鬼神忍者 赤鬼丸アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 塩田多弾砲
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/20〜03/24

●本文

『鬼神! 其は破壊の化身! 鬼神! 其は妖かしを倒す剣! 鬼神! 其は、悪なる力で悪を討つ者!
 光よ轟け、炎よ叫べ! 鬼神忍者、ここに見参!』

「‥‥ってなタイプの特撮ヒーローは、どうかと思いましてね」
 いかつい顔の企画プロデューサー、岩面(いわづら)が、ミントティーを優雅に飲みながら提案した。彼は、顔は怖いが内面はその顔に似合わないものを持つことで、ちょっとした有名人だった。
「舞台は現代じゃなくて、過去‥‥そう、江戸時代あたりかな。といっても、架空の江戸時代だから、今現在の技術も、カラクリとして出しても良しとして‥‥」
 岩面(いわづら)PDの手元にある企画書。その概要は、以下の通り‥‥。

『大江戸八百八町。
 江戸市民が平和に暮らしている平和が続く毎日。
 しかし、妖怪「悪鬼大将軍」が復活し、暗躍を始めた。
 悪人と手を組み、幕府の転覆を企む悪鬼大将軍とその腹心・妖怪忍者たち。

 そのような中、ある忍者たちが幕府の命を受け、彼ら妖怪たちと戦っていた。
 鬼の力を身に付けた、最強の忍者たち。彼らは鬼神流と呼ばれる一派であった。

 そして、若き鬼神流忍者が、悪の妖怪たちに戦いを挑む。彼の名は、火村 力丸。
 妖怪忍者と対峙した時、彼は忍法鬼神変化にて、鬼神忍者「赤鬼丸」に変身! 愛刀「火炎丸」を手に、悪の妖怪を倒すのだ!』

「‥‥ふむ、悪くはないんじゃあないかな。設定もまあまあだし。で、これのパイロットを撮りたいわけだな?」
 芸能エージェントの舟耳が言った。彼らは公私ともに知り合いであり、友人であった。
「ああ。それで集めて欲しいのは、アクション俳優に特撮監督だね。それも、本格的な殺陣ができる演技指導者も欲しい。本格的な特撮忍者活劇‥‥って作風の特撮ヒーローを目指しているんだ」
「‥‥ふむ、もう少し内容を詳しく聞かせてくれないかな。どういうものなのか、もうちょいと教えて欲しい」
「いいとも。第一話の概要は、こんな感じだ‥‥」

『‥‥人知れず佇む、悪鬼大将軍を封じた塚。稲妻が走り、封印が割れて、その中より復活する悪鬼。

 それから数日後、江戸市内では、夜な夜な肝臓を抜かれ死んでいる人間の死体が見つかった。
 そんな中、そば屋の岡持ちしている青年は、商店のお嬢である友人のお百合から話を聞く。
 ここ数日、邪眼一味と名乗る強盗団が金持ちから大金を盗んだり、人をさらったりして回っていると。家も狙われるんじゃあないかと、不安がるお嬢をからかう青年。
 やがて青年。人知れず文を受け取る。それには「指令」と書かれていた。
 青年の名は、力丸。火村力丸といった。

 お百合、その晩に自分の屋敷に何者かが入り込み、千両箱を盗んでいくのを目撃。さらに、彼らにさらわれる。
 夜の江戸を逃げていく邪眼一味。その影を追う、影が一つ。

 影‥‥力丸は頭の中で反芻していた。
「鬼神流よりの指令。悪鬼大将軍の復活。ここ数日の人さらいと強盗は、悪鬼大将軍の手の者、邪眼一味の仕業。
 鬼の力をもって、彼らの本拠地をつきとめ、これを討て」
 
