魔斬騎士HAGANEアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
塩田多弾砲
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.8万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
05/11〜05/24
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●本文
騎士の鎧。
日本ではよく、コンピューターゲームやそれらに順ずる作品にて描写されているためか、どうにも「軽い」印象を与えている。
鎧の機能はただ一つ。外部からの攻撃を防ぐという、個人武装における防御の要。
が、実際のところ、鎧は「重い」。
着ぐるみに勝るとも劣らぬその重量は、着せただけで人間の命を奪う事も可能だろう。否、元が戦争の道具であった以上、それは可能だ。体力が無い者、戦うという「覚悟」ができていない者、自らが戦士という殺戮者の「覚悟」を知らぬ者には、鎧を着る能力のみならず、資格も無い。
「RPGで低レベルの戦士が装備できないのは、体力以外にそういう事情があるんだろうな」
目の前の鎧を見るのは、その「覚悟」をある程度理解した男。彼は命のやり取りを、別の所で行ってきた。それゆえか、武器の凄さ、武具の鋭さに関しては一家言あった。
「ふむ、こいつには必要だな。戦士として、騎士としての『覚悟』が」
鎧は、着る者に『覚悟』を要求する存在だった。たとえそれが、フィクションにおける戦いであっても。
「魔斬騎士HAGANE」
秋からの新番組として、製作が決定した作品。
「‥‥人知れず、暗闇に存在する闇の魔物。
それは現実に存在していた。人を襲い、人を喰らい、人を穢し、人を嘲り、人に害なすために。
太古より悪魔とも、妖怪とも呼ばれていたそれら。別の世界からの存在ゆえ、それらは別なる者たち……『アザーズ』と呼称された。
アザ―ズの目的は判然とせず。その行動や理念、活動の内容や内訳は混沌混濁、どれも全く共通しない。ただ一つ、『人に災いを与える』という一つを除いて。
百華絢爛、千差万別。人を殺すも食うも、人を穢すも嘲るも、人を堕落させるも悲しませるも、その方法に同じものなし。
アザーズは、並みの力では歯が立たない。魔を断つ魔の鋼‥‥魔鋼だけが、彼らを傷つけ、彼らを倒せる。魔鋼の鎧を纏い、魔鋼の剣を携えた騎士。アザーズは、魔鋼を操る魔斬騎士でしか倒せない。
そして、魔斬騎士になれるのは、魔鋼そのものの意思を聞いた者のみ。
善悪に関係なく、魔斬騎士として選ばれた者は、魔鋼のもたらす力によって不老不死に近い存在となる。が、魔斬騎士として死ぬまで戦い続けなければならない。それは、孤独の戦いを永遠に続ける事と同義。
魔斬騎士を擁護し、管理し、支援し、そして拘束するは、秘密結社『IRON』。
その目的は、アザ―ズの殲滅と人間社会の維持。その目的のためならば手段を選ばず、善悪や倫理は、鉄のごとき硬き決意と精神の前には無意味。
『黒金 鉄也』。強き意思を持ちながら、それをいかに使うか分からずにいた青年。正義という愚行も、邪悪という蛮行にも、興味を示さず認めない彼は、『将来現われるであろう、自分が守るべきものを守るため』。ただそのためだけに魔斬騎士となる。
彼は魔斬騎士・鋼(ハガネ)として選ばれた彼は、アザーズと戦いをここに決意した」
‥‥とまあ、こんな感じでパイロットフィルムの製作が決定したわけだ。
子供向けというより、若干上の年齢層。特撮ファンはもちろん、熱心な特撮ファンではない20代の男女もメインターゲットに。
というか、子供向けっぽい雰囲気をなるべく感じさせないような作風を狙う、との事だ。正義や悪といった二元的な視点でものを捕えず、力ある魔物同士の戦い、ぶつかり合いというコンセプト。
そして、「アーティスティック」「アダルト」。アートとして、絵作りを優先させた作品にしたいというのが監督や製作者の意向。
