WonderTalk〜秋の味覚〜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
霜月零
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
12人
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サポート |
0人
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期間 |
09/14〜09/18
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●本文
はるか遠く続く青空に、『WonderTalk』のロゴが映し出される。
それは中世ファンタジー世界カラファンでの冒険を描く深夜特撮番組『WonderTalk』のオープニング画面だ。
物語の中ではモンスターハンターと呼ばれる冒険者達がハンターギルドにて様々な依頼を請け負っている。
「は?」
ハンターギルドの受付で、大剣を背負ったハンターは思わず聞き返す。
いま、ものすっごく素っ頓狂な物を聞いた気がするのは気のせいか?
「だからぁ、クマ退治。秋でしょう? 食欲でしょう? クマでしょう」
きぱっ。
眠たげな受付嬢は欠伸をしつつもきっぱりと言い切る。
「あのなぁ、いまは天空の塔やら封印やら色々大変な時‥‥」
「クマも暴れると大変よーぅ? よりによってジャイアントヒグマベアーだしー、3匹も湧いたっていうしぃ」
ハンターの突込みをさくっと無視し、大変だという割に大あくびの受付嬢には少しも緊張感がない。
「まあ、あなた達の気持ちもわからなくは無いんだけどぉ、ほら、天空の塔って王国管理だから? 王立魔術師団の指示とかも待たなくちゃならないしぃ、前回の調査結果や封印についても色々審議があるっぽく?
今回はまだ塔へのギルドからのハンター派遣許可が降りていないのよーぅ」
ごめんしてね?
欠伸の変わりに眠たげなウィンクをする受付嬢にハンターは軽い溜息。
「で、クマ退治にどこへいけばいいんだ?」
「妖精の森よん。キラー・ビーは大分前に一回退治されたけどぉ、また湧くかも? クマは蜂蜜好きだからねぇ」
「つまり、確実に出るクマと、いるかもしれん殺人蜂を殴ってくればいいわけだな?」
「うんうん、よろしくねぇん♪」
うふふと笑いながらあくびをする器用な受付嬢に溜息を漏らしつつ、ハンター達は今日も冒険に出かけるのだった。
☆Wonder Talk出演者募集☆
ファンタジー世界を舞台とした特撮番組、『Wonder Talk〜封印3〜』出演者募集です。
剣と魔法を舞台としたこの世界の住人になりきり、封印について調べてください。
☆モンスター情報☆
『ジャイアントヒグマベアー』
巨大熊です。
当方大陸に住む『ヒグマ』が巨大化し、凶暴さを増したものといわれています。
木を薙ぎ倒すほどの腕力から繰り出される連続攻撃は、瞬時にハンター達を吹き飛ばし、致命傷を負わせるでしょう。
『キラー・ビー』
殺人蜂です。
体長は三センチから五センチと、普通の蜂より少し大きい程度です。
ですが集団で行動し、素早い動きとその身体から作り出される毒は強力で、刺されると一撃で全身が麻痺してしまいます。
そのままほうっておくと十分で死亡します。
また、キラー・ビーの作り出す蜂蜜は滅多に手に入らないことから高級品とされており、滋養強壮の薬にもなります。
☆地域情報☆
今回の舞台は、ファンタジー世界カラファンのレザラディカの北東にある『妖精の森』
妖精の森へは、転移門を使い瞬時に移動出来ます。
☆選べる職業☆
戦士 :戦いの専門家。主に剣で戦います。
僧侶 :治癒魔法を得意としています。
魔法使い:攻撃魔法を得意としています。
踊り子:魅惑的な踊りで敵を翻弄します。
召喚士:精霊を召喚し、使役します。
吟遊詩人:歌い手です。呪歌を使えます。
