宇宙刑事ガザン・1アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
塩田多弾砲
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
17.4万円
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参加人数 |
15人
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サポート |
0人
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期間 |
06/07〜06/16
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●本文
その企画書は、どこか違っていた。
惑星系犯罪組織を相手に戦う、宇宙警察から派遣された宇宙刑事!
発生した、摩訶不思議な空間を舞台に戦うヒーロー!
「宇宙刑事 ガザン(仮)」
企画書にでかでかと描かれたタイトルは、そう書かれていた。
『首領「テラー・ボス」をトップに頂く、宇宙犯罪者の集団。その名も、惑星系犯罪結社『ジャオン』。
虚空に存在する邪怨城を本拠に惑星間で犯罪を繰り返し、人的・物的資源を独占する彼らの次のターゲットは、太陽系第3惑星・地球となった。
空間発生装置によって、歪んだ精神世界を実体化、異次元空間として作り出す「邪怨空間」を発生させ、ジャオンが地球に迫る!
これを知った、フェニックス星系に本部を置く「宇宙警察機構」は、地球宙域担当の宇宙刑事を派遣する。
地球名、神行寺 剛。またの名を、宇宙刑事 ガザン。コマンドスーツを「剛着」することで、彼は宇宙刑事に変身し、ジャオンが送り込む邪怪獣に邪獣人デスノイド、戦闘員ライマーと戦うのだ。
戦え、ガザン! 剛着せよ、宇宙刑事ガザン!』
白銀に輝くコスチュームを着せた、GIジョーサイズの人形。その他様々なプロップが机の上には置かれている。
コスチュームは検討用ということで、決定稿のデザインを立体化したものだ。メッキ処理が美しい。
その他には、ガザンが操る各種のメカニック、ないしはそれらのミニチュア。
万能バイク・ロードライノス、特殊戦車ガリオン、超次元戦闘円盤ガリドラ―グ。
ガリオンとガリドラーグには分離機能があった。ガリオンは上下に分離し、それぞれスカイガリオン・ドリルガリオンに。
そしてガザンの母船であるガリドラーグは、やはり戦闘円盤ガリドと、宇宙鉄竜ドラーグへと分離。
ガリドから分離した部分が、ロボット竜ドラーグに変形する。これに搭乗することもできるが、鼻先に飛び乗って操る事もできる、とのことだ。
スポンサーの玩具会社とも連動し、これらは商品化されることになっている。が、ここにひとつ、お決まりの問題が発生していた。
「予算がなあ、今の状態でもかなりオーバーしておる」
金銭の問題をクリアしない事には、実現化することは叶わない。
上層部のお歴々の危惧ももっともだ。そもそも、ガザンのスーツは銀色のメッキ仕様。特にアップ用の電飾を内蔵したコスチュームは、それだけで予算が飛んでしまうほどの金食い虫であった。
もちろん、アクション用のスーツはまた別である。それに、敵側の方を造形するのもこれからだ。
そして、どんなに企画書で面白そうだと思われても、それを実際に映像化して見てみるまでは作品の評価はできない。現時点で、当初予定していた予算をはるかにオーバーしていた。
「しかし、予算をかけないことには、それなりに良い作品は作れません。なにしろ、第一話・二話にもなるパイロット版を製作するのには、これくらいの予算をかけないことには‥‥」
山平亨プロデューサーは、懇願するように、威嚇するように、そして訴えかけるように、言葉の端々に自らの情熱を乗せつつ熱弁をふるった。
そして、喧々諤々の話し合いの結果‥‥OKサインが出た。
「いいだろう、やってみろ。人選は君に任せる。ただし、この第一話の出来がひどいものに終わったら‥‥わかっているな?」
