魔斬騎士ハガネ2・壱話アジア・オセアニア

種類 シリーズ
担当 塩田多弾砲
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/08〜02/14

●本文

「‥‥魔斬騎士。陰謀と破滅、邪悪の渦巻く、現代の闇に立ち向かう、鋼鉄の鎧をまといし者たち。
 邪悪に対抗するため、凶悪な力を身に付けた彼らは、秘密結社IRONの命の元に、今夜もまた、闇に向かい、闇を斬る。
 人を襲い、災いをもたらす存在‥‥『アザーズ』を滅するために(オープニングナレーションより)」

 と、色々な問題を抱えつつ、この作品は続いていた。
 視聴率的にはそれほど振るわないが、一部に熱狂的なファンを有し、「魔斬騎士HAGANE」はかろうじて続いている。
 もっとも、中盤に放送予定の前後編が途中で制作中止になってしまい、その事が災いして一時期放送自体も中断していたのだが。
 ともかく、スポンサーが何とかついてくれたため、「魔斬騎士HAGANE」は気持ちも新たに制作再開されることになったわけである。

 ここに一つ、問題が生じてきた。以前に制作中止になった前後編にて活躍させる予定だった、翼仁多忠治こと第二の魔斬騎士「鋳鉄」。
 主人公の魔斬騎士・鋼=黒金 鉄也と異なる別の魔斬騎士であり、魔斬騎士、並びにIRONが決して「正義の味方」などでなく、むしろアザーズと同じかそれ以上に凶悪な存在である事を知らしめる、重要な要素であったのだが。
 ともかく、この新たな魔斬騎士を登場させ、その残虐さと凶悪さを見せ付けることで、魔斬騎士というものが普通のヒーローと異なるところを表現したい。
 プロデューサーの蟹沢は、それをずっと気にかけていたのだった。
 
 鬼蒼青史(キソウ・セイジ)こと「魔斬騎士・青銅(マザンキシ・セイドウ)」。そして、鋳鉄の装備。鎧、「魔鋼鎧・蒼甲(マコウガイ・ソウコウ)」、鋳鉄の携える武器「魔斬剣・斬虐(マザンケン・ザンギャク)」、そして「鋼手輪・青(コウシュリン・アオ)」。
「鋳鉄」から「青銅」にネーミングを変更したが、造形物は鋳鉄に用いる予定だったものをそのまま使用する予定である。当然、青史のキャラ造形も忠治へとそのままシフトさせる予定ではある。
「残虐」は、多くの試作品が作られている。それらから選出するか、でなければこれから召集する新たなスタッフに製作を依頼するか。
 どのみち、新たに色々と行わなければならないのは確実だ。
「二体のアザーズ‥‥チョンチョンとブラック・アニスは、また別のエピソードに用いるとしよう。今回は‥‥」
 脚本家が提出したシナリオ案、そのいくつかを目にした彼は、その一つに注目した。影食獣鳥ペリュトンに、吸血緑魔ブーヴァン・シー。
 この二体と二人の魔斬騎士とを対決させよう。一体必倒で、魔斬騎士二人が対決するという状況に陥らせようというわけだ。
 鹿の頭部と脚を持つ魔鳥・ペリュトン。「人を食う」災いをもたらす。
 相棒のブーヴァン・シーは「人を騙し、悲惨な状況で餌食にする。もしくは餌食にされるところを見物する」事を目的としている。獲物を餌食にしたあと、二体はそのまま死体を喰らい鮮血をすするというわけだ。
 ブーヴァン・シーは特徴があり、人間体に変身している時は金髪の美女で、必ず服装には緑色のもの(服・装身具など)を身に付けている。
 そして、多くの人間を捕らえ誘っては、人気の無い場所で餌食にするのだ。

