擬態する捕食者アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
塩田多弾砲
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芸能 |
フリー
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/12〜02/16
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●本文
「‥‥集まったようだな。では、これから説明を始める。
全員耳の穴をかっぽじって、よーく聞いておけ。聞き逃したら死ぬかもしれんからな。
さて、ナイトウォーカーだが‥‥居場所は確認し判明している。潜んでいる場所がどこかは、まず間違いなかろう。
が、実体化したとしても、そいつを倒す事は容易ならざる事、それも間違いなかろう。
なぜなら、そいつは装っているからだ。
しばしばナイトウォーカーは、虫‥‥昆虫や節足動物、甲殻類の特徴をその身に有している。感染した宿主の体内に潜み、実体化の際にはそれら「虫」の特徴をあらわにする。
が、ナイトウォーカーは種々雑多な能力を有するもの。特徴的な身体能力を持つ個体の存在も確認されているが。感染した媒体の生命体‥‥人間、犬猫、アライグマに野牛、猪に鷹、鼠に兎に蜥蜴と、寄生された宿主によって能力や外見に差異が出てくるのは言うまでもない。
が、ナイトウォーカーの中には、突然変異的かつ突発的な外見や能力を有する個体の存在も確認されている。以前に殲滅された「赤縞瑪瑙(サードニクス)」のように、特徴的能力を有している個体‥‥「赤縞」の場合は「コアの色」「酸の噴出」だな‥‥みたいな奴の事だ。そして感染した生命体が何であっても、こいつの持つ特徴や能力は変わることがない。
諸君が今回殲滅するナイトウォーカーは、こういう特徴的な能力を持つ個体なのだ。
話は去年に遡る。WEAの新人エージェントが、ベテランとともに殲滅の任務についたと思ってくれ。
とあるDVDを借りた、アパート住まいの青年。が、そのDVDにはナイトウォーカーが潜伏してる可能性があると知り、二人は向かって行った。
もしも感染してしまったらコトだ。ってわけで、二人は速やかにアパートへと向かい、件の青年の部屋へと入り込んだ。ノックはしたが、中からは返答が無かったんでな、ムリヤリ入り込んだわけだ。
どこもそうであるように、アパートでむさい男の一人暮らし。中は散らかり放題で汚れまくりだった。
中は灯りがついておらず、真っ暗だった。だが、住民は帰宅しているのは確認済みだから、俺たちは獣化せずにいた。実際、部屋のど真ん中の万年床にて、部屋の主が服を着たまま壁に寄りかかり眠ってたからな。見たところ『DVDを見てる途中で、そのまま寝ちまった』ってな状況だった。
ともかくだ、用心深く見守っていたものの、ろくに動く気配を見せん。もしもナイトウォーカーが感染してるとしたら、エサとなる獣人二人がすぐ近くにいるんだ、とっとと実体化して襲い掛かるだろう。そのまま戻ろう‥‥そう思った矢先だった。
新人は、気づいたんだ。そいつは眠っていたように見えたが、目を開けたままだった事を。
それだけでなく、そいつの顔にはヒゲが生えてなかった。DVDを借りたその青年は、顎に短く刈り込んだひげを生やしていたってのに。
そいつは頭を縦に割ると、いきなりベテランのエージェントに襲い掛かった。
もうわかっただろう。そいつは既に感染し、実体化してたんだ。
そのナイトウォーカーは、外観を『擬態』させるって特徴を持っていやがったんだ。
