おいらはアクマンアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
塩田多弾砲
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
0.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/07〜02/12
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●本文
『シーン03 どんぶり神社境内。
マユミ、おじいちゃんと境内を散歩している。
おじいちゃん「千年以上前の昔のことじゃ。この神社の御神木に、ラーメン好きなデーモンが封印されたそうじゃ」
マユミ 「おじいちゃん、日本にはデーモンが出る伝説なんてないよ?」
おじいちゃん「きっと観光旅行で日本に来ている最中だったんじゃろう」
マユミ 「ラーメンもその頃には無かったよ?」
おじいちゃん「歴史や伝説は科学や理屈では割り切れないものなんじゃよ」 』
「‥‥おいおい、変なじーさんだな。だが、中々いいぜ。この変っぽいとこはよ」
脚本家が書き上げたシナリオ。既に何稿目かわからないが、何度も書き直し、ようやく決定稿となった。
昼食の席で脚本読みつつ、一安心とばかりに監督とプロデューサーはため息をついた。この二人もまた、様々な打ち合わせやアイデア出しに、頭を使いまくっていたのだ。
「イタズラ者な悪魔、アクマンの大活躍!‥‥ってのはいいけどな、俺としては実際に撮りたいよ。頭使うより、実践だって」
「いやいや、予算がそう取れないんだから。そんなんじゃだめだよ。低予算だからこそ、入念な打ち合わせしたうえで撮影開始しないと。頼むよ監督〜?」
プロデューサーが、どんぶりを片手に懇願した。
「あー、わかったわかった。じゃ、天丼のおかわりをおごれよな。大盛りで」
「‥‥普通盛りにまけてくれないかしら?」
「おいらはアクマン」
大盛タウンを舞台にした、コメディ特撮。
ある日、平和な住宅街・大盛タウンに、108個のどんぶりが飛来し、町じゅうに散る。実はそれらのどんぶりは、「どんどんデーモン」と呼ばれるモンスターだった。
大盛タウンに住む少女、清原マユミは、トンデモ科学の権威であるおじいちゃんとともに、大盛タウンの「どんぶり神社」に封印されている「ラーメン好きなデーモン」の封印をといて、どんどんデーモンを止めようと思いつく。
封印から解かれたのは、イタズラ好きな悪魔、アクマンだった。
甦ったアクマンによると、実はどんどんデーモンは、アクマンの父親で魔界の王でもある、アクアク大王のどんぶりコレクションだった。しかし、退屈したアクマンはそれを使って皿回しをしたところ、見事に失敗。人間界向けの廃品回収業者に破片を回収させ、知らん振りを決め込んだ。
が、当然アクアク大王にばれ、アクマンは逃亡した。逃げてる途中で腹減ったもので、通りかかったの大木の根元に置かれているラーメンを横取りしようとした。が、それはアクアク大王の変身だった。
アクアク大王はアクマンに、千年封じの罰を与えて封印した。そしてその間に、どんどんデーモンは復活。人間界にイタズラしようと暗躍し始めたと言う事だ。
助けを求めるマユミに、アクマンは「そんなのおいらには関係ないね」と逃げようとする。が、ハラペコで動けない。
そんなアクマンにマユミは、インスタントカップラーメンを差し出した。夢中で食べている間に、おじいちゃんはアクマンの弱点である尻尾に、伝説の魔道器「コラコラリング」をはめてしまった。
逃げようとするアクマンに対し、「アクアクエッサイム、ワルイコメッサイム」の呪文で言う事を聞かせ、おじいちゃんはアクマンとどんどんデーモンに対し、なかば強引に戦いを挑む事を決意する。それになんとなく巻き込まれてしまうマユミ。
アックマ・ハリセンでどんどんデーモンをどついて倒せ! アクマンとマユミたちの、大盛タウンを舞台にした冒険が始まった!
