アクマン・パスタの魔物アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
塩田多弾砲
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
4.6万円
|
参加人数 |
10人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/08〜09/14
|
●本文
「ってなわけで、これを劇中で活躍させ、面白く見せてほしいわけよ」
特撮番組には、スポンサーは欠かせない。玩具会社からの出資を受ける見返りに、玩具作って売り出すっつー構図は、やっぱ続いていたりするわけでありまして。
とにもかくにも、色んな思惑がありまして、「おいらはアクマン」。結構視聴率的にも悪くなかったりするわけです。
表沢PDと、子笠原監督。今回二人に課せられたのは、スポンサーからの要望。
簡単に言えば、それを通さない事には、予算も大幅ダウンしたりするわけです。
「どんどんデーモンが近くに居ると反応する『アクアクケータイ』か。うーむ」
「あ、監督ちゃん。それだけじゃなく、もう一つ」
「あ? おいおい、まさかこれ以外になんか出せってんじゃあないだろうな?」
「そのまさかだ。別のスポンサーになってる食品会社があったろ?」
「ああ、あったな。『アクマンソーセージ』や『アクマンカレー』『アクマンふりかけ』とか出してるとこがな。フリカケはともかく、カレーはちょいと甘すぎてイマイチだったが」
「監督ちゃん、辛党だしねえ‥‥って、それはおいといて。そこが出してるパスタ。アクマン関連の商品ではないんだけど、新製品のパスタを遠まわしにアピールするため、スパゲティネタの話で一つ作って欲しいと言って来てるんだわこれが」
つまり、先方が行って来ているのはこういう事。
:玩具会社的には、「アクアクケータイ」をカッコよく使って見せて、新製品のアピール。
:食品会社的には「劇中でパスタを出す」事で、遠まわしにスパゲティのアピール。
「‥‥こういう事情に関わってると、つくづく『子供たちの夢云々』っつー言葉がむなしくなるな」
「それを言うなよ、監督ちゃん。金が無かったら作れるもんも作れないしな。俺たち特撮番組製作者たちは、身体は資本主義で出来てるって覚悟しとこう。でだ、具体的にどういうストーリーにするか?」
「うーん‥‥」
:スパゲティで何らかの事件が発生(「ラーメン食おうと思ったら、無理やりスパゲティを食わされる」「不良学生が煙草吸ってたら、罰として延々スパゲティ食わされ続け丸々太ってしまった」とか)
それをアクマンがマユミらと調べるも、一向に手がかりがつかめない。
アクアク大王から、アクアクケータイを渡されたアクマン。その機能を用い、どんどんデーモン・パスタヌキングを発見する。
しかし、パスタヌキングは強い。が、アクマンもまたスパゲティを食い、パワーアップ。パスタヌキングを倒す。
「‥‥と、こんな感じかな。話の細かいとこは、今回召集をかけるやつらにでも頼んでみよう」
「登場人物もな。つか表沢、パイロットの時に出した豆腐屋がいただろ? そいつみたいに、大盛タウンの住民でスパゲティを愛する(けどどっか変な)一般市民ってのを出してもいいかもな。日本かぶれのイタリア人シェフで、イタリアンパスタ拳法を使う奴(けど激弱)みたいな」
「だね。それで、アクアクケータイだけど‥‥」
『「おいらはアクマン」関連商品。「アクアクケータイ(仮)」
:劇中で、アクマンが使用する携帯電話。
:ケータイモードで、様々な情報を受信可能(内蔵AIと液晶画面で再現)
:どんどんモードで、どんどんデーモン反応をキャッチし、音と光で再現。
:使い魔のコウモリモード「オツカイバット」に変形可能。アクマンの使い魔として、自在に飛び回る。
「‥‥ふん、玩具としてはまあまあってとこか。ま、これが売れたら、俺たちの懐も潤うってもんだが」
「そういうことよ監督ちゃん。つーわけで、スタッフ募集するか?」
「しよう。集める人材は‥‥アクターは、アクマン、パスタヌキング、マユミ。最低この三人は必要だな」
「おじいちゃんと、あと必要だったら犠牲者たち。それにさっき言ったイタリア人のイタリアン料理シェフとかな。これらは無くても良いかな?」
「ストーリーの詳細を決める脚本家に、演出。あとは特技監督に造形と。そんなところか」