やつら(ナイトウォーカー)が実体化する時には、大抵が昆虫のバケモノめいた姿になる。そいつもまた同様だが、一つ違うのは『遠目にちらっと見た程度では、実体化した姿でも人間っぽい外観を有している』ってコトだ。
そいつは、でかくて触覚のないゴキブリ、もしくはコガネムシみたいな姿をしている。そして、実体化して立ち上がった姿は、『黒いコートを着た怪人物』に似ているんだ。
もちろん、光の下で細部を観察したら、擬態しているってな事はすぐ分かる。が、暗く視界がきかないところでそいつを見たら、誰もがまず虫のバケモノとは思わないだろう。
人間っぽい頭は白っぽく、縦に割れる。が、そこは頭じゃ無く、ナイトウォーカーの顎にあたるんだ。つまり胸部が本来の頭部ってことだな。
コートの部分は、ナイトウォーカーの羽だ。甲虫などの翅鞘が伸びて、あたかもコートみたいに見えただけでな。それを広げたら、短い距離だが空を飛べる飛翅になる。コアは、コートのボタンのようにも見えなくは無い。やや大きいがな。
一度感染し、実体化したナイトウォーカーは、再び宿主の姿に戻り擬態する事ができる。が、その状態はほとんど動く死体に過ぎず、数日もしたら腐敗し、ナイトウォーカーだってコトがばれちまう。
しかし、こいつは特別だ。実体化した状態を保てば、そのまま人間の姿で擬態し続け、闇に紛れて獣人を襲うことが出来るからな。つまり、潜伏し別の宿主に感染する事が少なくて済むわけだ。
ともかくだ、新人はそいつに襲われ‥‥殺された。
ベテランの方も、そいつに酷い怪我を負わされ、そのまま数日後に死んじまった。
俺は、そいつを、『コートを着た怪人物』を探しまくった。
そしてそいつを見つけた。数あるナイトウォーカーの中でも、こんなヤツは他にはいないからな。
場所は、ほとんどゴミ置き場と化しているこの工場跡。周囲に人家もなく、ホームレスですら気味悪がって近付かないようなところだが、数日前からコートを着た誰かが住み着いた‥‥といった噂が立っている。
こいつに、俺は名を付けた‥‥『MP』、ミミック・プレデター。擬態する捕食者という意味だ。ダサいネーミングだが、『コートの怪人物』よりかは言い易いだろう。
MPは何度か情報媒体に感染し、人間以外の生き物にも感染し擬態していたらしいが、今は再び人間に感染し擬態している。女性に擬態していたのを近くの不良な獣人のガキどもがナンパし、そのまま食われたからな。ま、そいつらのおかげで、こいつを発見できたわけだ。
見ての通り、俺は車椅子の身。さらに最近はちょいと持病が再発し、手を動かす事もままならん。だから、お前さんたちに頼みたい。
俺の親友と息子を殺した、こいつを殺してくれ。‥‥頼む」
●リプレイ本文
「‥‥っと、そろそろ自前の得物が欲しいとこだな」
今回ばかりは、少々骨を折った。近くに廃材が投げ捨ててあったので、探ってみたがろくなものが無い。長すぎたり、短すぎたり。折れていたり、太すぎたり細すぎたり。これはと思って取り上げてみたら、先端に機械部品がしっかり溶接されていたり。
ようやく見つけたちょうどいい棒は、オイルとグリースでべとべとに汚れ、更には野良犬または猫の干からびた糞までへばりついていた。
「武器の現地調達っつーのも、いい加減なんとかしねえとなあ」
工場跡近くの水道でヘヴィ・ヴァレン(fa0431)は、見つけたボロ布を用いてその汚れを四苦八苦して落としつつぼやいていた。
あらかたの汚れは落としたものの、臭いはあまり取れていない。
「ヴァレンさん。それ使うのはいいけど、ちゃんと後で風呂入ってくださいよ?」
鼻をつまみつつ、森里時雨(fa2002)が、工場跡の地図に目を通している。件の担当者に取り寄せてもらった工場跡、ないしはその見取り図に目を通しつつ、どこにターゲットが潜んでいるかを考えていた。
