そのゲームに手を出すなアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 塩田多弾砲
芸能 フリー
獣人 2Lv以上
難度 やや易
報酬 2.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/16〜01/20

●本文

 新年早々、嫌な事件だ。
 いや、ある意味嫌ではないかもしれないし、むしろこれはこれで良いとこがあるかもしれないし、そうでもないかもしれない。
 が、彼は一つだけ、声を大にして言いたかった。

「お前ら、風呂くらいは入れ」

 都心の、とある一角。そこを行きかう一部の人種に対し、偽らざる気持ちをWEAの職員は抱いていた。狼獣人である彼の鋭い嗅覚には、独特の臭気が漂ってきているのだ。
 だがそれでも、仕事は遂行しなければならない。それが辛いところである。そんな事を思いつつ、彼は一部の人種の群れをなんとかして乗り越えると、ある種の店舗へと足を踏み入れた。彼は、彼と同じ狼獣人のWEAエージェントから報告を受けていたのだ。ナイトウォーカーの発見、及び交戦・逃走の報告を。

 そこは、先刻からの一部の人種が足しげく通う種類の店。大抵は箱に入っているが、中にはCDケースのままのものも多い。
 表面には多種多様なイラストが印刷されている。が、その全てにはある種の共通項があった。
 全てにおいて描かれているもの。それは、美少女。大抵はかわいくポーズを決めてたり、静かに佇んでいたりというものが多いが、中にはどぎつい絵柄もあり、決して少なくは無い。
「ナイトウォーカーの奴、なんてもんに潜伏しやがったんだ」
 職員は憮然としつつも、周囲を見回した。
 PCゲーム。更に平たく言えば、18禁美少女PCゲーム、ないしはそのパッケージイラストにナイトウォーカーは感染したのだ。

 話は、昨年末に遡る。
 捨てられていた週刊誌を、野良猫が目にした。そこから、週刊誌に潜伏していたナイトウォーカーが猫に感染。実体化してそのまま逃走したのだ。
 そいつは、非常にすばしこく、なおかつ驚異的な跳躍力を有していた。故にエージェントは、「スティージ(蚤)」とあだ名を付けた。
 スティージをエージェントは追跡した。バイクをも用いて追い続けた結果、目標は秋葉原の電気街、ないしはとある店の内部へと入り込んだのであった。
 そこは、エージェントの親族が経営している店だった。
「ゲームショップ『CSD』」
 なんでも、『Come on Sukebe Domo』=『来やがれスケベども』から頭文字をとって店名にしたという店。ま、それはおいといて。
 偶然にも、スティージはエージェントの親族が経営しているゲームショップに入り込んだのだった。当然、経営者も獣人である。
 幸いにも、年末で店じまいする直前だった。また、バイトの若い子も帰宅しており、ナイトウォーカーに関係ない一般市民に対して知られることも無かった。店の場所も、大通りから離れた裏の通りに面しており、時間も遅かったので目撃者もいなかった。
 エージェントは店内で交戦し、重傷を負ってしまった。そしてスティージは、階上へと向かい、その内部へ入り込むと、潜伏してしまったのだ。
 店長、ならびにその場にいて手伝っていた獣人のバイトや店員たちにも被害は無い。店内もめちゃくちゃに荒らされたが、片づけをすれば済む事だ。
 が、スティージは店の奥、在庫の商品が保管されている倉庫へと逃げ込むと、商品のどれかに潜伏したのだ。

