった‥‥」)
大切な友人は、過去の記憶の中にホムンクルスへの恐怖が刻まれているのだ。
ジョウの連れたホムンクルスが味方だとわかっていても、本能的な恐怖に襲われたに違いない。
「そういえば、彼女はまだ?」
召喚士であり、魔獣使いであった過去を持つサクヤ(橘・朔耶(fa0467))がフィオナの表情を読み取って尋ねる。
ケーナは先日の封印が偽物だとわかり、ショックで寝込んでしまったのだ。
「‥‥ちょっとね」
フィオナの歯切れはひどく悪い。
それはホムンクルスに対する嫌悪のせいか、それとも‥‥。
「早く良くなってほしいね」
サクヤはフィオナの端切れの悪さをケーナへの心配として受け止めて、心から友人の回復を祈る。
本当は時の眠る遺跡にはあまり近づきたくないサクヤだったが、仲間の為に気を引き締めるのだった。
●時の眠る遺跡
「ここに来るのも2回目だな。前に来たときはそんな場所だとは思いもしなかった」
時の眠る遺跡に訪れ、ケイは周囲を見渡す。
以前きたときと寸分変わらぬその景色は、広々とした草原に大小さまざまな岩を組み合わせた不思議な外観を保っていた。
「時の眠る土地‥‥また、ここへ戻ってくるなんてね」
サクヤも以前訪れたことがあるのだろうか?
色違いの双眸が悲しみを帯びる―― 時の魔獣を呼んだ時のように。
「なあ、前回の石、もう一度見せてくれない?」
スーがふと思いついてフィオナに声をかける。
「あの石はケーナが持ったままだよ。あたしは預かってないんだ」
「そっか」
「なにかあるの?」
「別に‥‥少し気になっただけ。竜の紋章‥‥刻印は大抵対になってるし‥‥何か意味があるものだから」
スーは実物を見れない事を残念に思いつつ、右腕に刻まれた竜の刻印に触れる。
竜の血を引く事を意味するその刻印は、深淵の魔獣使いの持つ杖にも刻まれている。
「そうそう、こんなものを入手したんですけど何分古いものでして、すっかりボロボロですね」
セルムが遺跡の入口を闇雲に探し始める仲間達にボロボロの羊皮紙を差し出す。
それは王立図書館で見つけたものだった。
もちろん、ギルドを保証人として貸し出し許可を得ている。
「これ、もしかして迷宮の地図か?!」
「準備万端ってカンジぃ♪」
ジョウが嬉々として地図に飛びつき、メイがご機嫌に魔導銃をくるっと回す。
「この地図からすると、入口はあの岩の側か‥‥?」
地図と周辺を照らし合わせ、シマツリは岩が時計の針のように地面に散っている場所に向かう。
「入口は探さないとダメか‥‥? 面倒くさい‥‥」
シーフならではの身軽さで岩と岩の間を軽々と飛び越えてシマツリの横に来たスーは、ぱっと見では見当たらない入口に面倒くさいと愚痴を零す。
だがそれはシマツリにとって禁句だった。
「黙れ」
鋭い目で、スーを睨みつける。
「なんだよ?」
いきなり睨みつけられたスーは鼻じろみ、けれどシマツリはそれっきり口を開かない。
どうやら無視を決め込むようだ。
スーはチッと舌打ちしつつ、気持ちを切り替えて遺跡を探る。
「ここ、人の手が加わった形跡があるんだよ」
フィオナが遺跡の長針を思わせる岩に手をかける。
「ここだな」
スーも頷き、シーフたる二人は仲間達を下がらせ入口を隠す仕掛けを作動させる。
岩時計の短針がぐるりと回り、その下に隠れていた入口がその姿を現した。
「時の眠る遺跡と云っても只の古墳ってこでしょう。いきますわよっ、おーっほっほ!」
トールの高笑いと共に、ハンター達は地下迷宮へと足を踏み入れる。
●時に囚われしもの達
「あらあら、これはまた大勢のお出迎えですねえ」
ヒカルがおっとりと呟く。
だが口調こそおっとりとしているものの、既に剣を抜き払い、いつでも迎撃できる態勢をとっている。
その双眸はセルムの魔法で作り出した光球に照らされ、迷宮の奥から湧いてくる敵―― スケルトンとゾンビへと注がれていた。
「そんじゃ、いっちょやりますか。派手にドカーンと決めるからね!」
ジョウはジョニーに回復薬を持たせて治療班として後方に下がらせ、近距離用の爆弾を手に取る。
本来ならばもっと大きな爆弾も用意できるのだがここは地下。
火薬の量を絶妙に調節した近距離用を敵に投げつける。
「ヒュッ♪」
激しい爆音と共に雑魚を吹き飛ばし、寸分違わぬ自分の腕にジョウは口笛を鳴らす。
「こう、うす暗くて狭いと、厄介ですね」
セルムが光珠を空中に固定し、ライトサーチを唱え、敵の数の把握を試みる。
目の前の敵だけが全てではないのだ。
後方から来る可能性も考え、後方にも意識を飛ばす。
「雑魚共。かかってきな」
ゼブラ柄のバンダナをなびかせ、シマツリは瞬時に敵との間合いを詰める。
ジョウの爆弾に思考停止を起こしていたゾンビは、シマツリの剣に倒れ伏した。
だが敵は一匹ではない。
後から後からわいてくるのだ。
「通行の邪魔‥‥退いてよ」
「うわぁ、死臭がぷんぷんするよぉ。消えてってカンジぃ!」
スーが敵の中に飛び込み短剣で切り刻み、メイが魔導銃を撃ち放つ。
「まったく、死人なら死人らしくおとなしく眠ってりゃいいのに‥‥遊んでやるから付き合いなっ!」
そしてフィオナが前線で戦う仲間ごと敵に聖水をぶっかけた。
「‥‥うわ、マジかよ? 面倒くさい!」
濡れた髪をかきあげ、傷や汚れをつけられる事を極度に嫌うスーはブチ切れる。
だが仲間に手を上げたりはしない。
怒りの矛先は耐え難い悪臭を放つゾンビだ。
「わたくしに近づくなんて、骨の分際でっ!」
前衛の取りこぼした一匹が、神楽を舞いながら仲間の体力を回復し続けていたトールに襲い掛かる!
