鉄巨神ビッグアイアンアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 塩田多弾砲
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 2.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/16〜04/25

●本文

「‥‥カット! だめだめ! 全然なってない!」
 ミニチュアセットで、彼はNGを出した。
 セットにはビルが並べられ、本物そっくりの町並みがそこにはあった。その上に乗っているのは、巨人に扮した役者。
 否、巨大ロボを演じている役者。
 着ぐるみを着込んでいるのは、オーディションによって集められた若い役者たち。が、その全員に宮雨慶太郎監督は満足しなかった。
 演技はもちろん、動きも、体力も、監督の意向に沿えるものではなかったのだ。
 巨大ロボットを、着ぐるみで演じる。特撮黎明期からあるテクニックの一つ。だが、集められた若き役者達には、着ぐるみでの巨大ロボを演じるだけの力量は無かった。

「鉄巨神 ビッグアイアン」。それが、巨大ロボの名称であった。

『‥‥人類の支配と管理を導き出した、巨大思考システム「バイナリィ・インテリジェント・グローバルシステム」、通称「B・I・G」。もとは人類社会を平和に導くためにと製造されたそれは、人類支配のためにと行動を開始。巨大ロボ軍団を製造し、世界征服にのりだした。
 が、起動の寸前にシステム停止されるも、13年後にプロフェッサー・ダイバの手で復活。ロボット軍団を操って本格的に活動を開始。
 だが、BIGロボット軍団を総括する最強の巨大ロボ「ビッグアイアン」。それに行動命令を入力するI・コマンダーを託された少年、心行寺剛太郎。
 彼はコマンダーに声紋と遺伝子情報を入力し、ビッグアイアンを操れる唯一の存在になる。
 そして、自衛隊特殊部隊「STONE」と協力し、剛太郎少年はビッグアイアンとともに、BIGの繰り出す巨大ロボ軍団との戦いに身を投じるのだ!
 起て、ビッグアイアン。決めろ、必殺の「エンド・オブ・ユニバース」!』
「起動コード、入力! Stand Up!ビッグアイアン!」
「GAU!」

 と、このような内容の特撮番組が作られる運びになった次第。
 放送形態も、毎週30分‥‥ではなく、60分の作品を一ヶ月に一本、日曜の昼間に流すという、変則的な放送時間。
 美術も通常の特撮番組以上に、可能な限り凝ったもの。商業展開はあまり行わず、作品そのもので視聴率を撮ろうというコンセプト。
 どのみち、スポンサーは放送局そのものだし。