「‥‥ってなわけだ。叔父貴の店は、倉庫内の商品を来週末には店頭に並べて、売り出さなきゃあならん。その前に、なんとかして感染した蚤野郎を引きずり出し、引導を渡してやらなきゃあならねえ事はわかるな?」
 件のエージェント、墨沢が説明している。彼は体中に包帯が巻かれており、痛々しい様相であった。
「叔父貴の店では、既に期待の新作を大量に入荷しており、そいつを捌かないことにゃメチャ大損しちまう。なもんだから、店を開けなきゃならんのだが、そいつは今から三日後だ。おそらく連中、店の前には前日から無駄に行列作って並んでる事だろうよ」
 うんざりした表情を隠すことなく、墨沢は話を続けた。
「新作の『Fight/stray night』『ひいらぎのしげる頃に』の、コンシューマー向けの移植作がようやく発売されるって話だ。どっちもPC、片方は同人ゲームだっていうのにものスゲエ人気を得て、ゲーム機に移植されたってのがスゲエよな。ま、ともかく、叔父貴はそれらを店で売り捌く事になったわけだ。両方とも発売日延期に延期を重ね、ようやく発売日が決定したって代物だから、ファンもワクテカしつつ待ってる。‥‥んだが、これでまた『発売日延期』ってことになったら、どうなるかはわかるだろ? ある意味、暴動を起こしかねん。
 それに、大手のライバル店、『とらのはな』や『キバティ』やら『メッセサンゴー』やらが売り出す前にやらんと、客をそっちに取られちまう。中小の店舗はそこんとこが辛い‥‥ってのは叔父貴の話だ。ったく、オタクどもの方がナイトウォーカーよりタチ悪いぜ‥‥おい、何疑いの目で見てんだよ。俺は叔父貴のせいで詳しいだけで、こんなもん好きでもなんでもないからな! 『真月憚 月夢』なんかプレイしてねえし、『夜更け後より蒼色な』なんかもぜんっぜん知らんからな! おい、信じろ!」
 ともかく、背に腹は変えられない。なんとか今日から三日後の朝10時までに退治してしまえば、予定通りにゲームを発売でき、全ては丸く収まる。
「場所は、CSDの入ってるビルの内部。そこは六階建てビルで、1〜3階までが店舗だ。4〜5階は在庫品の倉庫で、新作は4階、5階は中古品を入れてるって話だからな。感染してるのゲームがあるは、おそらく四階の内部だろう。
 4階・5階ともに、窓は塞いである。内部もそう狭くは無いが、派手に戦うとなるとちょっと狭いかもしれん。ちなみに最上階は事務所だ。
 で、もちろん言うまでもないが、商売ものだから商品には傷をつけねえようにな。退治しても、商品が傷物になっちまったら話しにならん。
『スティージ』についてだが、こいつは蚤に似ている。強力なジャンプ力を持つ後足を持ち、一瞬でビルの屋上まで飛びあがることも可能だ。多分、外に出られたら捕まえるのはかなり困難だろう。
 口は針のように細長く尖った口吻になってて、こいつを武器とする。獣人の体に打ち込み、血を吸い取るって寸法だ。が、本物の蚤と異なり、皮膚はかなり弱い。スピードを得るためか、体の表面には昆虫のような甲殻があまりなく、獣化せずに素手でぶん殴っても十分ダメージを食らわせられるな。
 ともかく、俺がこんな状態だから、もう手が出ねえ。お前さんたちにこの蚤野郎を退治し、叔父貴の商売をなんとかしてうまくいかせて欲しいわけだ。やってくれるか?」

●今回の参加者

 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa4558 ランディ・ランドルフ(33歳・♀・豹)

●リプレイ本文

「うたわれぬもの」「こみかるパーティ」「星は南に日は北に(通称『ほにはに』)」‥‥。
 まさに無駄に多く、PCゲームがてんこ盛りである。そのいくつかは、詳しくない者でもどこかで見たおぼえのあるタイトルも含まれていた。
「魔斬巨聖デビルバイン」の脇には、別の中古ゲーム、ないしはタイトル表が積まれていた。
「『ななつあじ☆ドロップス』に『SHOTTULE』、『顔の無い頭突き』‥‥よくもまあ色々と出ているもんだね」
 感心よりも呆れをその言葉に込めた因幡 眠兎(fa4300)は、更に周囲を、倉庫内を見回した。
 CSDの倉庫、中古の在庫保管庫の方までは、今のところNWは来ていないようだ。監視カメラがそれをとらえていた。
 そして、新作の在庫保管庫には、間違いなくNWが入り込んでいた。チェックしたところ、その姿をとらえていたのだ。が、その直後にカメラが壊されてしまっており、どこに潜伏したかまではわからない。
 今現在、四階倉庫には誰も入ってはいない。内部がどのような状態かは、現時点では未確認である。