放送時間帯は、深夜。金曜または土曜の深夜に、芸術作品に匹敵するような華麗にして流麗、剛勇にして蛮勇な物語を放送する予定。
で、造形も張り切った。張り切りすぎて、色々な意味でものすごいデザインの鎧が出来てしまった。
魔斬騎士「鋼(ハガネ)」の魔鋼鎧・鎧羅(マコウガイ・ガイラ)に、武器の魔斬剣・断斬(マザンケン・ダンザン)。
プロデューサーの目の前にあるのは、検討用にと手早く作られたダンボール製の鎧羅であるが、それを本腰入れて造形した暁には、強化プラスチックやグラスファイバーなどはもちろん、金属もたっぷりと用い造形されることになる。つまりは重くて、並大抵の役者ではハガネを演じる事はかなわない、という事だ。
スポンサーの担当が特撮ファンで、破格の製作費を出してくれるのは良い。良いが、そのために別の意味で苦労しそうである。
「なんとかこれを撮る事が出来る『覚悟』を持ったやつらを探さないとな。まずは‥‥」
主人公、黒金鉄也役。善でもなく、悪でもない難しい役だ。凶悪に重い鎧を着込み、アクションをこなせ、なおかつ顔は二枚目系。暑苦しさを感じさせない、しかし他者を見下したような冷たさはなしで‥‥っと。
主人公のサポート。秘密結社「IRON」の監査官、谷和原玲子。クールビューティってなタイプで、任務のためなら冷酷になれるが、どこか人間らしさも残した女性。
鎧羅の化身である、鋼手輪・口鉄(コウシュリン・コウテツ)。魔物を模した腕輪で、自らの意思を持つ。刻まれた顔部分が動き、喋る事で鉄也とのコミュニケーションを行なう。通常から鉄也が腕にはめており、軽い道化師的性格なれど、言葉は刃物のごとく鋭い。これは、声優にて声を当ててもらう予定だ。
アザーズ「ザッハーク」。「人間の脳を食らい、人体の一部をコレクションする」事を目的とした奴。ビジュアルは、普通の人間に、両肩に蛇が生えている。で、本性を表したら胴体も恐ろしくおぞましい姿に。こいつは、人間体の第一形態、本性表した第二形態、下半身が大蛇の最終第三形態。
第一と第二は、特殊メイクとスーツ。ザッハークの両肩の蛇、及び第三形態の全身はCGで描く予定‥‥。故に、造形スタッフも募集だな。
鎧羅や断斬、口鉄、ザッハークのメイクとスーツ。これらを一手に引受ける造形作家は、実力と根性、覚悟がある奴が必要だな。もちろん、CG作家もまた必要だ。
おおっと、演出も忘れちゃならん。撮影スタッフも腕に覚えのある、野心的な奴が名乗り出てくれたら望ましいが。
今回の話は、「夜な夜な現われるザッハークを待ち伏せし、それと交戦。ザッハークの隠れ家である廃墟に追い詰めるも、本性を現されて苦戦。が、魔斬騎士・鋼に『鋼着』した鉄也は、廃墟を舞台にザッハークと戦い、これを倒す」。
パイロットにしては、上出来だろう。後はこれを実際に作り出し、放送へとつなげる者たちが必要だ。
プロデューサーは、番組放送の希望とともに、求人を出した。覚悟が出来ている者たちを期待しつつ。
●リプレイ本文
「さて、それではお互いに自己紹介といこうか」
発売予定の、「HAGANE」の玩具‥‥アクションフィギュア、ないしはその原型模型を前にして、会議室のスタッフ一同は互いの顔を見つめあった。スポンサーの担当者・海老沢志郎はまだ若く、かなりの特撮ファンだと自称している。実際、学生時代には自主制作映画も撮っていたという。
普通のヒーローものは、いくらでもある。しかし「HAGANE」は、アダルトテイストでやってみよう。主人公は決して「正義の味方」ではないが、だからといって利己的ではない、ちょっぴり複雑な人物に‥‥というのが、海老沢の提案であったのだ。
「じゃあ、俺から。魔斬騎士『鋼』のスーツアクター、九条・運(fa0378)だ。俺もまた、覚悟は出来ている。鎧をまとい、戦う覚悟がな!」
「華坂瀬 朱音(fa0742)です。谷和原玲子を演じます。難しい役ですけど、精一杯演じたいと思います」
「ザッハーク第一形態を演じる、美角やよい(fa0791)です。色々な意味で大変だけど、がんばります」