 そのためには、巨大ロボや特撮を含め、作品自体をしっかりと作りこむ必要があるのは必至。ではあるが、作品の真の主役とも言える巨大ロボの演技を行なえる者が、今のところ出てこないのだ。それが目下の、監督の悩みであった。
 結局、カメラテストの結果、オーディションにと集めた役者は全員却下。
 ロボットらしい動きを‥‥と要求したら、単に動きが固いか、動きが少なすぎてロボットらしさ皆無。
 動きを抑えさせても、人間らしさが出てしまいイメージと異なる物に。
 機械的な動きが出せたかと思っても、巨大感が出ずNG。
 フルCGでの合成画面も試しに作ってみたが、動きがあまりに軽すぎる。それに、CGである事が丸わかりで、画面が幼稚に感じてしまう。テスト用とはいえ、一昔前のTVゲームにも劣る代物でしかない。それに最大の理由は、自身のイメージとは著しく異なるのだ。
 じっくり時間をかければ、CGでの撮影もアリだろう。否、CGクリエイターから特技監督になった宮雨監督としては、それで撮る事も検討していた。だが現状のスケジュールでは、そんな事を行なっていたら時間がいくらあっても足りない。
 それに、「着ぐるみがうまくいかないからCG」ってのも、どっかのにわか特撮オタクの知ったかに便乗するようで気に入らない。
「‥‥もう一度、若いのを集めてみるか」
 監督はつぶやいた。テストフィルムをUPしない事には、作品そのものを立ち消えさせる事に他ならない。
「しかし、どうしたものかな。着ぐるみでロボットを演じられる奴はいても、それに加えて『巨大感』ってのも表現しなくちゃならないんだよなあ。敵ロボットとのアクションだって、出来るかどうかわからんし」
 かてて加えて、ビッグアイアンの着ぐるみ。今、それを作っている最中であるが、大きく重く、FRPなどを用いて硬質感を出し、内部ギミックも多く内臓している。
 もちろん、これはアップ用のディテールが細かいものの話。アクション用のもう少し軽め‥‥と言っても4、50kgはあるが‥‥の着ぐるみと、頭部や手足のアップ用の造形物はまた別物。重量感を出すため、実際に造形物もまたやや重めに作っていた。
 そして、BIGロボット軍団の刺客たる、巨大ロボット「プレッシャー」の造形も手抜はできない。こいつは巨大なローラーを前面に持ち、それをもちいて都市を押しつぶすという外見的特徴を持つ。
 ビッグアイアンの必殺技「エンド・オブ・ユニバース(EOU)」も忘れてはならないだろう。異次元から供給するエネルギーを腕に集中、重力子をエネルギーに変換し、正拳とともに超重力を目標内部に叩き込み、圧縮・消滅させるという技。
 この処理はCGで行なおう。ビームやミサイルなどで爆発させるより斬新だし、面白い映像が撮れるかもしれん。
 が、それにはまず役者が必要だ。ビッグアイアンとプレッシャーの着ぐるみに入ってくれる奴。
 あと、造形物やCGで手伝ってくれるスタッフも欲しい。ちょいと手が足りないため、技術を持ちなおかつ新鮮なアイデアを提供してくれるスタッフが欲しいところ。
 集まるかどうかはわからんが、アクションは起こさないとな。
「‥‥あー、もしもし? 宮雨だけど」
 彼は携帯で連絡を取った。電話先の相手は、彼の要求にこたえるべく、求人を出し始めた。

●今回の参加者

 fa0189 大曽根ちふゆ(22歳・♀・一角獣)
 fa0791 美角やよい(20歳・♀・牛)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2605 結城丈治(36歳・♂・蛇)
 fa2722 如鳳(49歳・♂・亀)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)

●リプレイ本文

「じゃ、先に料理始めてますね」
 郭蘭花(fa0917)は、日誌に記録をつけている大曽根ちふゆ(fa0189)へ言葉をかけ、台所へと向かっていった。
 時間が少々余ったため、大曽根は彼女とともにケータリングの準備を行なう予定だった。というか、彼女自身も空腹に胃の腑を苛まれ、すぐにでも何か食べたい気分であった。
 が、それをしばし押さえ込み、日誌を読み返し確認する。
 最初のページには、宮雨監督の言葉があった。最初の面通しの時、監督がかけた言葉だ。
「みんな、今回は参加してくれて感謝します。色々と通したいコダワリ、実現させたいイメージ、前例の無い映像を撮るため、苦労はあるでしょうが、みんなが参加してくれれば、それらを撮影できると思います。皆さんの力、僕に貸してください」