「っ、アルマ‥‥我が声に応えよっ!」
サクヤが叫び、トールとゾンビの間に時の魔獣・アルマを召喚する。
アルマは即座にゾンビをその鋭い爪で切り裂きトールを守りきる。
「‥‥礼を言いますわ」
太陽の光の届かない地下では、天照大神に仕えたトールの力は半減する。
サクヤが助けなかったら、ゾンビに切り裂かれていたのはトールだったろう。
「気にしないで。‥‥守れてよかった」
サクヤはトールを背に庇いながらアルマに次の敵の殲滅を命じる。
(「魔獣で、仲間を守れるなんてね」)
魔獣を使役しながらも憎むサクヤは複雑な気分に囚われる。
「無駄に体力だけはありそうだが、やるしかないか」
トールの力が半減している分、ケイはリュートで奏でる呪歌で仲間達の体力を回復し、そして精神に働きかけその戦力を底上げする。
「まあまあ、服が汚れてしまいますねぇ」
ゾンビを切りつけるたびに飛び散る体液に顔を顰めながら、けれど剣は少しも鈍らせずにヒカルは敵を薙ぎ払う。
「お前らに俺の鋭い蹴り、見切れるか? ‥‥っ!」
そしてシマツリの旋風脚が炸裂し、ゾンビが一斉に吹き飛んだ。
だがスケルトンは小賢しく、ゾンビを楯にその攻撃を防ぎきり、剣で切りつけてきた!
必殺技を発動した直後のシマツリは即座に避けることが出来ない。
自分に振り下ろされる剣がまるでスローモーションのようにシマツリの瞳に写る。
―― キンッ!
「‥‥面倒くさいな」
だが、その剣がシマツリに振り下ろされることはなかった。
スーがその短剣で寸での所でスケルトンの剣を止めたのだ。
先ほど無視してしまったスーに助けられ、シマツリの胸に深い後悔と感謝が溢れる。
「次は、俺が守る!」
シマツリは目でスーに礼を言い、敵に再び立ち向かってゆく。
●砕け散る封印
「‥‥残念ながらこれ以上は奥に進めないようです」
敵を打ち倒し、奥へ奥へと進み続けた一行は、セルムの言葉に落胆の色を隠せない。
「まって」
スーが壁に手を当てる。
―― コトン。
壁の一部が奥へと引っ込み、カタコトと音を立てて迷宮の中で何かが作動する。
その瞬間、世界は揺らいだ。
遠く、天空の塔での異変は遺跡の地下にいるハンター達には見えない。
けれど塔は封印の解除と共に光り輝き、その光は矢となり天空を貫く。
立ち込める重い雲を切り裂くように光は大地と天を繋ぎ道を作る。
光の道から、果たしてなにが訪れるのか。
道の先には、何があるのか。
「ケーナへの良い土産になりましたわね」
「トールがそこまで他人を気にかけるなんて珍しいってカンジぃ」
見事封印を解除し、大切な友人の喜ぶ顔を思い浮かべるトールと、弟を茶化しながらもやっぱり同じように嬉しい姉のメイ。
「これで彼女の母親を助けられるの?」
フィオナが誰に尋ねるでもなく呟く。
(「今の気配は‥‥いえ、まだその時ではないはずです」)
セルムは漆黒の羽から伝わった気配に一瞬緊張を帯びる。
天空の塔に封印されている女性は、ケーナの母親なのだ。
彼女の無事を願わずにはいられない。
「きっと、封印は解除されたことでしょう」
だからセルムはそう自分に言い聞かせて眼鏡を抑える。
―― 運命の時は、もうすぐそこまで迫っているのだった。