禁断の図書室アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
塩田多弾砲
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/23〜03/27
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●本文
「男子禁制です」
シスターは頑として、拒み続けていた。
時として、宗教の戒律はトラブルを生むきっかけとなる。私心なく、規則を厳守するシスターは、それはそれで尊いもの。
しかし、それが仇となり、進めるべき調査や捜査が出来なくなる‥‥という事も往々にして存在する。
きっかけは、男子禁制の女学院にて。
聖白百合女学院高等部。
「本学院は、キリスト教を教育の基本精神とした学院です。その目的は、女子に高度の教育を授ける事で、真理と平和を愛し、自由と平等と博愛の精神を尊重した、知性ある女性を養成することにあります‥‥」というのが、学院の教育方針。
しかし、やや閉鎖的なところがあるのも事実で、「異性との交際は、間違いの元」などといったトンデモ校則がある事でも有名であった。女生徒が男の子に手を握られたくらいで、教師やシスターが大騒ぎするくらいだ。
というか、「男子禁制」が徹底された学院でもあった。学校の職員は皆女性。警備員や用務員や雑用係などに僅かに男性がいることはいるが、皆が盛りを過ぎた老人ばかり。彼らでさえ、女子の校舎に必要なく立ち入る事は許されていなかったのだ。
とは言うものの、女子校としては悪くなく、淑やかでたおやかな女生徒が多いことでもまた有名であった。
が、この学院で問題が起こったのだ。
白百合女学院の建立は明治時代から。全寮制で、都内から若干離れた敷地に校舎と寮を建設していた。
「自然に包まれた伸び伸びとした環境で、感受性に優れた豊かな精神を育むため」かはどうか知らないが、周囲には森林が生い茂り、一番近くの市街に向かうにしても結構距離があった。そのため、あまり部外者が立ち入るような事はない。
逆に、それが世間知らずで純粋培養なお嬢様を作り出すのにちょうどいい環境でもあったのだが。
問題は、そこで始まった。
旧校舎は老朽化したため、十年前より閉鎖。現在生徒や職員たちは、新校舎にて学園生活を営んでいる。
しかし、旧校舎は先代学院長の思い出が詰まった、大切な校舎でもあった。そのため、本来なら取り壊してしまうところなのだが、未だにそのまま残されていた。
リフォームする事で使いたいところなのだが、そうするには資金が足りない。仕方なく、ずるずると問題を先送りしている状況。
生徒や教師がここに近付いたり、中に入ったりする事は表向き禁じられてはいた。ほとんどの生徒がそれに従ったものの、「先代学院長様を偲び、こちらでそのお志を感じ取りたく思い、来てしまいました」といった理由で立ち入る者もおり、その気持ちを無碍に出来ない事から、ここに誰かが忍び込む事は暗黙の了解となっていた。
旧校舎に来る理由は色々。好奇心旺盛な生徒達の遊び場として、図書室に残されている古い文献を求めて、友人同士の秘密の会合の場所として、などなど。
その日の真夜中も、旧校舎の図書室にこっそりと来ていた二人の女生徒、能登さとみと植原保奈美の姿が。
二人は事の他、ファンタジーものや怪奇ものの小説やらマンガやらが好きで、時々ここに来ては、ランプや懐中電灯の光の中でそういった書籍を読み、空想にふけることが好きだった。
当然、学院の規則ではそのような本は禁書。故に、ここで読む事が、二人の密かな楽しみであった。さとみは、親友の保奈美とともに、その夜にも旧校舎図書室で怪奇小説を読んでいた。
が、その晩にはもう一人、図書室には来訪する者がいた。
大河原操。お堅い事で有名なシスターであり、美術部の顧問もしている教師。しかし彼女もまた、この場所で禁書を読む事を好んでいたのだ。