:大曽根ちふゆ記録:撮影日誌「スーツアクター」

「くそっ、こいつは‥‥すごいな」
 ビッグアイアンの着ぐるみを着込み、モヒカン(fa2944)はちょっとよろけた。
 ずっしりとした重さ、がっちりした質感、しっかりした造形は、まさに完璧に近い造形。
 それもそのはず、デザインと造形は、宮雨監督自らが手がけているのだ。アマチュア時代から注目される作品を取り続け、造形家から特撮の世界に入ったという経歴を持つ宮雨監督。着ぐるみはもちろん、人形アニメにCGキャラも手がけ、デザインラインも個性的なクリエーター。その彼が手がけたのだから、出来が悪いわけが無い。
 しかし、その分ずしりと重かった。着ぐるみの重量と期待とが、大きく重く、モヒカンの全身にのしかかる。
「‥‥いや、モヒカン。ある意味こっちの方がすごいぜ。何せ‥‥二人がかりだもんな」
 タケシ本郷(fa1790)もまた、根をあげかける。
 BIG殲滅部隊ロボ『プレッシャー』。巨大なローラーで全てを押しつぶし破壊する巨大ロボ。まさに物言わぬ、迫り来る巨大な破壊の悪魔。
 ヒーローを引き立てる悪役は、ヒーローそのものより重要にして演じるのが大変な存在である。プレッシャーも例外ではない。この悪の巨大ロボは、ローラーを装備した破壊体、ローラーを収納した格闘体の二種類の形態に変形する。もっとも、収納とはいっても、CGを用いたモーフィング変形なのだが。
 格闘体は一人で演じられる。が、破壊体はローラーを展開するだけでなく、本体も変形する。ケンタウルスを思わせる四足の体型に。巨大戦艦ないしは移動要塞といった趣である。
 必然的に、格闘体はタケシ及び美角やよい(fa0791)が交代で、破壊体は二人が一緒にはいり、前半身と後半身を演じる、という処理に。
「じゃあ、動くよ。1・2、1・2‥‥‥」
「だめだ、足の動きがあってない。やり直し!」
 破壊体の動きをあわせるため、二人は練習を繰り返していた。
 無論、ビッグアイアンも休んでいるわけではない。着ぐるみを着込み、彼は動きの練習を続けていた。
 巨大ロボは人型故、人に似て人とは異なる‥‥例えば、動きのタメや間、関節駆動等の動き。それらを意識して動かねばなるまい。歩行だけでも、身体の捻りを最小限に行うようにと、モヒカンは意識しての動作を何度も練習し、実践していた。
 かつて、日本初の怪獣映画のスーツアクターは、動物園で動物の動きを観察し、あの動きをものにしたらしい。モヒカンもまたそれにならい、工事現場の巨大な重機、工科大のロボット、それらマシンの動きを見て、研究し、着ぐるみの動きに取り入れていた。
「あいつらに負けないよう、俺もがんばらんとな」

:同・記録:撮影日誌「ミニチュアセット」

「SFXなどとは言わせない。ビバ、我らが手作り特撮!」
 テンション高めの如鳳(fa2722)であったが、それに同調するかのように結城丈治(fa2605)もミニチュアをこしらえていた。
 壊されるための建造物が、徐々に二人の手で作られている。現用兵器はミリタリー色を出すため、グレイの色彩だが、カッコよさは忘れずに。リアリティ以上にディフォルメしてダイナミズムを強調。自らの拘りを込めつつ、十数機めの戦闘機が完成した。F86セイバーのプラモデルを改造して作られたそれらは、壮観な眺めである。
「こいつがぶっ壊される時、このガラスがいかに砕けるか、見ものだぞ」
 如鳳がスタッフとの協力のもと、作り上げたのはガラス張りの巨大なビル。壊すのが勿体無いくらい美しい。すでに彼は、種々様々なビルディングを建設し終わっていた。
「結城どの、戦車や装甲車の方もお頼み申す。わしは、着弾の処理を始めますでな」
「わかりました‥‥って、現用の90式とエイブラハムなどを混ぜた、あれで良いんでしたっけ?」
「それぢゃそれ。あのデザインでな」
 既にスタッフの手配で、撮影プロップ用の模型は調達してある。そろそろ組まない事には、スケジュールに間に合わなくなるだろう。それに、戦車や戦闘機も一種類ではない。もっといろいろと製作せねば。
 セイバー戦闘機は別の造形班にまかせ、結城は戦車に取り掛かった。