『あのね、兄や‥‥亞里奈のお願い、聞いてほしいの。ゲーム発売当日は、徹夜とかして並んじゃうと‥‥ご近所の人たちから、めって怒られちゃうの。そんな兄やは、亞里奈もイヤイヤなの、くすん』
『兄チャマっ、チョキッッ! 五葉からもお願いデスデス! 当日は徹夜せず、次の日の朝に整列するグッドな兄チャマのマナーに、五葉は期待しちゃいますデスデス!』
『咲哉よ。全国のお兄様たち、当然、ルールとマナーを守ってくれるわよね? 大好きな私たちのお兄様ですもの、私たちのお願い、きいてくれるはずよね。約束よ?(ちゅっ♪)』
 
「‥‥っと、こんなもんか?」
 CSDショップの公式HP。その告知欄にて、「シスター・プレシャス」のキャラクターの口調で告知を書き、HPにアップしている者がいた。
 古河 甚五郎(fa3135)は、期待していた。こうする事で、当日の徹夜組を少しでも減らせないものかと。
「しかしまあ‥‥なんと言うか。この無駄に有り余る情熱を、少しでも別方向に向ければ、国の政治も少しはいい方向に向かうんじゃあないかなあ‥‥」
 天目一個(fa3453)が皮肉交じりにつぶやく。彼女は、古河が作業しているのを後ろから覗き込みつつ、先刻のミント同様に呆れを含んだため息をついていた。
 が、古河、そして志羽翔流(fa0422)らはそんな言葉など何処吹く風であった。
「んじゃ、そろそろ作戦の最終打ち合わせしようぜ。‥‥つか、俺的には鞠恵と千陰に萌えなんだけどなあ。比奈子も良し」
「いやいやいや、やはりこの三人が最高だろー、花憐や臼雪も捨てがたいがなあ」
 護と果歩が、いいや凛々と遥香がなどといった無駄に熱い言い争いに、どこか理解しがたい空恐ろしい物を感じずにはいられない天目であった。

「蚤のように小さい‥‥ではなかったんだな。良かった良かった」
 タケシ本郷(fa1790)の疑問は氷解していた。件のエージェントからの確認を取り、狙うべきナイトウォーカー『スティージ』が、倒せるサイズの敵である事が判然としたためであった。
「さすがに、ゴマ粒の大きさではなかろう。とはいうものの、野良猫に感染し実体化したものならば、それほど大きいとは言えないであろうがな」
「それに、攻撃や防御に長けていない分‥‥スピードに関しては、かなり優れていると思って良いのではないだろうか」
 指摘した雨堂 零慈(fa0826)、ランディ・ランドルフ(fa4558)の言うとおり。『スティージ』は一撃必殺の『攻撃力』、体を守る『防御力』。この二点に関しては、かなり低レベルの個体である。数々の証言から、それはまず間違いない。
 が、何かが劣るなら別の何かが勝っている事は良くあること。スティージもそれは例外ではない。このNWの場合は、『敏捷』『移動力』がそれらを凌駕していたのだ。
 六階のオフィスは会議室の一角にて、獣人たちは店長も交え、今後の対策を練っていた。
「それで、意見をまとめるとこういうコトでええんかな?」
 ミゲール・イグレシアス(fa2671)が、具体的な作戦内容を口にしはじめた。
「作戦決行は、21時以降。オタクなお客さんたちに対しては、整理券を配布やね。んで、階段をベニヤ板などで徹底的に目張りして、五階の在庫を六階と店舗へと運び出し詰め込むっちゅーコトで」
「ああ。兎に角五階を極力空けるんだ。階段三階以下もシャッターとバリケードで完全に封鎖だね。店内のポスターも極力、潜伏防止の処理を行なっておこう」
 作戦の立案者である古河が、ミゲールとともに具体的な作戦内容を伝える。
「んで、古河はんにガムテで目張りっておいてもらった後、四階の新作在庫を三階へと持っていくわけやね。やっこさんが実体化した後、なんとか階段から五階へと誘導させ、そこで叩く‥‥っちゅうコトで」
「場合によっては、四〜五階の階段部分でも戦い、殲滅する状況になるかもしれぬ。拙者は四階の扉前にて待機し、NWが実体化した暁にはワイヤーで絡め取るなどして動きを封じ、階下へと向かわせぬようにしたく思う」
 雨堂が携えた刀を握りつつ、ミゲールに続き言った。
 そして、他の面々も受け持ちが決まった。タケシは五階の扉前、ランディは雨堂と同じく四階前、ミントは店内を索敵。天目は囮として店内、ならびに四階内部に。志羽とミゲール、古河は、在庫運び出し作業を。
 かくして、八名の獣人は持ち場に着き、各々の作業に取り掛かり始めた。