彼女の場合、それは美術書。と言っても、所謂裸体を描いた物。新校舎の図書室や美術室にもそういったものはあるが、旧校舎に置かれていたのは、もっと猥雑で淫靡なそれであった。
さとみと保奈美は、シスターの密かな楽しみを邪魔することなく、影から見守ることにしていた。シスターに、自分たちがここに来ていることを知られたら怒られるだろうけど、自分たちが名乗り出る事で、シスターが持っている秘密をばらすような事はしたくなかったのだ。
それに、それ以上に意外だった。普段、規則や戒律を守れと口うるさいシスターでも、こうやって規則を破る事があるんだと。それがなんとなく、嬉しかった。
二人が戻ろうと、旧校舎から出たところ。シスターの悲鳴が、図書室から響いた。
誰か人を呼んできましょうと言うさとみに、保奈美は「それよりシスターを助けないと!」と言い放ち、そのまま図書室へと向かっていった。
さとみが親友の元気な姿を見たのは、それが最後だった。
さとみが人を呼び、戻ってきたところ。
図書室には、破壊された痕跡。ずたずたになったシスターの礼拝服。縫い取りから、それは大河原操のものと判明した。
そして、大怪我を負った保奈美の姿。
救急車が呼ばれ、保奈美は入院する事になった。診断の結果、彼女は胸の部分を、何か鋭いもので引っかかれたとの事だ。それは獣の爪によるものに似ていたために、おそらくは入り込んできた野良犬か何かの仕業だろうと結論付けられた。
彼女は何とか一命をとりとめたが、未だにベッドから離れられない。そしてさとみは、戒律を破ったことを咎められ、謹慎を命じられていた。
が、大河原シスターは未だに行方不明。警察が周囲を捜索しているが、手がかりは全くなし。
学院内の捜査を‥‥と思った矢先、「この学院の校舎内は、男子禁制の戒律を守らねばなりません。女性の捜査官で無い限り、内部の捜査は断固拒否させていただきます」と、学院側から非協力的な言葉。
が、調べたものの、やはり手がかりは全くなし。行方不明になる理由も、その方法も分からずじまい。
保奈美の意識は回復せず、
「さとみ‥‥シスター‥‥大きな、虫‥‥さとみ‥‥逃げて‥‥」
と、時折つぶやくのみ。
周囲は彼女のこの言葉を、混乱しているゆえの発言だろうと受け止めた。ただ一人を除き。
事件記者である彼、大戸島三郎は、さとみの両親の友人であり、幼少時からさとみとは付き合いがあった。
今回、この事件をかぎつけた彼は、さとみに請われ保奈美の様子を逐一知らせる事を頼まれたのだ。が、保奈美のこの発言に、彼の嗅覚ににおうものを感じた。
彼は、隠していた秘密があった。獣人だったのだ。
「‥ま、そういうわけ。WEAの方でもこの事件は知ってるだろうけど、言いたいことは分かるよな?」
熱弁をふるう大戸島。
「俺は、さとみから保奈美の容態を見て欲しいって言われてるし、なにぶん男だから学院に入り込む事ができないんだな。だから、WEAの方で女性の捜査官を派遣して、ブヂュルブヂュルとブッ潰して欲しいんだ。あの子の親友を酷い目にあわせた便所虫‥‥ナイトウォーカーをな」
●リプレイ本文
「俺はアスカ。旧校舎の捜査に来たんだけど、あそこ入り組んでてよくわかんねぇんだよな。誰か詳しい人がいたら、後でこっそり話を聞かせてくれないか?」
「どうも〜♪ 僕は帰国子女の夜凪です、よろしくね♪」
「な、夏姫・シュトラウスと申します。よろしくお願いします‥‥」
「ごきげんよう、アスカさん、夜凪さん、夏姫さん」
「‥‥まあ、アスカさんって、個性的な挨拶する方なんですね」
「男の子みたいです。でもなんだか、素敵ですね」
「まあ、夜凪さんって、サラサラの髪で、とてもきれい。近くで見ても構いませんこと?」
「夏姫さん、どうかなさいまして? 恥ずかしがることはございませんのよ? あら、真っ赤になって、なんだか可愛らしいこと」
女生徒たちの反応を見て、夜凪・空音(fa0258)にブリッツ・アスカ(fa2321)、夏姫・シュトラウス(fa0761)は面食らっていた。
