ヒャクジュウオー!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 外村賊
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/28〜09/01

●本文

 ぽつんと、一つ。
 黒々と茂った森の中、急にぽっかりと開けた場所がある。
 そこから見上げれば、夏の明るい星空に、細い月が掛かっているのが見えるだろう。
「ほ、ホントに出るの‥‥?」
「ああ。俺のダチが目撃してんだ、間違いねぇよ」
 高校生ぐらいだろうか、一組のカップルが山道を縫って、丸く開けたその場所へやってきた。今まで鳴いていた虫の声も不意に静まって、どことなく気味が悪い。
「ほら、アレだ『獅子王塚』」
 男の方が指をさす。古ぼけた小さな塚が、月光に照らされている。
「昔武野神社の神主に退治された妖怪の怨念が、霊になって出てくるんだ‥‥自分が殺された、八月の、月の照る日に‥‥」
「やあん、こわーい!」
 とは言いつつ、二人とも本気で怖がっていないみたいだ。ふざけあっては、非日常の雰囲気を楽しんでいる。

 その時。

 ふっと、塚の周りに白い物が横切ったのを、彼女が見つけた。
「なんだよ、その顔。俺を脅かそうってのかよ」
 冗談めかして彼氏は笑う。その態度をとがめるように、低い、獣の唸り声が聞こえた。
 向かい合う彼女の顔に、ますます恐怖が広がる。
『グルル‥‥立ち去れ‥‥立ち去れぃ‥‥』
 獣の唸り声は、徐々に言葉に変わっていった。生暖かい風が彼氏の背に吹き付ける。
「ねえ、あれ‥‥あれ‥‥!」
「ばばばば、馬鹿だな、ゆ、幽霊とか、今時ありえるワケねーじゃん‥‥犬だよ、野良犬! じゃなきゃ空耳‥‥」
 すがりつく彼女に言い聞かせ、恐る恐る彼氏は振り向き――

「うわああああああああっ!」

 武野山に、二人の悲鳴が響き渡った。



 武野小学校の裏にある武野山が、最近心霊スポットとして噂になっている。
 学校のすぐ近くと言う事で、防衛組の何人かも興味津々のようだ。
 月の照る夜、待ち合わせたみんなは、一緒に肝試しに向かった。

☆★☆★☆★
『獣王武神(じゅうおうむじん) ヒャクジュウオー』第七話・概要

ヒャクジュウオーとは‥‥地球征服をたくらむ魔獣界と、聖獣界の戦士から地球の防衛を託された武野小学校五年一組の戦いを描く、小学生をターゲットにしたロボットアニメーション。戦いを通して正しき心を成長させる子供達にスポットを当てる。

 参加希望者は詳細をよく読み、希望届けに記入の上、締め切りまでに届けを出すこと。

☆演技指針☆
聖獣防衛組:データ整理と今後の方針について話し合おう
魔獣界:‥‥?

★新設定
とくになし

☆専門用語☆
・聖獣:聖獣ブレスに封じられた聖獣界の戦士。正義の心によって具現化し、動物をかたどったロボットになる。心の力が弱ければ弱体化、悪ければ召喚さえ出来ない。子供達はブレスで指示を出し、遠隔操作する。
・司令室:教室が変形。瞬間移動装置など、さまざまな機能があるが、全貌は明らかになっていない。
・聖獣合神:司令室にある宝石を核として、それぞれの聖獣を合体させる。各部分の制御が必要なため、生徒達がコクピットに乗り込む。
それぞれの聖獣が合体後どの身体の部位になるかは、操縦者の意思による。
頭部になった聖獣の操縦者がメインパイロット。その聖獣の能力に準じた強力な必殺技を、一度だけ使える。

・魔獣:聖獣と同じ獣型。この状態ではブレスによる遠隔操作。
・破壊獣:コワ・エネルギーから作られたモンスター。人々を怖がらせてコワ・エネルギーを吸収、徐々に巨大化していく。
・破壊魔獣:魔獣が破壊獣を取り込むことによって人型に変形した姿。聖獣よりも一回り大きく、強力になり、魔獣の必殺に加え、破壊獣の特殊能力が使える。エネルギー制御が必要なため、魔獣界人が実際に搭乗して動かす。

☆希望届け☆
1、希望役(いずれか)
・武野小・五年一組の生徒(前回出演者は同じ役柄が望ましい)
・魔獣界の戦士(同上)
・その他、前回担当脇役など

2、やりたい役柄
・名前
・性別
・外見(簡潔に)
・長所(一言で)
・短所(一言で)
・聖(魔)獣(獣人種族をモデルにしているので、その範囲で決定する事)
・必殺技(一つ)