 ストーリーも、概要はほとんど同じ。
「青銅こと青史の前任パートナーが、ブーヴァン・シーに誘われ、ペリュトンに殺された。
 そして今回、IRONから鋼=鉄也と玲子へ指令が下った。青史こと魔斬騎士・青銅と協力し、ブーヴァン・シーとペリュトンを探し出してこれを殲滅せよ、と」
 細かい部分は、脚本家に任せよう‥‥と、蟹沢は考えていた。
 あとは、特技監督。この二体のアザーズは、どういう演出にするか、どういう描写をすべきか。ちょっと思いつかなかったのだ。
 ブーヴァンは緑の‥‥というところから、植物の意匠を組み込んだ女吸血鬼というのはどうか。ペリュトンはスーツにすべきか、それとも完全に獣としてCGや造形物にすべきか。会話できるようにするか、それともうなり声や吼え声のみにすべきか。
 無論、役者も必要。鉄也、玲子、青史、ブーヴァン、その他(IRON職員や幹部、犠牲者など)。
 声優も、鋼手輪・口鉄に青、そして必要ならばペリュトン。

「果たして、今回参加者はいるだろうか」
 蟹沢は、不安とともにつぶやいた。魔斬騎士の物語を続けられるか否かは、この参加者たちにかかっているのだから。

●今回の参加者

 fa0728 SIGMA(27歳・♂・猫)
 fa1873 條本 淳矢(23歳・♂・兎)
 fa2400 アルテライア・シュゼル(24歳・♀・一角獣)
 fa2662 ベルタ・ハート(32歳・♀・猫)
 fa3080 Dr.ノグチ(35歳・♂・一角獣)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)
 fa5448 相寺 実(29歳・♂・亀)

●リプレイ本文

「よし、それじゃ確認する」
 監督とともに、蟹沢PDは参加者の面通しを行なっていた。
「條本 淳矢(fa1873)くんは、主人公『黒金鉄也』役。SIGMA(fa0728)くんは、鉄也の変身後、魔斬騎士『鋼』のスーツアクター。
 長瀬 匠(fa5416)くんは、鋼手輪・口鉄の声優。アルテライア・シュゼル(fa2400)くんは谷和原玲子役。
 Dr.ノグチ(fa3080)くんは、魔斬騎士『青銅』役。スーツアクターも兼ねる、と。ベルタ・ハート(fa2662)くんは、アザーズ『ブーヴァン・シー』役。
 雨宮慶(fa3658)くんは、造形・特撮担当。相寺 実(fa5448)くんは、演出‥‥と」
 新たに集まったスタッフを一望し、蟹沢は満足そうにうなずいた。
「お久しぶりです、蟹沢PD。今度こそ、最後まで撮影し終えましょうね?」
「ああ、ベルタくん。君も再三にわたり参加してくれてありがとう。心から感謝するよ。ブラック・アニスではなくなってしまったが、君には期待している。
 それじゃ、打ち合わせを始めようか。撮影プランと、ストーリーの進行。それに、キャラクターの造形。決める事は山ほどあるぞ」
 
 練習場。SIGMAとノグチとは、魔斬騎士を演じるために練習を繰り返していた。
「‥‥なあプロデューサーさんよ、マジにこれくらい重いのか?」
「マジ。というかそれは練習用だから、撮影用はそれ以上の重さを覚悟してくれたまえ」
 SIGMAが、プロデューサーに質問する。特撮もの、それもヒーローものというジャンルを演じるのは初めて‥‥というか、演じる事そのものも初めてな彼は、撮影用の鎧を着込み、殺陣を練習していた。
 が、予想以上の重さ。何せ『鋼』はヒーローとはいっても、コスチュームは完全な『鎧』。それも西洋の板金鎧をモチーフとしており、重さも本物のそれに劣らぬ重量を有している。動くどころか立っているだけでも、鎧との重みと戦わねばならない。格好良く動き、なおかつ演技するならそれ以上だろう。
 さらに聞くと、「重厚感を出すために、あえて重く作った」とも聞いた。獣化しても、飛んだり跳ねたりのスピーディな動きをするのは無理だろう。
「くそっ‥‥負けてたまるかよ!」
 この仕事はある意味、試合に勝るとも劣らぬ勝負だろう。だが、勝負に負ける気はさらさらない。
「見てろよ、鋼。俺がお前を演じきって、この勝負をものにしてやるからな」
 ノグチもまた、その脇で練習用の「青銅」の鎧を着て、練習の真っ最中。頭の中で、蟹沢に言われた事を反芻しつつ、自分なりの『青銅』、そして『鬼蒼 青史』を演じるべく邁進していた。
『「良い子」でないとこを見せるのは良いんだが、この作品は全員がどっか歪んでいる。青史はその歪みの代表‥‥というところを念頭においてくれたまえ』
『こいつは最低最悪の悪鬼外道で、決して「いいひと」的なところを見せてはならない。倫理・正義感なし。自分の欲望と欲求のみを是とする。 それゆえに魔斬騎士に選ばれ、社会維持に用いられている皮肉』
「‥‥で、なおかつ『フィクションの登場人物として魅力的に描写』か。難しいなあ、ひょっとして地雷踏んだか?」
 鉄也=鋼ですら、単純に良いヤツで正義の味方じゃあないって言うし、最近は正義のヒーローってもんがフィクションでも存在しにくくなってんのかもな。