「雨堂 零慈(fa0826)。ザッハーク第二形態、並びに第一形態の雄蛇の声を演じる予定だ。今日はひとつ、よろしくお願いする」
「はい、黒金鉄也役の河辺野・一(fa0892)です。わたくしのモットー、『何事にも体当たり』で、今回も努めさせていただきます!」
「ADの日向 美羽(fa1690)です! 衣装の手配から、雑用一般を受け持ちます!」
「スティグマ(fa1742)といいます。鋼手輪・口鉄の声とナレーションを担当します」
「うちは皐月 命(fa2411)さかい。セットの作成から、CG以外、美術全般を担当させていただきますわ。特撮命の『覚悟』見せたります!」
「ベルタ・ハート(fa2662)よ。ザッハークの雌蛇声と、第三形態のメインボディ役を務めますわ」
「最後ですね。雨宮慶(fa3658)です。雨宮はCG全般を担当する予定です」
「ふむ、それなりに覚悟の入った連中のようだな」
プロデューサーの蟹島は、自分の考えが思わず口をついて出てきた事に気づいた。忙しくなるだろうが、それと同時にわくわく感がせり上がってくる。
その感覚が良きものであるだろうと、彼は実感した。
「‥‥アクション!」
ナレーション「月が雲に覆われ、町は闇に包まれた。暗闇の中で暗躍するアザーズ、ザッハークは人々を狙い闇夜の町に降り立つという。ザッハーク、それは人々の脳を喰らい人体を勲章の如く集める者。許されざる非道に立ち向かうべく、秘密結社IRONの玲子は自らが囮になると決めた。決着は月明かりの下、灰色に染まる街で‥‥そう、今から始まる」
玲子、夜の街を歩いている。周囲には人気が無い。
しかし玲子、訝しげな目つきで前方を見る。
彼女の視線の先には、道端で座り込んでいる男の姿が。酔っ払いが眠り込んでいるかのように見える。それに近付く。
玲子「‥‥(息をのむ)」
男の額には穴が穿たれ、その眼窩には眼球がなかった。
はっとして、振り向く玲子。しかし、後ろには誰も居ない。が、向き直ったとたん、目の前に青白い肌の人間(ザッハーク第一形態)が。
黒い闇の中、闇に溶け込むような衣装の中、病的に色白い肌。その眼差しも生気が無い。両肩が、奇妙に膨れ上がっている。
男声「お嬢さん、怖がってんだろ〜? もっとざっくり怖がらせ、そのあとでしっかり殺してやるからよ」
女声「まあ、私と私には、関係ない事だけどね。‥‥今の嘘、怖がってくれた方が、美味しくいただけるわねえ‥‥」
変質した声「(本体の口からで喋る。男か女か、判然としない)幸運ダ。二匹メノ獲物、腹イッパイ食エル。これくしょんモ、増エル」
そのまま、玲子へと歩み寄る。
玲子「‥‥(小さく)、鉄也、出番よ」
踵を返し、そのまま逃げる。が、いつの間にか、目の前にそいつが先回りして現われる。
無表情のまま、舌なめずり。そいつの両肩から、粘液にぬめる蛇の頭がひとつずつ鎌首をもたげて伸びる。威嚇するように、それぞれの首、シャーっと吼える。
玲子、逃げるが、その顔には恐怖の表情は無い。
男声「逃げろ逃げろ。恐怖と絶望感は、脳味噌の良いスパイスになるもんだ」
女声「濃い目に味付けしましょうね。そして、感極まったところを‥‥楽しみだわ」
本体声「でざーと、ヲ、食ウトシヨウ」
すっと、静かに玲子を追うザッハーク。
玲子、逃げながら、口元に笑みを。
粗大ゴミ置き場。
玲子、逃げつつも、行き止まりに。周囲には鉄くずが積み上げられ、行く手を阻んでいる。
玲子が振り向くと、その先にはザッハークが。
男声「どうした? 逃げないのかな〜?」
女声「さあさ、惨めに命乞いでもしたら? 生きたまま、内蔵から食べるか、外側の皮膚から食べるか、悩むわね。うふふふふ‥‥」
本体声「オシマイ、ダ」
玲子、それでも不敵に笑う。
玲子「‥‥鉄也、そろそろ出てきなさい」
ザッハーク、もしくは両肩の蛇。「?」という感じで互いに見つめ合う。
鉄也「既に、ここにいる」
ザッハーク、右手を見上げると、屋根が。その屋根に、満月を背にした人影が。ほの浮かぶ男の姿。
手には、ステッキ。哀れみもなく、怒りもない眼差しで、ザッハークを見下ろしている。
鉄也「口鉄、奴で間違いないか?」
