GWShow:永遠のアイオンアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
深紅蒼
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
05/04〜05/08
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●本文
3月は年度末である。テレビの世界でも年度末には大がかりな番組改編があり、『超時戦記・アイオン』も予定通り全42話を放映し終わった。
これでもすっかり終わったと思っていたのだが、どうやら最後の仕事が残っていたようだ。それがゴールデンウィークでの野外イベントであった。
毎年この時期は行楽シーズンであり、多くの人出が見込める。それを当て込んで特別プログラムの公演を行うのだ。特撮ヒーローモノは丁度番組が変わったばかりの時期に当たるため、前作の出演者と新作の出演者が同時に舞台にあがる。そして『これから世界を守るのは任せたぜ!』的な内容でアクションを披露するのだ。舞台で芝居というよりは、ショーである。
「まぁアイオンの人気で舞台に親子連れを呼び、今度の‥‥なんだっけ? な後番組をよろしくねって企画なわけでしょ。わかってるわよ、ちゃ〜んとね」
佐伯逸子(さえき・いつこ)はどこから手に入れたのか、豪華なロケ弁を食べることに没頭していた。このチームの必要経費では到底賄えない豪華な弁当だ。
「佐伯さん。食べるより仕事して下さい。このままじゃGWのショーは出来ないんですよ。この危機的状況をわかってるんですか?」
佐伯の真っ正面で仁王立ちしているのは、佐伯には直の部下である清水章弘(しみず・あきひろ)であった。
「わかってるわよ。でもさ、シナリオライターが駆け落ちしちゃったのは私のせいじゃないでしょ」
「駆け落ちじゃなくて、夜逃げです!」
「えー‥‥ADの琴美ちゃんとの不倫が奥さんにバレて修羅場ったんじゃなくて?」
「琴美! 琴美が?!」
清水が頭を抱える。佐伯は取り乱す清水をちらっと見つめて笑った。清水がADの琴美を気にしていることは誰だって知っていることだ。
「私はそう聞いたよ。でもさ、夜逃げだなんて、木内ってば借金でもあったの?」
空っぽになった弁当箱を軽く横にずらすと、身を乗り出す。
「こ‥‥琴‥‥」
「ホラ、きりきり説明しろ!」
佐伯は手近にあった書類束で清水の頭や顔をはたく。乱暴な処置であったが、宙をさまよっていた清水の視線がなんとか佐伯に戻ってきた。
「え、えぇ借金ですね‥‥それがあったんですよ、めちゃめちゃ。街金とかサラ金とか闇金とかに‥‥って僕だってさっきメール貰って初めて知ったんです!」
清水は携帯の画面を佐伯に突きつけた。文章はごく短く、借金取りから身を隠す為、仕事が出来ないことを伝えていた。
「ふ〜ん、お金ないのに携帯代だけは払ってたんだ」
「プリペイドですけどね、ってどうするんですか? 台本ですよ、台本。佐伯さん、どこ行くんです?」
立ち上がった佐伯は部屋を出ていこうとする。
「エステとお見合いと合コンがあるの。これ、一生を決める大事なイベントなわけ。だから‥‥あんた何とかしなさい。任せるから」
「えー」
「清水なら出来る! 頑張れ! きっと琴美ちゃんも『素敵』って思う!」
佐伯は色っぽいと自分で思っていそうなポーズをすると、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「ま、マジですかぁ」
期待と不安がごちゃまぜになった清水がポツンと残されていた。
●リプレイ本文
●ホンを書かずに消えた男
GWに行われるヒーローショウのシナリオを書くはずであった木内が夜逃げした。原因は借金らしい。この際、木内の窮地はどうでも良い。ただシナリオがあればショウは開催出来るのだ。全てをなし崩し的に任された清水宏明であったが、自分でなんとかする余裕はない。それで格好の助っ人達に問題を丸投げしたのだった。
コンドル・魔樹(fa1119)は足早に廊下を歩く清水に食い下がっていた。
「いい加減にして下さいよ。忙しいです!」
清水はほとんど逃げていた。体格の良いコンドルに後を追ってこられていると、なんとなく『追い回されている』様な被害者意識が芽生えてくる。
「ったく。こっちだって好きで付いて廻ってるわけじゃない。木内ってライターの特徴や行動範囲、行きそうな場所、仲の良い知人の居場所‥‥とにかく情報がなくっちゃ探せないだろ?」
「こ、声が大きいですっ!」
コンドルと距離を取ろうとしていた清水はあわてて戻ってきた。
「オフレコなわけ?」
「勿論です。こんな事が公になったら佐伯さんに恨まれて再起不能にされます」
「‥‥そうなのか」
さすがに芸能界。裏方でも恐ろしいモノだ。真っ青な顔をしている清水を見ていると、まんざら嘘とも思えない。
「情報は今日中にメールします。それで良いですよね」
「わかった」
イヤとも言えずコンドルはコクンとうなずいた。
アレイ(fa0348)がコンドルとすれ違う。
「おまえも清水に会うつもりか?」
コンドルが尋ねる。
「あぁ。奴を捜すにも今のままじゃ雲を掴むような話だからな」
アレイは小さく肩をすくめる。
「清水もアレでなかなか大変そうだ。じゃあな」
仕事をしない上司と仕事を放棄して逃げる部下。よくよく考えれば清水こそが最もしわ寄せを喰らっているスタッフかも知れない。コンドルの常には見せない神妙な表情にアレイは小さく首を傾げたがすぐに向き直った。今は清水や他のスタッフに会わなくてはならなかった。