「‥‥アクション!」

ナレーション(Na)「夜の帳がおりるとともに、闇の舞台が今開く。シナリオは無き即興劇、演じる役者は魔の存在。災いもたらす邪悪の化身、殺戮の顎を開けし者。その名は『アザーズ』‥‥。哀れなる観客たちよ、照覧あれ。おぞましき道化芝居を‥‥」
 夜。どこかの街角。
 青史のパートナー、紫音白朗が血みどろで、壁に貼り付けられている。街灯がそれを照らす。
 その前には、緑の服と金髪の巻髪の美女(ブーヴァン・シー)が。うれしそうに血で染まった手を舐めている。
 地面に影が伸びる。ブーヴァン以外にもう一つ、本体がないのに人の影が。それは徐々にペリュトンのシルエットになり、激しく動く。
 殺戮音が響き、血しぶきが飛ぶ‥‥。

「(字幕)数日後」
 夕方。夕日が日を落とす。じきに日が暮れそう。
 紫音が殺された現場に立つ、鉄也。その腕には口鉄が。
鉄也「IRONの調査では、彼はここで殺された‥‥追っていたアザーズ『ペリュトン』に」
口鉄『ああ、間違いないぜ。奴さんはパートナーの魔斬騎士に連絡つける前に、予想外のもう一匹に捕らわれ、やられたってわけだ』
鉄也「『ブーヴァン・シー』にだな‥‥」

:回想シーン
「(字幕)IRON作戦会議室」
 前方のモニター脇に玲子が。モニターには、ペリュトンの姿が。
玲子「これが、紫音さんが追っていたアザーズ『ペリュトン』。知性はそれほどでもないけど、影に潜み、影から実体化するという能力を持っているわ。影に潜んでいる状態では向こうも手出しできないけど、こちらも攻撃は出来ない。だから、倒すのなら実体化したときしかないわね」
口鉄『ん〜、中々にシャイなヤツだね〜。そういう娘は嫌いじゃあないぜ?』
玲子「ペリュトンと付き合いたいなら、最近組んだこの性悪女を何とかする必要があるわ。(モニターを操作、新たな映像を)彼女の名は『ブーヴァン・シー』、何人かの魔斬騎士とそのパートナーを血祭りに上げた、恐ろしい奴よ」
鉄也「‥‥そいつの特徴は? 武器や弱点はなんだ?」
玲子「分からないのよ。それを見た者がみんな殺されたから、こいつへの対策が立てられない。それが一番の恐怖よ」
(回想終了)

 鉄也の懐から、携帯の呼び出し音が。
鉄也「(携帯に出る)‥‥俺だ」
玲子(の声)『鉄也、もう一人の魔斬騎士がじきに到着するわよ。念のため、用意しておいて?』
鉄也「分かった」