:同・記録:撮影日誌「CGによる特殊効果」

 結城と如鳳の尽力に感謝しつつ、鬼道 幻妖斎(fa2903)は宮雨監督とともに、CGによる特殊効果を模索していた。
「監督。エンド・オブ・ユニバース(EOU)ですが‥‥、爆発するようなエフェクトでなく、『消滅』するような視覚効果が良いと思います」
「うん、僕も同じコトを考えていたんだけど、うまい事思いつかなくてね。光に包まれ圧縮・消滅ってのもありがちだし。けど、安易なモーフィング変形はチャチに感じられてね。どうしたものか、詰まってる状態なんだ」
 その言葉に、鬼道はやや絶句した。自分のひねり出したアイデアは、彼にとっては既出の、それも没案だという。鬼道は改めて宮雨に対し、クリエーターとしての引き出しの多さに感心した。
「自分も、まだまだ甘いということか」
 心でつぶやきつつ、二人は様々なアイデアを提案し、簡単な3DCGで試行しては、それらを保留したり、却下したりを繰り返していた。
 
 そして案が溜まり、もはやどん底と思われたとき。
「鬼道くん、今のをもう一度やってみせてくれないか?」
 混沌の渦が如き、禍々しい黒い光球。その内部は、回転する黒い渦巻き。それがプレッシャーを包み込むと、シルエットに。
 シルエットは圧壊するかのようにねじれ、縮小。それとともに黒光球も、空間そのものを侵食したかのように圧縮し、消滅。
「ふむ、面白いな。これをちょっと使ってみるか」
 宮雨監督の言葉に、鬼道は安心と、ある種の誇りを感じた。自分のアイデアが、才人に認められたのだ。

:同・記録:撮影日誌「演出・撮影プラン立案」

 モヒカンの歩みを、郭蘭花は余すところ無くカメラに収めている。
 まだ本撮影でなく、仮セットと仮着ぐるみでの、撮影・演出プランを練っている状態であるが。
「好き勝手に動いたりされたらたまりませんからね。だから、撮影プランはきちっとたてないと」
 そういいつつ、彼女は低アングルにカメラを構える。徹底して、見上げるような画面作りを行なっていた。見下ろすようなカメラワークは、ほとんど行なわれない。
「監督との協議の結果です。低い位置から撮ることで、着ぐるみの巨大感を表現する、っていう演出プランがあるそうですよ」
 ビル街をなめ、その先にビッグアイアンの姿を発見する。そしてビルの間に立つ巨大なロボットに接近し、シルエットが徐々にあらわになり、ディテールをはっきりと映し出す。日常の中に現われる、巨大なる鋼鉄!
 また、タケシの提案「画質を落とす」‥‥というアイデアも検討するつもりだ。『画面のアラそのものが魅力のひとつになり、味となっているからではないか?』というタケシの言葉に感銘を受けた監督が、「ちょっとテストしてみてくれ」と郭蘭花に頼んだのだ。
 このシーンが実際に撮影された時、どういう映像になるのか。それを楽しみにしながら、そして頭の中で強くイメージしながら、彼女はカメラテストを行なっていった。
‥‥‥‥

「‥‥っと、記録終わりっと」
 大曽根は日誌を仕舞うと、料理にとりかかった。郭蘭花は料理がうまいと聞いていたので、どういう料理を作るのか楽しみでもあった。
 自分を含め、腹ペコのスタッフの胃の腑を癒すため、大曽根は台所へと向かった。