というわけで、またまたスタッフ召集される事に。
「今度は、予算も時間も結構余裕があるから、報酬もそれなりに出せるだろう。ま、ふるって応募してくれ」
「撮影うまくいったら、カルビ丼奢るよー♪」
●リプレイ本文
「監督、どうでっしゃろ?」
子笠原監督は、何度か印刷しなおされたシナリオに目を通していた。以前にも参加している皐月 命(fa2411)が書いたシナリオは、監督からの「もういっこう」という言葉に、書き直しては再提出という結果に終わっていたのだ。
「一考」か「一稿」か分からないが、何度書き直した事か。10稿めからは数えていない。並の者ならば根負けしくたびれ果てる事だろうが、彼女は並ではなかった。
「‥‥うん、良いね。これは良い。さっそく有珠・円(fa0388)くんにコンテを切ってもらってくれ給え。あと、撮影プランも立ててな」
「はいな、まかせてや!」
ひとつの仕事を追えた後、次の仕事が舞い降りる。それに疲れをいささかも見せることなく、皐月は新たな仕事へと邁進した。
「なるほど、監督からOKもらったか! よし、すぐにコンテ切るよ!」
スタジオでカメラテストをしていた有珠は、皐月からその事を聞くと即座に飛んで帰っていった。コンテ用シートを手に取るのを忘れず。
スタジオの隅では、紺屋明後日(fa0521)が着ぐるみの調整を行なっている。大道具以外にも、彼は着ぐるみの調整を今回受け持つ事になっていたのだ。
今現在行なっているのは、アクマンの着ぐるみを観月紫苑(fa3569)が実際に着ての、不具合の修正・調整であった。
他にも、アクアク大王のコスチュームも調整する必要があるだろう。以前のコスチュームはありもの衣装を寄せ集めた代物であったが、今回はちゃんと新規に作り出されたもの。が、それでも以前にアクアク大王を演じたアクターと、今回のアクター、鬼道 幻妖斎(fa2903)は体型が異なる。出番が少ないとはいえ、調整に手を抜くわけには行かない。
そして、リリン(fa4550)、木崎 朱音(fa4564)、フィミア=イームズ(fa0036)らは、スタジオの隅で、たった今渡された脚本を読み始めていた。それぞれパスタヌキング役、成長したマユミ役、イタリアンシェフ役である。
特に木崎は、アクアクケータイの音声とナレーションも行なうため、ホン読みは重要である。声の具合や調子。それらをいかに魅力的、効果的に行なえるか。それを念頭に置きつつ、彼女は熱心にシナリオを読み続けた。
「‥‥アクション!」
:イタリアン「トラットリア大盛」。
店内、その壁にシルエットが。
徐々に少女のそれから、大人のそれに。カメラが動くと、成長したマユミに。
マユミとアクマン、向かいになって食事している。アクマン、お構い無しにピザを食ってる。
アクマン「うん、うめーじゃねえか。商店街の福引で、ここのタダ券当てるなんざ、マユミも大したもんだぜ」
マユミ「‥‥ええと、アクマン? これもひょっとして、どんどんデーモンの仕業とか?」
アクマン「それ以外考えられねーだろ。つーか驚くのはメシ食ってからにしろって」
マユミ「‥‥あのね、アクマン。ごはんとわたしと、どっちが大事なのよ?」
アクマン「メシ‥‥(マユミの「アクアクエッサイム、ワルイコメッサイム」の呪文が)‥‥どわっはっはっは! や、やめろ! くすぐったい!」
マユミ「‥‥まったくもう。なんでこんなコトが起こっちゃったのよ」
そこへ、シェフがくるくるっと回りながら登場。
シェフ「オー、聞いて下さいマセーノ。これには深い深い理由がアルレオーネ」
アクマン「はあっ、はあっ‥‥あんま聞きたくもねーが、聞いておくか。で? 何が起こったって?」
シェフ「よく聞いて下さいマシータ。それは忘れもシナーイ昨日のヨルーネ‥‥」
:回想シーン
夜。店の看板を「クローズド」にするシェフ。
ところが、厨房に戻ると、パスタが無い。
シェフ「オー、どーゆーこっちゃーネ、コルレオーネ? パスタが全くナイナイコッタ、なんてコッタパンナコッタ」
くるくるっと回りつつ、悩む顔のシェフ。
ふと見ると、台所に飾ってあるタヌキの置物がふわっと浮かぶ。その周辺をトランプや鍋やパスタがぐるぐると回り、やがてパスタヌキングが登場。
シェフ、それを見て倒れて気絶。
シェフ「‥‥ってなワケあルーヨ。これーがその怪物なのーネ」
へたくそな似顔絵を、二人の前に見せるシェフ。
マユミ「‥‥えっと、お料理はともかく、もう少し絵の勉強した方が‥‥」