「えっさ、ほいさ、ほいのほいのほいっと」
 バリケードに目張り作業などを行なった古河たちは、五階の在庫を六階及び店舗内へと移動させ終わった。で、即座に四階を開き、新作の運び出しを始める。
 目張りをしているため、外から見られる事は無い。が、それでも一行は不安を感じていた。やはり宿敵‥‥ナイトウォーカーが確実に潜んでいる場所には、どんなに用心しても不安を全く感じない事など出来はしない。
 しないのだが、
「ほほう、これがオタク文化の結晶たるギャルゲーっちゅうやつですか。『基本構造に変化が無いゲームとしてクソ』と捉えるか『好きな所から、読み込みが出来て。一つの小説が、ユーザーの好む範囲内で分岐+マルチエンディング。絵と音声まで付属』という。一つの文化の結晶と見るかで評価の違うという」
「いやいやいや、たとえ評価がどうであれ、そこにゲームあってこそプレイしたくなるのは事実。つかそもそも、基本構造なんぞ面白ければどうというものではない!」
 と、傍目からは緊張感があるようでなさそうな会話が交わされていた。
「ささ、どんどん運んでさくっと済ませちゃいましょうよ。あ、別に興味なんかないんですからねっ?」
 どこかのツンデレと揶揄されそうなセリフを口にしつつ、古河はミゲールと志羽に促しつつせっせと搬送作業を続けていた。
「‥‥」
 奇妙な表情で、それを見守る雨堂にランディ、そして天目。
「‥‥えーと、とりあえず店内は今のところ異常はないよ。別の異常はあるかもしれないけど」
 先刻、店内に置かれていた同人誌(非常にハードな内容、もちろん18禁)をちらっと目にしたミントもまた、奇妙な表情をうかべていた。
 ともかく、「Fight/stray night」に「ひいらぎのしげる頃に/奉」、その他新作ゲームの入ったダンボールは、次々に階下へと運ばれていった。三階には、それらの山ができている。
 時間は過ぎ、深夜。
 一息入れた後、作業を再開し始めた一行は、新たな在庫に手をつけ始めた
「あれ、こっちは新作とはちゃうんですかいな?」
「ああ、これはPC版のファンディスク。『Fight/holy attraction』っつって、『Fight』の後日談みたいなもんですよ。こいつはDVD版だから、新作扱いっつう事になってるんですな」
 ミゲールとともに志羽が手をかけたダンボール。が、次の瞬間。二人の体に震えが走った!
「‥‥中々に萌えるキャラデザインでないかい?」
「‥‥うーむ、これが同人作品とは、作った奴は大したもんやで」
『ひいらぎのしげる頃に 零』が、そこにはあった。表面には新手流花‥‥作中のキャラクターが微笑んでいるイラストが描かれている。
 大人気をはくし、此度に全話を終了させた同人ゲーム。そのファンディスク、ないしは追加注文分の在庫が、ここにあったのだ。「〜奉」は、本編のコンシューマー移植作である。
 そこから、いきなり何かが飛び出した。流花のイラストから出たそれは、蚤のごとき跳躍力を有していた。

「!」
 内部から、何かが倒れる音、何かが飛び出したかのような音が、響き渡った。
 内部を覗き込む雨堂にランディ、そして天目。が、その瞬間に扉から飛び出してきたのは、おぞましいぶよぶよした、猫の成れの果てである肉塊。が、長大な後足、そして口の部分から伸びた口吻または嘴状の器官が、それをあたかも巨大な蚤のように見せていた。
 それは一瞬で扉から出て、踊り場に降り立つ。雨堂はすかさず、ワイヤーをもってそいつを捕らえようと試みた。が、素早い! 僅かに遅れ、ワイヤーはそいつを捕らえ損ねた。
「どうしたの!」
 その時、ちょうど階下より声がした。それと同時に、スティージはベニヤのバリケードにぶつかる!
 布製の強力なガムテープは、バリケードを強固なものとしており、怪物の逃走を許さなかった。ぶつかったスティージは、そのまま階上へ、タケシが待つ五階扉前の踊り場へと向かって行った。
「やつは!?」
「階上へ向かった、急げ!」
 出てきた古河、志羽、ミゲールの三人へ、ランディは促した。