 江戸市外の、森の中。
 そこのうち捨てられた屋敷。邪眼一味はそこを根城にしていた。
 誘拐された者たちとともに、お百合は一味の首領と相対する。
「お前たちは、我らの人質だ。お前たちをつかって、金を儲け、力を蓄え、江戸を我らのものにしてやる!」
 一味の者たちが正体を現した。彼らの顔は、アリのそれだった。妖怪忍群、アリ下忍!
 そして首領も、お百合や人質たちの前にその正体を現す。それは一つ目の怪人!
「悪鬼大将軍が一味、妖怪忍者・邪眼一ツ目! ちょうど腹が減ったところだ、お前らのうちの一人の生き肝をもらおう。俺は人間の肝が大好物なんでな!」
 お百合に手をかける一ツ目!

 しかし、一ツ目の腕に突き刺さる手裏剣。現われるは覆面の忍者。
「逃げよ!」
 アリ下忍を倒し、人質たちを逃がす忍者。
 しかし、忍者=力丸は、アリ下忍と邪眼一ツ目に囲まれる。
「貴様、何者だ!」
 彼らを前に、変身する力丸。
「忍法・鬼神変化!」
 炎とともに変身! そこには、鬼と化した力丸が。
「光よ轟け、炎よ叫べ! 鬼神忍者・赤鬼丸! ここに見参!」
 忍法火炎手裏剣、忍法爆炎陣など、炎を操る鬼神忍法でアリ下忍を次々に倒していく。
 邪眼一ツ目と一騎打ち! 妖怪忍法・邪眼光弾にて、目から光線を放つ邪眼一ツ目。更に、邪眼鉄球を振り回す!
「火炎丸・炎上!」
 自身の刀、火炎丸の刀身を炎上させる赤鬼丸。
「忍法・鬼炎斬!」
 炎の刀を一閃させ、邪眼一ツ目は爆発炎上! やがて、そのまま影の中に消える赤鬼丸。
 その様子を見ていたお百合。

 次の日、お百合はそば屋にて、力丸にその事を話す。
「一体、赤鬼丸って何者なのかしら」とつぶやくお百合に、静かに微笑む力丸だった』

「で、赤鬼丸の忍法は、CGや合成による炎もそうだけど、実際に刀身を炎上させるってのもやってみたいんだよね。危険だし、やってくれる人がいるかわからんけどね」
 岩面(いわづら)の言葉にふむふむとうなずきつつ、舟耳はまとめた。
「よし。じゃ、こちらが募集するのは、赤鬼丸・力丸役、お百合役、邪眼一ツ目役に、アリ下忍役が四〜五人。特技監督に殺陣師‥‥ってとこだな。悪鬼大将軍役は無くていいんだね?」
「ああ。まだ今回は出番が無いしね。まあ、一〜二シーンほど入れてもいいだろうけど、その辺は現場に任せるよ」

「‥‥ってわけで、こういう募集が来た。鬼の忍者を演じたい奴、妖怪忍者を演じたい奴、それらを演出したい奴がいたら、どしどし応募してくれ。頼むよ〜?」

●今回の参加者

 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa1689 白井 木槿(18歳・♀・狸)
 fa1805 音丸吉花(13歳・♀・リス)
 fa2037 蓮城久鷹(28歳・♂・鷹)
 fa2681 ザ・レーヴェン(29歳・♂・獅子)
 fa3043 礼花(18歳・♀・トカゲ)
 fa3141 宵夢真実(23歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「シーン01 テイク05 アクション!」

『荒れ狂う風雨の中、人知れず佇む不気味な塚。
 稲妻が走り、封印が割れる。塚より復活する、何者かの影。逆光で分からないが、そのシルエットは凶悪そうなそれ。
 地の底より響くような、不気味な胎動めいた鼓動。
 両目らしき赤い光が、画面をにらみつける‥‥』