時間は昼間、人の気配はない。
が、完全に人払いできているわけではなさそうだ。薄気味悪いために近付かないのは確かだが、最近ここに舞い戻っているホームレスの姿も少なくは無いらしい。現に先刻、うろうろしているホームレスの姿があった。銃人たちがやってきたのを見て、そそくさと逃げ去ったが。
「なんでも、近くの公園やらなにやらが区画整理するってんでな、追われたホームレスの連中がここに‥‥ってな事だそうだ。もとからここは、持ち主も放置してたからな」
片倉 神無(fa3678)が独自に調べあげたところ、そういう事情が判明した。
が‥‥。
「だが‥‥ここをねぐらにしてた奴らほとんどが、行方不明になってるのも事実だ。市役所の、ホームレス支援の課に行ってみて聞いたんだが‥‥MPが出た頃に、頑固にここから離れなかったホームレスがいた。この工場はオレの家と言い張ってたやつだな。そいつは数十匹の犬猫を飼って、説得する奴を追い払うような奴だったが、ある日‥‥犬猫とともに行方不明になった」
「間違いないな。そいつがみんな殺っちまったんぢゃろう」
ドワーフ太田(fa4878)が、片倉の言葉に相槌を打った。
「ああ。多分そうだろう。最後に説得に来た夜、見かけない『ロングコートの人物の影』を、件の課の奴も目撃したそうだ」
「だったら、やっぱり‥‥」
ごくりと、泉 彩佳(fa1890)が唾を飲む。
「おおっと、まだ怖がるのは早いぜ。その『コートの影』だが、こっからそう遠くない住宅街でも目撃されてる。主婦連中から聞いたんだが、塾帰りの子供が、深夜にヘンなもん見たそうだ。女っぽい体つきとか言ってたな」
コートを着て、うろついている不審人物。それを見たと。
「それで、どうなったんですか?」
斉賀伊織(fa4840)が、先を急かす。
「そいつは街灯の明かりの下で、『でかいゴキブリみたいになって』、猫を食ったらしい。子供はそのまま、大慌てで逃げ出した。ちょうどその日は両親とも旅行中で、次の日に帰って来たときに、その事を子供から聞いたとの事だ」
「面妖な‥‥そやつ、この工場に留まらず、町中にも出向いているというのか?」
七枷・伏姫(fa2830)が言葉をもらす。
「ならばとっとと乗り込もう! 明るいうちならばモロばれだからな! やぁってやるぜぇぇぇっ!!!」
恐怖を払拭するかのごとく、常盤 躑躅(fa2529)が張り切った。
「けどよ‥‥乗り込むのは良いが、奴さんが出てきてくれるかどうか。そいつが問題だな」
ヴァレンの言葉が、重くのしかかる。
「奴もバカじゃあるまい。明るいとこでてめーの擬態がバレると知ってるんなら‥‥ひょっとしたら、昼間には出てこないかもしれねーぜ」
徐々に日が暮れ、夜になりつつある。
獣人たちは、二組に分かれる事で工場内を探索し、自分たちを囮として狩るべき獲物を誘っていた。
ヘヴィ・森里・七枷・斉賀の一斑。
泉・片倉・太田・常磐の二班。
獣人たちは日中に工場内をくまなく探したが、ヴァレンの言うとおり、ナイトウォーカーは見つからなかったのだ。
見つけた‥‥と思ったら、それは新たにやって来たホームレスだった。中には学校をさぼり、ここでのらくらと遊んでいた数人の学生もいた。
「ここで撮影をするから出て行け」と追っ払えたものの、成果はゼロ。つまりは、全くの空振りに終わったわけだ。
「くそっ! 出てこないとは卑怯な奴!」
完全獣化し、光学迷彩で囮となった者たちの後ろについていた常盤であったが、目標となるナイトウォーカーが出てこない事にじれったさを感じずにはいられなかった。
常盤とともに、森里もぼやく。
「‥‥考えてみりゃあ、いくら擬態能力持ってるからって、昼間っから実体化したままうろついてるわけは無いよなあ。ま、それなら‥‥」