「この、どんどんデーモンは着ぐるみの怪獣っぽいデザインなのは良いけどな、これって結構金取られそうだぜ〜」
今回、パイロットフィルムとして第一話を製作する事になった。が、イメージボードなどでは、コメディながら特撮にかなりの予算をもっていかれそうな内容が見て取れた。なにしろ、どんどんデーモンが巨大化し、やはり巨大化したアクマンが、巨大杵と巨大臼で餅つきして倒す、といったアイデアもあったのだ。
金がかかりすぎるからと流れそうになったが、TV局の方で企画が気に入られ、パイロットの出来しだいではシリーズとして製作される事も検討する、という事になった。
かくして、パイロットに登場するどんどんデーモン「キッツネイザー」の着ぐるみが製作され、そろそろ完成する頃である。きつねうどんが好きなどんどんデーモンで、大盛タウン中の油揚げを独り占めしようとたくらんだという設定だ。
が、正直半分以上の予算は、キッツネイザーの着ぐるみと、やはりもうすぐ完成する、アクマンの着ぐるみで使い果たしてしまう、と言っても過言ではない。
アクアク大王など、チョイ役の着ぐるみや造形物は、製作会社の倉庫の奥で、朽ち果てる寸前の着ぐるみや張りぼてを流用する事になっている。
しかし、問題は特撮の予算。
クライマックスシーンは、アクマンは背中の翼で空を飛び、逃げるキッツネイザーを追跡するというもの。当然、ここは特撮で処理するしかない。
しかし、これが問題であった。
CG使いたくとも、自分や製作会社はそのノウハウがそれほど無い。だからと言って、アナログな撮影するには少々金がなさ過ぎる。
だが、パイロットと言うからには手抜きは許されない。安っぽい出来のものを作ったら、「この話は無かった事に」と局からは言われるだろう。
「わずかな予算で、アクマンとキッツネイザーとの追っかけっこを撮影できるやつら。若い奴らに、やってやるぜという気概を持つ奴らがいてくれればいいんだが」
天丼の最後の一口をかっこみ、監督はプロデューサーに自分の意思を伝えた。
すなわち、求人を出して撮影できる人材を募る、と言う事を。
「集める人材は、マユミとおじいちゃん役。それに、アクマンとキッツネイザーの着ぐるみ役者だね」
「ああ。マユミは『優しいが、ちょっとちゃっかりしてる小学四年生』って設定だが、見た目違和感無いなら、本当の小四でなくとも構わんだろう。アクマン役は、演技ができるのはもちろんだが、自前の翼で実際に空を飛べるような、コウモリか竜の獣人がエントリーしてくれたら理想だな。そうすりゃ、特撮の予算がかなり浮く」
「ふむふむ、他には?」
「あとは、特撮、もしくは演出の技術を持ってるやつ。それに撮影全般を受け持ってくれるやつだな。CGでもアナログでも、特撮に詳しく、それに伴う実力を持ってれば言うことは無いぜ。なんとか集まってくれれば良いが」
「集まるとも、監督ちゃん。天丼もう一杯おごるから、がんばってよ?」
「いや、もういい。それよりカツ丼をおごってくれ。大盛でな」
もし無事に作品を完成させられたら、俺がみんなにどんぶりをおごってやるぜ。もちろん大盛でな。
監督はカツ丼をかっこみながら、まだ見ぬ仲間たちへと思いを馳せた。
●リプレイ本文
「それじゃ、今回よろしくたのんます」
皐月 命(fa2411)と月紅爛(fa2588)は、ぺこりと頭を下げた。
「ん。こっちもよろしく。まあ、ギャラは期待せんといて欲しいが、丼ものならおごるよ。仕事が終わった後にな」
「そら、楽しみですな。じゃ、気合入れて特殊撮影行きまっせ!」
「私は音響担当ですが、特撮でも少しはお役に立てるかもしれません。がんばります!」
張り切る姿を見て、監督も満足そうにうなずいた。
「翼の穴は良さそうだ。なんとかなるだろう」
アクマンの着ぐるみを着込んだ伊達正和(fa0463)は、半獣化した状態で翼を出し羽ばたかせた。
「ふわー、着ぐるみは大変なのですねー」
衣装合わせし終わったらぴす(fa0149)と西風(fa2467)は、伊達を見てつぶやいた。
「こっちも大変ダヨ? サイズ小さめだからネ」