「‥‥カット!」
 その言葉とともに、尾鷲由香(fa1449)は息をついた。
「よし、そんなもんだろ。悪くない」
 殺陣師の蓮城久鷹(fa2037)が、悪鬼大将軍の衣装を着た尾鷲に声をかけた。彼は今まで鋭い視線を向け、撮影を見守っていた。
「思った以上に悪鬼っぽいぜ。あまり動かない演技も、なかなかサマになっている」
「へへっ、まあね。悪の親玉だったら、あんまりちょこちょこ動くのはどうかと思ってさ。カメラテストで重厚な感じが出たもんだから、うまく行ってよかったよ」
「んじゃ、イーグルはん。次はアリ下忍のコスを用意しといたんで、今度はそっちをよろしゅう」
 特殊効果と造形を担当している音丸吉花(fa1805)が、悪鬼大将軍のマスクと胴鎧を脱ぐ尾鷲を手伝いつつ言った。シルエットしか映らないとはいえ、手を抜いた造形ではない。むしろ、影や逆光で潰れてしまうモールドや彩色を見ると、映らないのはもったいないと尾鷲は思ってしまった。
「下忍の方は、昆虫みたいにちょこちょこ動いてくれよ。使う得物は、鎖鎌で良かったんだっけ?」
「ああ。主役と悪役を引き立たせるアリ下忍、見事に演じて見せるよ!」
 蓮城の言葉に、尾鷲は笑顔で返答した。

「シーン09 テイク07 アクション!」

『江戸の町並が映る。見たところ、平穏そのもの。
 そば屋「おに蕎麦」。客からの注文を聞く力丸。
力丸「へい、毎度!」
 そこに、お百合が。
お百合「かけ一丁、ネギ抜き!」
力丸「らっしゃい! ‥‥なあんだ、お百合ちゃんか」
お百合「なあんだ、じゃないですよ! 江戸中で大騒ぎの『邪眼一味』が、夕べもまた出てきたんですよ!」
 刷りたての瓦版を見せるお百合。邪眼一味の名とともに、その紋章が掲載されている。
お百合「浅草の呉服問屋の若夫婦が誘拐されたんですって! この事件、私が取材して大ネタをものにするわ!」
客1「おっ、でたでた。お百合ちゃんの大ネタ!」
客2「でもいっつも、出す瓦版は売れないんだよねえ」
客3「いい加減瓦版屋の真似事なんかやめて、お婿さんもらってお家の商売を継いだらどうだ?」
お百合「黙ってて! そのうち江戸一番の瓦版を出します! そういえば力丸さん、知ってます?」
力丸「ん?」
お百合「邪眼一味だけじゃなく、『肝抜き鬼』も出たんですよ。これは絶対、妖怪変化の仕業に違いないわ! 力丸さんもそう思いますよね?」
力丸「さ、さあ? ‥‥はい、かけネギ抜き」
 運ばれてきた蕎麦をすするお百合。
 そこへ、六郎が。
六郎「ああ、いたいた。お嬢様ぁ、そろそろ戻らないとあっしが旦那様に怒られるっすよぉ〜」
お百合「六郎? あーあ、もう見つかっちゃったの?」
六郎「ささ、早く‥‥。蕎麦屋さん、勘定はここに」
 お百合を連れて去っていく六郎。
客1「ごっそさん」
 銭を置き、去る客。銭を受け取る力丸だが、そのうち一枚を持って裏へ。
 店の裏。銭と思ったら、折りたたまれた文。それを広げる力丸。
力丸「(心の中で)鬼神流よりの指令‥‥!『ここ数日の事件は、悪鬼大将軍の手の者、邪眼一味の仕業。鬼の力をもって、彼らを討て』」
 文、燃えるようにして一瞬で消える。力丸の目つきが鋭くなる。