:同・記録:撮影日誌「完成作品・試写(その一部)」

:‥‥街中を、巨大ロボ『プレッシャー』が破壊している。
 格闘体プレッシャー、両腕を変形させ、巨大なローラーに。胴体を展開させて四速歩行の破壊体に。
 プレッシャーの足元を、トラックと自転車が逃げ惑う。トラックが転倒し、運転手が自転車に乗っていた男に助けられる。二人が離れると同時に、トラックをひき潰すプレッシャー。
 破壊体プレッシャー、街中を蹂躙する。そのローラーが、ビルを倒し、そして押しつぶしていく。後には、舗装道路のような、巨大な平地。
 破壊体プレッシャーを、戦闘機隊と戦車隊が攻撃する。着弾の爆発と炎が、プレッシャーをなめる。
 しかしプレッシャー、それをものともせずに都市を破壊し続けていく。両肩の砲塔からの攻撃で、空中の戦闘機隊も迎撃される。戦車隊もまた、ローラーの前にひき潰され、破壊されていく。
 I・コマンダーを持つ剛太郎少年、ガレキの中で、プレッシャーを見上げる。
 プレッシャー、剛太郎へと向かう。剛太郎、恐怖に震えつつ、コマンダーに叫ぶ。
剛太郎「STAND UP!ビッグアイアン!」
 剛太郎とプレッシャーとの間の空間がゆがみ、光り、その湾曲した閃光の中より、巨神が現出したかのように巨大ロボが出現する。
 それが降り立ち、周囲のアスファルトは吹っ飛び、ビルの窓ガラスは皆吹き飛ぶ。
 立ち上がるビッグアイアン。
 カメラアイが意思を持つ者のように、プレッシャーを見据える。
 剛太郎、呆然としているが、すぐに持ち直し、叫ぶ。
剛太郎「砕け、ビッグアイアン!」
「GAU!」
 重機が動くかのように、ビッグアイアン、両腕を振り上げ、機械音で咆哮する。
 がっぷりと組み付くビッグアイアンとプレッシャー。
 ローラーを振り上げたプレッシャー。それを振り上げるが、ビッグアイアンが両腕でそれをがっちり受け止める。
 そのまま、プレッシャーをひっくり返すビッグアイアン。
 プレッシャー、格闘体に変形し、両腕で殴りかかる。ビッグアイアンの表面に、強烈な打撃が加えられ、スパークが走るのを見る剛太郎。
 なんとかプレッシャーの攻撃を防御し、逆に殴りかかる。
 プレッシャー、負けじと両腕のみをローラーに変形させ、先刻のように上部からたたきつけようと振り上げる。
 何度もローラーをたたきつけるプレッシャー。ビッグアイアン、反撃できない。
 剛太郎のI・コマンダーにも「Warnig」と表示される。
剛太郎「がんばれ! ビッグアイアン!」
「GAU!」
 その言葉に、ビッグアイアン。力づけられたかのように、自身の豪腕で、プレッシャーの腕にパンチを食らわす。
 プレッシャーの片腕がちぎれる。ローラーを切り離し、片腕となるプレッシャー。
 逃げる暇を与えず、更にプレッシャーの胴体に、重いパンチを食らわすビッグアイアン。
 プレッシャーの胴体、大きくへこみ、後ろざまに吹っ飛ぶ。いくつものビルをなぎ倒し、プレッシャー、ふらふらした様子で立ち上がる。
 ビッグアイアン、それに対して身構える。
 剛太郎のI・コマンダー。その画面に表示される「Getting 『END of UNIVERSE』」の文字。
剛太郎「ビッグアイアン、『エンド・オブ・ユニバース』!」
「GAU!」
 ビッグアイアンの右拳が、赤熱するかのように光り輝く。
 プレッシャー、脚部や各所が破壊され、動けない。
 ビッグアイアン。突進し、剛腕をプレッシャーに叩き込む。
 暗く、禍々しい黒い光に包まれるプレッシャー。混沌そのもののような渦の塊に、プレッシャーは飲み込まれ包まれる。
 シルエットになったプレッシャー、それが渦に流されるかのように、小さく圧壊し、縮小する。それと同時に、黒い光球もまた圧縮。
 轟音とともに、空間そのものが侵食され、切り取られたかのように、プレッシャーは黒い光球とともに消滅。
 ビッグアイアン。体の各所から放熱し、体中を冷却するようにシューっという音を出す。
 ゆらゆらと、陽炎の様に辺りの景色を揺らめかせつつ、ビッグアイアン、剛太郎へと向かう。
剛太郎「これが‥‥父さんが残してくれた、僕の力? 父さんは、これを僕に託したと?」
 物言わぬ、ビッグアイアン。そのままビル街に佇み、剛太郎を静かに見下ろす‥‥。

「これを、地上波で流すと?」
 番組担当者は、そのクオリティに驚愕した。まるで、劇場用作品ではないか。
 視聴率は取れるかどうかは別として、彼は楽しみになった。この番組の反響を。
 きっと、局の連中や視聴者も、度肝を抜かれる事だろう。