山平はうなずいた。つまりは、自分の命運もこの作品にかかっているというわけだ。
「時間は、一ヶ月近くはもらえる事になったか」
山平は、どういう人材が必要か、反芻していた。
まず、出演者。
ヒーロー側は、神行寺 剛ことガザン。その相棒の女宇宙刑事、セラー。上司のラトス長官(これはモニターに映るだけだから、兼任でもいいだろう)。
悪役達は、テラー・ボス。ないしはその声優。こいつはジャオン城のセットと一体化しているから、スーツアクターは必要ないだろう。
幹部のヘルター・プレデター。元宇宙刑事の裏切り者だ。
同じく、幹部格の邪獣人・デスノイド。
邪怪獣・キバクリーチャー。
戦闘員・ライマー兵。こいつは10人くらいで大立ち回りさせたいところだ。
ヘルターとデスノイドは喋るが、キバクリーチャーは吼え声のみで喋らない‥‥おっと、ライマー兵も印象的な掛け声をかけさせるってのもいいな。「ジャオ、ジャオ」とか(そいつは後で決めよう)。
忘れちゃいけない、ナレーターも要るな。
ストーリーはっと、
『‥‥とある山に、宇宙船が着陸するのを目撃する新聞記者・服部と木庭太一郎少年。少年は、両親が山奥にてUFOを目撃して、それを調べに行ってから行方不明になった事から、それが何か関係あるものと思い、服部記者とともに調査に出ていた。
太一郎少年の知り合いである神行寺 剛とセラーは、その話を聞いて驚き恐れるも、鋭い視線で何かを思う。
調査に向かうと、果たしてそこはジャオンの秘密基地だった。山の中をくりぬき、前線基地を製造していた。
そのなかに、労働者として誘拐された人々の姿があった。無理やりさらわれ、働かされている者たちの中には、太一郎少年の両親の姿も。
が、逃げ出す前に、ジャオンの幹部、そしてヘルター・プレデターに、キバクリーチャーが立ちはだかる。
もうだめだと覚悟したそのとき、剛とセラーが助けに来た。二人の活躍で、太一郎少年たちとさらわれた人々は助かるが、剛は捕まってしまう。』
「‥‥っと、全体の三分の一だが、とりあえずここまでだな」
このあと、剛着した剛=ガザンとジャオンとの戦い。そして邪怨空間内での決戦といくが、とりあえずはおいといてと。
裏方の人材は、邪怨空間の撮影やコーディネートができる人間が欲しいな。 物理的な事象や現象が当てはまらない、悪魔の空間。小屋の玄関に入ったら、見渡す限り地平線で、その空中に怪物の顔が浮かんでる。その口が唯一の出口‥‥みたいな、摩訶不思議空間を撮れる奴。
それから、造形スタッフ。ガザンのコマンドスーツに、ガリドラーグなどメカニックの模型。ジャオンの怪物の着ぐるみやコスチューム、ジャオン城の美術もまた必要だ。
特技監督もまた要る。CGを使ってもいいが、ここは模型を使っての迫力満点の映像でも良いな。
おっと、ガザンのロードライノスは、バイクを実際に改造し、乗れるようにせんと。
大変な撮影になるだろうし、準備も時間もかかろう。だが、この仕事はそれに値するだけの価値と、結果を残す事が出来るだろうと、山平は確信めいたものを感じていた。
きっと、うまくいく。自分の私費をあてても、この作品の撮影をしてみせよう。
決意すると、山平は電話をかけはじめた。
●リプレイ本文
山平プロデューサーは、セットを眺めた。
邪怨城の広間。ほぼ完成したそこで、雨宮慶(fa3658)はテラー・ボスを仕上げていた。
胡座した七頭十角六腕の巨人。鬼と獣をモチーフとして、全高4m。
その製作者は小さかった。小学生のような外見だが、才能と、仕事に対する情熱はでかい。
「あ、山平さん。これは雨宮の自信作になりますよ!」
「ああ、期待してるよ」
「‥‥? ああ、何か?」
「様子を見ておきたくてね」
黒ゴスロリ風衣装の美青年。音響関係を一手に手がける黒曜石(fa2844)は、やや無愛想に作曲していた。
「今、邪怨城のテーマを作曲中です」
「宇宙刑事側の伴奏はどうかな?」
「ほとんどできてます。後で確認よろ」
皐月 命(fa2411)は、ライマー兵の装備‥‥爪と銃、装飾品などのチェック中。
「プロデューサーはん。なんでっしゃろ?」
「音楽だが、後でチェックを。それと、提出する意見書は?」