「カット!」
 お百合役の白井 木槿(fa1689)、六郎役の伝ノ助(fa0430)、そして力丸役の宵夢真実(fa3141)は、ほっと一息ついた。
 邪眼一ツ目役のザ・レーヴェン(fa2681)とアリ下忍役の礼花(fa3043)も、尾鷲とともにメーキャップを施し、客に扮している。
「さて、これからが最大の見せ場。みなさん、がんばりましょう!」
 お百合になりきったかのように、白井の口から溌剌とした口調で言葉が飛び出した。
「せやな。むくはんの言うとおり、わいらの仕事もここから厳しくなるで!」
 音丸は自分の両頬をばんばんっと叩き、気合を入れなおした。

「シーン14 テイク13 アクション!」

『夜。「白花商店」と看板が掲げられた商店。その内部。お百合の布団。横になって、眠っている様子。
 見回っている六郎。それを見て安心したようにうなずく。が、足音が小さくなると、お百合、目覚め飛び起きる。布団の下は、既に外出着姿。
お百合「夜のうちに調べて、何か手がかりを見つけなきゃ!」
 部屋から忍び足で出て行くお百合。が、庭に出ると、自分の屋敷の蔵に、大人数の賊が盗みに入っているのを見る。忍者装束で、その胸や額には邪眼一味の紋章が。
お百合「なっ‥‥どろぼ‥‥っ!」
 後ろから何者かに後頭部を打たれ、気絶するお百合。
 お百合を簀巻きにして、千両箱とともに運ぶ邪眼一味。夜の街中を進む。
 そして、暗闇からその様子を見つめている力丸。忍者装束姿で、口元を覆って顔を隠し、一味を追い始める。

「シーン19 テイク18 アクション!」

『お百合、目が覚める。
 そこは、誘拐された者たちが気絶させられ転がされている倉庫。
邪眼一ツ目「そやつらは眠っているだけよ。眠り薬が効いてな」
 見ると、周囲を邪眼一味に囲まれている。一ツ目、覆面で顔はまだ見えず。
お百合「あなたたち‥‥邪眼一味ね!?」
邪眼一ツ目「いかにも。お前、我らの事を嗅ぎまわっているようだな?」
お百合「答えなさいよ。あなた達はいったい、何をするつもり?」
邪眼一ツ目「知れたこと。お前たちを人質にして、大金をせしめるのさ。それで力を蓄え、江戸は我らがものに!」
 呵々と嗤う一ツ目。お百合、それを睨む。
 お百合、周囲を見回し、後ろの方に扉が開いているのを見る。一ツ目を見据えてから、そこに駆け出し、外へと逃げる。
お百合「すぐに捕り物方に来てもらうわ! あなた達もおしまいよ!」
 一ツ目、そのままお百合を逃がす。
六郎「‥‥お嬢様!? ご無事で?」
 外の広場にて、六郎がそこに。
お百合「六郎!? 大変よ、邪眼一味がいたの。すぐに‥‥」
六郎「大丈夫、すぐに‥‥お嬢様も殺してやりますよ」
 お百合、顔色を変える。
 後ろの方からはアリ下忍を従えた邪眼一ツ目が。そして、お百合の目の前で六郎、自分の顔をはぐ。アリ下忍の顔がそこに。
六郎「邪眼一味、アリ下忍衆が一人、六郎!」
 逃げようとするお百合を、押さえつける六郎。そして、一ツ目の前に差し出す。
お百合「六郎っ! ‥‥あ、あんた達なんかの思い通りになんていくもんですか! 今に罰が当るんだからね! 人として恥を知りなさい!」
邪眼一ツ目「その必要はない。俺たちは人ではないんだからな」
 覆面に手をかける。 
邪眼一ツ目「悪鬼大将軍が一味、妖怪忍者・邪眼一ツ目!」
 自分の覆面を取る一ツ目。そこには、凶悪にして醜悪な一ツ目の顔が。恐怖に顔を歪ませるお百合。
邪眼一ツ目「お前は、この俺が肝を食ってやる。貴様のような活きの良い小娘の生肝は、さぞかし旨かろう」
 手を伸ばす一ツ目、恐怖におののき、目をつぶるお百合!』

