ぷにっと海賊団☆転校生アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 霜月零
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/08〜09/12

●本文

『ぷにっと海賊団☆』

 それは、お洒落な海賊服に身を包み、悪と戦う少年少女の物語。
 TVのなかでは今日もぷにっと海賊団は獣耳&尻尾を揺らして悪の海賊団と戦っていた。
「正義のカードスラッシュ、今日はこれだあっ!!」
「「「必殺・お星様ぱーんち!」」」
 ぷにっとフォンにカードをスラッシュし、必殺技を決めるぷにっと達。
「たまには、お月様にもなりたいですわーーーー!」
 いい加減投げ飛ばされ慣れた悪の海賊団は、断末魔の叫びを錯乱気味に星空に吹っ飛んでゆく。
「正義はぷにっと☆」
 カメラ目線で振り返り、ぷにっと海賊団勝利のポーズ、決めっ☆


☆次回予告☆
「転校生を紹介します」
 そういって、担任の先生は黒板に転校生の名前を書く。
「今日からこの学校に転校して来ました。どうぞよろしくお願いします」
 転校生の姿は後姿で、その顔はわからない。
「席は‥‥そうね、委員長の隣がいいわね」
 先生に促され、転校生は委員長――その正体はぷにっと海賊団の一員である少女の隣に座る。
「わからないことがあったらなんでも聞いてね」
 賢く、面倒見のよい彼女は笑顔で話しかけ、転校生も頷く。
 だが、その転校生の瞳は、妖しく輝くのだった‥‥。
 

☆『ぷにっと海賊団』出演者大募集☆
 ぷにっと海賊団『転校生☆』の出演者を大募集!
 毎回主役の違うこの番組では、海賊服に身を包んだ少年少女たちが悪の海賊団と戦います。
 『転校生☆』では、新学期になり、ぷにっと達が普段通う学校に転校してきた謎の転校生の正体を見破り、戦っていただきます。
 子供から10代前半の少年少女、『ぷにっと感』に自信のある方、そして悪役をやりたい大人の貴方も大募集☆

●今回の参加者

 fa0115 縞りす(12歳・♀・リス)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2604 谷渡 うらら(12歳・♀・兎)
 fa3579 宝野鈴生(20歳・♀・蛇)
 fa3605 ルージュ・シャトン(12歳・♀・猫)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa4404 ガブリエル・御巫(30歳・♀・鷹)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●悪の海賊団
「ふ、ふふ‥‥わ、忘れない‥‥あの日の事‥‥」
 薄暗い悪の海賊団の一室で、アナマリア(宝野鈴生(fa3579))はローブを目深に被ったまま陰気な笑いを浮かべる。
 あの夏の日に宿敵・ぷにっと海賊団にこてんぱんにされたせいでアナマリアは嫌われてしまったのだ。
「こ、今度こそ‥‥ぷ、ぷにっと達をやっつけて‥‥あの方にふ、振り向いてもらうんだから‥‥うふふ‥‥」
 魔法の鏡を見つめ、その中に写るぷにっと達にアナマリアはより一層邪悪な笑いを漏らす。
 その背後には、ガブリエル(ガブリエル・御巫(fa4404))とシーナ(椎名 硝子(fa4563))が控えている。
 ガブリエルは赤い瞳を細め、シーナはその豪奢な金髪によく映える真っ赤な薔薇を弄ぶ。
「た、頼んだわよ‥‥あ、あなたたち‥‥わ、わたしは‥‥これを完成させるわ‥‥ふふふ‥‥」
 大きく頷いてその場から消え去る二人にアナマリアは満足げに笑い、作りかけの秘密兵器を愛おしく撫でるのだった。