シーフ:盗賊です。指先が器用で、罠の解除などが得意です。
錬金術師:カラファンに存在する様々なアイテムを調合して薬や爆薬などを作り出します。
なお、職業は参加者八人全員戦士や、僧侶と魔法使いのみなどといったパーティ編成も可能です。
また、「こういった職業が欲しい!」などのご希望があれば採用の可能性もあります。
☆テンプレート☆
WT参加者は、下記テンプレートを埋めてプレイングを送付してください。
【職業】『職業』の中から一つ選択
【心情】キャラクターとしての気持ちを書いて下さい
【戦闘】どのように戦うか
【台詞】各シーンで言いたい台詞
〜台詞例〜
【挨拶】「クマかー。ちょっと時期早くね?」
【戦闘開始】「鬼が出るか蛇が出るか‥‥こんなんでました♪」
【必殺技使用時】「クマ鍋にしてあげましてよっ!」
【勝利時】「く、クマって、食べれるのかな‥‥!」
*台詞例はあくまで例です。色々台詞や設定追加推奨です。
【その他】キャラクターの設定や口癖などありましたらどんどんこちらへ明記ください。
●リプレイ本文
●始まりは冒険者ギルド
「クマさんもそろそろ冬眠の準備かな。キラービーの蜂蜜って美味しいのかな?」
猫耳フードが愛らしい錬金術師のユイ(大海 結(fa0074))は、ハンターギルドの木製ベンチに腰掛けてお手製の人形に話しかける。
手の平サイズの小さな人形は錬金術の力で命を吹き込まれ、ユイの問いに答えるかのようにクルクルと踊った。
「いつみても可愛いね」
幼い召喚士・ケーナ(美森翡翠(fa1521))はとことことユイの側に寄り添い、踊る人形達を覗き込む。
そうすると、精霊の宿る水晶のネックレスと魔導石がきらきらと揺れた。
「あれ、ケーナ‥‥身体はもういいの?」
同じ召喚士であり、魔獣使いであった過去を持つサクヤ(橘・朔耶(fa0467))がケーナに気づき、声をかける。
ケーナは最近体調を崩してしまっていたのだ。
「うん。も、大丈夫」
「ケーナ、でもあんまり無理しないようにね? でも、これだけ皆が出揃うのって久しぶりよね」
さり気なくケーナを庇うように側に控え、シーフのフィオナ(エルティナ(fa0595))は辺りを見回す。
今回の依頼は実に十二人という大人数の為、今まで一緒に依頼を受けた仲間も数多く参加しているのだ。
そしてもちろん、今回初めて一緒の冒険に出る仲間もいる。
「うにゃー、美人なおねーさんニャね。こんにちはニャ〜☆」
仲良しのヒカル(ヒカル・マーブル(fa1660))にじゃれついていた踊り子のアヤカ(アヤカ(fa0075))がセンカ(千架(fa4263))に気づいて声をかける。
「初めまして、センカと申します。今回は宜しくお願いしますね」
清廉潔白純真無垢なお嬢様然としたその微笑に、アヤカはちょっぴり頬を染めて「うにゃニャ〜」と鳴いた。
そしてギルドの受付では、トレードマークの分厚い眼鏡をかけた黒翼の魔術師・セルム(相沢 セナ(fa2478))がなぜか眠たげな受付嬢にからかわれている。
「え? ヒグマベアー? ‥‥クマクマ? だ、誰が名付けたのか‥‥」
「それはもちろん、あたしよーぅ」
「ええっ、本当ですか?!」
「う・そ☆」
「‥‥‥」
「誰が名づけた熊だろうが、わたくしの美しさにはかないませんわよ。おーっほっほっほっほ!」
絶句して眼鏡がずり落ちたセルムに助け舟を出すかのように、高飛車にして八百万の神々に仕えることの出来る巫女・トール(トール・エル(fa0406))が豪快に高笑いを飛ばす。
「でもぉ、クマに美しさでかなったら毛むくじゃらってカンジぃ?」
そしてトールの姉で魔器使いのメイ(メイ・エル(fa3076))がポツリと呟いた。
無論、悪気など欠片もなく思った事を呟いただけなのだが、トールの怒りは瞬時に沸点。
「こ、こ、こ、このっ、くそ姉ー! このわたくしのど・こ・が、毛むくじゃらですのーーーーーーーーー!!」
「苦しいってカンジぃっ!」
がくがくがくがくっ!