3、破壊獣
・名前:?
・外見:幽霊に由来
・特殊能力:一つ
・弱点:一つ

●今回の参加者

 fa0377 ASAGI(8歳・♀・蝙蝠)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0924 谷津・薫(9歳・♂・猫)
 fa0932 RASEN(16歳・♀・猫)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa3345 各務 英流(20歳・♀・小鳥)
 fa3354 藤拓人(11歳・♂・兎)
 fa4137 ☆島☆キララ(17歳・♀・犬)

●リプレイ本文

―声の出演―
羽田 涼子(活発 鷹聖獣バーニング・ホーク)‥‥RASEN(fa0932)
大高屋 亮(ガリ勉 ユニコーン聖獣モノケロス)‥‥藤拓人(fa3354)
獅堂 吼(熱血 獅子聖獣ブラスト・リオン)‥‥谷津・薫(fa0924)
三雲 姫香(ミクロ)(噂好き 蝙蝠聖獣ルナティック・バット)‥‥ASAGI(fa0377)
姫野木 静夜(姫)(泣き虫 ハムスター聖獣シャンガリア)‥‥カナン 澪野(fa3319)
春野 ウララ(天然ボケ 犬聖獣サイレント・ドッグ)‥‥☆島☆キララ(fa4137)

ペギリーフ(自称天才策略家 小鳥魔獣オキノダユウ)‥‥各務 英流(fa3345)
カレンスキー(ナルシスト 狼魔獣ケルベロス)‥‥ディノ・ストラーダ(fa0588)



 夏と言えば、肝試し! みんなで肝試しをやろう!
 と言ったのは、確か涼子だったはずだ。
 日が落ちた武野山を、亮とウララは二人で登っていた。
 くじ引きで決めた二人組みで獅子王塚まで行き、そこに名前の書いた札を置いてくる、と言う良くあるルールだ。
「個人的には幽霊より、涼子ちゃんが何で目をランランと輝かせて、お札をいっぱい貼ったバットを持ってきてたのかの方が気になるんだけど」
「うん、何か言ったぁ?」
「ううん、何でもない」
 亮のペアであるウララは最近転校してきた帰国子女だ。不気味な森の中、鼻歌交じりで足は軽い。
「日本のお化けが見られるんだよねぇ、どんなのが来るのかな、楽しみだよねぇ♪」
 女の子っぽい言動が目立つが、転校当初の挨拶によればどうも男の子らしい。
 本当の所はウケ狙いで男の子の振りをしたら引っ込みが付かなくなった女の子だが、防衛組ではすっかり男の子にカウントされてしまっている。が、亮はどうも納得できないでいた。
(「うーん、幽霊よりもクラスメイトの方が不思議でしょうがないよ‥‥」)
 その時、がさりと茂みが音を立て、突然足元に白いモノが飛び出してきた。
「お化け!?」
 ウララが好奇心に輝く目を向け――そして、真っ青になった。
 それは手足がなく地を身体で這い、長い舌をちろちろと出し入れしながら、感情のない丸い瞳でウララを見上げている。
「へ、へびいやあああっ!」
「あ、ウララさん!?」
 叫んだかと思うと、そのままウララは一人走って逃げ出した。追いかけようとした亮だが、足元に何か落ちていることに気付いてそれを拾い上げる。
 ウララがいつもしている、ヘビの付いたペンダントだ。
「ヘビ‥‥嫌いなんだよね‥‥?」
 ますます謎が深まる転校生だが、悩んでも仕方がない。ウララを追って、亮は走り出した。