どんどんデーモン・キッツネイザー役の龍 美星(fa2426)もまた、スーツに難儀していた。キツネ顔の怪獣だが、どこかユーモラスなデザインだ。
「美星さん、どうかな?」
「‥‥ちょっと息苦しいけど、何とかしてみせるネ!」
親指をたてつつ、美星は請合った。
「え? エンディングは無い?」
「俺が歌い、七瀬さんに踊ってもらおうと考えてきたのだが‥‥」
アクアク大王役のディノ・ストラーダ(fa0588)と、豆腐屋役の七瀬・聖夜(fa1610)は、監督に交渉していたが、ED用のダンスや歌は、却下されてしまった。
「ぜひ使いたい‥‥んだが、色々都合があってな。本編の予算も既にギリギリなんだよ。スケジュールの方は更にギリのギリで、EDに割く程残っちゃいないし」
「そうですか、それは残念です」
うなだれる七瀬とディノに、監督は言葉をかけた。
「だが、もしも製作決定したら、EDにはぜひこいつを使いたい。その時には頼むよ」
「シーン04 テイク12 アクション!」
:どんどんデーモンに襲われたマユミとおじいちゃん。
大盛神社に逃げてくると、二人は息を整えた。
マユミ「‥‥おじいちゃん、あれはいったいなに?」
おじいちゃん「おそらくは、どんどんデーモン‥‥超古代文明におけるモンスターたちじゃろう。あやつらが復活した目的は、ただ一つ! それは‥‥」
マユミ「それは?」
おじいちゃん「この世の丼料理を独り占めすることで、世界征服する事! そうしたら丼屋さんは廃業し、人類は滅亡する!」
御神木の前にやってくる二人、そこには大きく「封印」と描かれている。
マユミ「でも、解決方法がこの大盛神社にあるのかな?」
おじいちゃん、懐から「古文書」と書かれた巻物を取り出し、広げる。
おじいちゃん「うむ、この古文書によると、ここの御神木に封印された悪魔を復活させたら、どんどんデーモンを封印出来るそうじゃ。復活の方法は、ここにお湯を注ぎ、三分待てば良いとの事だな」
マユミ、背のリュックから魔法瓶を取り出し、言われたとおりお湯を注ぐ。
マユミ「その古文書、信用できるの?」
おじいちゃん「できるとも。コンビニで買ったからな」
やがて、封印が動き出し、左右に割れる。
派手な爆発と煙が起こり、それが晴れたところにはアクマンが立っている。
アクマン「ア〜クマン、ふっか〜つっ♪」
「‥‥カット!」
カチンコが打ち鳴らされる。
「伊達はん、中々ええ感じやで。コミカルタイプもええけど、真面目タイプの声もええなあ」
伊達に称賛の声を送る皐月。当初伊達は「オーバーアクションでコミカルに」と考えていたのだが、「復活するところだけ、わざとマジにやってみてもらえまっか」と言われ、テイク5から9あたりで実践してみせたのだ。
「今回は、コミカル声の方が受けたみたいやけど、色々試してみようや」
「ああ。じゃあ、次行こう!」
「シーン08 テイク16 アクション!」
:キッツネイザー、大盛商店街を走っている。
キッツネイザー「コンコンコーン! 復活したからには、きつねうどんと油揚げは皆いただきコン!」
永瀬豆腐店前。若旦那の元代が店番してる。
キッツネイザー「油揚げくれコン!」
元代「ま、毎度あり。で、いかほど?」
キッツネイザー「全部。お金ならあるコンよ?」
札束をちらつかせる。
元代「た、ただいま!」
店の奥から油揚げを持ってくる。その場で食い始めるキッツネイザー。
札束を受け取りホクホクの元代だが、札束、すぐに枯葉に。
元代「あ、あのー、これは?」
キッツネイザー「(全部食い終わる)ゲップ、なかなか美味しかったコンよ」
元代「それはどうも、‥‥じゃあなくて! 当店では枯葉の現金は受け付けてないんですが?」
キッツネイザー「(肩をすくめ)やーれやれ。君は最近のグルメ番組見ないコンか? 代金払うグルメレポーターなんか居ないコンよ?」
元代「きっさまーっ! 食い逃げ!(ファイティングポーズを)この本場パプワニューギニア仕込の豆腐拳法、とくと味わえ!トゥーッフ!」
飛び掛る元代
キッツネイザー「キッツネ・テールビンター!」
尻尾を使い、元代をバシバシはたくキッツネイザー。後ろざまに吹っ飛び、倒れる元代。