「できてる思います。来てもらえまっか?」
「はーい、こちら衣装です〜‥‥きゃっ」
雑然とした控え室で忙しく行き来しているのは、日向 美羽(fa1690)。あぅあぅしつつ、ADとして勤めを果たしていた。
「あ、山平さん‥‥はうっ!」
「美羽はん。ちょい」
転んだ彼女を、皐月は助け起こした。
「みんなを集めてや。意見書の提出しますで」
「‥‥ライマー兵は君らか。で、ポーレット君はスタントもやるんだね」
山平は、提出された意見書を吟味した。
宵夢真実(fa3141)、敷島ポーレット(fa3611)、九条・運(fa0378)。彼らを見ながら、PDは頷く。
「俺はガザンのスーツアクターもやります! 期待しててくれ!」
九条の熱さに、山平は好感を覚えた。
「君らは、剛に、ラトス長官。セラーに、太一郎少年だね」
次の四人は、伊達正和(fa0463)、天深・菜月(fa0369)、富垣 美恵利(fa1338)、タブラ・ラサ(fa3802)。
「あたしは、長官と服部由美子記者の二役です。難しいですが、頑張ります」
天深のやる気にも、また好印象を覚えた。
しかし、全てがそうではない。
「君らはジャオン側か。それぞれ、邪怪獣、ヘルター、デスノイド、それにテラー・ボスの声」
ブルース・ガロン(fa2123)、雨堂 零慈(fa0826)、西風(fa2467)、モヒカン(fa2944)。
山平は、現場での提案を採用する事も多い。没でも、妥当なら別の機会での使用も検討する。だが今回は、その選にもれた。
「ブルース君。これは?」
「邪怪獣は、ルビがキバクリーチャーと言う解釈をさせてもらった。その邪怪獣一号、『コウモリ闇獣・ダークストライク』をやらせてもらう」
「‥‥これでは使えない。没だ」
「待て、問題などないだろう?」
「大有りだよ。『邪怪獣』はカテゴリ、『キバクリーチャー』は邪怪獣の個体名。なぜ、それを確認せずこんな解釈した?」
「‥‥だが、コスチュームは完成してる、それで‥‥」
「再生怪人と言うが、全身を覆う衣装か着ぐるみ方式ならともかく、これでは蝙蝠獣人以外演じられん。アクターの限定は、再登場時の手間となる。更に、設定は文芸スタッフが苦労し作成したもの。熟読せず改変したのは、没に足る理由だ」
ブルースの返答を待たず、彼は雨堂と西風に向き直った。
「ヘルターは、どうだろうか?」と、雨堂。
「これは、前向きに検討しよう。西風君、デスノイドは言わば現場の行動隊長だ。老将でなく、別種の怪人と理解して頂きたい」
「では、フォン博士は不要ぢゃと?」
「‥‥監督との相談が必要だな。美羽くん」
「あ、はいっ」
「脚本家と監督をここに。邪怪獣とデスノイドが出せなくなったから、脚本と撮影プランの変更だ。皐月くん」
「なんでっしゃろか?」
「時間がない。邪怪獣の造形と演出に関し、緊急会議だ。雨宮くんも参加を」
不満な顔のブルースに、山平は付け加えた。
「君の意欲は評価する。だが、怪人はヒーロー以上に重要なんだ。わかってくれるな?」
「‥‥アクション!」
:海、自然、動物等の映像が流れる。
ナレーション「青く美しい豊かな星‥‥地球。だが、今地球に未曾有の危機が迫っていた。宇宙犯罪結社『ジャオン』が、その魔の手を地球に伸ばしたのだ!(ナレーションに被り、宇宙空間を進む邪怨城。通り過ぎた後の星々が黒く染まっていく)
それを察知した宇宙警察機構は、宇宙刑事を地球に派遣した」
ガリドラーグ内。インナースーツ姿のガザンとセラー。モニターに映っている、ラトス長官。
ラトス長官『惑星系犯罪結社「ジャオン」が地球を狙っているとの情報が入った。地球人を守るために最善を尽くせ』
剛「了解っ、宇宙刑事ガザン、着任しますっ!」
セラー「同じく、宇宙刑事セラー、着任します!」
剛「今回の任務は、君が相棒になるのか。よろしくな、セラー」
セラー「こちらこそね、ガザン」
ラトス長官『頼んだぞ、ガザン、セラー』
:地球。「空魔山」と立て札が立てられた山麓。
その山間を、小型の宇宙船が飛行。着陸し、内部からライマー兵が。
その様子を、木の陰から見つめる太一郎少年と、服部記者。