「あいつは中に入った! 袋の鼠だ!」
 タケシが、五階扉前で皆を内部へと招きいれた。
「まだ油断するな! あいつのスピードは予想以上、部屋から出したら一巻の終わりだぞ!」
 古河ら三人、そして天目ら三人が続けて入り込む。スティージはまちうけていた。天井にはりつき、嘲るようにぶら下がりつつ。
 が、獣人らが入ってきたとたん、行動を開始した。右へ左へ、あちこちに飛び跳ね始めたのだ。その動きは俊敏にして華麗。まるで獣人らをからかうかのように、翻弄し幻惑させた。
「くっ! こいつっ!」
 獣化したタケシの爪が空を切る。が、切れるのは虚空のみで、肝心の獲物には空振りばかり。
 ランディは銃を用いようとしたが、スティージに対して当てる自信がない。止まる事無くぴょんぴょん跳ね回るそいつの動きは予想がつかず、縦横無尽に倉庫内を行き来していた。予測不可能なその動きには目が追いつかず、まだ搬入し終わってない商品や、仲間に対し当ててしまう確率の方が高い。
「掴めさえ、掴めさえすれば!」
 ミゲールはわざと嘴の攻撃をうけ、その時に抱え込もうと試みた。が、それを見透かしたのか、もしくは用心してるのか、中々接近を許さない。
 やがて、そいつは獲物にしやすいと思ったためか。ミントに対して口吻を突き刺そうと猛襲した。
「‥‥っ!」
 鋭い針の一撃が、兎獣人の少女に襲いかかる!
 が、スティージはミスを犯した。彼女の体、ないしはその周囲に渦巻く風。それが彼女を守らんと渦巻いている事に気づいた時、スティージは嘴の鋭い一撃を逸らされていた。
「俊敏脚足!」
 その隙を、彼女は見逃さない! 全速力で失踪する兎がごとき健脚が、超スピードを生み出しスティージに迫った!
 ボクシングスタイルのファイティングポーズから、強力な拳の一撃がスティージへと放たれた。ぶよぶよした胴体へと、渾身の一撃が決まる!
 一旦離れたスティージは、態勢を整え再び翻弄するために、転がってミントから距離をとった。
 が、時既に遅し。ミントより離れたその場所には、獣化しレイジングスピリットを構えた竜獣人の姿が、即ち雨堂が待ち構えていた。
 鋭い剣の一閃が、スティージの脚を切断する。床にぶざまに転がったスティージは、最早逃げる力も奪われた。
 雨堂のソーンナックルが、スティージの胴体をぐしゃりと潰し、おぞましいコアを破壊した。

「はいはい、並んで並んで‥‥そこ! 座り込んでないでちゃんと並びやがれ!‥‥って下さい〜♪」
「‥‥え? 予約特典の裸エプロン&スク水のリバーシブルポスター? ええっと‥‥(知らんよそんなもん!)」
 スティージを殲滅し、状況は終了した。
 かくして、後始末を行なった後、獣人たちはついでと言う事で店の手伝いも行なった。
 ‥‥のは良かったが、その大変さに閉口し、更に客たちのアレなとこを目の当たりにして、更に閉口してたりする。
「‥‥いやほんと、この無駄な活力を生かしたら、ある意味なんでも出来るんじゃあないの?」
 天目が皮肉をつぶやくも、精彩は無かったり。
「で、俺の分も当然取り置きしといてくれてるよね?よね?」
「うむ、別に買い物なんか俺はせんからな! ‥‥嘘です、嘘をつきました」
 そんな彼女などいざ知らず、志羽と古河は無駄に楽しかった‥‥かどうかは知る由も無い。