「うむ。それならば夜も探すのみ。必ずや奴を誘き出そうぞ」
森里に続き、七枷が「仇華」を手にいきり立った。
半獣化した状態で、ヘッドランプを額にくくりつけ、七枷が暗闇を進む。
ランプの光が、黒布を切り開くかのように暗闇を照らし出す。だがやはり、それらしいものは見つからない。
工場跡はかなりの広さがあり、大きめの建物を中心に、周囲に数錬の中くらいの工場(だった建物)が建っている。更に、周囲には申し訳程度にフェンスが立てられているが、所々に穴が開いており、侵入は容易であった。でなければ、日中に部外者が何人も入ってこれないわけがない。
森里やWEAが用意した投光機や、偽装撮影用のライトアップは、中心の建物内を光で満たした。が、周辺の中くらいの建物まではおっつかない。こうやって、直接戦いに赴くしかなかった。
「? ‥‥見てください、あれを‥‥!」
斉賀が指差した。
工場の外側、コートを着込んだようにも見える何者かが、よろよろと歩いている。その歩き方が、やや不自然なのに斉賀、そして他の三人も気づいた。
距離的に、大体ここから100mくらいは離れている。距離が離れているせいか、こちらには気づいていないようだ。
鋭敏視覚を用いるも、暗いのと距離が離れているのとで、はっきりとした事はわからない。
「‥‥なら、俺に任せてくださいなっと。リクエストは『仰げば尊し』でOK?」
建物の影に隠れたヴァレン、斉賀、七枷。しかし森里は左手に握ったマイク「天界からの声」を握り、そいつに気づかれないように接近した。
十分に近付いた彼は‥‥大声で歌い始めた。
「何? 一体何がそっちで起こったの?」
歌声が遠くから響き、そして悲鳴が続けて聞こえた。そこで、知友心話を用いて連絡をとった泉だったが‥‥。
『いや、MPじゃあない。モノホンのコート着た人間だった。MPと間違えちまったよ、悪い悪い』
ヴァレンの言葉に、胸をなでおろした。
後でわかったことだが、その女性は仕事の帰りだった。後ろのヘンな気配‥‥MPの影‥‥に怯え、それから逃れようと走って逃げ、気がついたらここに逃げ込んでいたのだ。歩き方が変だったのは、逃げる時に脚を挫き、引きずっていたためだ。
そんな時に、森里がいきなり近くで歌いだした。神経が高ぶっていた時に、大音量で『仰げば尊し』を歌われたら、誰でも驚き、気絶してしまうだろう。
意識を失ったものの、彼女は命に別状は無く眠っているとの事だ。
「やれやれ、人騒がせぢゃのう。ま、何事もなくて良かったが‥‥」
「いや、ドワーフ。安心するのは早いぜ。MPが見つかったわけじゃないんだ。やっこさん、ひょっとしたら‥‥実体化してないだけで、俺たちの近くにいるのかもしれない」
片倉が、闇夜を睨みつけつつつぶやいた。
そして、更に歩く事数刻。
「!?」
気配を感じなかったのに、すぐ近くにそいつがいた。
『泉?』
『分かってます!』
知友心話で、ヴァレンらに連絡を入れる彼女。その隣で、片倉は獲物に相違ないと思われる、前方の存在を見つめた。
「間違いは、無いか?」
「ああ‥‥多分な」
ドワーフとともに、頷く片倉。ここは公道に面した場所で、壊れたフェンスが道と工場跡内とを隔てている。近くには、貧弱な光を放つ街灯があり、その真下にはボロボロの電話ボックスが。
「そいつ」は、気づいたら電話ボックス内に居た。そして出てくると、のこのこと四人に近付いていた。
‥‥いや、三人と言うべきか。常盤は今、完全獣化し光学迷彩で近くに待機している。傍目には三人しか見えないはず。
太田は、「そいつ」への視線を鋭くした。もしも彼の視線に力があったなら、彼は対象を睨み殺せただろう。自然にそれくらい、鋭いまなざしになっていた。
「それ」の頭部には、もじゃもじゃした巻きひげがあった。この距離からしたら、髪の毛に見えなくも無い。