服部記者、手にしたカメラで、その様子を写している。
太一郎「あいつらだよ。僕の父さんと母さんを連れ去ったのは」
服部「最近起こってる、連続失踪事件。あれが犯人ね!」
しかし、ライマー兵たち。二人に気づいたのか、近付いてくる。
ライマー兵「ジャオ! ジャオジャオ!」
それを見て、慌てて逃げる二人。しかし、服部。カメラを落とす。
服部「ああっ、スクープが!」
拾おうとするが、すぐそこまで迫るライマー兵。しかたなく、逃げる服部、そして太一郎。
ライマー兵、二人が逃げた後に、落ちているカメラを拾う。
:邪怨城、王座の間。その中央に、テラー・ボス。暗いために、全容は見えない。
周囲には、ヘルター・プレデター。そしてフィン博士の姿が。
ヘルター「報告が入りました。空魔山の建設中秘密基地に、地球人の妨害が入った、との事です」
テラー・ボス「何? で、捕まえたのか?」
ヘルター「いえ、それがまだ」
フィン「ふん、ヘルターよ、使えん奴よのお。デスノイドの方がよほど役に立つ」
ヘルター、その言葉にむっとした表情を。
テラー・ボス「フィン、貴様の方はどうなっている。装置の調整は済んでおろうな?」
フィン「ご心配なく。既にドクチョウクリーチャー、カギヅメクリーチャー、コウモリクリーチャーなど、数体の合成準備が完了しています」
その言葉と共に、壁が開き、巨大なモニターに。映っているのは、濁った液体に満たされた巨大な瓶が並ぶ研究室。瓶には、それぞれ邪怪獣のシルエットが内部に。
テラー・ボス「よかろう、ならば作動させよ」
フィン「邪怪獣合成装置‥‥作動!」
ライマー兵が中央の邪怪獣合成装置を操作している。科学と魔術文様が混在した操作盤を操り、瓶内が光り泡立つ。
中央の瓶、飛び出して開く。内部の液体とともに、キバクリーチャーのシルエットが(逆光で、シルエットしか見えない)。
テラー・ボス「頼もしい奴よ、邪怪獣、キバクリーチャー!」
その声をうけ、キバクリーチャー。凶暴そうな吐息を響かせ咆哮する‥‥。
「‥‥やれやれ、なんとかゴマカせましたわな」
「ですねー。はあ、疲れた‥‥」
皐月と雨宮は、シーンの撮影が終わり一息ついた。山平と美羽が調達してきたのは、過去の別作品に使用した、怪人の着ぐるみ。
それらを用い、皐月と雨宮は「シルエットのみ撮影用」の邪怪獣を作り上げた。過去作品怪人の着ぐるみを流用し、パーツ追加、リペイント、胴体や手足の交換などを行い、新たな怪人の着ぐるみをこしらえ撮影したのだ。もちろん、急造ゆえ粗い出来だが、シルエットだけを見せるのには問題ない。
「これで稼げた時間を使い、邪怪獣とデスノイドのスーツを作るんだ。できるか?」
「やってみますわ、山平はん。雨宮はん、協力願います」
「はい、雨宮も尽力します!」
:喫茶店。
服部記者、新たなカメラを手にしている。向かいには太一郎。
そこに、剛とセラーが。
剛「よっ、太一郎君♪ ‥‥どうかしたのかい?」
太一郎「剛さん? なんでもないよ」
服部「? どちらさま?」
太一郎「近くに越してきた、神行寺剛さんに、従姉のセラーさん。剛さん、この人は服部さん。記者なんだ」
剛「剛です、へえ、記者さんなんだ」
セラー「よろしくお願いします。でも、なんだか元気ないですね?」
服部「こないだ宇宙人が空魔山に来て‥‥って、こんな事言っても信用されないわね」
太一郎「僕の父さんと母さん、宇宙考古学者で、あの山に調査に行ってたんだ。行方不明になっちゃって、警察とは別に僕と服部さんとで探してたんだけど‥‥」
服部「ま、信用してくれないわよね? でも、必ず写真撮ってみせるわ!」
剛「へえー、そりゃ楽しみだなあ」
おどけた様子の剛。しかし剛、セラーに鋭い視線で目配せする。うなずくセラー。
:空魔山。先日、ライマー兵と邂逅した場所。
そこを、あちこち調べている太一郎に服部。
太一郎「服部さん、こっち!」
狭い獣道を、どんどん進む太一郎。それを追う服部。
服部「ま、待ってよ太一郎く〜〜ん」
しかし、行きどまりに。その壁を悔しげに叩く太一郎。
服部「? 隠れて!」
近くの藪の中に隠れる二人。