左腕をあげ、はめている何かに問いかける鉄也。
口鉄『ないない、間違いないって! 見ての通りだ、ゲロみてーにプンプンしてやがるぜ』
左腕に嵌めた、複雑でまがまがしいデザインの腕輪。その甲の部分には魔物らしきものの顔が彫られ、陽気な口調で喋っている。
口鉄が画面に大写しされる。それとともに、「鋼手輪 口鉄」の文字が画面に。
ザッハーク「(男声女声同時に)お前、一体!?」
鉄也、飛び降りる。そのまま優雅に着地。ステッキ、実は仕込み杖で、鞘を払いフェンシングのそれのように身構える。
鉄也「黒金鉄也。ただの、騎士だ」
その構えから、只者でないと確信するように、警戒するように下がるザッハーク。本体の顔、険しい表情に。
口鉄『へへっ、やっこさん、どうやら本気モードみてえだぜ?』
ザッハーク、吼える。そのまま本体の表面がロウ細工のように溶けていき、別のデザインに固まっていく。
両肩の蛇はそのままに、その胴体は無数の蛇が絡まりあい構成しているかのように、グロテスクなデザイン。その頭部もまた、先刻の人間体を微塵も感じさせない。
そのグロさを見せ付けるように、画面に大写し。「アザーズ ザッハーク」と、文字が大写しになる。
玲子、思わず顔をしかめる。
口鉄『うっひゃー、ねーちゃんかと思ったのに、ブサイク面のオッサンかよ! ったく、コイツの腹ン中にはおさまりたくねーな!』
ザッハーク第二形態。近くに転がっていた鉄パイプを拾い上げる。腕から小さな蛇が無数に湧き、鉄パイプに巻きつき覆う。覆われた鉄パイプ、奇怪なデザインのロッドに。それを棒術めいた構えで構え、ザッハーク襲い掛かる。
ザッハークの棒を、鉄也、細身の剣で払い、逆に斬りつける。しかし、両肩の蛇が噛み付こうと仕掛け、防戦一方。
ザッハーク「(三声の合成)無駄だ。お前の攻撃など、我が前には無意味なる行為。恐怖とともに、死ね」
鉄也、苦戦しているかのように顔をしかめる。
口鉄『鉄也、遊んでねえでとっととやっちまえよ!』
鉄也「そうだな」
鉄也、鞘の隠しボタンを押す。剣の鞘が展開して変形し、弓に。細身の剣を矢としてつがえ、放つ。
ザッハーク。薙ぎ払おうとするも、剣は胴体に命中。ザッハーク、痛みに吼え、黄色の血を流しながら闇の中に消えていく。
鉄也、それを追う様子を見せない。玲子、物陰から出てくる。
玲子「鉄也! 逃がすなんてどういう事!」
口鉄『安心しろって。細工は流々、仕上げをごろうじろ‥‥ってな。そうだろ相棒?』
鉄也、弓で地面を指し示す。そこには、黄色いザッハークの血痕が。それが、道なりに点々と残されている。
その先には、丘の上に立つ屋敷が。
鉄也「奴はあそこだ。行くぞ」
歩き出す鉄也。
屋敷。扉を開き、中に入る。
玲子「‥‥何よ、この臭い」
顔をしかめ、鼻をつまむ玲子。
鉄也、構わず先へと進む。懐中電灯を取り出し、それで光を当てながらついていく玲子。
広い台所らしき部屋に出る。そこには、無数の大きな広口ビンが。中には、濁った液体と共に何かが入っている。それのひとつに顔を近づけてみる玲子。
人間の手首が。思わず後ずさる玲子。
口鉄『へっへっ、どうやら奴さんのコレクションとご対面っぽいな。良い悪趣味してるぜ』
玲子「報告書の通りね。これ全部、やつが集めた人体の一部‥‥?」
鉄也「そのようだな」
鉄也、無関心そうにそれらを眺めている。
口鉄『あっちには腕、こっちには足。そっちは内蔵系か? きちんと分類、面に似合わず几帳面くさいな、やっこさん』
鉄也「あれは‥‥?」
彼が指差した先には、脳が入れられた透明なガラスケースが。
玲子「あんなものまでコレクションに‥‥、度し難い残酷な奴ね」
口鉄『いや、そいつは変だぜ、アイツは脳を食っちまう筈だ。なのになんで、あれだけ後生大事にとってあるんだ?』
鉄也、訝しげにそれを見るが、突然首に、何かの触手が巻きつく。そのまま、後ろのほうへとひっぱられていく鉄也。
玲子「鉄也!」
数々の部屋を引きずられ、ボロボロの内装の大広間に。
鉄也に巻きついたのは、ザッハークの腕。それが蛇の尻尾状に変化していた。