力いっぱいトールに襟元を掴まれて揺すぶられ、メイは悲鳴を上げた。
「おい、姉弟喧嘩はそのくらいにしておけ」
見かねたカイン(ヴォルフェ(fa0612))が二人をそれぞれ片手でひょいっと摘んで引き離した。
常日頃自分の身丈と同じ大剣を背負い、同時に使い込んでいるカインの太い腕には、華奢な彼女達は羽のように軽いのだろう。
「挨拶は時の氏神といいます。このまま喧嘩を続けて怪我でもしたら依頼を遂行できませんよ?」
カインの腕にぶら下げられたまま、尚も口喧嘩を続けようとする二人に竜神官・ノア(辰巳 空(fa3090))がちょっぴり年寄りじみた声をかける。
「仕方ありませんわね。依頼もそうですけど、わたくしの珠の肌に傷など残せませんわ」
ほっぺたをぷくっと膨らまして不貞腐れつつ、トールは巫女服の乱れを直し、メイはメイで「もう、トールったら怒りんぼってカンジぃ‥‥わぷっ!」と呟いてノアにその口を押さえられた。
「‥‥こんなんで大丈夫なんか?」
先ほどまでの美少女風味は何処へやら。
センカは呆れ気味にぽりぽりと頭をかいた。
●妖精の森
「熊さんですか‥‥それに蜂さんもいるかもしれないんですね‥‥」
おっとりと、けれど意識だけは常に警戒しつつ、ヒカルは周囲を伺う。
妖精の森はそろそろ紅葉が始まり、春とはまた違った風情を醸し出していた。
「やっぱり、森はピクニックってカンジィ」
遊び気分満載の台詞とは裏腹に、メイは魔眼―― 魔器の一種で眼帯を模した形状で、通常目視出来ないモノを感知する能力を持つそれで周囲をに気を配る。
「妖精の森といえば、その奥深くに妖精種の住まう隠れ里があると聞いた事が‥‥さて?」
セルムはそう呟きながら愛用のモンスター辞典に森の状態を書き込む。
キラー・ビーとジャイアントヒグマベアーの欄はまだ王立図書館などで得た情報しか持っておらず、実物に遭遇したことはないのだ。
今回の依頼は実物を間近で見て観察出来る絶好のチャンスだった。
―― もっとも、無事に退治できればの話だが。
「熊に蜂ね‥‥そういえば、確かにそんな時期だったな」
カインは紅葉途中の葉を一枚手に取り、サクヤを見つめる。
「‥‥なんだ?」
「いや、サクヤの瞳の色と同じだな」
呟いて、小首を傾げるサクヤの白く輝く髪にそっと刺す。
黄色から赤く変化しはじめた微妙なグラデーションは、サクヤの琥珀と赤茶色の色違いの双眸に良く似ていた。
「ありがとう」
相棒の意外とロマンチストな一面に少し照れながら、サクヤは微笑む。
「ケーナ、足元気をつけて」
そんなサクヤの様子をじっと監視しつつ、ケーナの手を引いていたフィオナは枯れ木に気づいて注意する。
道を少し外れると、長い年月をかけて降り積もった枯葉や枯れ枝は妖精の森の神秘的な雰囲気をより一層深めていたが、幼いケーナには歩きづらいことこの上ない。
「精霊皆、少しいつもと違う‥‥でも皆何も言ってくれない‥‥どうしてなんだろ‥‥」
フィオナの手を強く握り返し、ケーナは不安げに前を見つめる。
「見つけたってカンジぃ!」
「こちらです、数十、恐らくキラー・ビー‥‥いや、もっと大きな生命体反応も近づいています!」
魔器で周囲を調べていたメイが声を上げ、セルムが種族特製魔法・ライトサーチによる数を把握する。
バキリと木々を倒す音が聞こえてきたのは、そのすぐ直後のことだった。
●キラー・ビーがいっぱい? ‥‥って、クマも一緒に出なくてもっ><!
ハンター達が現場へ駆けつけると、そこは既にジャイアントヒグマベアーとキラー・ビーの壮絶な戦いが繰り広げられていた。
「この状況は‥‥熊がキラー・ビーの巣でも襲ったのでしょうか。放っておく訳にも行きませんね」
キラー・ビーが大量に飛び回る中、ノアは現状を冷静に判断し戦いの歌を歌い始める。
その力強い歌は仲間達の士気を高め、同時に疲労を徐々に回復してゆく。
「かったりーけど怪我すんのは嫌だしなー。‥‥つーワケで、てめぇら頑張れ!」
センカはそう言い放ち、聖職者たるローブの裾を蹴り上げる。
捲くりあがったローブの下から太股にベルトで固定しておいたナイフを抜きさり、襲い掛かってきたキラー・ビーを瞬時に切り落とした。
「あなた、男性だったの?! ああ、でも今はそれどころじゃありませんわね、このわたくしがどれほど美しいかこいつらに教え込んでやりませんとっ!」
トールはセンカが自分と同じ性別でありながら、そして同じように女装がとても似合っていることにライバル心を燃やしつつ、鉄扇を操り舞を舞う。
舞姫と名づけられたその舞は見るものを魅了し操る術を持っているのだが、いかんせん、トールの魅力は虫如きには通用しない。
「守ってあげるってカンジぃ♪」
鉄扇で払いきれないキラー・ビーを、メイの魔導銃が撃ち落した。
「礼なんていいませんわよ。蜂といい熊といいわたくしの魅力を理解しないなんて盲目なのですわね」
ふんっと怒りのままにキラー・ビーを叩き落とす。
「風の乙女達皆を守って、蜂を寄せ付けないで!」
ケーナが精霊達に願い、精霊達はその願いを無言で叶える。
いつもと違う気配を醸し出す精霊達は、それでもケーナを大切に思っているのだ。
風の守護がハンター達の周囲に発生し、キラー・ビーからその身を守ろうとする。
だが蜂たちは本能で風の隙間をぬってハンター達に襲い掛かる。
「森の奥でおとなしくしてくれればよかったんだけど‥‥出て来ちゃったら倒さないわけにはいかないよね」
時折後方の自分のところまで飛んでくるキラー・ビーに怯えつつ、ユイはこちゃこちゃとしていてアイテムがいっぱい詰まった愛用の鞄からお手製の爆弾を取り出してクマに投げつける。
直後、派手な爆音が当たりに響き渡ったがクマは無傷。
「あ、あれ? 光るはずだったんだけど‥‥えとえと、これかなっ?! あっ!」
ピカッ!