●転校生☆
「はい、みなさんおはようございますわ。今日はみなさんに嬉しいお知らせがあります」
 担任の先生(ガブリエル・御巫(fa4404)一人二役)が教壇に立つと、ざわついていた教室がすぐに静かになる。
「ウララさん、転校生ってどんな子なのかニャ?」
 こそこそこそっ。
 好奇心いっぱいのルージュ(ルージュ・シャトン(fa3605))が後ろの席のウララ(谷渡 うらら(fa2604))に振り返って小声で話しかける。
「しっ! 今はホームルーム中よ。でも、どんな子かしら?」
 学級委員長のウララはそんな落ち着きのないルージュを注意しつつ、その赤い瞳は興味深々に教室の入口に映る影に注がれている。
「白木君、入って」
 先生が声をかけると、転校生ドゥワイト・白木(タブラ・ラサ(fa3802))が教室に入ってくる。
「今日から皆さんのお友達になるドゥワイト・白木くんです」
「ドゥワイト・白木です。短い間ですがどうぞよろしくお願いします」
 先生はウララとルージュのやり取りに苦笑しつつ、紹介された白木は礼儀正しくお辞儀をする。
「短い間?」
 ウララがふと呟く。
「白木君は、お父様のお仕事の都合で一ヵ月後にはまた、転校してしまうの」
 たった一ヶ月で転校してしまうとは。
 教室がざわめく中、白木はそういった反応に慣れているのか特に困った様子もなく、背筋をピシッと伸ばして微笑んでいる。
「それじゃ白木君は学級委員の隣に‥‥」
「はいはいはーい、ルージュの隣が開いてるニャ! ここがいいですニャよっ☆」
 先生は予め用意しておいたウララの隣の席に座らそうとしたのだが、ルージュがぴょんぴょんと飛び跳ねる勢いで手を振った。
「‥‥ルージュさんのお隣に座ってくれますか?」
 苦笑しながらも先生はルージュの隣に白木の席を変更し、白木は特に異存なく席に着く。
「それと、ウララさん。お昼休みに白木君に校内を案内してもらえるかしら?」
「はい先生」
 ハキハキと返事をするウララを頼もしく思いながら、先生は授業を始めだす。


●お昼休みは校内案内
「たらららんた・ら・こ〜♪ 程よく茹でたスパゲッティ〜はアルデンテ♪
 たらこたららんた・ら・こ〜、ほんのりピンクのたらこ〜、スパゲッティと良く混ぜて、きざみ海苔を飾って♪
 たらたららんた・ら・こ〜、タラコスパゲッティのでっき上がり〜でぃす☆」
 るんるんるん♪
 究極にご機嫌なリスリス(縞りす(fa0115))が廊下をクルクルと踊りながら鼻歌交じりで歩いている。
 その手には出来たてほかほかのタラコスパゲッティー。
「先輩、本当にお料理お好きですね。ボクも上手く作れるようになりたいです」
 そういうユイ(姫乃 唯(fa1463))の両手にも山盛りに盛られたタラコスパゲッティーのお皿が載っている。
 リスリスが家庭科でクラス全員分のスパゲッティーをほぼ一人で作り、なおかつ同じ学校の下級生に当たるぷにっと達の分もさくっと作ってきたのだ。
 でも量が多くて一人では持ちきれないから、ちょうど家庭科室の側のクラスだったユイに応援を頼んだのだ。
「おや? あれはウララさんとルージュちゃんと‥‥隣にいる男の子は誰でぃすかねぃ?」
 ウララ達のクラスから、三人が出てくる。
「わ、可愛いです」
 白木を見て、ユイが立ち止まる。
 その瞬間、リスリスがユイの足に躓いた。
「うわっ?!」
「えっ?」
「おっと?!」
 咄嗟に白木がリスリスを抱きとめ、そのまま床に倒れこむ。
 そして宙に吹っ飛んだスパゲッティーはウララがすかさずキャッチ!
「あうあうっ、ごめんなさいでぃす〜」
「リスリスちゃん、足元はほんとに気をつけないと危ないわ。でもこれを届けにきてくれたんでしょ? ありがとね」
 白木に詫びつつよろよろと体を起こすリスリスに、ウララは片手を差し出す。  
「あっ!」
 バサリ。
 リスリスの下敷きになっていた白木が起き上がった瞬間、その鞄からスクラップブックが零れ落ちた。
「これ、ぷにっと海賊団の記事です! あなた、ぷにっと海賊団のファンですか?」
 ユイは慌てて拾う白木を手伝い、溢れた記事を見て目を丸くする。
 床に散らばったスクラップブックからは、ぷにっと海賊団の記事が大きな物から小さな物までぎっしりと詰まっていたのだ。
「ぷにっと海賊団はいいでぃすよ。毎回悪の海賊団をやっつけて世界の平和を守ってるでぃす☆」
「別に。ぷにっと海賊団自体は大したことないんじゃないかな。正直言って、悪の海賊団が情けなさすぎるだけだよ」
 ぽつり。
 自分達のファンがいると知り喜ぶぷにっと達に、その正体を知らない白木はスクラップブックを抱きしめて呟く。
 その口元にはなんともいえない冷たい笑みが浮かぶ。
(「なんだろう。彼はぷにっと入団希望者? それとも敵なの?」)
 ウララはもしもに備えてポケットの中のぷにっとフォンを操り、遠隔操作でぷにっと海賊団海賊船『ぷにっとぷにっと☆』を学校の屋上に待機させておくのだった。
 