ザッハーク「ここまで追ってくるとはな‥‥だが、我らが追い詰められたのではなく、お前らが逆に追い詰められたと知れ!」
ザッハーク、腕を元に戻すと、先刻の棒を二つに折る。それらがモーフィングにて変形し、蛇を固めて作ったかのような双刃に。
それを両手で構え、さらに両肩の蛇が鎌首をもたげる。
玲子、鉄也の後を追って来る。
玲子「鉄也! 大丈夫なの?」
口鉄『心配は無用だぜ、それより、目の前の状況の方がマジヤバだって!』
鉄也「‥‥いくぞ、口鉄」
構えをとる鉄也。訝しげにそれを見るザッハーク。
ザッハーク「何をするか分からんが‥‥死ねぃ!」
双刃を、両肩の蛇が口に咥える。その状態で、鉄也に切りかかるザッハーク。
鉄也、静かに、しかし力強くつぶやく。
鉄也「‥‥鋼着」
左腕の口鉄をかざし、それが光り輝く。口鉄が侵食するかのように、鉄也の身体を覆い、伸び、包み込み、変形していく。そしてそこに、全身鎧の騎士の姿が。
迫り来たザッハークの蛇頭がひとつ、刎ねられる。
ザッハーク「!」
騎士の手には、剣が。
止め絵になり、画面いっぱいに「魔斬騎士 鋼 参上」と文字が浮き出る。
ザッハークのもう片方の蛇頭、切りつける。が、鎧に弾かれ、鋼は無事。
鎧をなめ、「魔鋼鎧 鎧羅」と文字が映し出される。
鋼の剣が軌跡とともに、蛇頭を切り落とす。剣のアップとともに、「魔斬剣 断斬」と、文字が映し出される。
重厚な鎧を着込んでいるにも関わらず、その動きは思った以上に敏捷。断斬を手に、鋼、突撃する。
ザッハーク、両腕でつかみかかるが、すれ違いざまに胴体を真っ二つに。床に崩れ落ちる。
玲子「やった!?」
鋼「まだだ」
ザッハーク、体内からの体液が吹き出て、それが固まるとまた無傷の状態に。
ザッハーク「無駄だ、その程度で我を倒せるか!」
大広間、まるでダンスを踊るかのように、ザッハークが軽やかに動いては鋼につかみかかる。鋼、そのたびにザッハークを斬り捨てるも、すぐに再生され、きりがない。
口鉄『おい! 玲子! あの脳だ、あれを撃て!』
口鉄の声に、ザッハークはぎくりとした動きを。玲子、そのまま戻っていく。
鉄也「‥‥そういう事か」
口鉄『ああ、奴はてめえの脳味噌が本体なんだろうよ。それを隠す目的で人体コレクションをしたんだろう。もっとも、やっこさんの趣味もあるだろうがな』
口鉄のセリフに被り、玲子、ザッハークのコレクションルームに。拳銃を取り出し、脳に向けて撃つが、脳、クモめいた脚を生やし、カサカサとすばやく逃げていく。
大広間に、ザッハークの脳がやってくる。本体の口が、脳を飲み込むかのようにして合体。それとともに、下半身が巨大な蛇のそれに、そして身体も膨れ上がる。
画面に、「ザッハーク 最終形態」。
ザッハーク「もはや、我が秘密を知ったからには生かしてはおけん! 念入りに食ってやる!」
両腕に、蛇をつかむ。それは伸びて硬化し、グロテスクなデザインの二振りの剣に。吼えつつ蛇行し、巨大な三頭の蛇がごとく、ザッハークが襲い掛かる。
鉄也、断斬を構える。その刀身が光り輝き、それと同時に突進する。
鉄也「‥‥鋼輝!」
上段に断斬を振りかぶりつつ、高く跳躍する鋼。刀身の光、長く大きく伸び、ザッハークを頭部から切りつける。
悲鳴にならぬ、獣の絶叫めいた声をあげるザッハーク。
真っ向から縦に両断され、その体は醜く腐敗し、消滅する。
鋼、ザッハークを見下すように佇む。
玲子「‥‥アザーズの消滅を確認。鉄也、今回のミッションは終了したわ」
鉄也「‥‥了解した」
口鉄『やーれやれ、一仕事終わったっと』
頭部のみ、鎧羅を脱ぐ鉄也。その表情は変わらず判然としない表情ながら、どこか穏やか。
屋敷から出て行く二人。しかし、暗闇の中で何かがうごめき、それが消えていくのが画面に見える。
ナレーション「アザーズ、闇に暗躍する怪奇の存在。それを討つは、魔斬騎士。魔道の力をその腕に秘めつつ、彼らは闇にむかい、闇を斬る。明日、彼らを待つ闇は、果たして何か‥‥」
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