キッツネイザー「はっはっは、油揚げ職人ごとき、どんどんデーモンの敵ではないコン!」
高笑いするキッツネイザー。
「カット!」
「どんなものコン?‥‥じゃあなくって、どんなものアル?」
「ええんやけど、油揚げ食うとこは、マスク使ってアップで別撮りした方がええかもなあ」
「ですね。口にいっぱい頬張ってガツガツするところは、擬音を入れるより美星さんの台詞をアテレコしたほうがいいかもです」
美星に、皐月と月紅爛は返答した。実際、動きにくい着ぐるみではあったが、美星はそんな事を微塵も感じさせない演技を見せてくれたのだ。咀嚼音は擬音か効果音でそれらしいものを‥‥と考えていた月紅爛だが、それより美星の声を入れたほうが、よりキャラクターらしさが出せるだろうと実感した。
「予想以上に、撮影はうまく行ってるな。よし、どんどん行くぞ!」
監督の言葉が飛び、カメラが回り始めた。
「シーン27 テイク25 アクション!」
:大盛公園にて。マユミとおじいちゃん、アクマンに懇願している。
マユミ「お願い。あなたの言うとおり、どんどんデーモンが原因なら、大盛タウンは大変になっちゃうわ。助けて!」
アクマン「お断りだね、おいらにゃ関係ない。だいたい、あいつらおいらが捨てたどんぶりから、勝手に出てきやがって。知ったことじゃあねーって」
おじいちゃん「なら、わしからお願いじゃ。このきゅーとでぷりてぃなおじいちゃんからのお願い、聞いてくれんか?」
アクマン「ますます聞きたくなくなった。変なじーさんも嫌いだ(ベンチにごろりと横に)」
おじいちゃん「むっかー、じいちゃん怒ったぞ! 国際老人協会に訴えるもんねー!」
マユミ「そんな‥‥」
涙目になったマユミをチラッと見て、アクマン、なんとなくばつが悪そうに。
アクマン「ま、まあ‥‥おいら、千年もなんも食ってなかったからよ。なんか食わせてくれたら、やってもいいかなーって‥‥」
マユミ、それを聞いて、リュックからカップラーメンを取り出す。
マユミ「それじゃあ、このラーメンあげる。『超弩級ど根性ラーメン』よ」
お湯をいれるマユミ。
「カット!」
マユミ=らぴすは困惑していた。魔法瓶からお湯が出ないのだ。
「おい、ちゃんと用意しとけ! ラーメン、スタンバってるか?」
ADや雑用に言いつけ、監督は湯を持ってこさせている。
「よし。続き撮るぞ」
「シーン28 テイク03 アクション!」
:ラーメンができあがる。
アクマン「いっただきまーす‥‥(ラーメンをすする)‥‥うん、うめーじゃねえか」
美味そうに食べるアクマンを見て、思わず微笑むマユミ。
しかし二人の後ろから、おじいちゃんがこっそり近付き、アクマンの尻尾に何かをつける。
アクマン、食い終わる。
アクマン「ふー、美味かったぜ。ありがとよ」
マユミ「それじゃあ‥‥」
アクマン「ま、気が向いたらやってやってもいいぜ、それより食後の昼寝だ」
ごろ寝しようとしたが、突然飛び起きる。
おじいちゃん「アクアクエッサイム、ワルイコメッサイム、アクアクリングの名の下に、悪魔アクマン、言う事聞くべし」
マユミ「おじいちゃん!」
アクマン、くすぐったそうに暴れまわる。
アクマン「や、やめろ! おいらは、いっひっひ! 尻尾くすぐられるの、あっはっはっは! 弱いんだよ‥‥ひゃっはっは!」
おじいちゃん「これは、悪魔に言う事聞かせるための道具じゃ。マユミ、この呪文「アクアクエッサイム、ワルイコメッサイム」で、こやつに言う事きかせ、どんどんデーモンと戦わせるのじゃ」
マユミ「で‥‥でも、かわいそうだよ。外してあげて!」
おじいちゃん「いやその‥‥外し方までは知らんのじゃ。じいちゃん大失敗♪」
アクマン、ようやく落ち着く。
アクマン「ちっくしょう、ヘンなもん付けやがって。親父に知られたらなんて言われるか‥‥」
声「私が、どうかしたかね?」
マユミたちの目の前に、いきなり現われるアクアク大王。
アクアク大王「こんにちは、レディ・マユミ。我が名はアクアク大王。人呼んで、魔界に吹きすさぶ美の疾風‥‥以後、お見知りおきを」
優雅なしぐさで、マユミに挨拶する。
マユミ「は、はあ。よろしくお願いします」