入れ違いに、『ジャオ、ジャオ』という声とともに、足音が響いてくる。コンテナを持ち、それを数人がかりで運んでいるライマー兵たちの姿が。
ライマー兵、行き止まりまで来ると、近くの木の表面を外す。隠されたスイッチがそこに。
それを押すと、壁が開いた。そこから中に入り込むライマー兵たち。入っていくと、扉は閉まり、何事もないように。
太一郎、飛び出すと、そのスイッチを押す。
服部「太一郎くん! 危ないよ!」
太一郎「ここに、父さんと母さんがいるはずなんだ!」
扉が開き、中へと入っていく太一郎。迷う服部だったが、意を決し、彼の後を追う。
:空魔山、別の麓。木々に埋もれるように、巨大な洞窟が。
そこに、歩哨に立っている二人のライマー兵が。
剛とセラー。岩に隠れ見ている。
セラー「間違いないわね、ジャオンよ!」
剛「あいつらをなんとかしないとな。おそらく、太一郎くんのご両親も捕まっているんだろう。いくぜ!」
剛とセラー、こっそりと歩哨へと近付いていく。
一人め、後ろから来た剛からの一撃をくらい倒れる。驚いたライマー兵、振り返るが、
セラー「はっ!」
セラーの放ったハイキックを後頭部にうけて、こちらも昏倒する。
:洞窟内。
進む太一郎と服部。
やがて目の前に、巨大な空間が。そこは、巨大な機械が据え付けられていた。
太一郎と服部、その機械が部品を取り付けられ、組み立てられている様子を見る。組み立てているのは、人間たち。そしてライマー兵たちがそれを監督している。
先刻のコンテナから、部品を取り出し、二人に無理やり運ばせているライマー兵。
それを見て、立ち上がる太一郎。
太一郎「父さん! 母さん!」
その場にいる者全員が、太一郎と服部のほうを向く。
太一郎の父「太一郎? 太一郎なのか!?」
太一郎の母「だめ、逃げなさい!」
だが、その周囲をライマー兵が囲む。
服部「太一郎くん! はっ!?」
後ろを振り向くと、そこにも数十人のライマー兵。その中心に、ヘルターが。
ヘルター「ほう‥‥ねずみが紛れ込んだか。ちょうどいい、お前等も彼奴等同様に働いてもらおうか」
ライマー兵に押さえつけられる、太一郎と服部。
服部「こ、答えなさいよ! あなた達は何者! ここで何をしてるのよ!」
ヘルター、見下した表情で二人を見る。
ヘルター「お前達に言ってもわかるまい。我々には労働力が必要なのだ」
別の洞窟の影から、その様子を見ている剛とセラー。
太一郎「父さんと母さんを返せ! この悪党!」
ヘルター「ふん、子供だからと言って容赦はしない。連れて行け!」
もがく太一郎と服部を、連れて行こうとするライマー兵。
剛「セラー、きみはガリドラーグに戻ってくれ。すぐに指示を出す」
セラー「ガザン? でも、あなたはどうするのよ?」
剛「決まっている!」
剛、そこを飛び出し、手近のライマー兵を叩きのめす。
その様子に、振り向くライマー兵たち、そしてヘルター。
太一郎・服部「「剛さん!?」」
ヘルター「ふん、ねずみが増えたようだな。叩きのめせ!」
ライマー兵、四方から襲い掛かる。それらを叩きのめす剛。
その戦いぶりに、面食らうヘルター。
剛「服部さん、太一郎くん、助けに来たぜ!」
しかし、ヘルター。銃を抜き、剛の足元を撃つ。
剛、厳しい顔でヘルターをにらむ。
ヘルター「どんなに強かろうが、我々の前には無力だ。ライマー兵! 奴を殺さずに捕えろ! じっくり痛めつけてやる!」
同じく、銃を構えた多くのライマー兵が現われ、撃ちまくる。
剛、なんとかそれをかわすも、銃を突きつけられて動けない。
太一郎「剛さん! おまえら、剛さんを離せ!」
銃に囲まれ、動けない剛。それを心配そうに見つめる、服部に太一郎。
勝ち誇った顔のヘルター。それを睨み返す剛‥‥。
「‥‥なんとか、ここまで出来たな」
山平は一息つき、汗を拭った。
予想外のトラブルが発生したが、なんとかしてそれを回避した。
「なんとかできたは良いものの、手放しで成功した‥‥とは言えないな」
しかしいよいよ、変身シーンと戦闘シーン。そして目玉の、邪怨空間の描写が待っている。
出だしはちょっとつまづいたが、これからそれを挽回してやろう。この番組を待っている、世界中の子供達のために。