●スカウト
(「ふふふ‥‥あの子は使えそうですわ」)
 ぷにっと達をやっつけるべく、ガブリエルと共にこっそりと学校に潜入していたシーナは白木に目をつける。
 悪の海賊団が情けないなどと聞き捨てならないことも言っていたが、相手は子供。
 手懐けることなどきっと造作もない。
 それにぷにっと達も子供だし、同じ子供同士なら油断も誘いやすいに違いない。  
 シーナは弄んでいた薔薇を胸に刺し、白木が一人、裏庭へ差し掛かった所にそっと声をかける。
「ねえ、そこの貴方。悪の海賊団に入りませんこと?」
 私の美しさの前に平伏しなさい?
 自分を最大限に美しく見せる方法を熟知しているシーナは、唖然としている白木に妖艶に微笑んだ。


(「スカウトだな」)
 最初シーナを見た時の白木の感想はそれだった。
 冷静そのものといって良い。
 175cmの長身にピンヒールを履き、モダンなスーツをピシッと着こなしたスタイリッシュなシーナは正真正銘絶世の美女なのだがいかんせん、その匂い立つ色香は彼にはちょっと刺激的過ぎて通用しなかったらしい。
 だから、シーナがいつも異性から情報を聞き出す時のように魅力的な仕草をしても、白木は少しも惑わされない。
「ねえ? ぷにっと達をここに連れてきて欲しいの。おねーさんのお願い、聞いてもらえるわね?」
(「どうせこの学校にいられるのもたったの一ヶ月。未練も愛着も、何にもないんだ」)
 引っ越してしまえば、誰も僕を覚えてなんていない。
 メールも電話も最初の頃だけで、一ヶ月もすればみんな僕を忘れていく。
 ――僕がずっと覚えていても。
 自信たっぷりに微笑むシーナに、白木はスクラップブックを抱きしめてこくりと頷いた。
 

●大変! 人質とられちゃった?!
「あっ、白木君こんなところにいたのね?」
「探したでぃす!」
 ウララとリスリス、そしてルージュとユイが大慌てで裏庭に姿を現す。
「お母様、ううん、お姉様ですか?」
 すぐ側に佇んだままのシーナにユイはどぎまぎと尋ねる。
 べつにその気はないのだが、綺麗なお姉さまにはとてつもなく憧れるのだ。
(「ああ、なんてこと! 予定が大幅に狂いましたわ。白木くんにこいつらの弱点を探らせるはずでしたのにっ。‥‥こうなったら、えいっ!」)
 がばっ!
「「「「「ええっ?!」」」」」
 いきなり目の前に現れたぷにっと達に混乱したシーナは白木を羽交い絞めにし、胸に刺したバラを瞬時に薔薇の鞭に変えて大きく後ろに飛びのいた。
 突然の展開にぷにっとはもちろん、白木も叫ぶ。
「一体これは何のまね?!」
「ええぃ、おだまりなさいっ! 貴方達も近づくんじゃないのよ。近づいたらこの子の命はありませんからね!」
 ぴしぴしっ!
 ローズウィップを地面に叩きつけ、シーナは白木を人質にじりじりと後退する。
(「ああ、やっぱり悪の海賊団は馬鹿だーっ!」)
 こんな行き当たりばったりの集団に一瞬でも協力しようとした自分が馬鹿だった。
 だが後悔先に立たず。
「ふふふ‥‥ぷにっと達。今日こそギャフンと言わせるわよ」
 白木を楯に、シーナは勝利のイメージに酔い痴れる。
「あら、あなた達。裏庭で何をしているの?」
「先生!」
 丁度その時、裏庭に先生が現れた。
「先生、危ないから逃げてくださいっ!」
「あら、どうして?」
「どうして、って‥‥」
 先生を裏庭から離れさせようとしたウララは、その表情に言葉を詰まらす。
 笑っているのだ。
 嬉しそうに微笑んでいるのだ。
 目の前で不審者が鞭を振り回し生徒を人質に取っているのに!
「やっと気がついたようね。わたくしは悪の海賊団ガブリエル! 今日こそあなたたちと決着をつけて差し上げますわ。もちろん、わたくし達の勝利という形でです!」
 スーツ姿がボンテージファッションに瞬時に切り替わる。
「ふ、ふふふ‥‥ふ、二人とも‥‥良くやったわ‥‥」
 シュンッ!
 転移音と共に裏庭に荷車を引いたアナマリアが現れる。
 荷車には完成したばかりの秘密兵器『雷雲かむかむ君超デラックスハイパー』と書かれた機械が乗っていた。
「絶体絶命でぃす!」
「先輩、ボクこわいっ」
 リスリスにユイがしがみ付き、ウララは携帯をこっそり操作してぷにっとぷにっと☆から裏庭へ結界を張る。
(「これで一般の人からはこの中で何が起こっても見えないわ。でも‥‥っ」)
 白木を取り返さなければ手も足もでない。
 不敵に笑う悪の海賊団が、じわりじわりとぷにっと達を追い詰めてゆく。   
 