 しばらくして、次のペアの懐中電灯の光が見えてきた。姫と涼子だ。元気良くズンズン進む涼子に、姫がすがりついて懸命についていっている。
「ねえ、お、置いてかないでね‥‥?」
「大丈夫よ、逃げたりしないから!」
 涼子は余裕たっぷりの笑みを見せる。その手には亮も気にしていたお札バットと、懐中電灯。首からはカメラがぶら下がっている。頼もしい笑顔に、姫は安心する。
「てゆーかむしろ追っかけるし!」
「‥‥え‥‥?」
 意味が分からず聞き返そうとした姫の背後で、草木ざわめく音がした。風は、こそりとも吹いていない。振り向いても登ってきた一本道があるばかりで、なにも不思議なところはない。
 猫か何かが通ったのかも、と気を取り直して前を向いた視界の端に、ふわりと白いものが漂った。
「‥‥っ!」
 涼子はとっさに懐中電灯をそちらへ向けた。白いシーツをかぶった人のようなモノが、地面から数十センチ離れた所で浮いていた。ライトに気付くと逃げるように森の奥へと入っていく。涼子は姫の手を振り解き、猛然と白い影を追って駆け出した。その勢いで姫はバランスを崩して転んだ。
「待ちなさい、あたしのサクセス!」
「ちょ、りょ、涼子ちゃーんっ!!」
 姫の悲鳴がこだまするが、茂みをかき分ける音で涼子には届かない。
 涼子が肝試しを言い出したのは、幽霊をゲットするためなのだ。
 心霊写真だけでもテレビであんなに特番をやるのだ。もし捕まえることが出来たら、もちろんテレビ局に引っ張りだこ、たちまち有名人の仲間入りだ。
「待ちなさーい!」
 白い幽霊を追いかけていく途中で、突然ラップ音がしたり、変な顔が横切って行ったりもした。涼子はそのたびにシャッターをきった。フラッシュが瞬く。すると幽霊と思しき影は、どれも怯えたように逃げていってしまうのだ。
「もしかして、幽霊って光が怖いのかしら‥‥だとしたら大発見だわ!」
 これはテレビに出たとき、トークのネタに使える。涼子は心のメモに深く今の発見を刻み付けた。
「じゃあ、明かりをつけなきゃ止まるかも‥‥?」
 常に白い幽霊を照らしていた懐中電灯を、涼子は試しに切ってみた。と、幽霊の逃げるスピードがわずかに緩んだ気がした。
「よしっ大成こ‥‥」
「いやあ〜!」
「ウララくん!?」
 突然、幽霊の前方からウララが飛び出してきた。派手な音がして二人は正面衝突する。よほど勢いが良かったのか、お互いにその場に思い切りしりもちをついてしまった。
「痛〜‥‥」
『オバ〜‥‥』
 ウララとお化けは同じ風にお尻をさすったりしている。
「‥‥って、何でお化けが人と『ぶつかる』の?」
 首をひねったその時、涼子の頭に閃くものがあった。確か、破壊獣のかけらは『恐怖』に反応していた‥‥
「もしかしてキミ、破壊獣!?」
 お化けが、涼子の指摘にピクリと反応した。ばつの悪そうな笑顔が、全てを物語っていた。
 涼子の脳裏に描かれた夢が今、ガラスをトンカチで叩いたように、派手な音を立てて粉々に砕け散っていった。

「ウララさん! ‥‥って、これは?」
 ウララを追ってきた亮が目撃したのは、バットで幽霊を殴りまくっている涼子の姿だった。
 少し離れた場所から、ブレスで見守っていたペギリーフも、置かれている状況に気が付く。
「お化けへの反応がおかしいと思ったら、聖獣のチビガキどもではないか! こうなったら破壊合体でギッタンギッタンにしてやるのである!!」

 その頃、一番最後の組のミクロと吼は、やっとルートの半分ぐらいまで来ていた。吼がちょっとした物音や動きで体をビクつくので、なかなか進まないのだ。
「‥‥無理してない?」
「しっ、してねぇよ!」
「吼クン‥‥そう怖がってばっかりいたら、良い幽霊は悲しくなっちゃうかもしれないよ‥‥?」
「何だよ、良い幽霊って!」
 吼が余裕なく叫ぶ。ミクロはちらりと横目で見つめて微笑む。どこか大人っぽく見える。
「なんだよ、気持ち悪い笑い方やめろよっ」
 その時、周囲がざわめいた。山の全ての生き物が騒ぎ出したような音がして、吼の頭上に巨大な黒い影が覆いかぶさった。吼は思わず大声で叫ぶ。
「か、影のお化け‥‥っ!」
『何言ってんのよ吼クン! 破壊獣だよ!』
 影は良く聞き知った声で叫んだ。お化けではない。ルナティック・バットの背にミクロが乗っているのだ。
 ミクロが指をさす方向を見ると、巨大な幽霊型の破壊魔獣がふらふらと浮遊しているのが見える。
「幽霊騒ぎは全部アイツのせいかっ!?」
 そうと分かれば怖がる必要は何もない。勇ましく吼はブレスを構えた。

「怖い‥‥」
 一人、取り残された。
 木々に遮られて星や月の明かりはほとんど見えない。暗闇にいると、おぼろげな恐怖の記憶が思い出されてくる。夜の闇がのしかかってくるような気がして、姫は震えた。
「助けて‥‥」
「君‥‥?」
 どこからか、優しげな男性の声がした。足音が近づき、足元が見えた。耐え切れず、誰かも確かめずに姫はすがりつく。
「助けて、お兄ちゃん!」
 無意識の間にそう叫んでいた。
「キレイスキー‥‥?」
「え‥‥?」
 顔を上げる。おぼろの星明りに、男性の端正な顔立ちが浮かび上がる。
 その瞬間、ブレスの通信音が鳴った。姫の物ではない。男性の腕に付いた、狼の顔の形をしたブレスだ。
「見つけたか、ケルベロス‥‥」
 呟くと、身を翻して山の頂上――獅子王塚のあるほうへ駆け出していく。
「あ、待って‥‥」
 その背を追って走り出そうとした姫だが、今度は姫のブレスに通信が入る。破壊獣を見つけた亮からのものだ。