ロッカールームでは勇姫 凛(fa1473)が木内のロッカーの内部を調べていた。木内は常勤スタッフではなかったが、この製作会社との関わりが強くロッカーを1個持っていた。カギは清水が総務に掛け合って借りてくれた。
「へぇ〜案外ちゃんと片づけているだ」
ヒメは目を見開く。ごちゃごちゃとモノをぶち込んだだけのロッカー内部を想像していたのだが、意外にも品物は少なくてカバンが1個だけであった。持ち上げてみてもたいして重たくない。ヒメはカバンを持ち上げロッカールーム中央にあるテーブルの上に乗せる。カギはなくファスナーを開きカバンの中を見た。一番多いのは紙類であった。大小様々なメモ帳、ほとんど白紙の手帳、レシートの裏に細かい文字、TVシリーズの台本。そのあちこちに判読しづらい文字がチマチマ書かれていた。
「やっぱりね。あの人、気が付くと手当たり次第にメモしてたから、きっとなんかあると思ったんだよね。あ、最終回の台本まである。懐かしなぁ〜」
ヒメは安っぽい紙で綴じられた台本を手に取る。開くと見覚えのある文字ばかりが並んでいる。
ヒメの情報によればここはいつも木内が使っていた喫茶店らしい。早切 氷(fa3126)は木内と親しくしていた女性ADとその喫茶店にいた。名前を琴美と言う。
「あの、清水さんのお知り合いなんですよね? 清水さんは来ないんですか?」
知らない男性と二人っきりで喫茶店にいるという居心地の悪さからか、琴美は席に着くなりそう切り出した。
「清水さんは来ないよ。あの人が今忙しいのはわかってるだろう? だから俺達が清水さんの手伝いをしてるんだ‥‥早い話が木内さん探し」
「木内さんを探しているですか?」
さらに琴美の顔が強張る。
「あの‥‥私なんにも知らないです。じゃあ」
「待ってくれ!」
注文した珈琲も待たずに琴美は立ち上がる。引き留めようと手を伸ばすと琴美の表情は更に怯えた様に変わっていた。
「俺は借金取りじゃない。ただ、未完成のシナリオを木内さんになんとかして欲しいだけだ。アレがないとヒーローショウが開催出来ないんだ」
「‥‥え? 本当にホンを探しているんですか?」
琴美も木内のしでかした事は知っている。現場がどれほど困っているかもわかっている筈だ。
「詳しい話、聞かせて貰えるよな」
「‥‥はい」
琴美はもう一度席に座った。
諫早 清見(fa1478)は清水にも琴美にも会えた。借金の原因はわからなかったが、本人と奥さんの住所、そして実家の住所を教えて貰うことが出来た。現住所は阿佐ヶ谷となっているが、今は誰もそこに住んでいない。木内の実家は秋田で奥さんは山梨であった。2人はインターネットのゲームサイトで知り合って結婚したらしい。
「結婚式に出たことがある奥さんのお友達‥‥とかって穴場じゃないかな? そういうツテを頼りに潜伏していたりして‥‥」
なんとかして木内に会いたいと思う。会って、これからどうしたいのか聞き出したい。仕事とはいえ、嫌いでやっていたわけではないだろう。今までのアイオンの事も、新番組の事も気にならない筈はない。
「まぁ、行ってみるか」
無駄足になるかもしれないが、キヨミは歩き出した。
蘇我・町子(fa1785)が何度も見つめているのは古い木内の写真であった。製作会社に履歴書を提出した時に添付されていた2.5cm四方の小さな写真だ。褪せた色になっていたが、まじめくさった表情の木内がそこにいる。
「まったく‥‥どこにいるんだろう?」
お町は愛車『チョビッツ/種別:スクーター』で街を走る。キヨミやヒメ、コーリから断片的な情報は刻々と入ってくるが、潜伏先を特定するまでには至らない。闇金の取り立てから逃げる為に細心の注意を払っているのだろう。だとすれば、見つけだすのは難儀かもしれない。
「う〜ん。ショウは待ってはくれないっていうのに‥‥」
ヘルメットを被り、お町は再度スクーターを発進させた。
●新しい風
桐生董也(fa2764)は新しいシナリオを起こしていた。だいたいのコンセプトは清水から聞いた。そもそもヒーローショウに小難しいストーリーや伏線は要らない。幼児達が視て素直に楽しめる単純明快なモノで良いのだ。トウヤはある程度頭の中でプロットを組み立てるといきなりコンピュータに向かった。エディタを起動させとにかくキーを打ちまくる。
「見せ場はジャドウの3兄弟が司会のおねーさんを人質にとって客を脅す‥‥これでいいな」
「それでお客さんがアイオンを大きな声で呼ぶんですね?」
伊集院・まりあ(fa2711)がトウヤに尋ねる。
「そうだ。『大きな声』じゃないと駄目っていうのが、まぁお約束だな」
「お約束なら、2回か3回は『アイオン!』って呼んで貰わなくてはステージに出て行けませんね」
「‥‥そうだな」
会話をしながらもトウヤの指は休み無くキーを叩いている。
「区切りの良いところで休憩して下さい」
まのあは茶と茶菓子を近くのテーブルにそっと置いた。
別室では蒼流 凪(fa3623)も新しい脚本の作成をしていた。内容は行方不明になった三人のアイオン。しかし新たな危機が地球を襲う。そこに現れたのは二人の美少女戦士。彼女達が新しいアイオンであった‥‥というものだった。
「やっぱりここは男性の心をグッと掴む美少女登場‥‥1人はロリータ系、1人はエロ格好いい系でしょう」
ナギは手を止めて画面を見つめニッコリ笑った。
木内が仕事に戻ることはなく、木内が書いたシナリオがショウで使われることもなかった。全面的にトウヤのシナリオが採用され、ごく細かい部分で佐伯と清水の手が入った。無事にGWヒーローショウは開催され、子供達の思い出となって泡のごとく消えていった。