アクマン「で、そいつはどこいった?」
シェフ「今、外にイルーネ」
指差した先には、パスタヌキングにパスタ食わされ、太ったり痩せたり、巨大化したり縮小化したりしてる一般市民たち。
パスタヌキング「どわーっはっはっは! 困ってる人を助けるのは楽しいパスタヌ! ん?」
振り向いたそこには、アクマンとマユミが。
パスタヌキング「おお、ひょっとしてアクアク大王んとこのボンクラ息子パスタヌ?」
アクマン「ひょっとしなくても、アクアク大王んとこのアクマンだ! ってゆーか、何してやがる!」
パスタヌキング「見ての通り、困ってる人を助けてるパスタヌよ〜♪」
マユミ「あの〜、みんな更に困ってるみたいだけど」
パスタヌキング「気のせいパスタヌ。さー、みなさんもっとパスタ食うパスタヌよ〜♪」
パスタヌキング、鍋の胴体から皿に盛ったパスタを取り出す。
アクマン「おい、少なくともマユミは困ってるぞ!」
パスタヌキング「そうパスタヌ? そちらのお嬢チャン、昨日『はやく大人になりたいなあ』って言ってたパスタヌよ?」
:回想シーン
TV見ているマユミ(少女)。
画面に映るモデルたちのファッションショー。
マユミ「はー、素敵だなあ。あんなのが着れる大人になりたいなあ」
(回想終了)
マユミ(大)「‥‥た、確かに言ったけど‥‥でも! 頼んだわけじゃあ‥‥」
パスタヌキング「(聞いてない)さーて、他に困ってる人はどこパスタヌ〜?」
アクマン「てめー! わけわかんねえ事やってんじゃねえ! とっととドンブリに戻してやる! オタスケカプセル召喚!」
上空に、オタスケガラガラが。それが回り、オタスケカプセルが出てくる。アクマン、それを受け取る。中からハリセンが。
アクマン「アックマ・ハリセン! ツッコミ・ダイナミック!」
しかし、振り下ろしたハリセン、パスタヌキングが手に持つ鍋蓋の盾に止められる。
パスタヌキング「どわっはっはっは〜、その程度でボクちゃんのパスタ人生にピリオドを打つのは片腹痛すぎて笑っちゃうパスタヌ〜♪ スパゲ・ダイナミック!」
逆に手に持つ巨大パスタすくいにげしげしとやられ、叩きのめされる。
パスタヌキング「でもって、アルデンテのコマスペシャル! ほいっ」
茹でたパスタでぐるぐる巻きにされるアクマン。
アクマン「てめー、何しやが‥‥あわわっ!(パスタヌキングに麺をひっぱられ、コマのようにぐるぐる回転する)」
目が回り、倒れるアクマン。
マユミ「アクマン!」
アクマン「はらほろひれ〜」
パスタヌキング「腹が減ってるから腹が立つパスタヌよ? というわけで、情け容赦なくたっぷりごちそうしてあげるパスタヌ〜♪」
倒れたアクマンの口の中に、手にしていた皿のスパゲティを流しこむパスタヌキング。
アクマン「‥‥か、からいーーーーっ!」
口から火を吐き、倒れ、気絶するアクマン。
マユミ「何を食べさせたのよ!」
パスタヌキング「激辛ペペロンチーノ、唐辛子てんこ盛りスペシャルでパスタヌよ。あまりの美味しさに気絶しちゃったパスタヌね〜♪」
そのまま、混乱する街中を去るパスタヌキング。
公園。
アクマン。ベンチに座り、マユミに介抱されてる。
アクマン「ちくしょー、おいらとした事が‥‥」
マユミ「ねえ、アクアク大王さんに助けてもらったら?」
アクマン「やだよ。こんなトコを親父に見られたら、きっと『まだまだ美しく修行が足らないなーッはっはっは』とか言うに決まってるぜ」
アクアク大王の声「その通り、まだまだ美しく修行が足らないなーっはっはっは」
アクマン・マユミ「!?」
いきなりの突風とともに、アクアク大王が登場。
アクアク大王「やあマユミ嬢、相変わらず美しい。ちょいと見ないうちにすばやく成長したようだが‥‥」
アクマン「アホ言ってんじゃねえよ。どんどんデーモンのせいでこんなになっちまったんだよ」
マユミ「あ、あの。助けてもらえないでしょうか?」
アクアク大王「うむ、我が息子はどうでもいいが、マユミ嬢の頼みは別。美しく手助けさせていただこう」
アクマン「なんだとてめー!」
無視してアクアク大王、アック・モバイルを取り出す。
アクアク大王「これは、アクアクケータイ『アック・モバイル』。美しき携帯にして、どんどんデーモン感知機能を持つ。使い方はこれに直接、美しく聞きたまえ。‥‥おっと、そろそろ魔界トレンディドラマが美しく始まる時間だな。では二人とも、美しくさらば!」
そのまま、ひゅるり〜と風ともに消えていくアクアク大王。