「え、ええっと。俺‥‥わたしと、友達になれたら嬉しいなあ‥‥なんて‥‥」
しどろもどろになるアスカ。見つめられると、ついつい語尾が小さくなってしまう。
「あ、あの、その‥‥え、えと‥‥」
さらにしどろもどろになる夏姫。仲良くしてくれるのはいいが、従来の恥ずかしがりやなところが災いして、ろくに質問できない。
夜凪とアスカは早速質問しようとしたが、
「でさ、最近起こった事件について‥‥」
「ねえ、クラシックはどんなものをお聞きになります? 私はドヴォルザークも好きですが、最近はムソルグスキーやドビッシーに夢中なんですよ」
「い、いやあ‥‥俺、いや私は‥‥」
「最近、どんな本をお読みになりました? わたくし、『愛と欲望のフーガ』などが最近よろしいと思いますの」
「そ、そうなの(っていうか何それ。読んだことないよー)」
「いつもどんなファッションなんですの?」「詩集はお好き? 私は自分で詩を書くんですのよ」「一緒にお菓子をいただきませんこと?」
質問する前に、質問されまくる状況に。人を疑わないというか、あまりに人懐っこすぎるのも考えものじゃあないか‥‥? と、つい思ってしまう夜凪。しかし、生徒達はそんな事おかまいなしであった。
「嫌われてはいないようだし‥‥まあ、いいよね。ナツキ」
「そ、そうですね。夜凪さん。ははは‥‥はぁ」
「な、なんだか視線が痛いようナ、注目されまくっているようナ」
「あの、私。さっき生徒さんから告白されちゃいました」
事件の調査のために学院内を調査する許可をもらい、様々な生徒に聞き込みしたり、各所を調べたりしているのは、ミカエラ・バラン・瀬田(fa0203)と、森守可憐(fa0565)。
生徒たちは疑うことを知らずに、素直に質問に答えてくれていた。いたのだが、
『あ、あの‥‥もしよろしければ、わたしと‥‥』
美しい外観の森守に対し、熱っぽい視線と赤らめた顔で告白する者も結構いたり。
「それはそれとして、取り立てて怪しいものは見つかりませんネ。にっくきNWの痕跡らしきものモ、今のところ皆無。となると、旧校舎そのものを調べなければ進展は無いかト」
「そうですね。一度集合して情報を整理する必要がありますけど、どうやら操シスターには怪しい点は見当たらないようですし。保奈美さんやさとみさんも、これといって怪しい点は見受けられないですし」
唯一の怪しい点といえば、二人の関係くらいだが。まあそれはおいといて。
孫・華空(fa1712)に日向 美羽(fa1690)、アニマ・ジーミック(fa2445)は、初老のシスターに食い下がっていた。
「頼むよ。調べるためにはどうしても内部の資料が必要なんだ。頼むから図面の閲覧を許可してくれってば」
孫が懇願するが、厳格なシスターは首を縦に振らない。信者であり、学院の関係者であり、祝福を受けた者でなければ、校舎の図面は見てはならないというのだ。
「どのような事があっても、部外者には見せられないのです。これは我が校の伝統であり、大切な規律。それはみだりに破るわけには参りません」
「ですが、そんな事をしていたらまた同じような事件が起こりますよ? 規律以前に、生徒さんやシスターのみなさんを守るためにも、図面を見て内部を調べる必要があるんです」
日向が食い下がる。
「いいえ、それでもだめです。ですから、あなた方にも祝福を与えます。そうすれば、あなた方も我が校の規律に従った、我が学院の関係者となりますから、閲覧を許可できます。そうでなければ、見せるわけには参りません」
「なら、シスターの祝福を受ければよろしいんやね? 受けはるんで、そのかわり見せてください。それならば構いませんやろか?」
「ええ、アニマさん。それではみなさん、こちらに」
アニマの言葉にうなずき、シスターは皆を教会の聖堂へと案内した。そこで説教と祈りと、長ったらしい儀式が行われ、ようやく解放されたのは一時間経ってからの事であった。