「よし、いよいよ真打登場だ。立ち回りは覚えているだろうな?」
 蓮城が、力丸=赤鬼丸役の宵夢に語りかける。切れ長の目を細めつつ、彼はそれに答えた。
「任せてください、ちゃんと頭に入ってますとも」
 蓮城に師事し、彼とともに妖怪忍者を演じる者たちは、それこそぶっ倒れる直前まで、へとへとになりつつも練習に励んだのだ。
 その成果を、今ここに示してみせる。宵夢は役になりきるべく、目を閉じた。

「シーン21 テイク14 アクション!」

『空を切り、一ツ目に突き刺さる手裏剣。
邪眼一ツ目「何奴!」
 木の上に、装束姿の忍者が。飛び降りると、すばやく走り、お百合を抱きかかえて逃走する。
邪眼一ツ目「逃がすな! 追え!」
 林の中を駆け巡り、廃寺に。お百合を隠す。
お百合「あ、あなたは‥‥」
 力丸、何も言わずに去る。

 廃寺の広場。その中央に降り立つ力丸。
 周囲にはアリ下忍が囲んでいる。全員が刀やクナイなどの武器を構え、威嚇するように動かす。その姿はアリのよう。
邪眼一ツ目「何者かは知らぬが、貴様は生かしては帰さぬ。殺される前に、名を名乗るがいい!」
 印を結ぶ力丸。
力丸「忍法、鬼神変化!」
 強烈な炎が周囲に発生し、力丸を包み込み炎上する。その様子にたたらを踏むアリ下忍たち。力丸の手や肌から炎が上がり、一瞬で全身を包む。
 気合と共に炎が吹き飛び、チリチリと残り火が忍装束を飾る。まるで紋様のよう。炎がはれたその中心に、赤い鬼の忍者が。
赤鬼丸「鬼神流忍者・赤鬼丸! ここに見参!」
 驚愕する妖怪忍者たち。
邪眼一ツ目「こしゃくな‥‥叩き殺せ!」
 アリ下忍が一斉に襲い掛かる。
 物陰より、その様子を伺うお百合。

「‥‥ふう、なんとか行きそうぢゃな」
 自らの造形物をチェックしつつ、音丸は最後の仕上げにかかっていた。
 本物の火炎を用いる剣の映像と、その演出。いくつかアイデアは出したし、それらもリハを行った結果、採用に。
「あとは、本編の撮影のみ。うまくいくといいが」
 赤鬼丸のスーツとマスクに直しをいれつつ、彼はつぶやいた。

「シーン25 テイク19 アクション!」

『アリ下忍、群れとなり襲いくる。
 それを迎え撃つ赤鬼丸。
赤鬼丸「忍法・火炎手裏剣!」
 小さな炎が発生し、塊となりて炎の手裏剣に。それらを気合一閃、投擲する。
 アリ下忍に命中し、炎上・撃破!
 火炎手裏剣の前に、接近できないアリ下忍。周囲を囲み、前後左右から襲い掛かろうとする。
 周囲を見回し、自身が囲まれた事を知る赤鬼丸。
 一斉に襲い掛かるアリ下忍。
赤鬼丸「忍法・爆炎陣!」
 印を結び地面に手をつくと、紅蓮の炎をあげ赤鬼丸が爆発、アリ下忍を一網打尽に、もろともに吹っ飛ぶ!
 爆炎の中から、跳躍し参上する赤鬼丸。その姿はまるで、炎を背負った鬼神か不動明王のごとし。
 アリ下忍、次々に襲いかかるが、赤鬼丸、背中の忍者刀を抜き切り捨てる。
 お百合、物陰からその様子を見ている。
お百合「す、すごい‥‥!」
 邪眼一ツ目、進み出る。
邪眼一ツ目「この小童が! くらえ! 妖忍術!『邪眼弾』!」
 一ツ目の目から、眼球が次々に飛び出す。それが弾丸のごとく放たれる。
 間一髪でかわす赤鬼丸。その後ろのアリ下忍がよけそこない、眼球が命中し爆発する。
赤鬼丸「忍法・火炎手裏剣!」
 火炎手裏剣と邪眼弾が、空中で衝突し、爆裂する。
邪眼一ツ目「ならばこれは受けられるか! 邪眼鉄球!」
 眼球が描かれた鎖付鉄球を取り出し、それを振り回し始める。
邪眼一ツ目「妖忍武術! 『大地崩し』!」
 鉄球を地面にたたきつけると、地面にクレーターが穿たれる。地面が揺れて豪快な火花が上がり、それはアリ下忍たちを巻き込む。
 アリ下忍、次々に倒れるも、赤鬼丸はなんとかかわす。
 忍者刀、火炎丸を、正眼に構える赤鬼丸。
赤鬼丸「火炎丸、炎上!」
 口から炎を吹き、それを刀の刃で受け止める。炎の刃となった火炎丸を構えた赤鬼丸、それを見て、たたらを踏むアリ下忍たちと邪眼一ツ目。』