 
●正義はぷにっと☆
「美しさでこの私に勝てる者なんていないわ!」
 ビシイッ!
 シーナの華麗な鞭が振るわれ、ルージュはなす術もなく吹っ飛ぶ。
 もう、叫ぶ気力もない。
「ふ、ふふ‥‥電撃の、お、お味はいかが‥‥」
 バリバリバリッ!
 アナマリアの操作する機械から作られた稲妻が、もう何度目かわからないほどウララの身体を貫く。
「そろそろ降参しちゃいなさいな、ほーらっ!」
 ドスッ!
 ガブリエルの拳がリスリスの鳩尾に決まる。
 稲妻に打たれ、鞭で殴られ、ボロボロなぷにっと達はそれでも決して諦めない。
「ひ、卑怯なのですっ」
 ユイが地面を這いながら、それでも白木を取り戻そうと足掻く。
「ま、まだ‥‥口を開く気力が‥‥あ、あるのね‥‥でももう‥‥これで‥‥ふふふ‥‥」
 アナマリアは機械のメモリを最大限まで上げる。


(「どうして?」)
 シーナに捕まったまま、白木は目の前の惨状にただただ戸惑っていた。
 たった一ヶ月、それも今日知り合ったばかりの転校生の為に、どうして彼女達は戦える?
 こんなにボロボロになって、命がけで‥‥。
 迷う白木の前で、スローモーションのようにアナマリアの指がスイッチに近づいてゆく。
 その瞬間、白木は動いた。
 自分を捕まえるシーナのヒールを足で払う。
「きゃーーーーーーーー?!」
「‥‥!」
 よろけたシーナは白木を手放し、そのまんまアナマリアに突撃!
 二人とも勢いあまって兵器に突っ込んだ。

 ちゅどーんっ☆

 派手な音を立て、壊れる兵器。
「形勢逆転ね!」
 白木を背に庇い、ウララは悠然と微笑む。
「ぷにっと月見団子、くらうでぃす!」
「シャボン玉イリュージョン、発動! お星様でもお月様でも、好きな方になると良いですっ!」
「ぷにっと肉球パーンチ!」
 リスリスが月見団子に良く似せたお手製爆弾をガブリエルに投げつけ、ユイはアナマリアを虹色のシャボン玉で包み込み、アナマリアは機械に残っていた電流がシャボン玉に感電して増殖し真っ黒こげ、そしてルージュがぷにぷに肉球パンチでシーナを吹っ飛ばした。
「この私が負けるなんてー!」
「あーれーーーーーーーーっ」
「あの人に嫌われる‥‥いーやーーーー!」
 ちゅっどーーーーんっ☆
 必殺技が舞い飛び、空に吹っ飛んでゆく悪の海賊団。
 くるっ。
 カメラ目線で振り返るぷにっと達。
「「「「正義はぷにっと!」」」」
 勝利のポーズ、きめっ☆


●エピローグ
「どうして、僕を助けた?」
 ボロボロのぷにっと達に、白木は尋ねる。
「友達だからニャ」
 そんな白木に、ルージュはこともなげに言い切る。
「な、なにいってるんだよ? 僕は今日初めてあったんだぞ? ‥‥それに、あと一ヶ月でまた転校しちゃうんだ」
「一日でも、同じ学校に通う仲間でぃす」
「一ヶ月だろうとなんだろうと、関係ないの」
「うん、仲間だね」
 戸惑う白木に、ぷにっと達は口々に言い切る。
「僕が君たちの友達なはずないだろ。けど‥‥どうしてもって言うなら、なってもいいよ」
 ぷにっと達に背を向けて、白木はポツリと呟く。
 その顔は嬉しさと恥ずかしさで真っ赤になっているのだった。