アクアク大王「此度は、美しき我がどんぶりコレクションを、息子が割って廃品回収に出した事が原因。‥‥我が息子アクマンに、その責任を美しく取らせるようにいたします。レディ、美しくこき使ってやってください」
マユミ「そうですか、こちらこそよろしくお願いします」
おじいちゃん「まあ、アクマン君の事はわしらにお任せ下さい」
アクマン「って、おい! 勝手に決めてんじゃあねーよ!」
アクアク大王「息子よ。封印の時には『オタスケカプセル』を召還するがいい。アクアクガシャポンで、私がお前の必要とする道具を取り出し送る。それを使えば、どんどんデーモンをドンブリに戻せる。美しくがんばるんだぞ?」
そう言って、消えるアクアク大王。
「‥‥カット!」
「‥‥ふう、思った以上に大変ですね。この衣装」
アクアク大王のコスチュームとマスクを取りつつ、ディノは一休みした。もとは、倉庫に保管されていたヨロイやマスクや着ぐるみなどで、それらを寄せ集め作り上げたものだ。
「ま、ディノはんの出番はここで終わりやし、あとは他の方々の手伝いをお願いしますわ」
「わかりました。では、がんばりましょう」
「シーン35 テイク20 アクション!」
:カップ麺や冷凍食品のきつねうどん・そばをたくさん詰め込んだカートを押し、スーパーから出てくるキッツネイザー。
キッツネイザー「コーンコンコンコン♪。これでしばらくはキツネそばやうどんを食べまくれるコーン♪」
アクマン「待ちやがれ!」
声に、あたりを見回すキッツネイザー。アクマンとマユミ、おじいちゃんが立ちはだかる。
アクマン「お前のおかげで、おいらは面倒な事をしなきゃならなくなったんだよ! とっととドンブリに戻りやがれ!」
キッツネイザー「戻したくば、力づくで戻してみろコン♪ ボクちゃん油揚げたっぷり食べたから、パワーアップしてるコン!」
とびかかるアクマンだが、キッツネイザーは後ろを向いて、尻尾ではたく。
キッツネイザー「キッツネ・テールビンター!」
吹っ飛ばされるアクマン。
マユミ「アクマン! がんばって!」
アクマン「ちっくしょう、親父! オタスケカプセル召還!」
空中に、巨大なガラガラが現われる。それがぐるぐる回り、カプセルが一つ落ちてくる。受け取るアクマン。
カプセルが割れ、中からは雑巾が。
アクマン「‥‥なんだ?」
アクアク大王(声)「すまん、美しく間違った。いま、正しいのを送ろう」
カプセルが再び。今度はホウキとチリトリが。別のカプセルが落ちてくると、こんどはびっくり箱と、変なものばかり。
キッツネイザー「‥‥よ、よくわからんが、なんとなく恐ろしいコン!」
おじいちゃん「なるほど、このように相手に恐怖を与えるため、わざとこんなカプセルを! さすがアクアク大王!」
マユミ「そうなのかなあ‥‥」
アクマン「親父! 遊んでねえでちゃんとしたの送って来い!」
アクアク大王(声)「出たぞ、これだ! 美しく受け取れ!」
輝くオタスケカプセルが。それを空を飛び受け取るアクマン。
アクマン、カプセルから取り出した「アックマ・ハリセン」を、剣のように構える。
キッツネイザー「あ、あれは伝説のアックマ・ハリセン! やばいコン、逃げるコン!」
すたこらさっさと逃げるキッツネイザー。しかし、翼を羽ばたかせ、アクマンは空中から追い詰める。
アクマン「逃がさないぜ! アックマ・ハリセン必殺奥義『ツッコミ・ダイナミック』!」
キッツネイザーを打ち据え、ポーズを決めるアクマン。キッツネイザー、光に包まれる。
キッツネイザー「い、いなりずしも食べたかったコン‥‥」
光はどんぶりの形に固まり、やがてどんぶりに。
マユミ、ドンブリを手に取る。誇らしげに立っているアクマン。
ナレーション(マユミ)「こうして、どんどんデーモンからわたしたちの町を守るため、わたしとアクマンの冒険が始まったのです」
「カット!」
撮影が終わり、効果音や特撮の合成なども後日行われ、編集された。
こうしてパイロットが完成した「おいらはアクマン」は、プレゼンにて提出される事に。
出演者を呼び、皆で試写を見つつ、監督は思った。
「もしもこの作品が、TV用に製作決定したなら、このメンバーで撮りたいものだ」と。