「‥‥おお、主よ。大いなる博愛のもとに、ここにまた新たな祝福を受けたる者が。聖なる仲間となったこの者たちを、主の名において称えん‥‥さあ、お顔をお上げになって下さい。あなた方は神の名において、祝福されました。これより、書簡へと案内します」
長い儀式は、三人を眠りにいざなっていたが、それをなんとか押さえつけ、皆は当初の目的を果たすべく書簡へ案内してもらった。
「で、内部はどうなっているかは把握したんだね?」
「ええ。このメモに記憶を頼りに書き写したけど、これを持っていけば参考になるはずですよ」
と、日向。
絵図面は、閲覧するだけでコピーを取ったりする事はできなかった。ゆえに、孫と日向とアニマの三人でそれをじっくり見て、記憶する事にした。
記憶したものを書き写してはならないとまでは言われていないし、そうでもしないと埒があかない。
「図面によると、図書室は二階の一番奥。内部は上下吹き抜きの三階立てで、ちょっとした広さを持ってはりますわ」
「三階建てと言っても、三階部分はバルコニーだけで、そこから時計塔に通じているね。で、その中にも書架があって、貴重な稀少本とか、貸し出し禁止の本などはそこに保管してあるらしいね」
アニマに続き、孫が言った。
「夏姫さんたちによるト、シスターや生徒さんの間では今まで何もあやしい事はおきていなかっタ‥‥となると、あの旧校舎でナイトウォーカーが出現し、それが元凶となったのは間違いないでス!」
ミカエラの言葉に、皆がうなずく。
「生徒達から聞いた話では、旧校舎での過去に怪しい事件なんか起きなかったそうだよ。ただ、操シスターは裸の美術書を読むのが好き‥‥ってのは聞いたけどね」
と、アスカ。
「考えられることとしては、時計塔の閲覧禁止の稀少本。その中にナイトウォーカーが潜んでおり、シスターはそれを読んでしまったんじゃあ‥‥」
夏姫の言葉に、一同は悩んだ。
「ともかく、今晩から図書室を調べましょう。その前に、皆さんも祝福を受けといて下さい。そうでもしないと、内部に入り込めそうにも無いですよ」
日向の言葉には、アニマと孫以外ウンザリした顔になった。
夜。
ミカエラ・夜凪・森守と、孫・アスカ・アニマ。そして夏姫・日向に分かれると、皆は旧校舎の図書室以外の部屋を探し始めた。
夕方辺りから調べ始めたものの、校舎内をしらみつぶしに探した結果、発見した。‥‥操シスターが中にはいない、という事を。
となると、図書室に何かが隠されているに違いなかろう。
電気はもう通じていないので、月明かりと手持ちのライトで光を確保するしかない。
一階部分をミカエラたち、二階を孫ら、三階と時計塔内部を日向と夏姫に別れ、獣化もしくは半獣化し、探索する。
「操シスターのボロボロになった服が見つかったのは、三階に続くバルコニーの階段前‥‥ここだそうです」
と夜凪。
「そして、保奈美さんが保護されたのは、一階のここ。見て下さい、爪の跡が」
森守が指摘したとおり、そこにはまるで、何かが覆いかぶさったために破壊されたかのような書架があった。
ペンライトで、あるいは各々の感覚で、何か怪しいものはないかと探る獣人たち。が、彼女たちの感覚器官には、事件を解決するための手がかりらしさは感じ取れなかった。
そいつが、二階の隅の方で現われるまでは。
「?」
受け持ちを変えて、二階を探索していたミカエラたちは、夜凪が何かの気配に気づいた事を知った。
「なにか、いまス?」
「いるよ、奥の隅のほうで、何かが動いた。それに、足音が聞こえる!」
耳をそばだてると、聞こえてきた。爪を立てているかのような、重々しい足音が。
そいつがいると思われる方向へ、皆は鋭く視線を飛ばす。
刹那。
「!」
書架が次々に、将棋倒しで倒れてくる。埃を立てつつ手前に倒れた書架、その先から、ナイトウォーカーが出現した。
奇妙で奇怪な咆哮とともに、そいつは迫ってくる。
が、既にそれを予知していた獣人たちは、迫るそれを迎え撃った。
夜凪が銃を、オーパーツたる銃を構え、撃つ!