小さな爆弾が鞄を覗き込むユイの目の前で光り、ユイは一瞬何も見えなくなる。
眼が見えなくて怖くって、よろよろと前に歩み出してしまったユイに、獲物とばかりにクマが襲い掛かる!
「危ないっ! 下がってろ!!!」
「熾火を纏う我が愛しき獣よ、悪しき者達へ制裁を与えよ、わが友を守りたまえ!」
カインがユイに振り下ろされたクマの巨大な右爪を大剣で押し留め、サクヤがそのカインをさらに屠ろうとするクマの左手を炎の召喚獣で後方へ突き飛ばす。
クマは炎の前に大きくのけぞり、激しく吼えた。
「いたっ!」
閃光から目の慣れてきたユイの首筋に痛みが走る。
「刺されたニャっ?!」
アヤカはユイの側を飛ぶキラー・ビーを即座に切り落とし、持ってきておいた毒消し草を取り出す。
「本当にうじゃうじゃとよく湧くな!」
アヤカが蹲るユイに毒消しを飲ませている間、フィオナが苛立たしげに二人の周囲に湧く蜂を次々と撃退してゆく。
「静なる風よ、我が祈りを聞き届けたまえ。その慈悲と慈愛の心で清浄なる風を届け給え‥‥」
ノアは戦いの歌から清浄なる風の歌に切り替え、神聖なる祈りと共に呪歌を歌う。
ユイの顔色がだんだんと良くなって行く。
だが同時に、仲間達の疲労が一気に増した。
「あらあら、これは早々にケリをつけるしかありませんねぇ」
クマと蜂の攻撃を避けながらクマの行動サイクルを見極めていたヒカルが剣を構えなおす。
その構えはまるで炎。
「獅子、紅蓮剣!」
燃え盛る炎のようにヒカルの金の髪が舞い上がり、カインとサクヤに押し留められていたジャイアントヒグマベアーを切り裂いた。
「これでとどめだな♪」
ヒカルの剣に倒れたクマの心臓に、センカの短剣が深々と突き刺さる。
●エピローグ
「へー‥‥結構やるじゃん、お前等。見直したぜ」
当初の猫はすっかり捨て去って、センカはヒカルの手料理にぱくつく。
「まあまあ、そういってもらえると嬉しいです。お替わりはいかがですか?」
ほほほと上品に笑いながら、ヒカルはクマ鍋をさらにセンカの器に盛る。
「ヒカルちゃんはほんとにお料理上手ニャね〜♪」
だきゅ☆
アヤカは猫尻尾をご機嫌に揺らしてヒカルに抱きつく。
「あらあら、そんな事をするとこぼれてしまいますよ?」
そういいつつもヒカルはアヤカの頭を優しくなでる。
ハンター達はジャイアントヒグマベアーを倒した後、残りのキラー・ビー達も見事殲滅し、すぐ側にあった蜂の巣から貴重な蜂蜜を手に入れたのだ。
「イカの次は熊と蜂蜜‥‥蜂蜜の方はポーションの原料なので別に良いのですけどね‥‥」
なんとなく微妙な気分になりつつ、ノアはキラー・ビーの蜂蜜を少量小瓶に詰める。
少量でも通常のポーションと混ぜて使用すれば回復量は格段に上がる。
「美味いか?」
少し離れた場所でヒカルと共に料理を作っていたサクヤがカインに尋ねた。
「匂いが鼻につかないな‥‥美味い」
獣人族のなかでも嗅覚の優れたカインには、クマの独特の臭いと蜂蜜の甘い香りは一歩間違うと味わうより先に鼻にくる。
長年の経験でそれがわかっていたサクヤは、みんなのものとは別個にカインの分だけ臭いが和らぐようにと香りを調節しておいたのだ。
「そうか‥‥」
美味しそうに食す相棒に、サクヤの頬も自然と緩む。
(「‥‥呼び声?いや。‥‥何処からか視線を感じるのですが‥‥?」)
ジャイアントヒグマベアーとキラー・ビーの特徴をモンスター辞典に書き加えていたセルムは空を見上げる。
空は何処までも青く、ただただ悠然とそこに広がるのだった。