 鉄也、大通りに。
 車がそこに停まっており、玲子が傍らに立っている。
玲子「IRONからの指令、わかってるわね?」
鉄也「一人一倒、二体のアザーズを倒せ‥‥承知している」
口鉄『ま、ある意味心強い味方というべきか、それとももう一人の敵になるというべきか‥‥IRONの連中も、厄介なヤツをあてがってくれたもんだぜ』
 装甲車めいた外観のバンが、すぐ近くに停まる。黒服が数人出てきて、二人に敬礼。
黒服「『青銅』を搬送しました。指令どおり、今回の任務に使用します」
玲子「お願い。鉄也?」
 鉄也、うなずきつつ、仕込み杖を手にしながらバンの後ろに。黒服数人も控える。
 バンの後部扉、開く。内部に青史が。その首には、何かの装置が。傍目にはアクセサリーの首輪のよう。ランプが点滅している。
青史「‥‥てめえらが、今回のパートナーか?」
鉄也「(頷き)‥‥鬼蒼 青史、魔斬騎士『青銅』だな?」
玲子「今回の任務、アザーズ『ブーヴァン・シー』、及び『ペリュトン』の殲滅に協力してもらうわ。いいわね?」 
 青史、車から降り立つと、いきなりケモノの様に鉄也に飛び掛る。
 青史の手が、鉄也の顔先に掴みかかる直前で止まる。青史の首筋に、鉄也の仕込み杖の剣先が当てられている。
青史「(にやりとして)‥‥良いだろう、相棒にしては悪くない。俺にやられるようじゃ、紫音同様に間抜けに無駄死にするだろうからな。そうだろう?『青』?」
 自分の鋼手輪がはまった腕に、言葉をかける青史。『青』、沈黙を保ったまま。
口鉄『ひゅーっ、なかなか無口な御同輩もいたもんだ。ま、これもなんかの縁、魔斬騎士同士、ひとつ仲良くやっていこうじゃないか。なあ?』
青史「‥‥俺も出歩く許可をもらおう。それと、鉄也とか言ったな。てめえの糞鋼手輪に言え。砕かれたくなけりゃ、その糞言葉を吐くなとな」
口鉄『‥‥あー、沈黙は美徳なり、口は災いの元ってな格言を思い出しちまったぜー』
黒服の一人「‥‥許可は出そう。ただし、監視はつける。それにお前の動向は、発信機で常にモニターされている事を忘れるな」
黒服の一人「抵抗も、逃亡も無駄だ。我々に反抗するとみなされたら‥‥」
青史「(首輪を指差し)この爆弾が吹っ飛ぶってんだろ? それもまた、面白えじゃあねえか」
 目を見開き、くっくっくと含み笑いをする青史。その異様さに、思わず引く玲子。

 鉄也、一人で繁華街を歩いている。鉄也、口鉄をはめた手で携帯で玲子の話を聞いている。
玲子『鬼蒼 青史。幼少時より『殺害する』といった行動に愉悦を感じ、10歳の時にいじめっ子のクラスメイトを殺害。記録に残っている以外にも、何人殺してるかわからないわね。失踪した両親や兄弟姉妹すら、彼が殺害した可能性が高いわ』
学校の教室のイメージ。血が飛び散っている。その中心には、包丁を手にして返り血を浴びた少年時代の青史が。
玲子『で、少年院内部でも傷害事件が多発し死者も。色々在った後にIRONが確保、鋼手輪・青の適応者となって、魔斬騎士に‥‥』
 青史の腕のUP。口手輪・青が画面に。
口鉄『ま、奴が本物だって事は揺るがない事実だ。本物のアブねえ野郎って事はな』
玲子『鉄也、口鉄の言うとおり、彼はアザーズ同様に恐ろしい男よ。今現在、監視つきでアザーズの探索に出ているけど、ひょっとしたら‥‥あいつの方が先に遭遇するかも』
鉄也「発信機は付けているんだろ? もしそうなったら、俺も急行する。また連絡してくれ」
玲子『ええ、そっちも気をつけて』
 携帯を切る鉄也。
鉄也「奴も資格者か。口鉄、奴に力を貸しているのはお前の仲間だろう。どうしてあんな奴も魔斬騎士なんだ」
口鉄『おいおい、青臭い事言っちゃいけねえよ。魔斬騎士ってのは、クソ間抜けな正義の味方じゃねえ事ぐれえ、お前さんも分かってるはずだろ? 俺たち鋼手輪が魅かれるのは、善悪問わない意思の力。そいつが強い奴に近付き、契約する‥‥間抜けな正義も、糞食らえな悪も関係ないってな』
鉄也「‥‥それは、分かってはいるが」
口鉄『それにだ、IRONも単に「人間社会の秩序を保つ」。ただそのためだけにアザーズを殺してるだけだ。忘れんじゃねえぜ、魔斬騎士はただの戦闘奴隷。英雄なんかじゃなく、使い捨ての道具って事をな』
鉄也「‥‥俺も奴と、同類か‥‥」