弾丸は空を切り、後ろの壁が木っ端になっただけだった。そいつは空中に跳躍したのだ。
そいつは壁に爪を食い込ませると、そのまま上へ、上へと登っていく。が、三階バルコニーに降り立ったところには、日向らが既に獣化して待ち構えていた。
「うおおおおおおっ!」
金剛力増を発動させた虎獣人、夏姫が、時計塔へと向かう扉へと向かうナイトウォーカーに組み付き、投げた。
そのナイトウォーカーを、すかさず牛獣人、日向が突進し、強烈な頭突きを食らわした。
手すりごと破壊され、醜悪なクモにも似た化物が吹き抜け部分から図書室の一階部分へと落下し、床に叩きつけられた。
すかさず、アスカと孫がそいつを斃すべく攻撃する!
「食らいな!」
アスカの、バトルガントレットをはめた右ストレートが、ナイトウォーカーの身体に炸裂する。明らかに痛手を受けていると思わせる悲鳴が、化物の喉から響いた。
その隙に、本棚と化している壁を地壁走動で駆け上った孫が、二階バルコニーよりミサイルキックを放つ。
「うぉらああっ!」
本職のプロレスで鍛え上げたそれは、ものの見事に怪物の胴体部分に命中。いやらしい体液を噴出させた。
「これで、終わりでス!」
獣化したミカエラは、翼で宙に舞い上がる。蝙蝠獣人の彼女は、翼を羽ばたかせて空中より、悪魔か死神のごとく強襲した。
数秒後。怪物の身体は図書室の床に崩れ落ち、蝙蝠獣人の爪が生えた手はコアを握り締めていた。
「トリックを仕掛けようと思ったんやけど、引っかからへんかったなあ」
傷痕のメイクを剥がしながら、アニマは残念そうに言った。この姿で弱っているとナイトウォーカーに思わせ、そこから誘き出せないかと考えての事だった。
「ナイトウォーカーは斃した。けど、操シスターはどこにいるんだろう? まさか、こいつに食われた‥‥?」
「いや、見て下さい」
アスカの疑問に、夏姫が答えた。
「さっき組み付いた時に目にしたんです。首から、こんなものをかけたナイトウォーカーなんていません。間違いはないでしょうね」
「悲鳴は、襲われた時に操さんが上げたものだったんだね。そして同化され、保奈美さんを襲ったけど‥‥」
日向が夏姫の後を次ぐ。
「さとみさんが人を連れて戻ってきたので、図書室の本の中に紛れ込んだ‥‥。おそらくは、ナイトウォーカーは元から稀少本の中に潜んでいたんでしょうね」
森守が最後に、結論を述べた。
ナイトウォーカーの頸からは、鎖のついたロザリオがかかっていた。
そのロザリオには、はっきり刻まれていた。「MISAO OOGAWARA」と。
WEAには、ここの本を全て回収するようにと報告し、大戸島にも事の次第を報告した。
学院側へは、「野犬が忍び込んで、操シスターと保奈美さんを襲ったものと思われる」「操シスターは野犬に食い殺された、ひどく損壊した遺体で発見された」と報告した。どのみち、ナイトウォーカーに同化されたと言うわけにはいかないし、信じてもくれないだろう。
不幸中の幸いと言うべきか、保奈美は回復し、再びさとみと出会えるようになった。
操シスターの分まで長く生きて欲しいと、二人を見て皆は思った。
WEAによって書物が回収されてすぐ、旧校舎の解体が始まった。
そして、学院内の墓場には、操シスターの墓が建てられた。彼女の墓には、保奈美とさとみによる花が供えられ、それは絶える事はなかった。