鋭敏視覚を用いずとも分かる。そいつの顔はまるで能面、腕のいい画家が描いた絵の様で、この状況下で知らない者が見たら、おそらく誰もが偽物とは気づかないだろう。
胴体は確かにコートを着ているかのよう。が、ぴったりととじられたそれは、鋭敏視覚を用いたとしてもどこに隙間があるか、どこを狙えば効果的にダメージを与えられるか、判然としなかった。中心部のボタンのように見えるのが、コアに相違なかろう。
そいつは、どんどん近付いてくる。ゆったりとした動きが、かえって不気味に感じられる。
あと、10m。相手も、最早こちらの存在を感知しているのは明らかだった。
あと、5m。太田、泉、そして片倉は、身体の中で何かが弾ける音を感じた。焦りはもう無い、恐怖ももう無い。
そして、獣化した常盤が出現し、ソードで斬りつけた。
常盤は、勝利を確信した。後ろからの不意打ちが、見事に決まった‥‥と。
だが、それは致命的な誤り。そいつが、「ミミック・プレデター」が「人型に擬態」している事は知っていたのに、人と同じ身体的特長を持っていると思い込んでいた事が、彼の過ちだった。
MPは確かに立ち上がって、人型に擬態してはいた。が、立ち上がった「正面」が「前面」とは限らない。そいつは、「背中」を前に「後ろ向きに歩く」事で、人に擬態していたのだった。
つまり、今の状況では。擬態の「背中」は実際には「腹」。「後ろ」だと思っていたら、実は「前」。まるでのけぞるかのように、そいつは本来の姿へと形態を変えた。
そしてなお悪い事に、そいつは常盤の存在を感知していた。
昆虫と同じく、そいつの脚は三対六脚。折りたたまれていた中脚を伸ばすと、常盤の剣の一撃を弾いたのだ。
「「なっ!?」」
常盤、太田、泉、そして片倉。不意をついたと思ったら、逆に彼らの方が不意をつかれていた。
驚く彼らの目の前で、コートの前側をカブトムシかゴキブリのそれのように展開すると、空に飛び上がった!
「逃がすか!」
だが、空中戦ならばこちらも得意。獣化した鷹獣人は、闇の中を飛翔した。
「喰らいやがれ! 飛羽針撃!」
予想以上の超高速飛行。だが、片倉の眼差しは狙うべき敵の翅鞘、ないしはその付け根を見出し、強力な針の一撃を食らわせるのに成功した!
飛行能力を失ったMPは、そのまま地面を転がり果てる。立ち上がったところには、鉄の棒を構えたヴァレンたちが駆けつけていた。
「てめえの糞コアに、こいつを食らわせてやるぜ!」
ヴァレンの攻撃に、MPは最後の悪あがきを見せた。人の頭部を模した己の大顎を開き、叩き付けたヴァレンの棒をくわえ込んだのだ。それは、簡単に鋼材をひねり、歪ませ、折らんとする。もしもヴァレンが一人だけであったら、彼は負けていたかもしれない。
「そのまま、地獄に落ちるがいい!」
その隙を狙い、七枷の逆刃刀がコアへと直撃した。鋭き刃の一撃が、彼の怪物のコアを砕き、引導を渡したのだ。
「すまん、片倉。背中から不意打ちできた‥‥と思ったんだが。あの時にちゃんと一撃を食らわせておけば、もっと楽に止めをさせただろうに」
「気にするな、俺も同じく騙されちまったんだ。それに、結果的に仕留めたんだから良いじゃあないか」
落ち込む常盤に、言葉をかける片倉。
「そうそう。それに、得体の知れない奴へいきなり一撃食らわそうとするなんざ、度胸が無けりゃできないって。俺ってアンタのそういうとこにシビれるし、結構憧れるぜ?」
森里もまた、常盤の健闘を讃えていた。
WEAに連絡し、状況終了した事を伝える一同。引き上げの準備をしつつ、常盤は誓った。
「油断は禁物。もっと己を切磋琢磨せねばな。よっし、がんばるぞ!」
「ようやく、仇を取れたぞ‥‥」
そして、WEA担当者も、報告を受けた後にひっそりと涙していた。