 青史、人気の少ない路地裏を歩く。周囲には廃ビルが。
 青史のすぐ後ろを、黒服二人がついて歩く。
 ふと、青史。目の前に女がうずくまっているのを見る。それに近付く。
 が、画面歪み。まるで何か、危機そのもののような状況に近付くかのよう。周囲もどこかもやもやし、何かに誘われているかのよう。
青史「‥‥どうした」
女「な、なにかわからないんだけど、か、怪物が‥‥」
 青史、その言葉を聞き終わらぬ前に、女のわき腹を蹴り飛ばす。女、それをまともにうけ、廃ビルの中へと転がっていく。黒服、正気に戻ったかのような声で。
黒服1「なっ‥‥! 貴様!」
 青史、見下した視線で黒服を見て、女を指し示す。
 女、奇妙な動きで立ち上がり、そのまま青史を見据える。
女(ブーヴァン)「‥‥なぜわかった?」
青史「別に、たまたま蹴りを入れたらアザーズだっただけだ」
 黒服、携帯で連絡を入れている。
黒服1「聞こえるか? こちらにアザーズが現れた。‥‥ぐわーっ!」
 ブーヴァン・シーから伸びた金髪が、黒服の一人を貫き、締め上げる。
黒服2「なっ‥‥がはあっ!」
 金髪、黒服のもう一人を貫く。
 ブーヴァン・シー、緑のドレス姿をあらわに。
ブーヴァン・シー「あなたはたっぷりと、楽しみながら餌食にしてあげるわ。楽しみでしょう?」
青史「ああ、楽しみだ」

 鉄也、携帯から玲子の連絡を受けている。
鉄也「青史の方に出たのか!? 場所は?」
玲子『すぐにそっちの端末に送るわ。おそらくペリュトンも近くにいるはず。急いで!』
鉄也「分かった! 口鉄!」
口鉄『おう! 派手に行こうぜ!』
 夜の街を駆けていく鉄也。

 ブーヴァンの髪に、逃げ道をふさがれた青史。慌てる様子も無く、口手輪・青をかざす。
青史「鋼着‥‥!」
 口手輪・青が侵食するかのように、青史の体を覆う。青史の全身が包まれ、青みがかかった全身鎧の姿が。
 止め絵になり、画面いっぱいに「魔斬騎士 青銅 推参」。
 鎧なめ「魔鋼鎧 蒼甲」
 腰の剣を抜き、構える青銅。幅広の鉈の様な蛮刀で、刀身に細かい彫刻とともに、各部に本物の目玉が。
 剣の刃なめ「魔斬剣 斬虐」
 ブーヴァン・シー、それを見て驚いた顔をするが、すぐににやりとする。
ブーヴァン・シー「確かに、楽しみね‥‥」
 ブーヴァンの周囲が、悪夢のごとくぐにゃりと歪んでいく。
青銅「さあ、パーティを始めようぜ!」
 対峙する両者。

 廃ビルの近くの路地裏に駆けつける鉄也。そこには、黒服二人の死体が。
鉄也「奴らは‥‥どこだ?」
口鉄『おい!』
 口鉄の声に振り向く。街灯や夜の町の光から出来た足元の影が、奇妙に伸びる。それはまるで、歪んだ鳥のようなシルエット。
 頭には、鹿を思わせる角の影が。
鉄也「鋼着!」
 口鉄をかざす鉄也。口鉄が鉄也の全身を包み込み、魔斬騎士・鋼に。
 画面止め絵「魔斬騎士 鋼 見参」。
 携えた剣を構え、影‥‥ペリュトンを見据える。
鋼「いくぞ、アザーズ『ペリュトン』!」
 剣を手に、突撃する鋼!

 画面止め絵になり、大きく『to be continued‥‥!』の文字が。

「‥‥ようやく、ここまでできたか!」
 かろうじて、蟹沢は一息をついた。
 が、問題はここからだ。ここからいかにして後編を撮っていくか、そもそも後編を撮れるかどうか。
 決して状況も、スタッフも十分とは言えないかもしれない。が、それでもできる限りの事を行い、できるだけのものを作ろう。
 それだけは必ずやり遂げようと決意した蟹沢は、後編の撮影プランを練り始めた。