マユミ、手渡されたアック・モバイルに目を落とす。
アック・モバイル「こんにちは! アック・モバイルです! かわいくてかしこいワタシをよろしくね♪」
マユミ「わ、しゃべった!」
アック・モバイル「当然です。アクアク大王様が直々に作られましたからね。アクマンさん、命令を!」
アクマン「じゃ、さっきのどんどんデーモンは何処にいるかわかるか?」
アック・モバイル「お任せください! マユミさん、ワタシを開いてください」
開くと、中には携帯のボタンが。
アック・モバイル「メールモードで、『DONDON』って入れてください。そしたら、どんどんデーモンの居場所がわかります」
マユミ、言われたとおりにやってみる。液晶画面に「DONDON」
アック・モバイル「どんどんモード・オン! サーチ!」
途端に、アンテナが飛び出し、回転しつつ電子音が。それとともに、画面にはパスタヌキングの姿が。
アック・モバイル「案内します。今度は、『OTUKAI』と入力してください!」
マユミ、同じように入力。画面に『OTUKAI』と出て、マユミの手から飛び出すモバイル。
アック・モバイル「オツカイモード・オン! オツカイバット!」
メカコウモリに変形したアック・モバイル。そのまま飛び回る。
アック・モバイル「ワタシについてきてください!」
マユミとアクマン、アック・モバイルについていく。
駅前広場。
まん丸のデブデブになった一般市民たちが、ごろごろ転がっている。
パスタヌキング「いやあ、おいしいパスタ食べさせるのって気分いいパスタヌね‥‥ん?」
アクマンと、マユミを認めるパスタヌキング。
アクマン「今度はさっきみたいにはいかないぜ! オタスケカプセル召喚!」
先刻と同じく、カプセル飛来。しかし中から「外れ」
アクマン「くそっ! なんでんな時に! ‥‥もがっ」
パスタヌキング、携えた皿からスパゲティを飛ばし、アクマンの口に。
パスタヌキング「もっと食べたいパスタヌね? 遠慮はいらんパスタヌよ〜♪ スタミナたっぷりのカルボナーラパスタヌ!」
アクマンの体、膨張する。
マユミ「アクマン! どうしよう、なんとかできない?」
アック・モバイル「いい考えがあります! 降参しちゃいましょう」
マユミ「‥‥どうやら、今日が最終回みたいね。(画面に)みなさん、今まで応援ありがとう」
パスタヌキング、高笑いするが、影が差す。
巨大になったアクマンが、パスタヌキングを見下ろしている。
パスタヌキング「あー‥‥食べすぎは良くないパスタヌと思うよ?」
アクマン「ありがとよ、おかげで、力がもりもりわいてきたぜ!」
アクマン、そのままパスタヌキングを踏み潰す。
途端に、周囲の人々、先刻の通りの人々、マユミ、そしてアクマン自身も元通りに。
パスタヌキング、地面にめり込んでいる。這い出てくるが、ぼろぼろに。
アクマン「よーし、今度こそ! オタスケカプセル!」
カプセルが出て、新デザインのアックマ・ハリセンが。
アクアク大王の声「息子よ、モードチェンジ機能付のアックマ・ハリセンだ。マユミ嬢にアック・モバイルでデータ転送してもらったら、攻撃力がアップするぞ。美しく使いたまえ!」
アクマン「よし、マユミ! データ転送頼むぜ!」
マユミ「うん! アック・モバイル、データ転送!」
アック・モバイル「データ転送、アクアクサンダーパワー!」
オツカイバットから携帯に戻ったアック・モバイル。マユミの操作で電子音と光が点滅する。
それに呼応し、ハリセンの手元のメカが光り輝き、液晶画面に「OK」の文字が。
アクマン「ツッコミ・ダイナミック・サンダー!」
雷撃とともに、ハリセンが振り下ろされる。
パスタヌキング「よ、よい子のみんな。好き嫌いなく何でも食べるパスタヌよ〜」
そのまま爆発し、ドンブリに。
最初のイタリア料理店「トラットリア大盛」
パスタを食いまくってるアクマン。
アクマン「うん、あいつに無理やり食わされたけどよ、ラーメンと同じくらいうめーじゃあねえか‥‥おかわりー」
皿が何枚も積まれてる。
シェフ「オー、どんどんお代わりしてくレオーネ! 今日はワタシのお礼あるーネ」
どんどん運んでくるシェフ。
マユミ「ね、ねえ。食べすぎじゃあない‥‥かな」
オツカイバットになったアック・モバイルが、画面に向かって言う。
アック・モバイル「よい子のみんなも、おなかいっぱいスパゲティ食べましょうね〜」
うまそうなパスタが大写しになり、END。