 みんなが破壊魔獣の場所へ駆けつけるや、涼子は憤慨して叫んだ。
『こっちも合体よ! 容赦しないんだから!』
 何があったかいまいち掴めないが、それを問いただしている時間もない。
 みんながは円陣を組み、ブレスのはまった手を重ね合わせる。
「聖獣合神!!」
 司令室から呼び出された宝石が輝き、聖獣たちを合体させる。
 バーニング・ホークを頭部に据えたロボは、胸の空洞に宝石が組み込まれ、命を得たように、瞳を輝かせた。
『小鳥魔獣と幽霊破壊獣の、飛行能力の高さを知るが良いのである!!』
 オバキングEXのシーツの裾から幾つかの人魂が飛び出し、ヒャクジュウオーに襲い掛かってくる。
「ルナちゃんだって、飛ぶのは得意なんだから!」
 飛行担当のミクロが制御し、ヒャクジュウオーは人魂を綺麗に避ける。しかしその隙に高速移動してきたオバキングEXの体当たりを受けてしまう。
 再び人魂が発射される。不規則な動きで迫るそれを避けるも、それに精一杯で、やはりオバキングの攻撃が防げない。
『ふっふっふ、手も足も出まい!』
『それはこっちの台詞だわ!』
 高らかに笑うペギリーフに、涼子が牙を剥く。涼子が胸の前に両手をかざす。ヒャクジュウオーがその動きをトレースすると、胸の宝石から光があふれ出した。それはあたかも太陽を持っているようにも見える。光に照らされ、再び迫っていた人魂の姿がかき消え、オバキングEXは金縛りにあったように動きを止めた。
『乙女の怒り、思い知れ! ハートブレイザー!』
 光は輝ける鳥となって、オバキングに向けて放たれた。逃げることもかなわず、オバキングは光の衝撃に包まれる。
 武野山が、昼間になったかのように輝いた。

「‥‥む」
 カレンスキーは空を見上げた。破壊魔獣がこちらにむかって落下してきている。
 彼のすぐそばに、狼魔獣が佇んでいる。魔獣は主人の命のまま、獅子王塚の下を発掘していた。
 そして、目的の物を掘り当てた。
 流線型の乗り物。地球のものではない、遠い宇宙で使った戦闘機だ。
「心配ない、ケルベロス。あの時‥‥あの男に貸したカイザーウイング。動力は生きているようだ」
 カレンスキーはケルベロスをブレスに戻すと、に乗り込んだ。
 慣れた手つきで動力を起動させる。
 オバキングはみるみるうちに迫り来る。

 そして、爆発。

 天にも轟けとばかりに、ヒャクジュウオーは高らかに名乗りを――
『獣王武神 ヒャクジュ‥‥ってああっ!!!』
「って何だよ!」
 最後のキメを驚きの声で潰した涼子に、吼が突っ込む。
「UFO!」
 涼子の動きを真似て、ヒャクジュウオーも指をさす。確かに、見慣れない形の浮遊物体が、獅子王塚のほうから飛び立った‥‥様に見えた。
「そうか、獅子王塚に現れるのは幽霊じゃなくて宇宙人だったんだわ! このまま追いかければ‥‥」
 一度崩れたサクセスドリームが再び涼子の中で大きく広がった。しかし涼子の意思とは裏腹に、ヒャクジュウオーは光に包まれ、合体をとこうとしている。亮が眼鏡を押し上げ、冷静に言った。
「破壊獣との戦い以外には使えないんだよ、きっと」
「そんなぁ、ヒャクジュウオーのケチーっ!」
 涼子の悔し紛れの叫びと共に、ヒャクジュウオーは宝石の中に戻っていった。その間にカレンスキーを乗せたカイザーウイングは空の彼方へ紛れ、消えた。



「次はミステリーサークルを探しよ!!」
 帰り道、涼子は決意も新たに拳を握り締める。どこまでもめげない性格だ。吼はこっそりため息をつく。ともかく、しばらく武野山には行きたくない。その横で、ミクロがにっこり笑った。いつもどおりの明るい笑顔だ。
「あたしのお家が近くてよかったよね。涼子ちゃんが頭だったから、ルナちゃんがいなかったらヒャクジュウオー、空飛べてなかったよ?」
「何言ってんだよ、お前オレと一緒だっただろ?」
「え、ミクロ、今日はお母さんの誕生日のお祝いするから行かないって‥‥言ってたでしょ?」
『あたし、吼クンに何もしなかったでしょ? ね、いるんだよ‥‥良い幽霊って』
 ミクロの背後で、もう一人のミクロが大人びた笑みを浮かべた。向こう側が透けて見えて――
「‥‥‥‥!!!」
 吼のその日の記憶は、そこで途切れている。