「‥‥くっ!」
 熱いだけではなく、息ができない。
 火炎丸が炎上するこのシーンは、本物の炎を刃から噴出させている。後ろの方からはガスバーナーのホースが続き、炎熱地獄もかくやの赤い火が刃を舐めていた。
 が、思った以上に熱い。その発する熱の範囲が予想以上に広いのもそうだが、それ以上に周囲の酸素を炎へと持っていかれるので、息苦しいのだ。
 ましてや、その熱の塊を振り回し、演技をし、格好良く決めポーズを取らなければならない。
「‥‥負けません! 今の俺は、炎の鬼神忍者、赤鬼丸なんですから!」
 大気そのものを燃やし尽くすかのように、宵夢は炎の剣で空を切った。

「シーン28 テイク17 アクション!」

『次々に襲い来る、アリ下忍。
 が、炎の刃と化した赤鬼丸の火炎丸が、一薙ぎするたびに数人のアリ下忍が燃えて消滅する。
邪眼一ツ目「今度こそ食らえ! 『邪眼弾』!」
 再び、鉄球を地面にたたきつける。 
 が、赤鬼丸。跳躍してそれをかわすと、炎上した火炎丸を構える。
邪眼一ツ目「ならば、これはどうだ! 『大地崩し』!」
 鉄球を、赤鬼丸へと放つ。
 火炎丸の炎が、更に強烈な燃え方に。
赤鬼丸「はーっ!」
 気合一閃、鉄球と刃がかちあい、鉄球が真っ二つに。
 おののく一ツ目に、火炎丸を構える赤鬼丸。
赤鬼丸「忍法・鬼炎斬!」
 突進し、炎の刃で一刀両断! 斬る一瞬に火力が増し、刀身が数倍に膨れ上がって見える。
 縦一文字・唐竹割りで、真っ二つになる邪眼一ツ目。断末魔の叫びとともに、爆発炎上!
 振り返り、その爆発を背中にして決める赤鬼丸。
お百合「あれは‥‥鬼? それとも、忍者なの?」
 赤鬼丸、跳躍して闇の中へと消えていく』

「‥‥カット! お疲れ!」
 最後のシーンを撮り終え、皆は疲れきった顔でお互いを褒め称えた。
「さてと、必殺技のエフェクトはこれからが本番やな。きばるで!」
 音丸の背後に、やる気の炎が沸いて出る。疲れてはいるものの、まだまだ仕事は残っているのだ。

「これはすごいな、予想以上だ」
 岩面(いわづら)PDが、完成したパイロットを見て感心した口調で言った。
「特にこの炎。本物以上にすごいけど、CGなのかな?」
「それは本物ですよ、特技監督やみんなががんばってくれたおかげでね。ともかくこいつを、重役会議で通してくださいよ?」
 試写を見つつ、監督は言った。